はじめに
- 個体値の略称を使用しています(H、A、Sなど)。
- ダメージ計算はポケソル様のツールを使用しています。
- 対戦環境に良く居るポケモンや型の把握はこちらを参考にしています。
マルマイン(ヒスイのすがた)について
マルマインのリージョンフォームとして新たに発見されたマルマイン(ヒスイ)は、原種のでんきタイプに加え新たにくさタイプが追加され、カットロトム以来のでんき・くさタイプになりました。この2つのタイプは攻撃の相性補完が良く、でんきタイプの苦手なじめん、くさタイプの苦手なひこうにそれぞれ強く出ることが出来ます。また追加タイプを獲得したことにより有用な技をいくつも習得し、専用技のクロロブラストを始めとした多くのくさの攻撃技、そして強力な補助技であるやどりぎのタネを覚えます。そして、特筆すべきは何といっても原種と同様に150もあるS種族値で、これにより非常に多くのポケモンを相手に先手で行動することができます。以上の能力から、マルマイン(ヒスイ)を使用する際は主に3つの型が候補に挙がると思います。
- でんき・くさの攻撃範囲、高いSを活かしたアタッカー型
- 高いSからの補助技や高威力の自主退場技を備えたサポート型
- 高いSとやどりぎのタネなどを絡めた耐久型
1は素早さを活かして上からのボルトチェンジで器用に立ち回り、有利対面でクロロブラストの爆発力を押し付ける動きが強そうです。2はちょうはつやでんじは、グラスフィールドなどの補助技を使用してからクロロブラストで相手に大ダメージを与えつつ退場する先発サポート型。構築次第で独特な強みが見れそうですが、同じでんきタイプで更にS種族値が50も高く両壁も覚えるレジエレキとの競合が気になるところです。3は低速ポケモンや遂行速度が遅いポケモンを起点にしてハメる型です。またこの型は後述する第一特性のぼうおんが、ちいさくなるバトンなどの戦術ととても相性が良く、ギミックパーティー適性の面から見て他の耐久型には無い強みを持っています。なので、今回はそんなやどりぎのタネなどを活かし場に居座って粘る型を考察してみることにしました。
性格
- おくびょう(S↑A↓)
努力値と調整
- H76 B212 C4 D12 S204
コメントでのご指摘で、より効率の良い調整案を頂いたのでそちらを使わせて頂きます。ありがとうございました!
H 16n+1 みがわりやたべのこしの効率意識
S 準速スカーフランドロス(霊獣)抜き
B 先制技意識で防御に厚く振っています
D 無振クレセリアのれいとうビームをたべのこしの回復込み二耐え
C 余り
- 備考
Sの調整については一考の余地があります。
例えばSを最速テツノツツミ抜き程度に留め、残りを振り分けて更に耐久を上げるのも候補になるかなと思います。
特性
- ぼうおん
コンセプトなので確定です。
前述の通りこの特性は今回のようなちいさくなるバトンやみがわりを使用する型とのシナジーがあり、具体的にはフレアソングやハイパーボイスなどのみがわりを貫通して攻撃する音技、バトン展開の天敵とも言えるほろびのうたなどを無効化することにより戦術が崩壊することがありません。この性能は後述するとあるポケモンとの大きな差別化点にもなります。
持ち物
- たべのこし
こちらも同様に確定です。
みがわり戦術ととても相性が良いです。
テラスタル
- はがね
元の弱点であるほのお以外のひこう、どく、こおり、むしタイプを半減以下に抑えたりどくタイプの必中どくどくを無効化出来る点、単純な耐性の多さから今回は採用。ただ素の耐久力は低いので過信は禁物です。
技構成
確定技
- やどりぎのタネ
回復ソースとダメージソースを同時に得られる強力な技。命中90がネック。
マルマインマルマイン(ヒスイ)族ほどの素早さなら、一度技を当てることができれば多くのポケモンをみがわり連打でハメることが出来ます。
- みがわり
やどりぎのタネ、特性のぼうおん、たべのこし、ちいさくなるバトンなどあらゆる要素とのシナジーがてんこ盛りな技。相手のテラスタルの確認などの様子見、相手の技の回避・麻痺待ちのような使い方もできる万能技です。
- イカサマ
物理ポケモンへの遂行速度、やどりぎのタネが効かないサーフゴーへの打点を意識して採用。定数ダメージのみで相手を倒すというのは、特にちいさくなるバトンなどの場合、ターンをかければかけるほど相手に試行回数を与えてしまいます。そのようなリスクを出来るだけ減らすためにも、迅速な処理手段は持っておくべきだと考えています。
選択技
- でんじは
交代際やみがわりを盾に撃つことでマルマインマルマイン(ヒスイ)より速いスカーフ持ちやブーストエナジー持ちの上を取ったり、痺れを絡めることで戦術の安定性が増します。こちらも命中90なのがネック。
- ほうでん
追加効果が優秀なタイプ一致攻撃技。でんじはと違いちょうはつやおうごんのからだなどに阻止されず麻痺を狙えたり、単純に相手を削る手段としても重宝します。
- まもる
やどりぎのタネとたべのこしと合わせて大幅な回復と相手の削りを見込める他、TODを狙う際の時間稼ぎ、みがわりと合わせての定数ダメージ稼ぎなど使い勝手がとても良い技です。
- チャージビーム
攻撃しながら70%の確率でCを上げるタイプ一致攻撃技。他の技や定数ダメージで倒しきれない一部の耐久ポケモンへの突破力を高められます。またCアップの起点にすることで裏のポケモンをより素早く倒せるようになります。
与ダメージ計算
イカサマ
- ようきA252 B4ドラパルト
128 ~ 152 (78.6 ~ 93.3%) 確定2発
- いじっぱりA252 H4ミミッキュ
56 ~ 67 (42.8 ~ 51.2%) 乱数2発 : 4.68%
- H4サーフゴー(A下降補正・個体値0)
56 ~ 66 (34.4 ~ 40.5%) 確定3発
- ようきA252 H4ランドロス(霊獣)
64 ~ 76 (38.8 ~ 46.1%) 確定3発
- いじっぱりA252 H4セグレイブ
69 ~ 82 (36.2 ~ 43.0%) 確定3発
- H4ボルトロス(霊獣)(A下降補正・個体値0)
51 ~ 61 (33.0 ~ 39.4%) 乱数3発 : 99.9%
- H244 B12ヤドキング(ガラル)(A下降補正・個体値0)
64 ~ 76 (31.9 ~ 37.9%) 乱数3発 : 86.91%
- H4ハバタクカミ(A下降補正・個体値0)
40 ~ 48 (30.5 ~ 36.7%) 乱数3発 : 63.72%
- いじっぱりA252 H252ガチグマ
61 ~ 72 (25.8 ~ 30.4%) 確定4発
ほうでん
- 無振テツノツツミ
116 ~ 138 (88.6 ~ 105.4%) 乱数1発 : 31.25%
- 無振ゲッコウガ
102 ~ 122 (69.4 ~ 83.0%) 確定2発
116 ~ 138 (66.3 ~ 78.9%) 確定2発
- H252ヘイラッシャ
108 ~ 128 (42.1 ~ 49.9%) 確定3発
- 無振パオジアン
54 ~ 64 (34.9 ~ 41.3%) 確定3発
- H252 チョッキマリルリ
62 ~ 74 (30.0 ~ 35.8%) 乱数3発 : 27.88%
- H252サンダー
42 ~ 51 (21.4 ~ 25.9%) 乱数4発 : 0.67%
- H252D4クレセリア
33 ~ 40 (14.5 ~ 17.7%) 乱数6発 : 6.37%
被ダメージ計算
- いじっぱりA252 珠ミミッキュじゃれつく+かげうち
たべのこしの回復込み 118 ~ 144 (81.4 ~ 99.4%) 確定耐え
- いじっぱりA252 鉢巻カイリューテラス一致しんそく
118 ~ 141 (81.4 ~ 97.3%) 確定2発
- ようきA252ウーラオス(いちげき)インファイト
106 ~ 126 (73.2 ~ 86.9%) 確定2発
- ようきA252ランドロス(霊獣)じしん
96 ~ 114 (66.3 ~ 78.7%) 確定2発
- おくびょうC252ハバタクカミムーンフォース
99 ~ 117 (68.3 ~ 80.7%) 確定2発
- 無振ディンルーじしん
63 ~ 75 (43.5 ~ 51.8%) 乱数2発 : 9.76%
- 無振クレセリアれいとうビーム
64 ~ 76 (44.2 ~ 52.5%) 乱数2発 : 12.1%
- いじっぱりA252 鉢巻イルカマン(ナイーブ)
クイックターンorジェットパンチ
29 ~ 35 (20.0 ~ 24.2%) 確定5発
みがわり確定耐え
イルカマン(マイティ)の場合
51 ~ 60 (35.2 ~ 41.4%) 確定3発
- A4キョジオーンしおづけ
25 ~ 30 (17.2 ~ 20.7%) 乱数5発 : 0.07%
みがわり確定耐え
- あくタイプブラッキーのイカサマ(前提としてA下降補正・個体値0〜1)
24 ~ 28 (16.5 ~ 19.4%) 乱数6発 : 99.9%
みがわり確定耐え
はがねテラス時
- おくびょうC252 眼鏡テツノツツミれいとうビーム
66 ~ 78 (45.6 ~ 53.8%) 乱数2発 : 35.15%
- ひかえめC252サンダーぼうふう
59 ~ 70 (40.7 ~ 48.3%) 確定3発
- ようきA252パオジアンわざわいのつるぎ発動つららおとし
47 ~ 56 (32.5 ~ 38.7%) 乱数3発 : 98.53%
立ち回り例
オーソドックスなのはフワライドからちいさくなるの回避上昇をバトンする展開でしょう。どくびしなどを事前に撒いておくのも強力だと思います。ほぼマルマイン(ヒスイ)単体で運用するのも可能ではありますが、うまく目の前のポケモンを宿り木ループにハメて倒したとしても、元の耐久の低さを考えるとみがわりや被弾などで疲弊した状態で次のポケモンに宿り木を入れつつ攻撃を耐えるのが難しく、結果的には1:1交換のような展開になる可能性が高いです。
相性の良い味方
苦手なポケモン
エルフーンとの差別化について
ここまでやどみが型のマルマイン(ヒスイ)について色々考察をしてきましたが、実は過去シリーズの対戦環境においては、似たような型を採用したポケモンが存在していました。
それはエルフーンエルフーンです。
エルフーンの性能についてざっくりではありますが解説いたしますと、まず特性のいたずらごころによって相手との素早さの差に関係なく先制で変化技を撃つことができます。これは非常に高いSを持ってしてもスカーフ持ちやブーストエナジー持ちに先手を取られてしまうマルマインマルマイン(ヒスイ)族との大きな優位点と言えます。また、タイプはくさ・フェアリーと弱点の数こそマルマイン(ヒスイ)より多いものの半減以下にできるタイプの数では圧倒的に勝っており総合的な耐性においても優れています。その上やどりぎのタネは勿論アンコールやコットンガードなどの優秀な変化技、ムーンフォースなどの範囲の広い攻撃技など、非常に強力な個性を持っています。このポケモンは現状SVには登場していませんが、なんとDLCにより今後再登場することが既に決定しています。これらの観点から、わざわざ同じような型でこのマルマイン(ヒスイ)を使う必要性は無いのではないか、という疑問が生じるのは当然のことだと思います。しかしながら、いきなりその結論を出すのは少しばかり早計であると感じています。なので最後に、このマルマイン(ヒスイ)を使用する上でのエルフーンに対する優位性を、先ほど挙げたエルフーンの性能を交えつつ考察したいと思います。
いたずらごころという特性ついて
まずエルフーンが持ついたずらごころという特性についておさらいすると、以下の通りになります。
参考(https://yakkun.com/sv/zukan/search/?tokusei=158)
- 自分の使う変化技の優先度が1だけ加算され、優先度0の変化技も優先度+1として『すばやさ』に関係なく先制攻撃できる。
- あくタイプの相手(味方は含まない)には変化技がすべて失敗する。
このように、いたずらごころには強力な効果がある反面一部のポケモンに対しての制約が設けられています。ここで現在(シーズン8)のレギュレーションD環境において、使用率50位内に居るあくタイプポケモンの数を見てみると全部で10体ウーラオス(いちげき)パオジアンイーユイディンルーチオンジェンマスカーニャゲッコウガダイケンキ(ヒスイ)ドドゲザントドロクツキとなっています。剣盾の頃と比べ倍以上になっており、環境的にかなりの逆風を受けていることが分かります。勿論エルフーンにはあくタイプに抜群を取れるフェアリータイプがありますが、やどみが戦法を軸として戦う上で数が多いあくタイプが出てきたら即座に単純な素のステータスで殴り合うだけになってしまうのは少し不安定な気がします。対してマルマイン(ヒスイ)は、宿り木こそくさタイプには無効という点などは共通なもののそれ以外の制約が一切なく、特性に頼らず十分な素早さから一定の活躍が見込めるというのは、評価すべき点の一つだと思います。
役割遂行速度の違い
エルフーンは攻撃技としてムーンフォースを採用することが多いです。これはあくタイプに抜群を突いたり、ちょうはつなどに弱くなりすぎないように打点を確保しておくなどの意味がありますが、要するに基本的にはエルフーン側から相手に与えられるダメージは宿り木とムーンフォースによる削りのみです。マルマイン(ヒスイ)の技構成のイカサマの項で少し触れたように、このような定数ダメージを主とし場に居座る耐久型ポケモンは、相手に行動回数を稼がせやすいのが弱点です。そのような時、相手を別の手段で安定的に削り倒れるまでの時間を早める展開を用意できるのが一番理想的です。イカサマという技は、相手の攻撃力を使用して繰り出す威力95の技です。つまり撃つ側は、攻撃力に努力値を割くことなく耐久に厚くないポケモンに安定的なダメージを与えられるので、非常にアドバンテージが高い技と言えます。対してムーンフォースは、エルフーン自身の特攻を参照して放つ通常攻撃技です。エルフーンは特攻種族値が77と決して高くなく、このような耐久型の場合特攻に大幅に努力値を割くのも難しく、結果的に相手のポケモンへの打点としては乏しいものになります。よって、相手にできるだけダメージを蓄積させ崩されるリスクを軽減できるという点においてマルマイン(ヒスイ)は十分な性能を持っていると言えます。
展開阻止に対する耐性
この型の肝となる要素はみがわりという技の存在にあります。自身の4分の1のHPを減らして相手の技を代わりに受けてもらう分身を生み出す技ですが、この分身はいくつか無効化する手段があります。その中の一つが『音技』というものであり、これに分類された技は分身を無視して本体に直接効果を及ぼすことが出来ます。本体がダメージを受けないよう相手が倒れるまで粘るこの戦術にとっては天敵とも言えるほどの弱点です。特にちいさくなるバトンなどにおいては前述の『音技』に該当するほろびのうたという技が致命的で、一瞬にして戦況は劣勢となり得ます。これらの一部の妨害に対して、マルマイン(ヒスイ)は明確な解答を持っており、前述の特性ぼうおんによりそういった『音技』を無効化することが出来ます。一応エルフーンも、ちょうはつを採用するなどをして工夫すればある程度抗うことは出来そうですが、技構成がほぼ固定化されてしまう上に技を使うのに1ターン消費するため、安定性に欠けてしまうと思います。よって、マルマイン(ヒスイ)はこのような展開構築においてネックとなっていた部分に耐性を持っているため、ギミックパーティーにおける核として他には無い優れたな適性があると言えます。
総評
以上の点を踏まえ考察した結果、マルマイン(ヒスイ)はエルフーンにはない強みをいくつも持ち合わせており、エルフーンが解禁されてもその優位性は健在であるというのが私の結論です。ただ、当然試合によってはエルフーンの個性が有用に働く場面もあるでしょうし、構築や戦術次第でどちらを採用すべきか選択の余地が出てくることもあると思うので、その際は是非これらの内容を参考にしていただけると嬉しいです。
おわりに
ここまで長々と閲覧頂きありがとうございました。
コメントや評価、その他意見や質問などがあれば是非よろしくお願いします。
マルマイン<またね>マルマイン(ヒスイ)