さて、今回考察するのはホエルオーです。第三世代にて初登場した、体長14.5mと第五世代までに登場した全649体の中で最大を誇るポケモンです。この大きな体にロマンを感じた人も少なからずいるのではないでしょうか。
しかし、そんなロマンたっぷりのホエルオーですが、対戦ではあまり見かけることがありません。なぜでしょうか。
それは、優秀な同族の存在です。耐久水という言葉があるようにスイクンやミロカロス、ママンボウなど水タイプの優秀さを活かした耐久型が活躍しているせいで種族値上劣化になりがちなホエルオーは見向きもされないのが現状です。
しかし、そんなホエルオーにも光るものがありました。他のメンバーにも勝るとも劣らない対受けループ性能です。前置きが長くなりましたが、本育成論では他の耐久水ポケモンとの差別化を意識しながら、ホエルオーの可能性を探ってみます。
本育成論では、
- HP・こうげき・ぼうぎょ・とくこう・とくぼう・すばやさをそれぞれH・A・B・C・D・Sと表記することがあります。
- 能力上昇補正性格を↑、下降補正性格を↓と表記します。
- 特別な理由がない場合、個体値は6V(31-31-31-31-31-31)を想定しています。
- コンセプト
- 性格
- 特性
- 持ち物候補
- カゴのみ
- オボンのみ
- ゴツゴツメット
- こおりのジュエル
- 技候補
- なみのり
- じわれ
- ねむる
- うずしお
ここまでの4技が育成論中において確定技となっています。次に候補技です。
- ハイドロポンプ
- ねっとう
- れいとうビーム
- みずびたし
- どくどく
- 努力値配分
実数値にして表すと251-×-100-121-76-91となります。
それぞれの配分の意味は、
- H
- A
- B
- C
- D
- S
- 差別化要素
- スイクン(零度スイクン)
H100・BD110とホエルオーよりも高い耐久種族値を持ち、第四世代の配布限定ではありますがじわれよりも一貫性が高いぜったいれいどを覚え、同じく第四世代において技マシンでうずしおも習得可能と、やや条件は厳しいですがホエルオーと全く同じ技構成にすることができます。おまけに特性のプレッシャーまで一致と、このホエルオーを使用するに当たって最も意識しなければならない相手です。
●差別化ポイント
しかし、一見ホエルオー完敗に思えるスイクンですが、差別化への道はしっかりと残されています。それはしおふきという技の存在です。ホエルオーはこれを生かした立ち回りが可能になります。
まずしおふきという技についての解説ですが、水タイプの威力150という凄まじい威力を誇る技です。しかし高火力に見合ったデメリットもしっかり持ち合わせています。それが自分のHPが減少するのに比例して威力が減退するというものです。このことから、一般的なホエルオーはそのデメリットを克服するため、素早さを最速にしてこだわりスカーフを持たせてしおふきを連打し、やられる前に高火力で一掃する、といったスタンスで突撃していくものだと私は考えます。このことから、ホエルオーは相手が対面で処理してくることよりも、(特にこの型のキモである対受けループ時ならなおさらに)特殊耐久に優れる・水技に耐性を持つポケモンを後出しして安定して受けにくる、という事が相手の安定択になりがちです。
一方のスイクンですが、ぜったいれいどを覚えたスイクンは配布限定の色違い確定なので、基本的に色違いスイクンを見ると相手はぜったいれいどを警戒した慎重な立ち回りを見せることが多いです。スイクンへの有利対面への交換際にぜったいれいどが命中してしまうとシャレにならないので、一体の犠牲を出してでも対面のポケモンで居座りつつある程度削りにくることが多いように感じます。
この差が何を意味するか、そう安定行動の確保です。双方の技構成が同じだとすると、ホエルオーが相手の交換際にうずしおをぶつけてロック状態に低リスクで持ち込めるのに対して、居座られることも多いスイクンは対面である程度ダメージを受けながらロックを試みる=多少のリスクを負うこととなります。そのために、結局実質耐久はあまりホエルオーと差がないという事が起こりうることもザラにあります。また、スイクンには相手の交換をあまり望めないことから、後続エースの苦手ポケモンを釣り出しにくいという欠点もあります。
また他にも、ホエルオー=こだわってしおふきじわれ連打、という相手の先入観からこだわりトリックを非常にされにくいこともポイントです。この型はうずしおロックからの柔軟な動きが要求されてくるので、技を縛られてしまうと非常に辛いですがしおふきという技の存在からくる相手の思考と非常にシナジーしています。これもスイクンにはあまり望めない点なので、十分な差別化要素となりえます。
- ラプラス
H130・B85・D95とこれまたホエルオーよりも高い耐久種族値を持ちます。またスイクン同様に一貫性の高いぜったいれいどを覚え、更にはうずしおロックと合わせて、3ターン後にみがわりとかまもるとかすべて関係なしに相手を確殺可能な凶悪技・ほろびのうたまで習得します。これにより受けループ関連でホエルオーが見ることができないポケモンも強引に対処可能な点が優れています。
●差別化ポイント
まずこのラプラスですが、タイプで十分に差別化可能です。ホエルオーが水タイプ単独だったのに対し、ラプラスは水タイプに氷タイプがプラスされています。これにより、ラプラスには弱点がプラスされてしまいます。一例を挙げると、ホエルオーでは十分に見ることが出来ていたバンギラスが岩タイプが弱点になってしまったために対処が非常に厳しくなったり、現環境で非常にメジャーな格闘タイプにも弱くなってしまっている点もラプラスにとっては大きなマイナスポイントです。
また、売りのひとつになりそうなほろびのうたですが、確かに3ターン生き延びさえすれば厄介な相手を強引に処理することが出来ます。しかし、この型に求められている性能は一体を確実に突破し、こちらが倒れるまで相手に負荷をかけ続けるというものです。どうもほろびのうたにはそれが望めないようで、3ターン目で脱出すれば味方後続に負担をかけてしまい、二度目以降の繰り出しが決して容易いとは言えない(正直これに準じた技構成の場合、汎用性は決して高いとは言い難いです)ラプラスを後ろに残したままとなってしまいます。逆に引っ込めずに相手とともに共倒れとなった場合は、ただの1-1交換となってしまい二体目以降に負荷をかけやすいホエルオーよりも役割を持てていないと言わざるを得ないです。これらの点から、相手にももちろん優秀な要素があるにしても、十分にホエルオーは差別化出来ていると言えるでしょう。
- ダメージ計算
※ダメージ計算はトレーナー天国さんのダメージ計算機 JS-4BWを使用しています。また、双方の攻撃は全て平均値が出ることを想定してシュミレーションしています。
- VS.ラッキー(bw/2390)
ちきゅうなげ 確定6発
攻撃技はこれ以外入っていないことが殆どで、対するホエルオーのじわれがうずしおを撃ったターンを差し引いたとしても、5発中1発でも命中する確率は約83.2%となり、十分勝てる相手だと言えるでしょう。あまりない例ですが、みがわりを搭載されていると単体での突破がかなり厳しくなりますが、後続で対処できるようにしていればそれほど問題でもないです(逆に起点にできます)。
- VS.バンギラス(bw/2209)
かみくだく 乱数3発(ダメージ・70~84)
かみくだく一発目 251→174 砂ダメージ 174→159
かみくだく二発目 159→82 砂ダメージ 82→67
この型とは異なり、ストーンエッジ持ちバンギだった場合は確定3発となってしまうのでやや厳しいですが、受けループに入っているバンギラスの岩技は基本的にいわなだれなのであまり気にしなくてもいいかと思います。相手の交代読みでうずしおを当てたと仮定して考えましょう。このバンギラスにはホエルオーが先手を取れます。
うずしお 乱数8発(ダメージ・20~26)
これでバンギラスのHPは207→184となります。ここからなみのりを先手で撃って行きます。
なみのり 確定4発(ダメージ・56~68)
なみのり一発目 184→122
なみのり二発目 122→60
なみのり三発目 60→0
と、砂ダメージ込みでも急所さえ引かなければねむらずに対処することができます。とはいえ、少々不安な乱数が絡んでくるため、場合によってはトドメを刺す前にねむるという選択も必要になってきます。また偶発的に先発同士で対面してしまっても、二発目のかみくだくの後に先手でねむることで切り抜けられます。Aに厚めに振られているとやや痛いですが、相対的に耐久もある程度下がっているのでねむるを駆使して切り抜けられる場合もあります。
- VS.エアームド(bw/2818)
ドリルくちばし 乱数5発(ダメージ・46~55)
ドリルくちばし一発目 251→201
ドリルくちばし二発目 201→151
無振りですしやはりダメージはあまり入りません。次にホエルオーはどうでしょうか。
うずしお 乱数6発(ダメージ・27~33)
なみのり 乱数2発(ダメージ・73~87)
うずしお一発目 172→142 束縛ダメージ 142→132
なみのり一発目 132→52 束縛ダメージ 52→42
なみのり二発目 42→0
と、難なく突破することができます。はねやすめ連打でも押し切ることができます。しかし、受けループのエアームドは(ラッキーと組んでいる場合特に)ふきとばしを搭載していることも多く、逃がしてしまうことが少なからずあるので積極的にはぶつかりたくない相手です。
- VS.グライオン(bw/2116)
じしん 確定4発(ダメージ・67~79)
じしん一発目 251→178
じしん二発目 178→105
物理に厚く振っていることもあり、あまり入りませんね。ではホエルオーはどうでしょう。
うずしお 確定4発(ダメージ・50~62)
なみのり 確定2発(ダメージ・138~164)
うずしお一発目 182→126 束縛ダメージ 126→115
なみのり一発目 115→0
と、あっさり突破可能です。現環境ではスイクンやロトムなどを意識した最速個体も多く、そのような個体ならばHPにすら振り切られていない場合も多いため、さらに余裕を持って落とせる場合すらあります。しかし、これを分の悪い賭けにするのが一撃技・ハサミギロチンです。このホエルオーではどうあがいてもグライオンに先手を取れないため、ハサミギロチンを確定で2発許してしまうことになります。二発のうち一発が当たる確率は約51%...49%でホエルオーの勝ち、51%でグライオンの勝ちということになってしまいます。タイプ相性では圧倒しているだけに、一撃技の怖さが思い知らされます。
- VS.カバルドン(bw/3766)
じしん 乱数3発(ダメージ・76~90)
じしん一発目 251→168 砂ダメージ 168→153
じしん二発目 153→70 砂ダメージ 70→55
居座ってきた場合は基本的にあくびから入ってくることが多いので、実際には2発飛んでこないことも多いです。対するホエルオーはどうでしょうか。
うずしお 乱数4発(ダメージ・50~60)
なみのり 確定2発(ダメージ・128~152)
うずしお一発目 215→160
なみのり一発目 160→20
なみのり二発目 20→0
やや時間がかかりますが、十分に突破可能です。前述したとおり、あくびからの展開が基本なので1ターンを無償で得られる場合も多く、かつこのホエルオーはカゴ持ちなので実際にはここまで手こずらない場合が殆どです。また、仮にHDカバなど特防に厚く振ってあっても同様に確殺できます。
- 立ち回り
うずしおを撃った場合を例に挙げます。ホエルオーに対し、相手が受けに出てきやすいラッキー(回している際にホエルオー=特殊アタッカーの先入観が強いのかよく出てきました)だった場合は地割れを、バンギラスやエアームドならなみのりを選択します。
HPがやばくなってきたらねむります。カゴのみのおかげで一回は安全に全回復できますね。あまり出てくることはありませんが、物理受けのエアームドやグライオンを縛った場合でも勝てるようになっています。
一体をうまく突破できたら、もうそこでこのホエルオーの仕事はだいたい完了しています。ただ引っ込めても二度目以降の繰り出しは厳しいので、対面構築よろしく死ぬまで同じ作業を繰り返すことをお勧めします。過去に3タテしたこともありました(笑)
また応用として、受けループ以外にも全体的に低火力気味なパーティや炎に偏りの見られるパーティ(キュウコンクレセなど)に先発を張ることもできます。受けループ潰しのみの担当だとあまり出番がないため、エースの苦手ポケを呼び込んで潰す起点作りの亜種としての応用も(専門とは言えませんが)必要になってくるかと思います。
後続には物理と特殊の積みアタッカーを一体ずつ置くと相性良好です。筆者は羽休めを搭載した奇形気味の珠ッサムと小さくなるを搭載した回避シャンデラを置いていましたが、みがわりを置かれたラッキーに出して起点にして全抜き、などのトリッキーな動きもできました。基本的に火力の低い受けループは格好の積みの起点になりえます。
- 最後に
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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