- はじめに
今作ソードシールドにて、みなさまはどのポケモンにしんかのきせきを持たせていますか。
有名どころでいうと、
タイプ:ヌルタイプ:ヌル(育成論ソードシールド/468)や
ガラルサニーゴサニーゴ(ガラル)(育成論ソードシールド/46)
があげられるかと思います。これら2体は、圧倒的な防御種族値や優秀なタイプ、特性、技が相まって、ランクバトル上位においても実績を残したパーティに採用されてきました。
しかし、この他のしんかのきせき持ちポケモン、と言われても他に思いつかない方が結構いらっしゃるかと思います。実はソードシールドにおける対戦環境では、しんかのきせき持ちに強い逆風が吹いていると考えています。
というのも、今作における対戦環境では、新たな要素としてダイマックスが追加されました。それに伴い、あらゆるポケモンがダイマックス技を撃つことができ、一部の例を除き参照する元の技よりも高威力で相手に負荷をかけることができるようになりました。加えて、ダイマックス技の追加効果により自己強化するコンボも少なくなく、しんかのきせきポケモンでいわゆる"数値受け"をすることが不安定化したといえます。また、補助技主体のきせきもち受けポケモンとダイマックスの相性がそこまで良いとはいえません。加えて、今作では技マシン「どくどく」が廃止され、最も効率の良いダメージソースが失われてしまいました。
こういった背景があり、今作におけるしんかのきせき持ちポケモンに求められるものは、「受け切る硬さ」ではなくどちらかというと「場作り力」にあると考えています。
先述した
タイプ:ヌルタイプ:ヌルは、「でんじは」や「とんぼがえり」による対面操作、
サニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)は、「ステルスロック」や「のろい」による起点作りをすることができ、実際にそのような型が環境に一定数存在することから上に述べたことの妥当性がいえると思います。
本育成論においては、100族という高い素早さから繰り出される
「はたきおとす」や「ちょうはつ」、「すてゼリフ」などの豊富な妨害技を持つ
マッスグマ(ガラル)マッスグマ(ガラル)の唯一無二性に着目して、
しんかのきせきを持たせることにより、中程度の耐久力を確保する育成論について紹介します。
特に、このマッスグマの高い先発適性について論じていきます。
- マッスグマ(ガラル)について
マッスグマ(ガラル)はあく・ノーマルの複合タイプで以下のような種族値を持つ2進化中の1進化ポケモンです。
種族値 : H78 A70 B61 C50 D61 S100
高いすばやさに目が行くほかには、平均より低い種族値配分をしています。防御や特防も並み以下で、しんかのきせきを持たせるにしてもこころもとなさが否めません。また、特性も「ものひろい」や「くいしんぼう」といった、持ち物消費関連のものであり、非消費アイテムであるしんかのきせきとは相性が悪いです。しかし、これらの短所を補うにも余るほどの個性をマッスグマ(ガラル)は持っています。
実はマッスグマ(ガラル)は優秀な妨害技である「はたきおとす」をタイプ一致で撃てるポケモンの中で最も素早さが速い(2020/2/1現在)です。今作の対戦環境において、素早さ100族というのは非常に速い部類で、
実は進化後のタチフサグマよりも素早さ種族値が5だけ高いという差別化要素もあります。
この95族から100族の間には一線級のポケモンが多く、
例えば
ミミッキュミミッキュ(96族)や
サザンドラサザンドラ(98族)
ヒヒダルマ(ガラル)ヒヒダルマ(ガラル)(95族)
がいます。これらのポケモンの上を取れることは相手の戦法をかき乱すうえでも非常に重要だといえます。
加えて、タイプ一致で「はたきおとす」を撃てるため、環境トップにいるドラパルトドラパルトに対して十分なダメージを稼ぐことができます。この高い素早さのために行動回数を稼ぎやすく、低い耐久力をある程度カバーすることができます。
この「はたきおとす」の他にも、「ちょうはつ」と「すてゼリフ」を両立することができ、相手の展開を封じつつ、起点を作ることができる数少ないポケモンでもあります。
- この型を採用する目的
優秀な妨害技を高い素早さから撃てるマッスグマ(ガラル)にしんかのきせきを持たせることで、行動回数を稼ぎ、相手の展開を防ぎながら起点作りを行います。
役割を終えた後も「ちょうはつ」により起点になることなく、クッションとして機能します。
- 特性
はやあし
状態異常の時、すばやさが1.5倍になる。
夢特性です。その他の特性が「くいしんぼう」と「ものひろい」なためどちらもしんかのきせきと相性が良くなく、消極的理由によりこちらの特性に確定させていただきます。
耐久ポケモンには状態異常がふりまかれる機会も多いので、特にまひ状態でも持ち前の素早さの減少を緩和できる点は相性が良いと思います。
- 持ち物
しんかのきせき
最終進化前のポケモンに持たせると、ぼうぎょとくぼうがそれぞれ1.5倍になる。進化しないポケモンには効果がない。
本育成論におけるコンセプトなので確定です。持たせることで、タチフサグマより若干硬くなり、抜群技であっても特化ミミッキュのいのちのたまじゃれつく程度なら高確率で耐えることができます。
- 性格と努力値振り
高い素早さを最大に生かすために、
性格は、
ようき確定です。
努力値配分は、
努力値 : H172 A4 B76 D4 S252
実数値 : H175 A91 B91 Cx D82 S167
です。
調整先としては、
H : 16n-1(すなあらしなどによるスリップダメージ最小)
A : 余り
B : ドラパルトのドラゴンアロー確定3発など(後述)
D : 余り
S : 最速サザンドラ抜き抜き(最速)
です。
- 技構成と与ダメージ計算
はたきおとす
あく物理 威力65
相手が道具を持っている場合、ダメージが1.5倍になり、さらに道具を持っていない状態にする。
相手の持ち物をなくします。今作からZクリスタルやメガストーンが廃止されたため、「メモリ」一式以外の持ち物ははたきおとすことが可能になりました。高速から撃つことで、火力アップアイテムを削いだり、消費アイテムを消費される前に落としたり、相手の展開をかなり苦しめるものとなります。今作ではこの技を覚えるポケモンが希少であることもあり、確定技とさせていただきます。
ただし、ほとんど攻撃努力値に振っていないため、ダメージは期待できません。一応、環境に多いポケモンに対してどれほどダメージが入るか計算しましたので以下に載せておきます。
H163-B96(B4)ドラパルトドラパルト
63.8%~77.3%(持ち物あり)
44.1%~52.7%(持ち物なし、上と合わせて確定2発)
H131-B100(H4)ミミッキュミミッキュ
38.9%~45.8%(持ち物あり)
25.9%~32.0%(持ち物なし)
H185-B81(B4)ドリュウズドリュウズ
32.9%~39.4%(持ち物あり)
22.7%~27.5%(持ち物なし)
H181-B75(H4)ヒヒダルマ(ガラル)ヒヒダルマ(ガラル)
37.0%~43.6%(持ち物あり)
24.8%~29.8%(持ち物なし)
H191-B4(H244B4)トゲキッストゲキッス
10.9%~13.6%(持ち物あり)
7.8%~9.4%(持ち物なし)
H135-B161(B4)ギルガルド(シールド)ギルガルド(シールド)
48.8%~57.7%(持ち物あり)
32.5%~40.0%(持ち物なし)
H135-B161(B4)ギルガルド(ブレード)ギルガルド(ブレード)
103.7%~124.4%(持ち物あり)
71.1%~84.4%(持ち物なし)
H167-B167(H252B↑252)しんかのきせきサニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)
25.1%~29.9%(持ち物あり)
H167-B167(H252B↑252)サニーゴ(ガラル)サニーゴ(ガラル)
25.1%~29.9%(持ち物なし)
以上のとおり、ダメージには期待できませんが、ドラパルトにだけは致命的なダメージを入れられる点は評価できます。
ちょうはつ
3ターンの間、相手は攻撃技しか出せなくなる。
相手の展開を防ぎます。例えば、積み技や設置技、流し技を上から封じます。そこから後述の「すてゼリフ」によりこちらは退場し、起点を作ることができます。先発にはこういった展開作りの攻撃性の低いポケモンが出てきやすいので、確定技とさせていただきます。
すてゼリフ
相手のこうげきとくこうを1段階下げたあと、手持ちのポケモンと入れ替わる。音系の技。相手のみがわり状態を貫通する。
自主退場しながら相手の攻撃面を削ぎ落します。場に残ってもやることがない、このマッスグマ(ガラル)とは相性が良いといえます。現状覚えるポケモンがジグザグマ(ガラル)系統、ヤンチャム系統、シルヴァディ、フォクスライ、モルペコしかおらず、希少性の高い技なので確定技とさせていただきます。
以下は候補技になります。
でんじは
でんき変化
相手をまひ状態にする。自分より速い相手に撃つことで行動回数の期待値を増やします。相手の素早さを削り、後続のポケモンが上を取りやすくサポートします。
のしかかり(むらっけ様提案)
ノーマル物理 威力85
30%の確率で相手をまひ状態にする。相手が技ちいさくなるを使用していると必ず命中し、威力が2倍になる。
「でんじは」の効かないポケモンに対して麻痺を撒ける可能性があります。
からげんき
ノーマル物理 威力70
自分がどくまひやけど状態の時、威力が2倍になる。やけどによるこうげきの半減の影響を受けない。
耐久水ポケモンと殴り合いになった際に、「ねっとう」によるやけどが痛くなくなります。特性「はやあし」とも相性がいいですが、それでも火力は低いです。
カウンター(むらっけ様提案)
かくとう物理 威力-
相手の物理攻撃のダメージの2倍をその相手に与える。ダブルバトルの時は最後に受けた技のみ有効になる。必ず後攻になる(優先度:-5)
物理技をそこそこ耐える調整にしているため、相手に手痛いダメージを負わせることができます。どうしても倒したい相手に。
こごえるかぜ(とりねこ様提案)
こおり特殊 威力55
相手全体が対象。100%の確率で相手のすばやさランクを1段階下げる。
無効がない素早さ操作技、「でんじは」とお好みで入れ替えてください。
- 被ダメージ計算
しんかのきせきを持たせることで環境上位にいるポケモンの攻撃をどれほど耐えることができるか計算しました。
A172(A252)ドラパルトのドラゴンアロードラパルト
41.1%~49.1%(確定3発)
C167(C↑252)ドラパルトのこだわりメガネりゅうせいぐんドラパルト
85.7%~101.1%(超低乱数1発)
A156(A↑252)ミミッキュのいのちのたまじゃれつくミミッキュ
86.2%~104.0%(低乱数1発)
A156(A↑252)ミミッキュのじゃれつくミミッキュ
66.2%~80.0%(確定2発)
A187(A252)ドリュウズのじしんドリュウズ
44.5%~53.1%(低乱数2発)
C177(C252)サザンドラのこだわりメガネりゅうせいぐんサザンドラ
90.8%~106.8%(中乱数1発)
B172(B↑252)アーマーガアのB上昇なしボディプレスアーマーガア
89.1%~105.1%(中低乱数1発)
C189(C↑252)トゲキッスのマジカルシャイントゲキッス
80.0%~96.0%(確定2発)
A177(A252)ギャラドスのダイジェット(130)ギャラドス
54.8%~65.1%(確定2発)
A211(A↑252)ヒヒダルマ(ガラル)のごりむちゅうとんぼがえりヒヒダルマ(ガラル)
70.8%~83.4%(確定2発)
C172(C↑252)ウォッシュロトムのハイドロポンプウォッシュロトム
49.7%~58.8%(乱数2発)
以上のとおり、しんかのきせきのおかげでギリギリ1発を耐える程の耐久があることが分かり、2回程度の行動が確保できるとうかがえます。しんかのきせきを持たせてその程度か、と感じるかと思いますが、すばやさ種族値100以上にはしんかのきせきに対応するポケモンがマッスグマ(ガラル)の他におらず、また進化ポケモンの素の耐久力にもこのマッスグマ(ガラル)は勝っています。これほどの素早さと耐久力を併せ持つポケモンは他にいないといえます。
- あわせて
このしんかのきせきマッスグマ(ガラル)を使った実際にあった立ち回りを紹介したいと思います。
こちらはマッスグマ(ガラル)マッスグマ(ガラル)で起点を作ってギャラドス
ギャラドスを通す構築、
あいてはカバルドンカバルドンで起点を作ってギャラドス
ギャラドスを通す構築でした。
先発 : マッスグマ(ガラル)vs
カバルドン
こちらマッスグマ(ガラル)
あいてカバルドン
1ターン目 : マッスグマ(ガラル)vsカバルドン
マッスグマのちょうはつ
カバルドンあくび失敗
2ターン目 : マッスグマ(ガラル)vs
カバルドン→
ミミッキュ
あいて控えのミミッキュに交代
マッスグマ(ガラル)のはたきおとす
ミミッキュのばけのかわがはがれ、いのちのたまを落とす
3ターン目 : マッスグマ(ガラル)→
ギャラドスvs
ミミッキュ
マッスグマ(ガラル)のすてゼリフ
ミミッキュのA↓C↓
こちら控えのギャラドスを繰り出す
ミミッキュの持ち物なしA↓じゃれつく
ギャラドスに35%程度のダメージ
4ターン目 : ギャラドスvs
ミミッキュ
ミミッキュの持ち物なしA↓じゃれつく
ギャラドスに35%程度のダメージ
ギャラドスりゅうのまい(砂ダメージ込みで残り20%程度)
5ターン目 : ギャラドスvs
ミミッキュ
こちらギャラドスダイマックス
ミミッキュの持ち物なしA↓かげうち
ギャラドス残り10%程度
ギャラドスのいのちのたまダイジェット
ミミッキュきぜつ
ギャラドスのじしんかじょう発動
あいてギャラドスを繰り出す
6ターン目 : ギャラドスvs
ギャラドス
あいてギャラドスダイマックス
こちらギャラドスのA2↑いのちのたまダイジェット
あいてギャラドスきぜつ(93.7%の超高乱数1発)
こちらギャラドスきぜつ(いのちのたまダメージにより)
以降 : マッスグマ(ガラル)+もう一体vsカバルドン
カバルドン
このように、相手のカバルドンカバルドンの隙をついて、こちらのギャラドス
ギャラドスを通すことに成功しました。
ポイントとなるのは、カバルドンにちょうはつが既に入っているためにギャラドスを安心して後投げできる点、ギャラドスにちょうはつの技スペースを割かなくて良いため「みがわり」(カバルドンが居座ってきてあくびを撃つ場合に)や「パワーウィップ」(ウォッシュロトムウォッシュロトムなどに)などの別技を採用できる点、ギャラドスにいのちのたまを持たせられる(これにより相手のダイマックスギャラドスを高乱数1発で持っていける)点にあります。
これに対して、環境に多くいる「ちょうはつ」「ラムのみ」持ちギャラドスギャラドスの場合は上記のような動きは出来ません。
今回はギャラドスギャラドスをエースとした場合の具体例を説明しましたが、勿論「ちょうはつ」「ラムのみ」持ちギャラドス
ギャラドスでもあいての初手カバルドン
カバルドンに合わせることができれば、同様に試合を有利にすすめることができます。しかし、それを外した場合のリスクは少なからずあります。ですので、このように先発から様子を見ながら試合を展開していく方が安定感があり、結果として勝利に繋がることが多くなるといえます。
またこれとは別に、「ちょうはつ」を覚えない積みアタッカー(トゲキッスやパルシェンなど)を安全に着地させることができる点も強みであるといえます。
- さいごに
本育成論のマッスグマ(ガラル)が如何に柔軟に立ち回れるかが伝わったかと思います。何より本論で強調したかった点は、このマッスグマの唯一無二性に尽きます。実際にここまで読んでくださった方の中にも、マッスグマ(ガラル)にこんな持ち味があることに驚いた人は少なからずいたと思います。
正直なところ使ってみないと分からないことは多いと思いますが、本論を通じて少しでもこの強みが伝わっていれば幸いです。
以上、長文になりましたが読んで下さりありがとうございます。
コメント欄での指摘や活発な議論を歓迎します。どうぞよろしくお願いします。