はじめに
ダイマックス技で強力な技は何かと問えば、その答えは十中八九「ダイジェット」になるかと思います。高火力を放ちながらSランク1上昇の恩恵を副次的に受けることができる、この脅威についてここで改めて解説するつもりはありません。
「ダイジェット」をサブウェポンで抱えるポケモンがいる他に、タイプ一致で撃てるギャラドスギャラドスやトゲキッストゲキッス、アーマーガアアーマーガアは特に長く環境のトップに君臨してきました。(2020/2月後半 トゲキッス3位, ギャラドス6位, アーマーガア9位 【PokemonSoldieR様 https://pokesol.com/data/stats-swsh7】)
これら「ダイジェット」をメインに添えるポケモンは、優秀な種族値や特性と豊富な積み技(「りゅうのまい」「わるだくみ」「ビルドアップ」など)が、「ダイジェット」のS上昇と見事に噛み合って、なかなかその進撃を止めることができません。
その一因としてガラル地方には、これらポケモンを受け止め得るほどに優秀なでんきタイプポケモンが不足気味である点が挙がるかと思います。現状シングルバトルで使用可能なでんきタイプで最も高速であるのが、本育成論で考察するサンダースサンダースですが、アーマーガア以外の「ダイジェット」持ちには1積みで簡単に抜かれてしまい、どうしてもストッパーとして機能させることができませんでした。
ここでサンダースの夢特性「はやあし」に注目し、「ダイジェット」を積んだポケモンに対しても優位に立ち回れないか考えました。「かえんだま」を持たせ、「まもる」ことで自発的に発動させるほか、相手の行動を偵察することが可能であるため、高い先発適性があることが分かりました。「はやあし」発動状態では、「こだわりスカーフ」持ちヒヒダルマヒヒダルマ(ガラル)よりも速く、「ボルトチェンジ」で負荷をかけながら逃げることができる、ミミッキュミミッキュの「ばけのかわ」を剥ぎながら逃げることができるなど、サイクルパーティに組み込みやすいことが分かりました。また、戦況に応じてダイマックスを切ることで、「ダイサンダー」による「ダイジェット」持ちポケモンへの切り返しや、「ダイホロウ」による非ダイマックスドラパルト確定1発など、瞬発的な火力を出せることも分かりました。このサンダースの強みについて考察していきます。
サンダースについて
サンダースは非常に高いすばやさ種族値と並み以上の特殊火力をあわせ持つ電気タイプのポケモンです。
種族値 : H65 A65 B60 C110 D95 S130
高いSを生かした「あくび」「バトンタッチ」型が考案されてきました。(育成論ソードシールド/518)しかし、比較的高い特殊火力とすばやさを生かしたアタッカー型はこれまで考察されてきませんでした。というのも、サンダースは特に特殊サブウェポンに恵まれず、タイプ一致のでんきタイプの他には、ゴースト(シャドーボール)やノーマル(ハイパーボイス)、エスパー(アシストパワー)、じめん(どろかけ)しかありません。しかも後半の技については、ダイマックス技として撃つことが前提であり、通常状態ではどうしても使いづらさがぬぐえません。
しかし、サンダースには優秀なサイクル技「ボルトチェンジ」があり、実際ソードシールド対戦環境においては、ロトム系統ロトム以外にこの技を撃ってくるポケモンはほとんどいないほどに貴重な技といえます。
加えて夢特性「はやあし」は、「かえんだま」で能動的に発動できるほか、「こだわりスカーフ」などと違い技の撃ち分けができ、しかもダイマックス状態でもすばやさ上昇が有効になります。「ボルトチェンジ」と合わせて、環境に多い「あくび」ループを抜け出せるほか、自身がねむり状態にならない点も強みになります。相手の「ダイジェット」を想定した場合、元から速いサンダースとしても「はやあし」によるS補強はありがたく、需要は高いと考えています。
これらの強みを持つサンダースサンダースを先発要員、サイクルエース、切り返しダイマックスエースとして使えないか、と考えました。
この型を採用する目的
ドラパルトドラパルトやヒヒダルマヒヒダルマ(ガラル)など、先発に多い高速アタッカーに対し、「まもる」「かえんだま」「はやあし」によるS関係逆転と、相手の技偵察により、高い先発適性を持つポケモンが必要である場合、「ボルチェンジ」により対面有利を作っていきたい場合、「ダイジェット」持ちのひこうタイプのポケモンに対する切り返しの駒が必要である場合に採用できます。
特性と持ち物
はやあし
状態異常の時、『すばやさ』が1.5倍になる。
かえんだま
持たせると、戦闘に出た最初のターンの終わりに自分が『やけど』状態になる。ただし、すでに他の状態異常になっている場合は発動しない。
「かえんだま」と「まもる」「ダイウォール」を組み合わせて能動的に発動させることができます。本育成のすばやさ実数値180ですと、最速110族より速く、「はやあし」発動時に実数値270になり、これはドラパルトや「こだわりスカーフ」持ちのヒヒダルマ、「ダイジェット」1積みのギャラドスやトゲキッスやリザードン、または「からをやぶる」を積んだ最速パルシェンや準速カメックスなどよりも速くなります。本育成論のコンセプトでもあるため特性「はやあし」および持ち物「かえんだま」は確定です。
性格と努力値振り
性格はひかえめを採用します。
努力値配分は、
努力値 : H20 B20 C228 D4 S236
実数値 : H143 Ax B83 C174 D116 S180
です。
調整先は、
H : 8n-1, 16n-1(やけどダメージやすなダメージなど最小)
B : A172ドラパルトの「ドラゴンアロー」確定耐え
S : 「はやあし」未発動時最速110族抜き抜き, 発動時S2上昇70族抜き抜き
C : 余りから最大振り
D : 余り
です。
技構成と与ダメージ計算
まもる[★★★★☆]
ノーマル変化 威力-
必ず先制でき(優先度:+4)、そのターンの間、相手の技を受けない。連続で使うと失敗しやすくなる。ダイマックス技や第7世代のZワザの攻撃技は貫通し、1/4のダメージを受ける。
「はやあし」を能動的に発動させるために必要です。これによりS逆転が見込め、上から以下のどの技を撃つかを選択できます。ダイマックス中は「ダイウォール」として、相手のダイマックスポケモンとの駆け引きに乗ることができます。他の変化技でも「ダイウォール」を撃つことができますが、非ダイマックス状態でも、特に先発対峙でも安定させたいために確定とします。
ボルトチェンジ[★★★★★]
でんき特殊 威力70(D120)
攻撃後、手持ちのポケモンと入れ替わる。
優秀な交代技です。不利対面から負荷をかけながら逃げることができます。「ダイサンダー」としても威力120が出せるので最低限の火力を出すこともできます。確定技とします。
与ダメージ計算
それぞれのダメージ計算について以下のマーカーをつけます。
【A】・・・対面居座り(こだわりスカーフなど)
【B】・・・受け出し
【C】・・・不利対面居座り
H181-D75(H4)ヒヒダルマ(ガラル)ヒヒダルマ(ガラル)【A】
51.3%~60.2%(確定2発)
H165-D101(D4)ウオノラゴンウオノラゴン【A】
41.8%~49.8%(確定3発)
H157-D127(H252)ウォッシュロトムウォッシュロトム【B】
35.0%~42.0%(確定3発)
H163-D96(D4)ドラパルトドラパルト【AB】
22.0%~25.7%(乱数4発)
H235-D131(D4)とつげきチョッキカビゴンカビゴン【B】
15.3%~18.2%(乱数6発)
H167-D160(H252)ギルガルド(シールド)ギルガルド(シールド)【AB】
25.7%~31.1%(確定4発)
H342-D120(H4)ダイマックスギャラドスギャラドス【C】
67.8%~80.7%(確定2発)
H161-D135(H4)トゲキッストゲキッス【C】
63.3%~75.7%(確定2発)
H322-D135(H4)ダイマックストゲキッストゲキッス【C】
31.6%~37.8%(乱数3発91.9%)
以下ダイサンダー(120)として計算
H342-D120(H4)ダイマックスギャラドスギャラドス【C】
115.7%~136.8%(確定1発)
H322-D135(H4)ダイマックストゲキッストゲキッス【C】
54.6%~65.2%(確定2発、ボルトチェンジと合わせても低乱数)
H161-D135(H4)トゲキッストゲキッス【C】
109.3%~130.4%(確定1発、相手のダイマックスが枯れたターンなど)
以上のように、広い場合に対応して負荷をかけていること、また「ダイサンダー」として最低限の火力が出ることが分かりました。しかし、ダイマックストゲキッスを「ボルトチェンジ」とそのダイマックス技「ダイサンダー(120)」では倒しきれない点が問題として挙がるため、以下のでんき技の採用を考えました。
10まんボルト[★★★★☆]
でんき特殊 威力90(D130)
10%の確率で相手を『ルガルガン(まひる)』状態にする。
タイプ一致メインウェポンの候補です。威力は控えめですが、なにより命中安定で撃つことができるので推奨です。「ダイサンダー」としても「ボルトチェンジ」と比較して威力が10だけ高く、130で撃つことができます。これにより確定数が変わるポケモンもいるため、準確定です。
与ダメージ計算
H161-D135(H4)トゲキッストゲキッス
83.2%~98.1%(確定2発)
H342-D120(H4)ダイマックスギャラドスギャラドス
87.7%~102.9%(乱数1発12.5%、ボルトチェンジと合わせて確定)
H205-D105(H252)アーマーガアアーマーガア
81.9%~97.5%(確定2発)
以下ダイサンダー(130)として計算
H322-D135(H4)ダイマックストゲキッストゲキッス
58.3%~69.5%(確定2発、ボルトチェンジと合わせて中乱数)
H131-D125(H4)ミミッキュミミッキュ
77.8%~92.3%(確定2発)
101.5%~119.8%(エレキフィールド補正確定1発、後述ダイホロウと同程度)
H410-D115(無振り)ダイマックスラプラスラプラス
54.1%~64.3%(確定2発)
35.1%~41.7%(オーロラベール, エレキフィールド補正確定3発)
H205-D105(H252)アーマーガアアーマーガア
118.0%~140.4%(確定2発)
「10まんボルト」の採用で対トゲキッス性能が大きく向上しました。しかし、それでも火力が足りない場合は以下の「かみなり」の採用をお勧めします。
かみなり[★★★☆☆]
でんき特殊 威力110(D140)
30%の確率で相手を『ルガルガン(まひる)』状態にする。天気が『あめ』の時は必ず命中し、『ひざしがつよい』の時は命中率が50%になる。相手が技『そらをとぶ』『とびはねる』『フリーフォール』を使っている時でも命中する。
命中こそ安定しませんが、「ダイサンダー」としての火力が大きく伸び、対応反する範囲が広がります。また、役割対象であるギャラドスのダイストリーム後の雨下では必中になるなど、非ダイマックス時にも撃つ機会はあります。
与ダメージ計算
H322-D135(H4)ダイマックストゲキッストゲキッス
50.3%~59.6%(確定2発)
H342-D120(H4)ダイマックスギャラドスギャラドス
106.4%~126.3%(確定1発)
H410-D115(無振り)ダイマックスラプラスラプラス
45.8%~54.6%(乱数2発61.3%)
以下ダイサンダー(140)として計算
H322-D135(H4)ダイマックストゲキッストゲキッス
63.3%~75.1%(確定2発、ボルトチェンジと合わせて高乱数)
H410-D115(無振り)ダイマックスラプラスラプラス
58.5%~69.2%(確定2発)
38.0%~44.8%(オーロラベール, エレキフィールド補正確定3発, 2連ダイサンダーで高乱数)
以上のように、キョダイマックスラプラスに対しても役割を持てるようになります。
シャドーボール[★★★★☆]
ゴースト特殊 威力80
20%の確率で相手の『とくぼう』ランクを1段階下げる。
なけなしのサブウェポンですが、「ダイホロウ」として撃つことで、無振りドラパルトを確定で倒せる火力がでます。撃つ機会は比較的多いのでこちらも準確定です。
与ダメージ計算
H163-D96(D4)ドラパルトドラパルト
67.4%~79.9%(確定2発)
H131-D125(H4)ミミッキュミミッキュ
64.1%~76.3%(確定2発)
以下ダイホロウ(130)として計算
H163-D96(D4)ドラパルトドラパルト
109.2%~128.8%(確定1発)
H131-D125(H4)ミミッキュミミッキュ
103.8%~123.6%(確定1発)
このように、環境に多いドラパルト, ミミッキュに強く立ち回れることが分かります。「はやあし」を発動させることでいずれの上も取れるので、景気よく先発ダイマックスを切って数的有利を確保するのも悪くないと思います。
被ダメージ計算
<物理>
A172(A252)ドラパルトのドラゴンアロードラパルト
81.1%~97.8%(確定2発)
A142(A252)ミミッキュのいのちのたまじゃれつくミミッキュ
79.0%~93.7%(確定2発)
A142(A252)ミミッキュのいのちのたまかげうちミミッキュ
36.3%~43.3%(じゃれつくと合わせて確定)
B172(B↑252)アーマーガアのボディプレスアーマーガア
43.3%~51.7%(低乱数2発10.5%)
A177(A252)ダイマックスギャラドスのいのちのたまダイジェット(130)ギャラドス
70.6%~83.9%(確定2発)
<特殊>
C167(C↑252)ドラパルトのりゅうせいぐんドラパルト
74.1%~88.1%(確定2発)
C167(C↑252)ダイマックスドラパルトのダイドラグーン(140)ドラパルト
79.7%~94.4%(確定2発)
C189(C↑252)トゲキッスのマジカルシャイントゲキッス
52.4%~61.5%(確定2発)
C189(C↑252)ダイマックストゲキッスのダイフェアリー(130)トゲキッス
83.9%~99.3%(確定2発)
C189(C↑252)ダイマックストゲキッスのC2段階上昇ダイフェアリー(130)トゲキッス
166.4%~197.2%(ダイマックスにより確定2発)
C150(C↑252)キョダイラプラスのC2段階上昇ダイセンリツ(130)ラプラス
132.1%~155.9%(ダイマックスにより確定2発)
以上のように対面したポケモンの技を1発を耐えることが可能であり、また「じゃくてんほけん」を持っている可能性が高いトゲキッスやラプラスに対してもダイマックスすることでケアすることができます。
あわせて
サンダースの「ボルトチェンジ」の交代先として適性の高いポケモンを、簡単にですが紹介したいと思います。
対面サイクルの戦士!ハチマキアーマーガア!アーマーガア(炊き込み淡水様 : 育成論ソードシールド/574)
サンダースの苦手なドリュウズに強気に後出ししていけるアーマーガアと相性が良いです。「とんぼがえり」を覚え、その上すばやさが低いので対面有利を作りやすいです。本育成論のサンダースと合わせて、いずれもドラパルト, ミミッキュに強いため安定感が増します。
後続につなげる 後攻すてゼリフガオガエンガオガエン(カプ・サイシン様 : 育成論ソードシールド/640)
特性「いかく」が強力です。こちらもドラパルト, ミミッキュに強いため安定感が増します。その上、「とんぼがえり」や「すてゼリフ」を覚えるためサイクルを回しやすいです。サンダースではどうすることもできないナットレイに有効打を持つため、重宝します。
さいごに
イーブイの進化系は高い確率で夢特性が採用されますが、サンダースだけは例外でした。元から速いすばやさをさらに強化してどうするという意見がほとんどで、まともに使用されてこなかったと見受けています。しかし、こういった形で、環境に順応する形で需要が出てきたことを嬉しく思っています。ガラル環境に入ってから、速攻でんきタイプを使ってこなかった方には是非とも使っていただきたいなと考えています。
以上、長文になりましたが読んで下さりありがとうございます。
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