- 全編において常体を用い、また敬称を略す。
最初に
- 多少調べれば分かる程度の略称、用語を用いる。また、性格補正あり252振りを「特化」、性格補正なし252振りを「ぶっぱ」と呼称する。
- ダメ計についてはトレーナー天国のツールを使用した。
ファイアローの第7世代
6世代においては、序盤鳥でありながら対戦環境上位に居座り続けていたファイアロー。当時ポケモン界屈指のぶっ壊れ特性であった疾風の翼を引っ提げ、格闘・虫・草に対する強力な抑止力となっていた。当然人気も高く、このサイトのORAS版育成論ページにも評価4以上だけで8件投稿されている。
そんなファイアローだが、7世代における評価はあまり芳しくない。カプ・テテフとハギギシリが登場したことと、HPが満タンの時にしか先制できなくなってしまったことが原因である。低めのステータスを特性で誤魔化していたファイアローにとって、その特性を無に帰す存在の登場は大打撃であり、肝心の特性までも弱体化されてしまってはどうしようもない、といったところだろう。事実、最近ではファイアローの話を殆ど聞かなくなってしまった。
しかしそんな7世代において、ファイアローが強力な1芸を習得したことをご存知だろうか。先制タイプ一致ファイナルダイブクラッシュである。Zブレイブバードの威力は190であり、特定条件下のみとはいえ歴代最強の先制技となる。今回はそれを採用した型の考察である。
差別化
大体のポケモンとは、特定条件下のみとはいえタイプ一致で先制攻撃Zを打つことができるという点で差別化可能である。
だが、先制攻撃Zを打てるのはファイアローだけではなく、あと2体存在する。これらとの差別化を行っていこう。
- ヤミカラス
悪戯心+Zオウム返しで可能である。Aを2段階上昇させた上で放てるのはかなり強力である。
しかしタイプと威力が相手依存であり、しかもH60B42D42というフェローチェ級の紙耐久、しかも襷無しで相手の攻撃を1発耐えなければ発動出来ない。オマケにA上昇はオウム返しする技が特殊だとほぼ無意味になる。安定性においてファイアローの方が勝っていると言っていいだろう。
- エルフーン
悪戯心+Z自然の力で可能。WCSにおけるバルドル氏の戦いで記憶に残っている方も多いだろう。ファイアロー・ヤミカラスとは違い、どんなタイミングでも先制Zを放てるのは大きなメリットで、またフィールドの恩恵を受けてタイプ変更と火力増強をすることが可能である。
ただこのフィールド対応というのが曲者であり、デンキZで打とうとしたらブルルを投げられてクサZになってしまった、というようなことが起こりがちである。また、フィールド無しだと弱点の付けない不一致160となってしまうのも難点。タイプと威力が安定しているという点で差別化は出来ている。
仮想敵
6世代と変わらず、主に格闘・虫・草・鋼が仮想敵となる。取り分け、環境に蔓延しているバシャーモ・ナットレイ・テッカグヤ・ウルガモス・ジャローダ等を上から殴り倒せるのは大きい。
また、ミミッキュに対しても上から鬼火を打って火力を削いだりブレバZで確定を取れたりと、中々良い仕事ができる。
性格・努力値
AS252BorD4は確定、性格は陽気と意地っ張りの選択。
ファイアローを使ったことのある人なら分かるだろうが、所詮A種族値81なので最低でもぶっぱしないと火力が足りない。また、疾風の翼が潰れた後や飛行技以外を打つ時を考えるとSもなるべく多く振っておきたい。そうなるとASぶっぱがある意味一番理に叶っているのである。余りはHに振ると実数値が偶数になってしまうため、BかDに振る。確定欄ではBに振った。
性格は、特性抜きでゲッコウガやジャローダ、エルフーン、メガボーマンダの上から攻撃を叩き込める陽気をお勧めするが、何せ火力が微妙に足りなくなりがちなため、意地っ張りも有力な選択肢である。意地っ張りにした場合、例えばブレバZ+ブレバでH4ウツロイドを確定で倒せる等のメリットが生まれる。速さを取るか火力を取るかは読者の好みに委ねることにしよう。確定欄には陽気を据える。尚、オーバーヒート採用時に限りやんちゃ・無邪気も選択肢足り得る。
特性・持ち物
特性は疾風の翼、持ち物はヒコウZで確定。本論のコンセプトであり、これのどちらか一方だけでも変えると別の型となってしまう。
技構成
当然ブレイブバードは確定。また、鋼タイプへの遂行技としてフレアドライブも確定でいいだろう。どちらもレベル技である。
以下、残り2枠の候補技を列挙する。
- 蜻蛉返り
不利対面での交代に使える。ミミッキュの皮を剥がしながら有利なポケモンを出せるのも評価点。確定欄その1。技マシン。
- ニトロチャージ
流し際に積み技感覚で使える他、ミリ残しの相手に打ってHPを温存することもできる。因みにS1段階上昇で陽気なら最速葉緑素バナ、意地なら最速スカーフカミツルギまで抜ける。レベル技。
- オーバーヒート
ほぼ炎4倍勢(特にナット・ハッサム)ピンポイントだが、反動やゴツメ・鮫肌・鉄の刺を気にすることなく狩ることができるため6世代よりも採用価値が上がった。連発こそ出来ないが、火炎放射では火力不足なため採用するならこちら。技マシン。
- 鬼火
相手の火力を削いで後続のサポートをしたり、疾風の翼を潰すことなく襷潰しをしたりとかなり優秀な技。たまに外れるのだけ厄介。確定欄その2。技マシン。
- 剣の舞
交代読みや拘り地震に投げたターンで打って火力増強ができる。火力不足気味なこのポケモンには好相性だが、使ったターンに攻撃されると厄介なためタイミングが重要。技マシン。
- 挑発
相手の耐久や積み・ステロを封じたり、襷ジャローダが蛇睨みしようとしているところに一杯食わせたりと、こちらも優秀。技マシン。
- 毒々
耐久潰しに使える。毒の通らない鋼タイプにはフレドラが刺さるため、スカされてもあまり痛手にならないのもグッド。技マシン。
- 羽休め
上手く使えば疾風の翼を復活させられるが、そのターンに攻撃されれば意味がないため交代読みや補助技読みなど技術が必要。それらに自信がある人なら一考の価値あり。レベル技。
運用
言うまでもないだろうが、7世代でファイアローを使うにあたり最も重要なのは疾風の翼を如何に温存するか、そしていつ捨てるかである。明確な役割対象がいる場合は、出来るだけノーダメージのままそのポケモンと対面したいところである。地面技や補助技読みでの繰り出しやステロを撒かせない立ち回りなどは、使用者の腕の見せ所と言える。幸いバシャーモやジャローダは先発起用が多いため、こちらも先発で出してやるといいだろう。
但し、テテフがいる場合……もとい、場がサイコフィールドの場合は話が変わってくる。勿論サイコフィールド中にファイアローを出さずに済むならそれに越したことは無いが、テテフバシャの並びなど、ファイアローを出さないといけない場面というのは存在するものである。そういう場面が訪れそうな場合、思いきって先に自ら疾風の翼を潰しておくのも手である。幸いメガバシャーモの特化飛び膝ぐらいなら1回耐えるため、先にフレドラ等でHPを軽く削っておけばサイコフィールド下でも役割遂行は可能である。ストーンエッジは当たらないので大丈夫だ。雷パンチは止めてください確定で○んでしまいます因みに、Z技を温存したまま疾風の翼を捨てることで、Zブレイブバードでスカーフ・襷以外のテテフに勝つことも可能となる。最近は耐久振り個体も多く耐えられることも割とあるため、あくまでも可能となるだけだが。
相性のいいポケモン
- ギルガルド
仇敵テテフに滅法強く、また相手しにくいポケモンをファイアローで狩ることができる。Zは持てないため、テテフのシャドーボールも考えて弱点保険がいいだろうか。
- ドリュウズ
こちらもテテフに強く、他に6世代の頃からの天敵水・火ロトムを初めとした電気や、相手できなくもないとはいえ少し厳しいミミッキュ等を倒すことが可能。スカーフテテフやスカーフロトム意識でのスカーフ推奨。
- メガルカリオ
一致弱点を突いてくる岩に滅法強い他、狩り損ねを優秀な先制技で処理できるので優秀。またメガルカリオ側からしても、スカーフ地震で縛られた際の引き先になるため好相性。
尚、スカーフ地震で縛られてしまう類のポケモンとは軒並み相性が良いと言える。
- メガギャラドス
メガギャラというよりかは悪タイプと言った方がいいが、テテフのサイキネの一貫切りに入れておいた方がいい。特にメガギャラは拘りサイキネに死に出ししてドヤ顔で竜舞を積める。ムンフォの場合アローを出せば、例えばスカーフだと ムンフォ→補助技→ムンフォ→Zブレバ なんてことも。
他にもいると思われるが、あまり列挙しすぎてもあれなのでこのぐらいに留めておく。
ダメ計
全て確定欄の調整で計算している。論も長くなっているため、指標程度に。不足は各自で計算して頂きたい。
- 与ダメ
ブレイブバード
→H4メガバシャーモ
116.6%〜138.4% 確定1発
→H252ウルガモス
110.4%〜131.2% 確定1発
→H252ジャローダ
86.8%〜103.2% 乱数1発(25%)
→H4ミミッキュ
69.4%〜82.4% 確定2発
→H4ガブリアス
42.9%〜51% 乱数2発 (5.5%)
→H4ウツロイド
36.2%〜42.7% 確定3発
Zブレイブバード
→H4カプ・テテフ
103.4%〜121.9% 確定1発
→H4メガリザードンY
94.1%〜111.6% 乱数1発(68.8%)
→H4守る状態メガバシャーモ
46.1%〜53.8% 乱数2発(48.4%)
→H4霊獣ランドロス(威嚇込み)
51.5%〜61.8% 確定2発
→H4メガボーマンダ
56.1%〜66.6% 確定2発
→H4ウツロイド
56.7%〜67.5% 確定2発
フレアドライブ
→HB特化ナットレイ
99.4%〜119.3% 乱数1発(87.5%)
→H252テッカグヤ
73.5%〜86.2% 確定2発
→H252ギルガルド盾
64.6%〜76.6% 確定2発
→H4アマージョ
102.7%〜122.9% 確定1発
蜻蛉返り
→H4ゲッコウガ(抜群)
55.4%〜66.2% 確定2発
→H252バンギラス
27%〜31.8% 確定4発
→H4ハギギシリ
54.1%〜65.2% 確定2発
オーバーヒート
→H252ナットレイ
101.6%〜121.5% 確定1発
→H252メガハッサム
117.5%〜142.3% 確定1発
- 被ダメ
ミミッキュの特化シャドークロー
43.5%〜52.5% 乱数2発(17.2%)
メガバシャーモの特化跳び膝蹴り
60.3%〜72% 確定2発
メガガルーラのぶっぱ恩返し
72.7%〜86.3%+17.5%〜21.4% 乱数1発(42.97%)
メガリザードンXのぶっぱ逆鱗
114.9%〜135% 確定1発
ギルガルドの無補正4振り影うち
27.2%〜33.1% 確定4発
ウルガモスの特化1段階上昇大文字
69.2%〜82.3% 確定2発
メガリザードンYの特化晴れ下大文字
79.7%〜94.1% 確定2発
ギルガルドの特化シャドーボール
73.2%〜86.9% 確定2発
ジャローダのぶっぱめざパ岩
86.2%〜101.9% 乱数1発(6.3%)
カプ・テテフの特化ムーンフォース
39.2%〜46.4% 確定3発
上同サイコフィールド下サイコキネシス
111.7%〜132% 確定1発
ゲッコウガのぶっぱ水手裏剣
20.9%〜24.8% 確定5発
編集後記
久々の投稿となったが、如何だっただろうか。
ダメ計を見て、「あれ、火力こんなもんだったっけ?」と思った人も多いかもしれない。ファイアローの6世代の頃の火力は大体がランク補正や持ち物補正によって実現していたものであり、疾風の翼が弱体化された今となってはそれらを持つに持てないというのが正直なところである。なんだか第二次世界大戦中の日本軍のようである。反動技で突っ込んで行く様はまさに神風特攻隊。黙祷。
それはさておき、そんなファイアローの今できる最善が今回の型だと考えている。6世代のような圧倒的制圧力こそ無いものの、バシャーモやウルガモスなど、有利な相手には今でも徹底的に強い。バシャーモが隆盛を極めている今だからこそ、歴代最強の序盤鳥と呼ばれたこのポケモンを甦らせてみるのもいいのではないだろうか。
それにしても、サイコフィールドに先制無効を付けるのならば疾風の翼は弱体化しなくても良かったのではないだろうかと思う今日この頃である。8世代で高度経済成長が起きて常時先制が復活してくれないものだろうか。
お付き合い頂きありがとうございました。
2018/4/22追記
この論のフォーク論が投稿された(投稿者:オールド)。そちらも参考にすると良いだろう。この文の下にある、「この育成論をフォークした育成論を探す」から飛ぶことができる。