はじめに
みなさまは第五世代環境で流行したいのちのたまハッサムをご存じでしょうか。
ステルスロックやあくびなどのお膳立てがあった上で、
ハッサムがつるぎのまいを積み、テクニシャン補正が乗ったバレットパンチやでんこうせっかで全抜きを狙う型で広く知られています。
ハッサムの種族値と特性と覚える技、ステルスロックとの相性、これら全てが噛み合って対戦環境内で広く蔓延しました。
特に先制技で相手を縛れるという点に強みがあり、いわゆるフィニッシャーという役割を確立したポケモンであると考えられています。
(育成論BW/2240)
今ソードシールドにおける対戦環境では、新たな要素としてダイマックスが追加されました。いずれのポケモンについてもHP倍増による耐久上昇、ダイマックス技による火力増強が見込め、それを前提とした育成や対戦時の立ち回りが求められるようになりました。一方で、ダイマックス前提のポケモンとダイマックスを想定しないポケモンを合わせてパーティを構築する風潮が強くなってきました。特に、非ダイマックスポケモンが如何に相手の非ダイマックスポケモンを処理できるか、また、相手のダイマックスポケモンをいなせるかが重要になってきました。
本育成論においては、現環境に多い
ドリュウズドリュウズ(33.6%)
サザンドラサザンドラ(23.8%)
ヒヒダルマ(ガラル)ヒヒダルマ(ガラル)(18.3%)
バンギラスバンギラス(14.9%)
パルシェンパルシェン(11.5%)
に一方的に強く、
ドラパルトドラパルト(42.5%)やミミッキュミミッキュ(41.4%)
にも展開や相手の型次第で一矢報いれるカポエラーについて紹介していきます。
()内はPokemonSoldieR様による2020/1/17時点のシングルランクマッチバトルにおける使用率です。https://pokesol.com/data/stats4-swsh
カポエラーについて
カポエラーはバランスの良い種族値を持つ単かくとうタイプのポケモンです。
種族値 : H50 A95 B95 C35 D110 S70
特に高い防御や特防や特性いかくによる打ち合い性能や繰り出し性能の高さが評価されるポケモンです。一方で、かくとうタイプのポケモンらしからず攻撃種族値が低く、相手に負担をかけるためには工夫が必要とされてきました。
カポエラーにはいかくの他に優秀な特性があり、それが先述のハッサムと同じくテクニシャンです。加えてねこだましやバレットパンチ、またタイプ一致のマッハパンチなどの先制技が充実しています。ハッサムほどの火力は出ずとも、一致格闘打点を取れる点で差別化されます。また、一致マッハパンチ持ちとして比較に上がるのがこんじょうまたはてつのこぶしローブシンローブシンですが、そちらとはバレットパンチによる対フェアリー打点や、ふいうちによるゴーストけん制ができる点で差別化ができます。
低いHPは後述のかいがらのすずと相性がよく、相手のHPを削った量に応じて回復ができます。特にダイマックス相手のHP増加分も計算されるため、たべのこしなどの回復アイテムと比較しても想像以上の回復量が見込めます。
この型を採用する目的
テクニシャン補正が乗った先制技によるフィニッシュ性能を確保し、ビルドアップによる耐久確保およびかいがらのすずによる回復ソース確保により場持ちを長くします。環境上位にいる高速低耐久アタッカーを先制技により縛ります。
特性
テクニシャン
威力が60以下の技の威力が1.5倍になる。威力の変動する技や、威力が修正された場合は修正後の威力で判定する。
カポエラーの覚える先制技と相性の良い特性です。後述の仮想敵への確定数が大きくずれるために、本育成論においてはテクニシャンで固定です。
持ち物
今回は特に火力アップアイテムが必要ではないため、回復ソースの確保をお勧めします。
かいがらのすず
相手に与えたダメージの1/8分のHPが回復する。
カポエラーの低いHPと相性が良いです。少なくとも2ターンに1回、自分の最大HPよりも大きなダメージを相手に与えられる場合、たべのこしよりも効率が良くなります。またたべのこしとの比較として、攻撃時に即回復ができるので、後攻ビルドアップ→先制技回復→敵の攻撃を耐える、という立ち回りも出来ます。
たべのこし
持たせると毎ターン、最大HPの1/16ずつHPが回復する。
無難な回復ソースとしてたべのこしが挙げられます。特に本育成論ではかいがらのすずを推奨しますが、メリットが見込めない場合はこちらを持たせましょう。ただし、たべのこしはパーティ内での競争率が高いのでそれを含めて決めてください。
オボンのみ(えびふらい様提案)
持たせると戦闘中にHPが半分以下になった時に、自分のHPが最大HPの1/4回復する。
相手HPを合計312削ることができた場合のかいがらのすずによる回復がオボンのみの場合は即時的に行えます。相手の攻撃をオボンのみによる回復込みで2発耐えれば良い、という方はこちらを選択してください。
たつじんのおび
持たせると、こうかばつぐんの時のダメージが1.2倍になる。
本育成論の与ダメージ計算が全てステルスロックによるダメージ込みになりますが、それを考慮しない場合はたつじんのおびを持たせることでほぼ同じ確定数になります。選択肢としてお考え下さい。
性格と努力値振り
後述する与ダメ確定数に一切の余裕がないので、火力を少しでも上げるために
性格は、
いじっぱり確定です。
努力値配分は、
努力値 : H252 A252 B4
(実数値 : H157 A161 B116 Cx D130 S90)です。
70族は激戦区でもありますので、若干素早さに振っても良いとは思いますが、積極的に先制技を撃つ本育成論においては素早さは切り捨てることにします。
技構成と与ダメージ計算
ビルドアップ
自分の『こうげき』『ぼうぎょ』ランクを1段階ずつ上げる。
与ダメージ計算は基本、ビルドアップを積み攻撃が1段階上昇した状態での計算をしています。この積み技とステルスロックによるダメージと合わさることで、環境上位のポケモンを軒並み確定1発で倒すことができます。以上の理由で確定技とします。
マッハパンチ
かくとう物理 威力40(テクニシャンにより60)
必ず先制できる(優先度:+1)。特性『てつのこぶし』の時、威力が1.2倍になる。
環境に多いドリュウズ、サザンドラ、ヒヒダルマ、バンギラス、パルシェンを縛る技になります。
以下、こちらビルドアップ1積み、相手ステルスロックダメージ込みの状態における与ダメージ計算です。
(ステルスロック+与ダメ+その他):かいがらのすず回復量
(注 : H実数値157におけるたべのこし2ターン分の回復量が18)
H185-B81(B4)ドリュウズドリュウズ
3.1% + 110.2%~129.7%(確定1発):22(>18)
H167-B111(B4)サザンドラサザンドラ
12.5% + 89.8%~105.3%(ステルスロック込み確定1発):18(=18)
H181-B75(H4)ヒヒダルマ(ガラル)ヒヒダルマ(ガラル)
25.0% + 120.4%~142.5%(確定1発):17(<18)
H207-B130(H252)バンギラスバンギラス
12.5% + 121.7%~144.9%(確定1発):22(>18)
H125-B201(B4)パルシェンパルシェン
25.0% + 67.2%~78.4%(超低乱1発):10~11(<18)
(からをやぶる後H125-B201(B4)パルシェン)
(25.0% + 97.6%~116.8%(ステルスロック込み確定1発):11(<18))
以上から分かるとおり、ステルスロックが撒かれていてビルドアップを一度積むことができれば先制のマッハパンチで縛ることができます。また、かいがらのすずの回復量も高い頻度でたべのこしの回復量を上回ることがわかります。
バレットパンチ
はがね物理 威力40(テクニシャンにより60)
必ず先制できる(優先度:+1)。特性『てつのこぶし』の時、威力が1.2倍になる。
無効タイプのない先制技として撃つことがあります。基本的にミミッキュピンポイントになります。あまり警戒されず、後出しから相手のミミッキュがつるぎのまいを積むことも少なくないので、
ビルドアップ(相手ミミッキュ後出し)
→バレットパンチ(相手ミミッキュつるぎのまい)
→バレットパンチ(相手ミミッキュきぜつ)
のように無償で突破できることもあるため採用します。
ローブシンとの差別化にもなるため確定です。他フェアリーにも一矢報いることができます。ダイマックス時、ダイスチルとして防御を強化することもできます。
以下、こちらビルドアップ1積み、相手ステルスロックダメージ込みの状態における与ダメージ計算です。
(ステルスロック+与ダメ+その他):かいがらのすず回復量
(注 : H実数値157におけるたべのこし2ターン分の回復量が18)
H131-B100(H4)ミミッキュミミッキュ
12.5% + 83.9%~99.2% + ばけのかわ12.5% (ばけのかわ込み確定1発):12(<18)
H191-B116(H244 B4)トゲキッストゲキッス
25.0% + 49.2%~58.6%(ステルスロック込み確定2発):11~14(<18)
ふいうち
あく物理 威力70(テクニシャン補正なし)
必ず先制できる(優先度:+1)。相手が使う技が攻撃技ではない場合や、優先度などの関係ですでに攻撃を終えていた場合は失敗する。相手が『ねむり』『こおり』状態でも攻撃技を選択していれば成功する。
基本的にドラパルトピンポイントになります。他に打つ相手は皆無ですが、トップメタに撃てる上にローブシンとの差別化になるため準確定枠です。最近はおにび持ちのドラパルトが増えてきたので安定しない点には注意しましょう。
以下、こちらビルドアップ1積み、相手ステルスロックダメージ込みの状態における与ダメージ計算です。
(ステルスロック+与ダメ+その他):かいがらのすず回復量
(注 : H実数値157におけるたべのこし2ターン分の回復量が18)
H163-B96(B4)ドラパルトドラパルト
12.5% + 82.2%~96.9% (ステルスロック込み高乱数1発):16~19(>=<18)
H167-B70(H252)ギルガルド(ブレード)ギルガルド(ブレード)
6.2% + 108.9%~129.3% (確定1発):21(>18)
以下は、構築に応じてバレットパンチとふいうちと入れ替え候補に挙がる技です。
リベンジ(サッポロ一番様提案)
かくとう物理 威力60(テクニシャン補正により90、被ダメージ時テクニシャン補正無し120)
そのターンに相手の技のダメージを受けると威力が2倍になる。必ず後攻になる(優先度:-4)。
ビルドアップを積まずとも同等か、それ以上の火力が出る技です。積む隙がない場合に撃ちましょう。被ダメージ時に限り高威力が出るので、役割対象以外のポケモンにも負荷をかけられます。
じならし(炊き込み淡水様提案)
じめん物理 威力60(テクニシャンにより90)
自分以外全員が対象。100%の確率で相手の『すばやさ』ランクを1段階下げる。
テクニシャン適用で追加効果が優秀です。不利な相手がはっきりしているカポエラーが起点になることを防ぎますが、ダイジェット持ちの前には効果がないことが多いのがネックです。
ぶんまわす(炊き込み淡水様提案)
あく物理 威力60(テクニシャンにより90)
自分以外全員が対象。通常攻撃。
テクニシャン適用でカポエラーのあくタイプ最大打点になります。特にドラパルトの技は大抵耐えることができるので後攻から倒すことができます。おにび持ちドラパルトにも多少抗えるようになると思います。
被ダメージ計算
役割対象であるドリュウズ、サザンドラ、ヒヒダルマ、バンギラス、パルシェン、ドラパルト、ミミッキュについて絞って被ダメージ計算を行います。計算は全て能力上昇がない場合について行っています。
A205(A↑252)ドリュウズのいのちのたまじしんドリュウズ
82.8%~97.4% (確定2発)
A205(A↑252)ダイマックスドリュウズのダイアース(130)ドリュウズ
82.8%~98.0% (確定2発)
C177(C252)サザンドラのりゅうせいぐんサザンドラ
63.6%~75.1% (確定2発)
C194(C↑252)サザンドラのこだわりメガネりゅうせいぐんサザンドラ
105.0%~124.2% (確定1発)
A205(A↑252)ごりむちゅうヒヒダルマ(ガラル)のつららおとしヒヒダルマ(ガラル)
82.8%~98.0% (確定2発)
A204(A↑252)バンギラスのじしんバンギラス
42.6%~50.3% (低乱数2発)
A161(A↑252)スキルリンクパルシェンのつららばり(5発)パルシェン
66.8%~79.6% (確定2発)
A172(A252)ドラパルトのこだわりハチマキドラゴンアロードラパルト
80.2%~95.5% (確定2発)
C167(C↑252)ドラパルトのこだわりメガネりゅうせいぐんドラパルト
90.4%~107.0% (中低乱数1発)
A156(A↑252)ミミッキュのいのちのたまじゃれつくミミッキュ
114.0%~135.6% (確定1発)
(カポエラービルドアップ1積み時)
(A156(A↑252)ミミッキュのいのちのたまじゃれつくミミッキュ)
(76.4%~91.0% (確定2発))
基本的に起点が既に仕上がっていて安全にビルドアップが積める場合を想定していますが、役割対象と対面しても、極端な例を除いて後攻ビルドアップからの先制技で打ち勝てるようになっています。
あわせて
本育成論で繰り返しステルスロック込みの与ダメージ計算を行ってきましたが、具体的に相性の良いステルスロック撒きポケモンの紹介をしたいと思います。(まじかる様、うぃん様指摘)
ただし、以下に挙げるものは全て特定の例でしかなく、構築次第で如何様にも変わりますのでご了承ください。
きあいのタスキくだけるよろいイワークイワーク
実際に本投稿者がカポエラーと合わせて使っているポケモンです。
最速70族から繰り出されるちょうはつにより相手の展開を許さず、こちらのステルスロック展開を通せます。またくだけるよろいによる素早さ逆転により、先発に多いきあいのタスキドリュウズやスカーフヒヒダルマにもじしん→素早さ逆転じしんやがんせきふうじ→素早さ逆転がんせきふうじで倒せる対面性能も持ちます。がんせきふうじでカポエラーのビルドアップが先攻するように補助ができます。カポエラーが苦手とするダイジェット持ちなどにもがんせきふうじ連打で起点となることがないので、相性の良い一匹であると思います。くだけるよろい発動時の最速イワークの素早さ実数値は268になります。その一方で、無補正特化の攻撃実数値が97です。
バンギラスバンギラス
イワークと同様にステルスロック撒きにしては速い素早さとちょうはつを持ちます。高い数値によって一回の行動は保証できるうえ、特性すなおこしのスリップダメージにより、ステルスロックダメージの入らない対面しているポケモンの確定数をずらせます。こちらもがんせきふうじを撃つことができ起点を作れます。カポエラーに強い相手に強く出れ、またバンギラスに強い相手にはカポエラーが強く出れます。その点の相性が素晴らしいと思います。
さいごに
本育成論のカポエラーが環境上位にいる高速低耐久アタッカーに強いことが伝わったかと思います。また、従来あまり使われてこなかったかいがらのすずのメリットも多少なりと見い出せたのではないかと思います。
しかし、考察では述べませんでしたが、役割対象以外のポケモンには滅法弱く、
例えば、
受けポケモン : ドヒドイデドヒドイデ、アーマーガアアーマーガア、ヌオーヌオーなど
ダイジェットポケモン : トゲキッストゲキッス、ギャラドスギャラドスなど
その他のダイマックスポケモン : すべてのポケモン
に対しては役割を持てません。
特に、ダイマックスされると役割対象のポケモンについてでも役割遂行が難しくなり、返り討ちに合うこともあります。そのため、相手のダイマックス切りのタイミングをよく見切った上での運用に限られます。
しかし、ダイマックスができるのはこのカポエラーも同様で、ビルドアップの代わりにダイナックルやダイスチルを撃つことも可能です。いろいろ挙げ出すときりがないので与ダメージ計算は割愛しますが、本育成論に書いてある以上に柔軟な動きが可能であり、それについてはこの育成論を見たみなさまが開拓してくださると幸いです。
以上、長文になりましたが読んで下さりありがとうございます。
コメント欄での指摘や活発な議論を歓迎します。どうぞよろしくお願いします。