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Virtual〜とある仮想生物達の奇想曲〜(不定期更新)

著編者 : 雪椿

黄金色の裁き(エミリオ視点)

著 : 雪椿

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 僕がいつもの散歩をしていたら、友達であるリーフィア……アランが森で寝ているのを見つけた。いくら彼がリーフィアで森の中が心地いいといっても、彼が寝ていたのは冷たい日陰。日向はともかく日陰でずっと寝ていたら体が冷えてしまう。
 そう思い僕はアランに近づくと、そっと声をかけた。

「起きて、アラン! こんなところで寝ていたら風邪引いちゃうよ!」


 で、アランを無事に起こせたわけなんだけど……。
「う〜ん、う〜ん……」
 僕が彼を起こしてから約数分、彼はずっとこんな調子で唸っている。一体何に唸っているんだろう。
「ねぇアラン。一体どうしたの? 大丈夫?」
 僕は心配になって、唸り続けているアランに声をかけた。もし「彼」が出てこようとしているのなら、僕が相手になろう。そう思いながら。
 だけど、アランから返ってきた言葉は意外なものだった。

「俺はアランじゃねぇ、葉……いや、こういう時にフルネームは色々とまずいか。俺の名前は伊月だ! というか、そもそもリーフィアでもねぇ! いや、今はそうだけど、元はれっきとした人間だ!」

 アラン……、いやイツキと名乗る彼はそう叫ぶと、バタリと地面に大の字(いや、尻尾があるから木の字?)に倒れてしまった。叫ぶのに疲れてしまったのだろうか。
 そこは冷たいから、こっちの日向に移動した方がいいよと声をかけたけど、このままがいいとイツキが言うのでそのままにしておく。
 ……それにしても、イツキ、か。てっきり「彼」だと思ったんだけど。アランの新しい「友達」なのかな。
 もしそうだったら、あの時みたいにエリスさんに相談した方がいいに違いない。でも、そのエリスさんは昨日から姿が見えないし……。どうしよう?
 僕がこれからどうしようかウンウン悩んでいると、木々の向こうに左目が青色で右目が灰色のサンダース……、クレアがいるのが見えた。
 僕と同じように散歩しに来た……という可能性も考えられるけど、きっと彼女はエリスさん達を捜しに来たのだろう。エリスさん達は僕達の憧れの存在だったから。
 クレアならイツキをどうすればいいのかわかるかもしれない。捜索中悪いなと思いながらも、僕はクレアの元へと走っていった。

「クレア〜!」
「何だ、エミリオ。アタシは今エリス姉達の捜索でイライラしているんだ。十万ボルト浴びたいのか?」
 クレアは僕の顔を見た途端、黒い笑顔で体から電気を発生させる。タイプの相性から、僕が電気に触れてしまうと命の危険がある。僕は電気に当たらないよう十分な距離を取ってから、イツキについて説明をし始めた。
「実はさっき――」
 クレアは体から電気を発生させたまま僕の説明を聞いていたけど、話が後半に入った頃には電気を発生させるのをパタリとやめていた。こんなことをしている場合じゃないと思ったんだろう。
「……そのイツキってやつは、元人間だと言っているんだな?」
 説明が終わってすぐに、クレアはそう言った。僕は無言で頷く。その反応を見て、クレアは下を向いてブツブツと何か呟き始めた。
「……アランは人間に消されかけたことがある。自分から人間だったと言うのは、絶対ありえない。ということは――」
 一通り何か呟くと、スッと顔を上げるクレア。……彼女の左右違う色の目に映っていたのは、激しい怒りだった。
「エミリオ、すぐにそのイツキってやつのとこに案内しな!」
「う、うん!」
 今すぐにでも雷を落としそうなクレアにビビりながらも、僕は彼女をイツキの元に案内することにした。

 幸いにも、イツキはさっきと同じポーズで地面に倒れていた。
「ん〜、今度は何だ?」
 僕達の気配に気が付いたイツキがムクリと起き、こちらを見る。イツキは僕には「さっきのシャワーズね……」と興味なさそうな感じだったけど、その次にクレア……、いや、クレアの目を見て固まると、こう呟いた。
「……オッドアイ? 何それかっこいい。俺も過去にそうなりたいって思っていた時期があったな〜」
 オッドアイ、という言葉を聞いた途端クレアの目つきが厳しくなり、周りにバチバチと電気が発生する。
「ま、黒歴史だけど……って、え。何物騒なもの発生させてんの!?」
 イツキがクレアの周りに発生した電気に恐怖を感じたのか、ズリズリと後退を始める。だけど彼が後退した分だけ、クレアが一歩、また一歩と前に出るので意味がない。
「この改造眼がかっこいいだって!? ……この、中二病野郎が!!」
「ちょ、待――」
 イツキが何かを最後まで呟くよりも前に、クレアの雷が大きな音を響かせながら彼に落ちた。雷のせいで近くの木が燃え始める。
 このままだと森林火災になり危険なので、僕は水鉄砲を使って鎮火作業を始めた。幸か不幸か、クレアはイツキをピンポイントで狙ったお蔭で燃えている範囲は少ない。これならすぐに鎮火できるだろう。
「…………」
 雷のせいで黒くなったイツキが涙目で空を見ている。そんな彼を睨みながら、クレアはフンと鼻を鳴らした。
 ……クレア、イツキの一言で過去を思い出してイライラしていたとしても、ちょっとやりすぎじゃないのかな? イツキ、真っ黒だし、涙目だよ?
 僕は悲惨な状態になっているイツキを見ながら、クレアに相談したのを後悔していた。

 続く

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2017.12.24  11:42:10    公開
2019.4.2  11:44:30    修正


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

宇田河水泡さん、こちらの小説にもコメントを下さりありがとうございます!
クレアの目は、彼女が言っていたように改造によるものです。つまり、以前は普通のサンダースでした。

クレア「……玲音、だっけ? 今すぐ雷落としに行くから待ってな」

エミリオ「クレア、お、落ち着いて……」


で、アランには宇田河水泡さんの言う通り、もう一つの人格があります。「彼」は近々登場する予定なので、そこで正体がわかるかなと思います。

クレアが激高した理由は、彼女の過去での出来事と性格が関係しています。その出来事は人間にとっては特に何でもなくても、ポケモンにとっては一大事だった……という感じにしたいですが、どうなることやら(え)。

次回も楽しみにしていて下さい!
では!

17.12.25  14:16  -  雪椿  (ssss)

こんばんは、宇田川水泡です。

オッドアイのクレア…改造によるものですか。


玲音「オッドアイ……憧れるなぁ………」

凛「電撃落とされるぞ」


そして、エミリオが言っていた「彼」。アランの中に、もう一つの人格がある、ということでしょうね。


玲音「多重人格……憧れるなぁ……」

凛「…誰かコイツを治してくれ。中二病はチーム名決めの『クーゲルシュライバー』の件で腹いっぱいだ」


『彼』の正体やクレアの激昂の理由など、気になる点が多々あり、今後の展開が気になります。


それでは、次回の更新を楽しみにしています!

17.12.25  01:52  -  宇田河水泡  (214jb13)

LOVE★FAIRYさん、コメントありがとうございます!
クレアはオッドアイではありますが、さすがにシアンみたいに能力の一部が測定不能ということはありません(技の命中率のよさは除く←え)。
シアンみたいな存在があっちにもこっちにもいたら、大変なことになりますしね(笑)。現実に出てきたら尚更。

クレアがオッドアイなのは、彼女の過去が関係しています。……何があったのかは、彼女の発言で何となくわかると思いますが。

次回も楽しみにしていて下さい!
では!

17.12.24  13:28  -  雪椿  (ssss)

今度はサンダースのクレアの登場ですか。
それにオッドアイとは、何だかシアンみたいですね。
という事は、能力の一部が測定不能な程とても強いんじゃ……
もし現実に出てきたら、ある意味怖いですね……(笑)
次回も楽しみにしています!

17.12.24  12:44  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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