はじめに一つだけ注意書きです。
論中の技名表記について、「DMアクアブレイク」とは「アクアブレイクを基にしたダイストリーム」のことを指します。つまり、「DM」という接頭語がついている技は、全てダイマックス技を表します。
「DMインファイト」と「インファイト」は違う技です。紛らわしいですがご注意ください。
基本スペックカマスジョー
細長い身体が特長の回遊魚で、可食部は水分の多い白身です。旬は秋で、秋から冬にかけて獲れるものは霜降りカマスなんて呼ばれてます。塩で締めてから焼いたり、白身なのでムニエルやフライもいいかもしれませんね。
そんなカマスジョーですが、目を引くのはやはりその尖りまくったステータスです。特攻こそ命と言わんばかりの攻撃種族値123・素早さ種族値136が魅力的である反面、耐久力はなんとシャンデラの拘り眼鏡オーバーヒートで半減なのに確定1発を取られる程度しかありません。
また高い素早さを特性すいすいでさらに強化できますが、もともとガラルに生息する種族の中でテッカニンアギルダードラパルトに次いで4番目に速いので、いささか過剰強化気味です。
剣盾のサンプルパーティで雨パ(ペリッパーで天候を雨にし、火力の上がった水技と特性すいすいによる素早さブーストを利用して戦うパーティのこと)に投入されていることからもわかるように、現状では雨パのエースアタッカーとして起用されることが多いでしょう。
しかし本論においては、雨パではなく、相手のDMエースに対してカウンターDMから突破を図る型のカマスジョーを紹介します。
型概要
トゲキッス「喰らえ!ダイジェット!」
ローブシン「ぐえー!」(※自分の先発が相手のDMにより倒される)
トゲキッス「わしを殺せるものがあるか!」(※調子に乗る)
カマスジョー「ここにいるぞ!」(※DMを切ってダイストリーム)
トゲキッス「なにっ!?ぐえー!」(※雨状態で火力上昇&素早さ逆転、魏延は馬岱に斬られ命を落とす)
というように、
1.相手が先にDMを切って無双態勢を整えた時に出し
2.カウンターDMを切って相手の攻撃を耐えつつ素早さを逆転させ
3.次のターンに上から雨下タイプ一致水技を叩き込んで相手を突破する
ことを基本の動きとした型になります。
突破した後はDM状態のカマスジョーが残る為、相手の後続にまで被害を与えることができます。「カマスジョーにDMを切る価値はあるのか?」という問いに対しては、カマスジョー自身の雨下における制圧力が高いうえ、相手のDMを止めてからそれを発揮できる為、十分に価値はあるという答えを提示します。
相手がDM飛行エーストゲキッスリザードンだとした場合、自分の先発がやられる際にダイジェット1発+次のターンにカマスジョーに対しダイジェット1発と動いたときは、相手の素早さが合計2段階上昇した状態となります。そうなると先手を取れるポケモンは限られますが、ここでカマスジョーの過剰とも思われる素早さが活きるわけです。
さらに、この運用をするには、相手のDMエースを体力満タンの状態からDMアクアブレイク+雨状態のDMアクアブレイクで仕留め切る必要がありますが、ここでカマスジョーの凄まじい攻撃力が役に立ちます。具体的なラインを述べるならば、トゲキッス程度の耐久まで弐撃決殺です。
また、ピンポイントながら砂掻きドリュウズや雨ガマゲロゲなど、天候で素早さを補っているアタッカーの対策にもなります。裏のバンギラスやカバルドンあたりまでまとめてぶち抜いて差し上げましょう。
構築例
ここでは、本論のカマスジョーがどのようなパーティに入ればハマるかを考察します。
カマスジョーには耐久力も耐性も皆無である為、サイクル性能は無いに等しいです。交代戦をベースとするサイクル構築には向きません。また、誰かに敵三体全ての処理を委ねるような構築、例えば両壁や麻痺起点から展開するタイプのエース構築についても、積み技を持たないカマスジョーをエースにするのは無理があります。万能と言うわけではなく、投入する構築を選ばなければ活躍できません。
ではどんな構築に向いているのかというと、それは対面構築。
対面構築は「サイクル構築に弱く、エース構築に強い」という特色を持つ構築です。対面構築がグー、エース構築がチョキ、サイクル構築がパーだと考えればわかりやすいでしょう。
しかし、第八世代においてはDMがエース構築において有利に働く場面が多く、三つ巴の中でもひと際強力となっています。じゃんけんの例を使うなら、チョキのハサミが石に食い込むほど鋭利となってしまった、といったところです。
ここで必要となるのは相手のチョキを抑制できるグー、つまり相手のDM枠を返り討ちにできるポケモンであるわけですが、カマスジョーはその要件を充たすばかりか、相手DM枠を倒した時の圧力をそのまま後続にまで波及させられる可能性まで秘めているわけです。
対面構築の基本は「行動保証持ちの先発枠+DM枠+ミミッキュと選出し、自分の先発で相手の先発を倒す→相手の次のポケモンに自分の先発が倒される→DM枠で相手の次のポケモンを倒しつつ相手のラス1に削りを入れる→ミミッキュで相手のラス1を倒して勝つ」。カマスジョーにはこの「DM枠」の一端を担わせます。もちろんDM前提のアタッカーはカマスジョー以外にもいるとよいでしょう。
一つの例として、襷ドラパルト+カマスジョー+ミミッキュという並びを提案しておきます。
また、カマスジョーとは直接関係ないですが、対面構築においてもう一つ重要なことがあります。それは「チョキのポケモンを一体入れる」ことです。何故なら、全員グーで構成されたパーティは、パーの構築に絶対に勝てないからです。言い換えれば、受け気質のサイクル構築を突破できるポケモンを最低1体は入れておくことが必要である、ということです。
悪巧み持ちの特殊アタッカーサザンドラロトムトゲキッスが最も分かりやすいと思います。
実戦での動かし方
先ほど軽く触れましたが、この項目でさらに詳細な運用を考察します。
以下の記述は、全て相手がDM状態2ターン目である前提とします。
- A.カウンターDMから2ターン制圧
リザードントゲキッスガマゲロゲミミッキュなどに対する動き方です。カマスジョー繰り出しDM→相手の攻撃を耐えてDMアクアブレイク→次ターン先制DMアクアブレイクです。こうするとカマスジョーにDMターンが1残り、相手の後続に対し高い圧力をかけることができるので、基本的にはこの立ち回りをすることになります。
ただし注意が2点。
1点目、リザードンは「ダイバーンを使用していない」「命の珠持ちでない」を両方満たす場合のみ処理が可能です。
2点目、ミミッキュは「化けの皮が残っている」「剣の舞を使用していない」を両方満たす場合のみこちらの立ち回りで処理します。
「サンパワーダイジェット」「珠ダイソウゲン」及び「剣の舞ダイフェアリー」をカマスジョーが耐えないからです。
- B.カウンターDMから3ターン制圧
カマスジョー繰り出しDM→相手の攻撃をダイウォールで凌ぐ→次ターン相手の攻撃を耐えてDMアクアブレイク→次ターンDMが切れた相手に対し先制DMアクアブレイクという動きです。要は相手のDMを枯らしてから対処するということです。
この動きをとるのは、「DM状態ならばカマスジョーのDMアクアブレイク+雨下DMアクアブレイクを耐えられるが、DM状態でDMアクアブレイク+DMが切れた後に雨下DMアクアブレイクを耐えることはできないポケモン」を相手にする場合です。
ややこしいので種族名を挙げるならば、ドラパルト、ダイジェット型であるアーマーガア、ダイバーンを一回撃ったピクシー、「化けの皮が残っていない」「剣の舞を使用している」の両方を満たすミミッキュなどになります。
サザンドラはDM状態に対し雨無しDMアクアブレイク+DMが切れた後に(ダイドラグーンを撃たれた場合の)攻撃1段階下降DMインファイトで突破できる為、同じように初手ダイウォールからです。
その他の例を二つ挙げます。
1つ目、リザードンが「ダイジェットを使用していない」「ダイバーンを使用している」「相手のDMが残り1ターンである」を全て満たす場合は、同じようにダイウォール→DMアクアブレイクと動いて処理が可能です。晴れ状態でもDMアクアブレイクでリザードンは一撃です。
2つ目、ギャラドスが「攻撃上昇を得ていない」「相手のDMが残り1ターンである」を両方満たす場合、ダイウォール→DMアクアブレイク→DMサイコファングと動いて処理が可能です。攻撃上昇無しの珠パワーウィップをDM状態のカマスジョーは耐えます。
- C.その他
相手がバンギラスであり、「弱点保険を持っている可能性がある」「素早さがカマスジョーより低い状態である」「相手のDMが残り2ターンである」を全て満たす場合、ダイウォール→ダイウォール→DMアクアブレイク又はDMインファイトと動きます。
カマスジョーの雨無しDMアクアブレイクをDM状態のバンギラスは耐える為、普通に攻撃すると保険が発動してフライにされます。弱点保険の疑いがあるバンギラスを相手にする場合は、とにかく相手のDMを枯らしてから攻撃しなければなりません。保険発動前の攻撃一発ならば受けても大丈夫ですが、成功すれば体力を多く残せるので2連ダイウォールです。
相手がラプラスであり、「キョダイセンリツを使用していない」「弱点保険を持っている可能性がある」「相手のDMが残り2ターンである」を全て満たす場合、初手はダイウォールから入ります。
次のターンはDMサイコファングを撃ち、相手がキョダイセンリツならば次のターンからDMサイコファング→インファイトと動いて突破します。相手がダイサンダーならば次のターンにDMインファイトで突破できます。
威力130キョダイセンリツ+10万ボルト及びDM10万ボルトは耐えますが、弱点保険が発動した状態でラプラスに攻撃を許すとカマスジョーはやられてしまいます。サイコファングとインファイトを巧みに交える必要があります。悪技搭載の場合でキョダイセンリツを撃たれたときは、サイコフィールドによる火力上昇を得られないので、6割程度の乱数勝負になります。
相手がアイアントであり、相手のDMが残り1ターンである場合は、ダイウォール→DMアクアブレイクと動けば処理できます。相手のDMが残っている状態ですとダイサンダーで倒されます。
以上、対戦する種族ごとの立ち回りを一部書き連ねました。キリがないのでこのあたりにしておきますが、コメントで指摘があればさらに追加するかもしれません。
各種データ
〇性 格:いじっぱり
〇特 性:すいすい
〇努力値:H84 A252 S172
〇実数値:H147 A192 B80 C* D70 S178
〇持ち物:いのちのたま
〇技構成:[水技選択/インファイト/攻撃技/補助技]
- 性格について
いじっぱりで確定です。素早さは補正がなくとも十分であり、耐久はDMで誤魔化すからです。
- 努力値について
攻撃特化、素早さは最速アイアント抜き、耐久はDM状態ならばA特化ドリュウズの珠DM地震耐えです。
これ以上素早さを上げるメリットが思い浮かばないのと、ドリュウズの最大打点を耐えることで確実に切り返せるようにしたかった為、この調整に落ち着きました。
DM状態でないときの耐久目安は、だいたい攻撃特化バンギラスのストーンエッジでぴったり落とされるくらいです。等倍一致技すら耐えられないことの方が多いですから、DMを残さないとかなり窮屈な運用を強いられるでしょう。
- 持ち物について
命の珠が無難です。次点で達人の帯ですが、トゲキッスに弱点を突けないので遂行に支障が出ます。
達人の帯カマスジョー+命の珠ミミッキュなどという組み合わせならば、トゲキッスを倒し損ねても最悪影撃ちでリカバリーできます。一例としてどうぞ。
なお私はカマスに珠を持たせたいがために、ミミッキュに†ひかりのこな†を持たせていますが真似しないでください。
- 技について
水技選択枠はアクアブレイクとたきのぼりからどちらか選択です。DM威力は両者130と変わらないので、差が出るのは通常時のみです。多少の高火力と防御下降を取るか、上からの怯みでワンチャンをつかむか、お好みでどうぞ。
そしてDM時の追加効果・素の威力共に優秀なインファイトも確定でいいでしょう。DM時の威力が95と通常時より低下する点にのみ注意が必要です。
選択攻撃技の枠は基本的にじごくづき・かみくだく・サイコファングから選択とします。
じごくづき・かみくだくはドラパルトピンポイント気味ですが数の多さゆえ搭載しておいて損はありません。ただ、耐久無振りならアクアブレイクで十分ゴリ押しが効きます。
サイコファングは壁構築やジャラランガ等に刺します。ダイサイコにするとサイコフィールドを展開でき、火力上昇と先制技による誤魔化しを封じられる点もメリットです。
サイコファング・じごくづき・かみくだくはいずれもDM時威力130です。
必要性は低いですが他の技を紹介しておきますと、
・通常時は草やドラゴンへの打点にしつつ、ダイアイスで襷を潰したり怯み凍りでワンチャン掴みに行ったりできるこおりのキバ
・水+格闘(+悪)を全部半減するアシレーヌに通るどくづき
・これら二者より必要性はさらに低いが急所率補正とパッチラゴンへの負担が大きいドリルライナー
などがあります。
変化技はダイウォールとして使用するので、何か一つ入れてください。
実質ギアチェンジになりうるあまごいや、やむを得ず相手より先にDMを切ってしまった際に雨下で相手の上から展開することでDMターンを枯らせるみがわりが無難ですが、個人的にお勧めしたいのはきあいだめ。舐めて鉄壁を積んでくるアーマーガアやDMインファイトでの攻撃上昇をものともしないヌオーなどに刺さります。
少し多くなってしまったので、有能な順に並べます。
・技1…アクアブレイク=たきのぼり
・技2…インファイト
・技3…じごくづき=かみくだく=サイコファング>こおりのキバ>どくづき>ドリルライナー
・技4…あまごい=みがわり=きあいだめ
ダメージ計算
全てカマスジョー及び対戦相手がDM状態(ラプラスはキョダイマックス状態)であることを前提とし、割合の%を省略しています。
トゲキッス→カマスジョー(臆病/CS252)DMエアスラッシュ 61.2-72.4
カマスジョー→トゲキッスDMアクアブレイク+雨下DMアクアブレイク 123.9-145.9
リザードン→カマスジョー(臆病/CS252)DMソーラービーム 82.3-97.2
カマスジョー→リザードンDMアクアブレイク(天気通常) 120.5-142.8
ガマゲロゲ→カマスジョー(意地/AS252)DMパワーウィップ 65.9-78.2
カマスジョー→ガマゲロゲDMアクアブレイク+雨下DMアクアブレイク 136.1-157.8
ミミッキュ→カマスジョー(陽気/AS252)DMじゃれつく 57.4-68.0
カマスジョー→ミミッキュ雨下DMアクアブレイク 104.5-123.6
ドラパルト→カマスジョー(陽気/AS252)DMドラゴンアロー 53.4-63.2
カマスジョー→ドラパルトDMアクアブレイク+DMじごくづき(両方攻撃1段階下降) 73.3-86.5
※相手のDMが切れた後にDMじごくづきを当てれば確定撃破、攻撃下降が無ければ雨下DMアクアブレイクでも確定撃破
バンギラス→カマスジョー(意地/HA252)DMストーンエッジ 63.2-74.8
カマスジョー→バンギラスDMアクアブレイク(天気砂嵐) 68.3-80.9
ドリュウズ→カマスジョー(意地/AS252)DMじしん 63.6-75.5
カマスジョー→ドリュウズDMアクアブレイク 104.8-123.6
サザンドラ→カマスジョー(臆病/CS252)DMりゅうせいぐん 67.6-79.9
カマスジョー→サザンドラDMアクアブレイク+DMインファイト(後者のみ攻撃1段階下降) 72.7-86.5
※相手のDMが切れた後にDMインファイトを当てれば確定撃破
ラプラス→カマスジョー(控え目/H124B84C252)DM10まんボルト 71.4-84.3
カマスジョー→ラプラスDMじごくづき 24.8-29.4/乱数4(99.9%)
カマスジョー→ラプラスDMインファイト 36.4-43.4
※立ち回りは先述の通り、ただし火力アイテムやオボンの実等で覆る可能性は十分にある
エースバーン→カマスジョー(陽気/AS252)DMとびはねる 35.0-41.4
カマスジョー→エースバーンDMアクアブレイク 123.2-145.8
※最速エースバーンはカマスジョーより早いうえ、カマスジョーが珠DMとびはねる2発を受けると4割程度の乱数で落ちる為、カマスジョー繰り出し時に相手の素早さが上昇していると乱数勝負になる点にのみ注意したい
アイアント→カマスジョー(陽気/AS252)かみなりのキバ 65.3-77.8
カマスジョー→アイアントDMアクアブレイク 104.4-123.1
※この項目のみ相手がDM無しの状態で計算
以上です。
2020/04/10 技の記述を大幅に変更