この育成論の目的と注意点
本育成論は、これからダブルバトルを始める人や過去世代で対戦をしていなかった人を対象に、ガオガエンの強みや立ち回り、崩し方などの初歩的な知識を共有することを目的としています。ただし種族値や努力値、ある程度の略称(トリックルーム→トリルなど)を知っていることを前提とします。
目次だけで概要をつかめるようにしています。初心者の段階でこの記事を読み込んで理解する必要はありません。それぞれの項目に掘り下げた解説がついていますので、気になった部分をお読みください。
あくまで基礎をなぞる記事であり、これ単体で上位を目指すのは現実的ではありません。
各所の構築記事のほか、ダブルバトル専門メディアサイト『リバティノート』やダブル専門育成論サイト『しゃちpokeサイト』、『ポケモンバトルデータベース』やYouTubeなども併せてご覧ください。URLは記事の最後に載せています。
またこの記事を見た有識者の方々へ、できれば集合知を作りたいので「これが足りていない」「ここがズレてる」といったご指摘があればコメントをお願いします。
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導入
ガオガエンは基本的に「そこそこ殴れるサポーター」として使われます。6世代のメガガルーラや8世代のザシアンのような超火力は持っていませんし、エルフーンやオーロンゲのようにサポートに特化した性能でもありません。その分持っている要素の組み合わせが唯一無二であり、ダブルバトルにおいて採用して損がないほどの汎用性を持ったポケモンです。逆に言うとあくまで構築の潤滑油であり、主軸になるポケモンではありません。
「アタッカーではないから倒されてもいい」という発想が使用率に拍車をかけており、これまでタイプが不利なカプ・レヒレがいようと、水ウーラオスが参戦しようと、カイオーガやパルキアが解禁されようと常に環境トップに居続けました。パルデア環境でもこのポケモンの増殖は止められないでしょう。
そのためまずはどの要素がどう強いのかについて確認していきます。
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第1章:ガオガエンの強み
要旨
ダメージ軽減+行動阻害。
発動タイミングが同じ点でシナジー。
- 『すてゼリフ』
デバフしながら交代。
いかくとねこだましの再展開につながる。
- タイプ構成
いかくを入れたい物理アタッカーに相性有利。
に弱くない。
特性いたずらごころ無効。
- 最低限の火力と高い耐久
タイプの強さ、テラスと合わせて相手の攻撃に受け出ししやすい。
→すてゼリフの後、いかく+ねこだましを再展開可能。
- 絶妙な素早さ
後攻ですてゼリフできる。
→後続を無傷降臨
遅すぎないためトリルにも刺さる。
特性『いかく』で被ダメージを軽減できる
この項目では一般論で威嚇そのものの強さを解説します。
場に出た際に相手の攻撃を下げるシンプルな特性ですが、ダブルだと相手2体に効果が及びます。そして当然ながら味方2体のダメージ軽減につながります。パオジアン入りの構築などは、物理アタッカーが2体並びやすいのでよく刺さります。
シングルに比してダブルで特に威嚇が強いのは、威嚇要員の隣にアタッカーを置けるからです。
威嚇要員にとっては火力が必要なく、耐久に厚く振ることでサイクルが回しやすくなり、2度目、3度目の威嚇展開ができます。アタッカーにとっては、威嚇のおかげで要求される耐久ラインが下がり、火力や素早さに回せます。
さらに『まもる』という択をお互いに持っているため、シングルよりも交換の隙が生まれやすい点も重要です。
よくあるのが相手の片方は守る、もう片方のみが殴ってくるという場面です。このときアタッカー側を殴ってくるのであれば、威嚇要員はフリーになるので無傷交換が成立します。
その他にも相手が攻撃低下をリセットしようと交換してきたり、こちらのアタッカーに集中攻撃してきたりする際も交換のチャンスです。こうしてサイクルを回しデバフを撒きながら、隣のアタッカーで殴り続ける戦術が強力です。
技『ねこだまし』で相手の行動を阻害できる
この項目では猫だましに関する一般的な知識を解説します。
相手の行動を1ターン止められる、ダブルバトルの象徴的な技です。適当に打ってもそれなりに活躍しますが、以下の2つの場面で特に力を発揮します。
1つ目のパターンはギミック始動をサポートするときです。
典型的なのはトリックルームで、この技は優先度-7のためターンの最後に発動します。そのため発動前に集中攻撃で倒されたり挑発で止められたりするリスクがありますが、猫だましで相手を片方でも止めれば、少なくとも集中攻撃はされません。他にもビルドアップ、悪だくみなどの積み技やオーロラベールのサポートに使われます。
一方で追い風起動のサポートに使うのは弱いことが多いです。トリルと違って優先度がマイナスではない上に、ターンが短く素早さ2倍が即時反映されるため、『いたずらごころ』や素早いポケモンが追い風しながら隣は普通に殴った方が強いからです。
2つ目の強い使い方は、「縛り」を解除するときです。以下のような盤面を考えてみます。
行動順はウーラオス(いちげき)>ランドロス(霊獣)>ヒードランで、いったんテラスタルは非考慮とします。
このときランドロスのじだんだでヒードランを倒したいところですが、その前にウーラオスのすいりゅうれんだでランドが倒されてしまいます。そのためまもるか交換をする必要があり、ランドはこのターン攻撃できないことになります。(この例の場合ウーラオスが守るを貫通するので交換しかできません。)
このように行動前に上から倒されてしまうため動けない状態を一般に「縛られている」と表現します。
次にコイキングをガオガエンに変えてみましょう。
ガオガエンの猫だましでウーラオスを止めれば、ランドロスは問題なく動けるためヒードランを倒せます。これが猫だましによる「縛りの解除」です。
今世代にはテラスタルがあり、この例だとヒードランが草テラス、または(珍しいですが)ウーラオスがゴーストテラスを切る可能性があります。すなわち相手を縛ることで「テラスタルの強要」ができ、試合のテンポを握りやすくなります。
逆にいえば、相手がテラスを消費すると、相手にとって縛りをひっくり返す手段が減ることになります。また試合が進むと、ヒードランが削れて弱点攻撃せずとも倒せる可能性が出てきます。つまり猫だましは中盤以降に使っても強いのです。「とりあえず初手猫だまし」というのは初心者にありがちですが、温存という選択肢も覚えておいてください。
『すてゼリフ』でデバフを撒きながら控えに戻れる
威嚇と合わせて攻撃デバフを重ねたり、特攻デバフをかけたりすることで、後続の被ダメージを軽減しながら強引にサイクルを回せます。
この技のおかげで特殊アタッカーにも対抗できます。
環境に合ったタイプ構成
威嚇を入れたい物理アタッカーに対してタイプ相性上有利です。オーガポン(かまど)ゴリランダーパオジアンなどがその典型で、いずれもタイプ一致技を半減で受けられます。
またメジャーな特殊アタッカーに対しても耐性があります。特にでゴースト耐性を持ちながらも、フェアリーを等倍で受けられるという希少な組み合わせであり、ハバタクカミに対して隙を見せません。またイーユイサーフゴーの一致技も半減できます。
トリックルーム構築に対して強く出られる点も見逃せません。トリル起動役リキキリンヤバソチャ、トリルエースコータスグレンアルマなどに軒並み有利で、モロバレルの弱点を突くこともできます。
また悪タイプなため特性いたずらごころが無効で、エルフーンなどから挑発やアンコールを受けません。このおかげで気兼ねなくねこだましやすてゼリフを使うことができます。
バランスのとれた種族値
攻撃種族値が115もあり、これはウインディ(ヒスイ)と同じ数値です。ヒスイウインのようにアタッカーを担うことは少ないですが、無振りでもサポーターとして十分すぎる火力が出ます。
そして耐久もバランスに優れており、威嚇と合わせると大抵の攻撃を1〜2回耐えます。オボンの実を持つと神秘の雫持ちウーラオス(いちげき)の水流連打さえも耐えられます。
最も重要なのが素早さであり、60と遅めなことが様々な強みにつながっています。
- ピカチュウ『すてゼリフ』と鈍足・高耐久を合わせると…
- 何より特筆すべきは、大抵の相手より遅いため捨て台詞を後攻で打てるということです。相手の攻撃を受けてから交換するため後続を無傷降臨させられ、同時に相手をデバフできるので場からいなくなってもサポートが続きます。
- しかもテツノカイナやコータスほど遅くはないので、トリル構築に対してもこの動きができるという絶妙な素早さラインです。
- 耐久が高く耐性も強いおかげで、控えに戻った後も相手の攻撃に受け出ししやすく、無理やり威嚇を撒きながら体力が1でも残れば猫だましでさらに仕事ができます。
カスタマイズ性が高い
詳しくは後述しますが、型が非常に豊富です。
猫だまし・捨て台詞に始まり、威力も効果も強いはたき落とす、鬼火や挑発、バークアウト、手助けまで覚えます。
突撃チョッキを持って全部攻撃技にしても、逆にはたきワンウェポンでサポート特化にしても、特殊型で熱風を打っても強いです。
今世代の弱体化要素
どうあがいても最強ポケモンなため、かなり対策要素が増えています。それでもまだ強いですが、ガオガエンを使う際は以下の要素に注意が必要です。
- 猫だまし耐性の増加
『おんみつマント』やゴーストテラス、『テイルアーマー』などの登場により、以前よりも猫だましを打ちづらくなりました。
- 威嚇耐性の増加
ドドゲザンオーガポンの『まけんき』やイイネイヌの『ばんけん』によって、安易に威嚇しづらくなりました。また『クリアチャーム』持ちの増加も予想されます。
- 威嚇無効が多い環境
ハバタクカミなどの特殊アタッカーや確定急所持ちのウーラオス(いちげき)、『せいしんりょく』のカイリューなどが強い環境が続いており、今後も一定の使用率を保つと予想されます。
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第2章:ガオガエンの型
調整の詳細は『しゃちpokeサイト』に譲り、この項目ではどのような型が使われるかを大まかに紹介していきます。
『しゃちpokeサイト』ガオガエン→ https://mattari-kura.com/incineroar/
- 以下の数値はカッコ内が努力値、外が実数値
- HP、攻撃、防御、特攻、特防、素早さをそれぞれH、A、B、C、D、Sと表記
HBベース
持ち物:オボンのみ 、ぼうじんゴーグル、シュカのみなど
調整例:わんぱく 201(244)-135-147(188)-×-120(76)-80
いじっぱり神秘の雫ウーラオス(いちげき)水流連打をオボン込みで99.98%耐え
技 :ねこだまし、すてゼリフ、フレアドライブ、はたきおとす、ちょうはつ、おにび、てだすけなど
威嚇と合わせて物理を対策する、最もメジャーな型。オボンの実を持つと受け出し性能が上がり、防塵ゴーグルはモロバレルに強く出られます。『まもる』を持っていることは稀です。
今世代は水ウーラがかなり強いため、ガエンの調整もそこに合わせるのが基本になります。逆に言うと水ウーラではガオガエンをワンパンできないため、範囲技を重ねるのが有効です。水ウーラが環境から減れば、もっと特殊耐久寄りの調整も増加すると思われます。
後攻捨て台詞がこのポケモンの持ち味ですが、基本的に素早さ個体値は下げない方がいいです。ガエンミラーでの猫の打ち合いに弱くなる上に、同速にリキキリンやアシレーヌ、少し下にテツノカイナやドドゲザンなどのライバルがいる激戦区のラインです。構築にもよりますが、これらの相手には素直に上から行動したいため、むしろ素早さは上げるケースが多いです。
素早さの調整としては、余りの4や12を振るだけでもそれなりの効果が出ます。それ以外だと、追い風込みで最速100族抜きの実数値84(28振り)や、同トルネロス(化身)抜きの実数値90(76振り)辺りを目安に調整していくといいでしょう。
調整例ではHPを201(244振り)に調整しています。これはオボンの回復効率とキラフロルの毒意識ですが、人によっては202(252振り)や200(236振り)にしています。正直みんな適当なので、好きな数値にすればいいと思います。
HD型
持ち物:オボンのみ、とつげきチョッキ、シュカのみなど
調整例:しんちょう 201(244)-135-115(36)-×-152(228)-80
ひかえめ命の珠ランドロス(化身)のダブルダメージ熱砂の嵐を最高乱数以外耐え
技 :ねこだまし、すてゼリフorとんぼがえり、フレアドライブ、はたきおとす、バークアウト、ちょうはつ、おにびなど
特殊アタッカーに対しても複数回受け出すことを目的とした調整。GSルールになると増加します。禁伝に特殊アタッカーが多いのが理由ですが、通常ルールでも特殊がつらい構築であれば採用する価値があります。
特にレギュF開始時点では、ガエンにとって天敵ともいえる化身ランドロス(化身)が評価を上げているほか、ハバタクカミも相変わらず多いです。
持ち物に関して、やはりある程度の受け出し性能を確保したいならオボンが丸いです。しかしここまで特防に振っても熱砂の嵐を確定で耐えられないため、仮想敵によってはチョッキやシュカを持たせるのも手です。
チョッキ型
持ち物:とつげきチョッキ
調整例:しんちょう 201(244)-135-119(68)-×-148(196)-80
おくびょう晴れ神秘の雫ウネルミナモのハイドロスチーム確定耐え
技 :ねこだまし 、とんぼがえり、フレアドライブ、はたきおとす、バークアウト、インファイト、じだんだなど
特殊との打ち合いを想定した型で、耐久特化型とHA型の二種類があります。猫だましと威嚇の性能はそのまま、補助技を捨てる代わりにバークアウトを採用しやすいのが特徴です。
耐久特化型の場合、ランドロス(化身)やウネルミナモを目安にDに振り、残りをBに回します。非常に硬いためクッションとして優秀ですが、捨て台詞がないため非力さが目立ちます。晴れやトリルなどアグレッシブな構築にバランサーとして入れるのがいいでしょう。
HA型は最低限の耐久を確保しつつ火力を上げて、枠の圧縮として採用されます。無難に強いですが現代でやるならウインディ(ヒスイ)の方が強いので、奇襲としてなら選んでもいいかもしれません。
注意点として、8世代ではチョッキガエンがそれなりにいたのですが、これはダイマックス環境と相性が良かったからです。そのため当時の文献を鵜呑みにしないよう注意しましょう。
技の選び方
- 基本
フレアドライブ、はたきおとす、すてゼリフ、ねこだまし
有用な技が大量にあるので迷うかもしれませんが、困ったらこれでいいです。チョッキを持つなら『とんぼがえり』に変えます。
ガエンを使うとだいたいこの4つの技を警戒されるため、違う技を持っていたら奇襲にはなると思います。実際に使ってみて違和感があった技があれば、以下のどれかに変えるのもいいかもしれません。
- 補助技
てだすけ
新規習得なのでどれくらい使われるかは未知数ですが、明らかに強いです。ハバタクカミなどの範囲技やエンテイなどの先制技と特に相性がいいです。
ちょうはつ
トリックルームの阻止、エルフーンのアンコールやオーガポン(いど)のこの指とまれ、モロバレルのキノコの胞子の防止などに使えます。トリルがきつい構築なら採用する価値があります。
おにび
威嚇で止まらない化け物(ザシアンとか)を抑えるのに使われ、今世代だと威嚇無効のウーラオス(いちげき)カイリューメタグロスに対して刺さるのが強いです。エンテイもノーマルテラスを切れば火傷します。
物理技、特に先制技への耐性が薄い構築であればかなり有用です。命中不安が最大の欠点。
まもる
欲しいですが、さすがに優先度は低めです。
- 攻撃技
バークアウト
HDに振っている型なら強く使えます。イーユイを軸に特殊が2体並ぶことが依然多いため、範囲デバフが刺さります。また捨て台詞と違って場に居座れるので、デバフを重ね掛けすることもできます。
やけっぱち
猫だましが失敗したら威力が150になるので強そうですが、とっさに火力が出せないのが気になります。もともと場に居座るポケモンではないため、基本はフレドラでいいと思います。
DDラリアットじごくづき
前者は合体したヘイラッシャやブリジュラスに刺さり、後者はミラーで捨て台詞を封じられますが、さすがにはたき落とすの方が強いです。
テラス選択
弱点である水と地面を両方半減できます。ただその分裏目も多く、水ウーラの隣のトルネロスに弱点を突かれたり、ウネルミナモに無力だったり、同時採用されやすいゴリランダーとタイプが被ったりといった点に注意が必要です。
炎への耐性を維持しながら水を半減でき、裏目も少ないためサイクルパーツとして扱いやすいです。弱点を突いてくる草タイプにはもともと強いのも評価点。
格闘を半減、他を等倍で受けながら、弱点を突かれづらいのが優秀。
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第3章:ガオガエンを使う並び、構築
適当に採用しても強いポケモンですが、特にシナジーがある並びを紹介します。
タイプ相性に優れ、2体とも交換技と猫だましを覚えるため猫だましループができ、グラスフィールドと威嚇で互いの負担を軽減しあえるというベストパートナー。構築を組んでいくと気づいたら揃っていることが多いです。
ゴリラが水ウーラをけん制してくれるため、ガエンの耐久ラインを下げることができます。横に並べるというより、お互いを交換先としてサイクルを回す縦の相性がいいです。
物理耐久が低いハバタクカミを威嚇と猫だましでサポート、カミが苦手な鋼タイプはフレドラで処理しながら、範囲技で制圧していく並び。
カミはスカーフ以外の水ウーラをけん制できるのが強力で、追い風展開はガエンが阻害できます。また凍える風を持てば化身ランドにも抗えます。
水タイプや飛行タイプに圧倒的に強い一方、パオジアンやフェアリーがきついライコは、ガエンとのタイプ相性が優れています。化身ランドが非常に重いですが、ガエンの草テラスやHD調整を採用しやすく、ある程度誤魔化せます。
- コータス入り晴れパーティ
コータスやハバタクカミなど一度動くだけで大きなアドバンテージを取れるポケモンをサポートしながら、ガエン自身も晴れで火力を上げられます。
炎タイプが重複するため化身ランドが重いですが、『こだいかっせい』組やテラスのおかげであまり気になりません。
猫威嚇でのトリル始動サポートもさることながら、トリルの天敵であるモロバレルを対策できるのが大きな強みです。
ただしトリラーとガエンの並びは両方サポーターでパワーが低いため、早めにエースを出せるよう工夫しましょう。
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第4章:ガオガエンの基本ムーブと対策
ガエンを使う上での典型的な動きを解説したのち、逆に相手にその動きをされたらどう対策すればいいかを提示していきます。
文字媒体だとどうしても限界があるので、分かりづらければ筆者や他のダブル勢に質問してください。また当然ながらここにある以外の動きや対策方法もあるため、参考程度にご覧ください。
猫だまし+高火力技
- 使い方
ハバタクカミなどのアタッカーを隣に置き、隣へのダメージが大きい方を猫だましで止めて殴ります。先発から狙いに行けて、シンプルに強い動きです。
猫だましを相手のどちらに打つかは、単純なダメージの大小だけでなく「縛り」の関係も加味する必要があります。
このような盤面を例にすると、ハバタクカミに対する数値上のダメージはランドより水ウーラの方が大きいですが、カミは水ウーラより速いため行動させずに倒せます。つまりすでに水ウーラを「縛っている」状態です。その一方でランドは確実に1発耐えて攻撃してきます。
このときカミが水ウーラから受けるダメージはゼロであり、ランドの方が実質的にダメージが高いといえます。よってこの盤面では水ウーラに猫を打つ必要はなく、ランドに打つのが安定択です。
ただしこのような盤面の場合、相手も感づいてランド守る・ウーラオス交代から切り返してくる可能性があります。それを読むなら、猫だましをあえて打たずウーラオス方向に捨て台詞することで一気に試合の流れをつかめます。
こういった応用的な動きは実戦を繰り返すうちにできるようになるので、はじめのうちは気にしなくていいです。
- ピカチュウアタッカーについて
- ガエンの隣に置くポケモンはできれば範囲アタッカーがいいです。
- 上の盤面でカミをオーガポン(かまど)に変えて考えてみます。ウッドハンマーで水ウーラを縛ることができますが、ランドにはダメージを与えられません。水ウーラをガエンに交換されウッドハンマーを半減されると、このターンは微々たるダメージしか与えられなかったことになります。
- 同様にカミをウーラオス(いちげき)(水)に変えてみます。このとき状況が変わって、ランドに対して猫と水流連打で集中攻撃することになります。しかしここでランドをブリジュラスに交換されてしまうと逆に起点にされてしまいます。
- このように、猫だましに単体アタッカーを合わせると、読み違えたときのリターンがほとんどありません。しかし範囲アタッカーであれば、少なくとも相手1体には攻撃が通るため択を誤魔化しやすいです。
- 対策
「縛り」を意識して、猫だましが来る方向を見定めましょう。
猫だましのいなし方は主に以下の3種です。
1. 交換
交換で出てきたターンはどうせ動けないため、猫だましされてもちょっとダメージを受けるだけです。アタッカーの攻撃を半減受けできるポケモンに交換しましょう。このときメタグロスやドドゲザンのように捨て台詞を無効化・利用できるポケモンを投げると、交換読みをされても裏目に出づらくなります。
2. 守る
交換したくないときに、範囲技や集中攻撃を防ぐために使います。上に挙げた例のランドロスはこれに該当し、マジカルシャインと猫だましを同時に防いでいます。
手っ取り早い選択肢ではありますが、猫回避で守るを選択すると結局そのポケモンは動けないことになります。そのため、守ると同時に隣のポケモンで状況を打開することを常に意識しましょう。相手のアタッカーを先制技圏内に入れたり、交換したり、なんなら両守るでもいいです。
3. 無効化
ゴーストタイプハバタクカミサーフゴー、特性『せいしんりょく』カイリューエンテイ、『おんみつマント』持ちトルネロス(化身)エルフーンなどが有効です。
一方で、構築にもよりますがゴーストテラスはできれば切りたくないです。猫だましのためだけにテラスを消費してしまうと相手の思うつぼなので、まずは交換か守るを検討しましょう。
またそもそもガオガエン+アタッカーという並びに好き勝手されないゲームプランを立てるのが大切です。選出画面の時点で誰にテラスタルを切りたいかをぼんやりと決めておいて、ガエンに崩されないように選出しましょう。特に初手は片方でも猫だましを無効化できると立ち回りやすくなります。
プランの一例として、猫だましと追い風を同じターンに使われることはほぼないため、こちらの『おいかぜ』や『こごえるかぜ』などのS操作がかなり有効です。隠密マントトルネロス(化身)やSブーストで凍える風持ちのハバタクカミなどが代表例で、相手の強烈なアタッカーに対して引き先を用意せずとも対等に戦えるようになります。
ほかにも『まけんき』ドドゲザンや『クリアボディ』メタグロス、『クリアチャーム』持ちなどが1体いるだけで、ガエン視点では一気にサイクルを回しづらくなります。これらは初手で見せなくても、構築にいるだけで相手が無限に警戒してくれます。また猫だましを起点にできる『じきゅうりょく』ブリジュラスも同様です。
猫だまし+トリックルーム
- 使い方
初手から猫で相手の片方を止めて、トリックルームを起動。その後は捨て台詞を使うか、相手の攻撃とフレアドライブの反動で倒れてエースを登場させます。
似た役割を担うことが多いテツノカイナと比べると、トリルの天敵モロバレルを処理できる点とハバタクカミに不利ではない点、相手の威嚇で機能停止しない点が優れています。
一方で本人の火力はカイナに劣り、置物になりやすい点に注意が必要です。そのためトリル特化の構築ではなく、いわゆるスイッチトリルという、状況を見てトリルを使い分ける構築に向いています。
- 対策
トリックルームを止めるのであれば、初手に猫だまし耐性を2体並べて、トリラーを集中攻撃して倒しましょう。エンテイやハバタクカミ、『おんみつマント』持ちなどが有効です。
ただ当然相手もこれを対策してくるため、あまり現実的ではありません。選出を歪めて無理にトリル阻止するよりも、トリルターンをやり過ごすというアプローチの方が戦術に組み込みやすいです。
ガエン始動のトリル構築は、トリルターンが短いにもかかわらずガエン自身は火力が出ないという大きな弱点を抱えています。そのためトリル発動後は捨て台詞に頼りがちです。これを利用してガエンを倒しも逃がしもせず、場に居座らせる立ち回りが非常に刺さります。
分かりやすい例が『まもる』で、だれでも使えるのがいい点です。また特性『クリアボディ』などでデバフを無効化すると、捨て台詞は不発扱いになってガエンは控えに戻れません。これらを駆使しながら隙を見てガエン方向に攻撃し、交換で出てきたエースを着地狩りしましょう。
捨て台詞+守る
- 使い方
捨て台詞を打つタイミングは、基本的には「やることがなくなった時」という認識で大丈夫です。はたき落とすよりデバフや交換の方が役に立つと判断したら選択します。
それ以外だと、威嚇の通らない特殊や精神力持ちに対して、デバフ技として使うことがあります。このとき注意したいのが、ガエンの捨て台詞には即効性がないということです。
後攻捨て台詞は安全に交換しつつ次のターンの味方被ダメージを軽減できますが、相手の攻撃の後に使う都合、今のターンの味方の保護はできません。そのため、ガエンの捨て台詞を生かすならできれば守る持ちを隣に置きたいです。守るがなければ素直に交換で逃がしましょう。
- 対策
やはり特性『クリアボディ』などで無効化するのが確実です。特にメタグロスは、水やドラゴンにテラスすればガエンをほぼ完封できます。
また攻撃も特攻も使わない技『ボディプレス』は、捨て台詞を実質無効化しつつガエンの弱点を突けるので強いです。
別のアプローチとして、後攻捨て台詞を決めるには、相手の攻撃を耐え抜くという条件を満たす必要があります。そのため、先にある程度ガエンを削っておけば、相手に捨て台詞を躊躇させられます。上からごり押しで殴るのがいいということですね。
またそもそも1段階しか下がらないので、そのまま戦っても割となんとかなります。長期戦になればなるほど響いてくるため、交換は最小限にして殴り続けましょう。
猫だましループ
- 使い方
ガエンとゴリランダーやテツノカイナを同時選出してサイクルを回し、常に猫だまし択をちらつかせることで相手の行動を阻害し続ける戦術です。
アタッカーとガエンを並べる→猫を打つか捨て台詞で交換→ゴリラを出す→猫かとんぼがえり…と動くだけ。この間アタッカーは雑に殴り続けます。
高頻度で猫だましを打てるため、試合のペースを握りやすくなります。猫を打った場合や普通に殴る場合は、隣が守るを使いながら交換すれば安全に猫を再装填できます。
- 対策
猫だましを打ちづらい状況を作りましょう。特性『せいしんりょく』やゴーストタイプ、『おんみつマント』持ちを置けば少なくとも片方には猫が飛んできませんし、イエッサン♀リキキリンは1体で味方まで保護できます。
ただガエンやゴリラは猫だましが打てなくても強いため、猫対策ばかりにとらわれるのはよくないです。相手のペースに乗せられないよう、程よく無視しましょう。
リンク集
- リバティノート
- https://t.co/LNp5suQW64
- 国内外のトッププレイヤーの構築記事やレンタルが掲載されており、環境上位ポケモンの解説などもあります。
- ポケモンバトルデータベース
- https://t.co/PO0PmUkXYB
- ポケモンHOMEを見なくても使用率が分かり、順位の推移やTwitter上の構築記事などもここから確認できます。
- しゃちpokeサイト
- https://t.co/e50wOiHs0t
- 情報量は少ないですが、ハバタクカミやウーラオス(いちげき)などの調整先が網羅的に記載されています。
- バルドルのなみのりチャンネル
- 元世界チャンプ、バルドルさんによる「縛り」の解説動画。
- ビエラ/ポケモン世界優勝 - 初心者向けリスト!
- https://youtube.com/playlist?list=PLzpzyUF4uI7uc-cdn3p1WSxdmll7aqont&feature=shared
- こちらも元チャンプのビエラさんの初心者向けプレイリスト。努力値の振り方解説が特に有用です。
- 喰い断ch
- - 喰い断(生声)ポケモン教室 講座まとめ
- (剣盾版、後ろの方の初心者向け講座がおすすめ)
- https://youtube.com/playlist?list=PLHaF9Nloyo80zaHwHNc5c5bywRZMUiwcZ&feature=shared
- - 【初心者向け】ダブルバトルの「ゆっくり解説」まとめ【ポケモンSV/ダブルバトル】
- https://youtube.com/playlist?list=PLHaF9Nloyo81IBN3GAvFrYvXcVC8IAtA7&feature=shared
- 元日本3位の喰い断さんによるダブル解説プレイリスト。ダブルバトルの考え方について掘り下げているチャンネルは珍しく、初心者向け動画も多いです。