一.はじめに
- この育成論では、「HP、攻撃、防御、特攻、特防、すばやさ」をそれぞれ「H、A、B、C、D、S」と略記します。
- 各ポケモンの個体値は31、ただしカビゴンのS個体値は0であることを前提とします。
- ダメージ計算は、トレーナー天国様のもの(http://pokemon-trainer.net/xy/dmcs/)を使用させて頂きいています。
二.チョッキカビゴンについて
- カビゴンについて
カビゴンは、特殊耐久の高さ・豊富な技・それなりの火力を活かして、古くから対特殊方面を中心に活躍してきました。もっとも、近時は火力のインフレと強力な物理ポケモンの登場にやや遅れをとっています。
他方で、今世代ではファイアローの影響で環境の格闘ポケモンが減少し、りゅうせいぐんを初めとする多くの特殊技の威力が低下したため、持ち前の特殊耐久は発揮しやすくなっています。
- 突撃チョッキについて
もちもの「突撃チョッキ」は、持たせたポケモンのDを1.5倍にする代わりに攻撃技しか使えなくなるというアイテムです。
カビゴンにとって、Dの上昇というメリットはもともと高い特殊耐久をさらに高めるという意味があり、攻撃技しか使えないというデメリットはカビゴンが持っている多彩な補助技が使えなくなるという意味があります。
具体的には、のろい・はらだいこ・あくび・どくどく・まもる・ふきとばし・ねむるといった有用な技を使うことができなくなります。
三.採用理由
- 運用
突撃チョッキカビゴンは、特殊アタッカーに操出し、相手の交代際で交代先に対して負担をかけるという、いわばヤビゴンに近い形で運用することになります。他の型のカビゴンや特殊受け(流し)ポケモンも似た運用をしますが、チョッキカビゴンの利点は以下の通りです。
- 他の型のカビゴンとの優劣
・「のろい」カビゴン
突撃チョッキカビゴンは食べ残しとのろいを前提とした最大火力・耐久力において従来の「のろい」カビゴンに劣ります。チョッキカビゴンの利点は、初手からフルスペックの能力を発揮できるところにあります。これは、火力インフレの影響で流し際に積んでも後続物理アタッカーの相手をすることが難しい現環境のカビゴンに合致します。これを活かすために交代戦を意識した運用をします。
・鉢巻カビゴン
鉢巻カビゴンも似た運用をします。火力では鉢巻型が勝りますが、メインウエポンでの確定数はあまり変わりません。つまり、鉢巻がなくとも一応必要な水準の火力は確保できます。耐久面を見ると、鉢巻カビゴンは実際上かなりDに振る必要がありますが、チョッキカビゴンにはその必要がありません。そのため、チョッキカビゴンは必要なADを確保してもまだBかDに大きく振れます。その結果、Bに振ると不意の役割破壊ややむを得ない物理対面に強くなり、Dに振ると純粋な特殊耐久で大きく上回ります。
本育成論ではBに振っています。これ以上Dに振っても仮想敵を受けられる回数は変わらず、メリットが薄いと考えたからです。
役割破壊の典型はエスパーポケモンのサイコショックや命の珠持ち特殊アタッカーの馬鹿力で、この程度まで振っておけばある程度対応できます。
- 他の特殊受け(流し)ポケモンとの優劣
他の特殊受け一般と比較すると、チョッキカビゴンの弱点はSと補助技です。具体的には輝石ラッキーやハピナス、アタッカーを兼任するものとしてはHAバンギラスがいます。アタッカー兼任候補としては他にメガフシギバナやヌメルゴンもいますが、カビゴンは炎・氷を半減できる点で優位に立ちます。これを活かしてヒードラン・シャンデラ・メガリザードンY等に役割を持つため、特性はあついしぼう、確定技として地震を採用します。
めんえきには独自の利点がありますが、突撃チョッキを採用して交代戦を仕掛ける以上、足を止めた撃ちあいで効果を発揮する毒の無効化よりも、一発のダメージの軽減が優先されます。
ラッキーとバンギラスには純粋な数値でも劣ります。しかし、カビゴンにはラッキーにない火力があり、地震以外のサブウエポンをもっていればラッキーに強いゲンガーに対しても出ていくことができます。
また、バンギラスにはカビゴンにない対エスパー(特にクレセリア)性能があります。HAバンギラスとの差別化には次のようなものが考えられます。
(1)天候
他の天候を利用したり襷・食べ残し・月の光持ちと組ませる等、砂にしたくないことがある。
(2)Sの遅さ・対鋼性能
カビゴンは特殊寄りのギルガルドを下から殴れる。また、トリックルームに強い。
(3)対水ロトム性能
カビゴンは水弱点ではない。タイプ一致「からげんき」があるため、火傷にも強い。
確定欄からは外していますが、さらなる差別化を考えるなら(4)じわれ、じばくの採用もあり得ます。チョッキ一撃技の使い手にはスイクンもいますが、こちらは弱点も技も(入手難度も)カビゴンとは大きく異なります。
四.性格及び努力値
- 性格
性格は「ゆうかん」で、A上昇・S下降の補正をかけます。最遅が望ましいでしょうが、トリックルームを自分で使うのでなければそこまでこだわる必要もないと思われます。
他の候補としてD上昇(なまいき)もしくはC下降(いじっぱり)が考えられます。
対特殊という役割に特化する場合にはなまいき採用があり得ます。なまいきを採用する場合にはBではなくDにもっと厚く振ることになるでしょう。
対トリックルームを考えるとカビゴンのSは遅い方が有利だと思いますが、大文字を使わない場合、いじっぱりでも実際には問題ないでしょう。
- 努力値
H12 A220 B244 C6 D28 S0
突撃チョッキカビゴンにとって努力値の自由度は比較的高いため、どこに回すかは重要な課題です。既に述べた通り、本育成論では、最低限と思われるADを確保した残りをBに振りました。具体的には以下のような目安です。
A……H振り水ロトムをおんがえしで確定二発
HD……弱点保険ギルガルドのラスターカノン(=ラティオスのメガネ流星群)を二耐え
Aはこれ以上振っても確定数はあまり変わらないと思います。Cに6振っているのは他に振る場所がない(振っても変わらない)だけであり、大文字を無理に採用する必要はありません。役割対象を考えるともっと厚くDに振ることも十分あり得ますが、現状でもほぼ必要なだけのラインは確保できています。
Bは最小限の役割破壊だけに備えて可能な限りDに振りたい、という場合には、ややピンポイントですが
H0 A220 B108 C0 D180 S0
という配分(臆病C252振り珠化身ボルトロスの10万ボルト+ばかぢから耐え)も考えられます。
Bに振る意味として述べたやむを得ない物理対面とは、終盤の殴り合いのほか、後ろが積みポケモンの一部を受からないなど、目の前の物理ポケモンをどうしても殴る必要がある場合を指しています。このとき最低限のBがあれば、退いて積まれると詰むが、普通に殴られると(操出時のダメージと合わせて)先制で落とされる、という択ゲーをしなくて済みます。
具体的には、後ろのヤドランが剣舞ハッサムの相手をできないとか、後ろのエアームドがだいもんじ持ち竜舞カイリューの相手をできないとかいうパターンが考えられます。
そのために必要なら、選択技は適切な技を選んでください。もちろん、そのような状況が生じないのが一番望ましいです。この場合、物理耐久はもっぱら不意の役割破壊と終盤の殴り合いに備えるものになります。
- 実数値(突撃チョッキによりD1.5倍)
H237 A173 B116 C86 D132(198) S31
特殊耐久にわずかしか努力値を割いていませんが、特殊耐久指数114170はD特化カビゴンの115635をわずかに下回る程度です。並の特殊技は三発耐えることができます。
物理技はせいぜい一発耐えるだけなので、正面から物理アタッカーの相手をすることはできません。特に格闘タイプの相手は無理です。あくまで役割は特殊アタッカーの相手であり、物理技を受けるのはやむを得ない場合です。
被ダメの目安
- 特殊耐久
対ラティオス
・補正なしC252振りメガネりゅうせいぐん
100〜118(42.1%〜49.7%) 確定3発
・同じくC2段階下降後
51〜60(21.5%〜25.3%) 乱数4発
対ギルガルド
・補正有C252振り弱点保険ラスターカノン
100〜118(42.1%〜49.7%) 確定3発
・補正有C252振りラスターカノン
51〜60(21.5%〜25.3%) 乱数4発
・補正有C252振りヒードランのメガネマグマストーム
42〜51(17.7%〜21.5%) 乱数5発
・補正なしC252振り水ロトムの持ち物なしハイドロポンプ
49〜58(20.6%〜24.4%) 確定5発
・補正なしC252振りゲンガーのきあいだま
82〜98(34.5%〜41.3%) 確定3発
・補正なしC252振りメガリザードンYの晴れだいもんじ
51〜60(21.5%〜25.3%) 乱数4発
- 物理耐久
対ギルガルド
・補正有A252振りつるぎのまい+せいなるつるぎ
260〜306(109.7%〜129.1%) 確定1発
・補正なしA無振り弱点保険せいなるつるぎ
200〜236(84.3%〜99.5%) 確定2発
・補正なしC252振りラティオスのメガネサイコショック
106〜126(44.7%〜53.1%) 低乱数2発 (27.7%)
・下降補正A無振り化身ボルトロスの命の珠ばかぢから
125〜148(52.7%〜62.4%) 確定2発
五.技構成
- 確定技
おんがえし
メインウエポンです。
与ダメの目安
対水ロトム
・補正なしH252振り
79〜94(50.3%〜59.8%) 確定2発
・補正有HB252振り
58〜69(36.9%〜43.9%) 確定3発
・補正なしH252振りラティオス
100〜118(53.4%〜63.1%) 確定2発
・補正なしH4振りガブリアス
87〜103(47.2%〜55.9%) 高乱数2発 (80.9%)
・補正なしH4振りメガリザードンY
93〜111(60.3%〜72%) 確定2発
・補正なしH4振りトゲキッス ※H252振りでは確定3発
79〜94(49.3%〜58.7%) 高乱数2発 (99.61%)
じしん
おんがえしを半減する対鋼、対岩のほか、有利な対炎のサブウエポンです。かみくだくとはH振りギルガルドブレードフォルムへの確定数が変わります。
ダメージ計算
対ギルガルド
・補正なしH252振りブレードフォルム
186〜220(111.3%〜131.7%) 確定1発
・補正なしH252振りシールドフォルム
78〜92(46.7%〜55%) 乱数2発 (59%)
その他
・補正なしH252振りヒードラン
208〜248(105%〜125.2%) 確定1発
・補正なしH252振りバンギラス
102〜120(49.2%〜57.9%) 高乱数2発 (95.3%)
・補正なしH252振りシャンデラ
120〜142(71.8%〜85%) 確定2発
- 選択技
A、Bの中からパーティの対応が薄い相手に応じて選択。
・選択A……からげんき、じわれから一つ。なお、ローブシンやカイリューのようにカビゴンの前で複数回積んでくる可能性のあるポケモンに対して他の有効打がなく、後続による対処もできないときは、手遅れになる前に後続を無償降臨させるためのじばくも有効です。
からげんき
火傷等を受けた場合にはタイプ一致威力140のメインウエポンとなり、水ロトムへの確定数が変化します。この対火傷性能はバンギラスに対する重要な差別化点でもあります。
ダメージ計算
・補正有HB252振り水ロトム
79〜94(50.3%〜59.8%) 確定2発
・補正なしH252振りファイアロー
151〜178(81.6%〜96.2%) 確定2発
・補正なしH252振りトゲキッス
109〜129(56.7%〜67.1%) 確定2発
・補正有HB252振りスイクン
76〜90(36.7%〜43.4%) 確定3発
じわれ
強引に受けポケモンを突破することができ、バンギラスに対する差別化点となります。しかし、打ちたい相手であるクレセリアは浮遊であり、ラッキー、クレッフィ等は身代わりを持っていることが少なくありません。
・選択B……かみくだく、いわなだれ、だいもんじ(orほのおのパンチ)、れいとうパンチから一つ。
かみくだく
おんがえし・じしんを無効化する対霊、具体的には対ゲンガーのサブウエポンです。ラティオスに対する確定数は変化しませんが、超に対するダメージはわずかにおんがえしを上回ります。みちづれには注意してください。
耐久ポケモンの相手は向いていませんが、泥仕合ではBダウンが役に立つこともあります。
ダメージ計算
・補正なしH4振りゲンガー
132〜156(97%〜114.7%) 高乱数1発 (81.3%)
・補正有HB252振りブルンゲル
78〜94(37.6%〜45.4%) 確定3発
・補正有HB252振りヤドラン
60〜72(29.7%〜35.6%) 低乱数3発 (25.3%)
・補正有HB252振りクレセリア
56〜68(24.6%〜29.9%) 乱数4発
いわなだれ
岩4倍弱点の複合タイプに撃ちます。炎複合への役割遂行を重視する場合に有効です。
ダメージ計算
・補正なしH252振りメガリザードンY
204〜240(110.2%〜129.7%) 確定1発
・補正なしH252振りウルガモス
232〜276(120.8%〜143.7%) 確定1発
・補正なしH252振りファイアロー
216〜256(116.7%〜138.3%) 確定1発
・補正なしH4振りゲンガー ※れいとうパンチ、ほのおのパンチも同威力
62〜73(45.5%〜53.6%) 乱数2発 (38.7%)
だいもんじ(orほのおのパンチ)
炎4倍弱点の複合タイプとエアームドに撃ちます。エアームドを意識しないならほのおのパンチが優ります。なお、大文字を採用する場合はBを削ってCに52まで振るとH振りエアームドが確定二発になります。
ダメージ計算
・補正なしH252振りハッサム
だいもんじ 144〜172(81.3%〜97.1%) 確定2発
ほのおのパンチ 164〜196(92.6%〜110.7%) 中乱数1発 (56.3%)
・B補正HB252振りエアームド
だいもんじ 80〜96(46.5%〜55.8%) 乱数2発 (76.2%)
ほのおのパンチ 48〜58(27.9%〜33.7%) 超低乱数3発 (0.24%)
れいとうパンチ
氷4倍弱点の複合タイプに撃ちます。見ての通り物理竜に対しては力不足ですが、交代際のおんがえし等と合わせれば、相手の攻撃を一発耐えて落とすことができます。
ダメージ計算
・補正なしH252振りカイリュー(マルチスケイル)
86〜102(43.4%〜51.5%) 確定2発
・補正なしH252振り霊獣ランドロス(威嚇込み)
120〜144(73.1%〜87.8%) 確定2発
・その他の選択技
その他、ピンポイントな選択技としてワイルドボルト(ギャラドス)、ヘビーボンバー(トゲキッス)、ばかぢから(バンギラス)がありますが、他の技で対応可能です。グロウパンチは面白い技ですが、この型の戦闘スタイルとは合わないでしょう。
ねごとは変化技扱いのため採用できないようです。
六.運用
突撃チョッキカビゴンの基本的な運用は、特殊アタッカーに操出して、流し際に相手の交代先に一撃入れるというものです。特殊アタッカーが居座ってきたらそのまま殴ります。
前述の理由から最低限の物理耐久を持たせていますが、基本的には物理アタッカーが出てくればこちらも交代することになります。また、物理受けに対しては相性が悪いです。例えば、クレセリアやスイクンの突破は事実上不可能です。
したがって、物理アタッカーの相手をできる物理受けポケモン(ヤドラン、エアームド等)や物理受けを突破できる特殊ポケモン(ウルガモス、ボルトロス等)と組むのがよいでしょう。
長くなりましたが以上です。ありがとうございました。