お断り
このページは「サンダー育成論」と論文「クッションの理論化と定義」の2部構成です。「クッションの理論化と定義」はページ後半にまとめていますので、こちらをお目当ての方は上記目次より「★クッションの理論化と定義」をタップの上飛んでください。
エモンガ エモンガ エモンガ エモンガ エモンガ エモンガ エモンガ エモンガ
- 略称は可能な範囲で排しましたが一部使用します。
- H:HP A:攻撃 B:防御 C:特攻 D:特防 S:素早さ ゴツメ:ゴツゴツメット
- シリーズ12環境における考察となります。
- 考察は常体でさせていただきます。
1-1:育成論論旨
素早さ操作できうるクッションにもなる対面構築アタッカー
1-2:環境予測
今月よりシリーズ12:パワーのある禁伝が2匹となり、受けが困難になると予測 (サンダーも)。過去、第六世代においてメガガルーラ受けが成立しなくなった環境で増加したのは対面構築であったことから、対面構築の増加を予測する。
また、前シリーズ11:禁伝1匹環境の最終シーズン(S21)の最終1位構築は、環境にいじっぱりザシアン(王)が多い環境予測の元、最速ムゲンダイナでザシアン(王)に先手を取る前提の構築であったことから、最速ザシアン(王)の増加を予測する。
ここから、後出しからザシアン(王)の素早さ操作ができうるクッションは処理ルート増加の観点から加点要素となろう。
以上より、対面構築のニーズと後出しから素早さ操作できうるクッションのニーズが増すと予測する。
本育成論はザシアン(王)に不利対面を作るポケモンが採用されている対面構築を組んでいる方に向け、これら両ニーズを満たすサンダーを求めるものである。本育成論は対面構築への採用を前提とする。
1-3:対面構築とは
対面構築とは各ポケモンが相手と1対1交換以上の戦果を挙げることを勝ち筋とする構築。
対面性能が高いアタッカーポケモン (以下:対面構築駒と記す) を揃え、原則として交代をせず、味方は死に出しから場に出し目の前の敵を倒していく。以下の試合運びをスタンダードとする。
- 味方先発が相手1匹目を倒す
- (味方先発が倒され2番手を死に出しする)
- 味方2番手が相手2匹目を倒す
- (味方2番手が倒され3番手を死に出しする)
- 味方3番手が相手3匹目を倒す
相手が交代しようとも交代先のポケモンを倒せる突破力と幅広い対応範囲が個々のポケモンに求められる。
1-4:クッションとは
クッションとは「特定の相手を処理するべく後出しから切り返し、味方の対面有利状況を創出する行為及びポケモン」を指す。
詳細は後述の論文「クッションの理論化と定義」参照。
育成論とは別にクッションそのものに関する独立した論文を寄稿している。
2-1:サンダーについて
一般枠トップメタ。
その主な強みを列挙すると、
- サンダー共通の主な強み
1.高種族値
2.弱点岩氷のみという良耐性
3.ダイジェット耐性
4.地無効の電
5.電等倍の飛
6.地の一貫切り
7.特性せいでんき等による麻痺押し付け
8.多用な型の存在:相手読み違いによるアド
- CSサンダーの主な強み
9.タイプ一致ダイジェット
10.麻痺無効
11.対面性能の高さ
12.電飛炎の技範囲の広さ
- HBサンダーの主な強み
13.特性せいでんきにより後出しと同時に即時素早さ操作ができうる
14.ザシアン(王)に2回以上の接触攻撃を強いる
15.対面操作技とんぼがえり・ボルトチェンジ
16.再生回復技はねやすめ
17.先制はねやすめ時の耐性変化
18.はねやすめ×麻痺による行動不能待ち
19.はねやすめ×かいでんぱによる特殊詰ませ
20.はねやすめ×特性プレッシャーによるPP枯らし・TOD
本育成論のサンダーの結論はCSベースでもHBベースでもないHC。
太字で示した1〜8と11〜14を特に強みとする。
2-2:CSベース・HBベースとの違い
主に「対面性能」と「全抜き性能」を両立するのがCSベースのサンダー、
主に「クッション性能」と「物理受け性能」を両立するのがHBベースのサンダー。
対して「対面性能」と「クッション性能」の両立を求めるのが本育成論のサンダー。
完結に記せば以上の住み分け。その強みは前述どおり。
対面性能を求めHCベースにするスイクンカプ・レヒレに似る。
特に対メガガルーラクッションとしての性能を維持しつつ、対面からメガガルーラを相打ちにできるまで特攻を高めた第六世代のHCゴツメスイクンがイメージに近い。
2-3:対面性能とクッション性能の両立の意義
特に対面構築において両立の意義が大いにある。
対面構築は撃ち合いが得意な一方、後出しを不得手とするポケモンを中心に構成されるため、先発有利対面を作れるか否かが勝敗に直結しやすい。
相手の先発を読み切れれば良いものの、読み違え先発不利対面を作ってしまった際にリカバリーをどうするかが構築の課題となる中、その課題に対する一つの回答が「クッション」となる。
対面構築においてクッションを理由に採用されるポケモン...つまり前述スイクンやこのサンダーなどは、原則先発不利対面時のみ【クッションとして】運用し、先発有利対面時は【対面構築駒として】運用することになる。
よって、対面構築におけるクッションには対面性能も不可欠。両立の意義となる。
なお、【クッションとして】運用する可能性がある以上、十中八九ダイマックス適性のある味方と同時選出するため、ダイマックス抜きで対面性能を有していることが望ましい。よって本育成論では【対面構築駒として】もダイマックスできずを視野に入れ考察する。
2-4:仮想敵及び対仮想敵性能
前述環境考察どおり【クッションとして】の仮想敵はザシアン(王)とする。
不特定の敵と撃ち合うアタッカーは通常仮想敵を設定しないが、ザシアン(王)入り構築への選出機会が増える以上【対面構築駒として】もザシアン(王)に配慮する。
確定欄の配分で、
【クッションとして】A244ザシアン(王)に後出し時にワンパンされない物理耐久力 (=特性せいでんきとゴツゴツメットの試行回数2回の確保) と、
【対面構築駒として】ザシアン(王)対面でダイマックスできずとも「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりH195-D136までのザシアン(王)を倒せうる対面性能を両立できる。
【クッションとして】ザシアン(王)麻痺率約5割+HP1/3削り (こらえる成功時は麻痺率約66%+HP1/2削り)、
【対面構築駒として】ザシアン(王)対面勝率約5割 (ダイマックスなしで) である。
(ザシアン(王)のじゃれつく+でんこうせっかは耐えないが、でんこうせっかターンの痺れと採用率も踏まえ対面勝率約5割と表現。ダイマックスすれば対面勝率5割超え)
さらにH195D136ザシアン(王)に対し、ねっぷう+ゴツメ×3で相討ち、ダイバーン+ゴツメ×2で相討ち、晴れダイバーンで確定1発という行動選択拡大要素も生じる。
後述の対面構築クッションの高難易度化を鑑みれば、仮想敵ザシアン(王)相手に一般枠でこの仕事ぶりなら及第点と言えよう。
2-5:クッションとしての動き
相手先発:ザシアン(王) 特性ふとうのけんにより攻撃ランク+1
自分先発:イベルタル
→ 不利対面を作ってしまった ≒ サンダーにクッションの役割を与える
自分イベルタル:交代しサンダー登場
相手ザシアン(王):じゃれつく! サンダー残HP0.5%
相手ザシアン(王):サンダーのゴツゴツメットにより残HP83.4%
相手ザシアン(王):きょじゅうざん!
相手ザシアン(王):サンダーの特性せいでんきにより麻痺・ゴツゴツメットにより残HP66.7%
自分サンダー:ダウン! 死に出しイベルタル
自分イベルタル:ねっぷう! イベルタルいのちのたまにより残HP90.0%
相手ザシアン(王):ダウン! 死に出しディアルガ
【クッションとして】の動きは後出しから攻撃を2発受けて捨て、その過程で特性せいでんきによる麻痺(素早さ操作)とゴツゴツメットによるHP削りにより切り返すもの。特性せいでんきを除けば対メガガルーラクッションであった第六世代のスイクンと全く同じ動きである。
先発不利対面という対面構築において負けて元々の展開において、クッション不在であれば引き先もおらずイベルタルが一方的に倒され敗色濃厚となるところ、サンダーがいれば確率依存ながらイベルタルで切り返せる。
ザシアン(王)突破後に不利対面のポケモンが死に出しされるが、失うポケモンが自分サンダーに対し相手ザシアン(王)につき、禁伝の残数を考慮すれば劣勢〜五分気味の展開であり、相手がザシアン(王)でイベルタルを見るような選出をしていたのであれば優勢気味となる。
麻痺率約5割 (こらえる成功時は麻痺率約66%) という確率も、クッション不在で敗色濃厚な展開よりマシであり、先発出し負けに起因する負けを減らせすことに価値が生じる。
(当然、それでも劣勢〜五分気味となることは対面構築である以上不可避につき、選出・先発有利対面を作ることに最善を尽くす)
また、クッション不在でザシアン(王)に不利対面を取る味方を先発に出せなくなると、相手に先発を読まれ、先発出し負けの可能性が高まることにつながる。サンダーは味方の先発の選出択を狭めないという観点でも価値が生じる。
実践するにはザシアン(王)に66.7%以上の与ダメージを与えられ、麻痺状態のザシアン(王)に先手を取れる(S111以上)対面性能が高い味方の存在が必要 (こらえる込みなら与ダメージは50.1%に緩和する判断も可能)。禁伝枠では主に以下のポケモンが該当する (ザシアン(王)はH195-B136-D136)。
C222カイオーガ しおふき 106.2~125.1% (雨・威力150)
C222ディアルガ だいちのちから 74.9~88.2% (命の珠)
A222ザシアン(王) きょじゅうざん 70.8~83.6% (攻撃ランク+1)
C197ムゲンダイナ かえんほうしゃ 66.7~78.5% (命の珠)
C183イベルタル ねっぷう 65.1~77.4% (命の珠)
なお、この記述はこれらのポケモンとサンダーを主軸として構築を組み始めることを奨励するものではない。
3-1:対面構築クッションの高難易度化
前述にて本育成論のサンダーは第六世代のHCゴツメスイクンがイメージに近いとした。
そこで、第六世代の対面構築クッションのスイクンの仮想敵である2014年頃のメガガルーラと、本育成論でサンダーの仮想敵としているザシアン(王)を比較する。
- メインウェポン火力指数
ザシアン(王)54,900 (A244きょじゅうざん・攻撃ランク+1)
メガガルーラ52,380 (A194すてみタックル・特性おやこあい)
- 物理耐久指数および特殊耐久指数 (努力値H252振りで比較)
ザシアン(王)26,865
メガガルーラ25,440
※ザシアン(王)メガガルーラ共に個々の防御と特防の種族値は同じ
- 素早さ種族値
- 耐性
ザシアン(王)弱点:炎地 半減:無草氷飛超岩悪妖 無効:毒竜
メガガルーラ弱点:闘 無効:無
ご覧のとおり、どの面を見てもザシアン(王)が圧倒的に上回る。
ザシアン(王)は同属性のメガクチートと比べても、鋼技火力指数約1.33倍、じゃれつく火力指数約1.06倍、物理耐久力約1.18倍、特殊耐久力約1.49倍、素早さに至っては比べるまでもない化け物である (比較は両者いじっぱりHA252振り)。
極めつけはメガガルーラがすてみタックルで自ら自傷するのに対し、ザシアン(王)はきょじゅうざんで自傷しないこと。【対面構築駒として】スイクンはこの自傷もあり対面からメガガルーラを相打ちにできたが、自傷しないザシアン(王)はそうもいかない。
また、スイクンは素早さ操作せずとも【クッションとして】活躍できたが、これはメガガルーラに素で先手を取れる味方がいるからこそである。
対してザシアン(王)の素早さ種族値は剣盾全ポケモン中5位である。これを上回らない限り、HPを削っただけでは死に出しした味方がザシアン(王)に上を取られ殴られてしまう。よって、前述環境予測のとおりに最速ザシアン(王)が増えるなら多くの構築で対ザシアン(王)クッションには素早さ操作を盛り込む必要性を強いられる。
以上よりサンダーのダイマックスできずともザシアン(王)対面勝率約5割かつ後出しから素早さ操作できうることは優秀と言えよう。
なお、このスイクンが幅を利かせたこともあり、後の2015年に登場したのがひみつのちからメガガルーラ育成論ORAS・XY/1704である。
3-2:ザシアンに後出しから素早さ操作は困難
以下、ブレインストーミング的にA244ザシアン(王)に後出しから素早さ操作できるポケモン(禁伝を除く)を、その強さ・汎用性・ザシアン(王)交代に言及せずに列挙する。
ザシアン(王)の所持技はきょじゅうざん/じゃれつく/インファイト/ワイルドボルト/かみくだく/でんこうせっかを仮定。ダメージ計算(証明)は割愛する。
- 後出しと同時に特性により素早さ操作
ワタシラガ特性わたげ
ヌメルゴン特性ぬめぬめ
ダグトリオ(アローラ)特性カーリーヘアー
- 後出しから2発攻撃を耐え、技により素早さ操作
ウルガモスいとをはく (H191-B128以上@アッキのみ)
ガラガラ(アローラ)じならし (H167-B177以上@ナモのみ)
コータスじならし (H177-B211@たべのこし)
ウインディじならし (H197-B133以上・特性いかく)
ガオガエンローキック (H202-B147以上・特性いかく@ヨプのみ)
ストリンダー(ロー)ほっぺすりすり (H180-B122以上@アッキのみ)
ハリーセンでんじは (H171-B109以上・特性いかく@ソクノのみ)
ドヒドイデマッドショット (H156-B179以上@ソクノのみ)
ヌオーじならし (H199-B149以上・特性てんねん)
ハガネールじならし (H179-B220以上@ヨプのみ)
メタグロスじならし (H187-B200@ナモのみ)
クレセリアトリックルーム (H227-B189@アッキのみ)
- 後出し時の攻撃を耐え、特性により先手を取り、技により素早さ操作
ボルトロス(化身)でんじは×特性いたずらごころ (H185-B124以上@オボンのみ)
トルネロス(化身)おいがぜ×特性いたずらごころ (H186-B133@オボンのみ)
フワライドおいがぜ×特性かるわざ (H247-B105-S111@オボンのみ)
バルジーナおいがぜ×特性くだけるよろい (H217-B160-S111以上@ロゼルのみ)
エアームドがんせきふうじ×特性くだけるよろい (H171-B173-S111以上@オボンのみ)
- 補足
ガラガラ(アローラ)交代読みかみくだく×2は特性のろわれボディでワンチャンス
ガオガエン交代読みインファイト×2は無理
ハリーセン交代読みワイルドボルト×2は無理
ドヒドイデ交代読みワイルドボルト×2は無理
ハガネール交代読みインファイト×2は無理
メタグロス交代読みかみくだく×2及びインファイト×2は乱数圏
クレセリア交代読みかみくだく×2は乱数圏
トルネロス(化身)交代読みワイルドボルトは無理
フワライド交代読みワイルドボルト及びかみくだくは乱数圏
バルジーナ交代読みワイルドボルト+でんこうせっかは無理
ボルトロス(化身)トルネロス(化身)エアームドは素早さ操作ターンのでんこうせっか耐えのためオボンのみが必要
列挙した現実を見ると、限定的であり、構成が偏っており、なお無理な条件を含んでいる。ザシアン(王)に後出しから素早さ操作が極めて困難であることが分かる。
この中で高い対面性能を両立できるポケモンは皆無。多くのポケモンが防御特化近い努力値を要求され火力に努力値を回せない。
これらのポケモンが弱いのではなくザシアン(王)が強すぎることは前述どおり。禁伝枠のソルガレオネクロズマ(日食)(でんじは・トリックルーム)の投入も視野に入ろう。
よって、素早さ操作が相手の行動(接触攻撃)と確率に依存する短所を差し引いても、サンダーは対面構築における素早さ操作ができうるクッションとして現実的候補と言えよう。
サンダーの確率依存に対し、素早さランク操作は交代されたらリセット、でんじはは交代されたら回避され、トリックルーム・おいかぜはターン数経過で失効と、どの素早さ操作手段も短所を抱えているのは共通である。
(先発出し負けさえしなければ【クッションとして】サンダーを扱うことは原則ない。確率依存の前に選出という実力勝負で負けなければ良く、確率依存は負けを減らす保険という見方もできる)。
3-3:お断り
以上より、本育成論は特性「せいでんき」・技「ほうでん」という確率による素早さ操作を全面的に許容する前提とし、この前提の元、勝率を高めるスタンスで対面性能とクッション性能の両立を追求する。
4:主要被採用理由
- 後出しから特性せいでんきにより素早さ操作できうる対物理クッション (ザシアン(王)後出しから2回攻撃を受け素早さ操作できうるクッション)
- 高種族値と電飛炎の技範囲と良耐性と麻痺押し付けによる対面性能の高さ (ザシアン(王)対面時に「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりダイマックスできずとも突破できうる対面構築駒)
即ちザシアン(王)に対面不利となるポケモンを採用済みの対面構築において採用を検討
5:構成
特 性 : せいでんき
性 格 : ひかえめ
個体値 : 31-0-31-31-31-31
努力値 : 252-0-52-196-4-4
実数値 : 197-85-112-187-111-121
技構成 : ほうでん/ぼうふう/ねっぷう/選択肢
持ち物 : ゴツゴツメット
5-1:配分要旨
HB:A244ザシアン(王)(ランク+1) じゃれつく 84.3~99.5% 1発耐え
C:H195D136までのザシアン(王)をほうでん+ゴツメ+ねっぷうで撃破
H195D136ザシアン(王) ほうでん 最低乱数63ダメージ
H195ザシアン(王) ゴツゴツメット 固定32ダメージ
H195D136ザシアン(王) ねっぷう 最低乱数100ダメージ
63+32+100=195。
S:麻痺状態の最速ザシアン(王)に先手を取れるS111以上
主要被採用理由上【クッションとして】ザシアン(王)の攻撃を1発耐える(=2回の接触攻撃判定を得られる)物理耐久力を確保しつつ、【対面構築駒として】ザシアン(王)対面で「ほうでん+ゴツゴツメット(+麻痺)+ねっぷう」によりダイマックスできずとも倒せる火力を確保・両立したもの。
(前述どおり、ダイマックスせずの対面突破はほうでんか特性せいでんきで麻痺を引け、でんこうせっかを痺れ含め受けなかった場合のみ)。
以上の両立に必要な努力値を除いた、余りの努力値は8のみとなる。この8を特攻に振るか、特防と素早さに振り分けるかのみ選択となる。この点は後述の素早さ調整参照。
5-2:特性
- せいでんき
主要被採用理由上【クッションとして】ザシアン(王)後出しから2回攻撃を受け素早さ操作できうる特性として、及び【対面構築駒として】ザシアン(王)対面で「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりダイマックスできずとも突破できうる特性として確定。
5-3:確定・優先技
- ぼうふう (特殊 属性:飛 威力:110 DM威力:140 命中:70 PP:10)
主要被採用理由上【対面構築駒として】対面性能確保のため外せない確定技。
前述どおりダイマックス適正がある味方との同時選出となるが、戦況によりサンダーでダイマックスを切った場合のダイジェットによる対面性能の跳ね上がりは特筆に値する。
- ほうでん (特殊 属性:電 威力:80 DM威力:130 命中:100 PP:15)
主要被採用理由上【対面構築駒として】ザシアン(王)対面で「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりダイマックスできずとも突破できうる技として原則採用。入れ替え候補が存在するため優先技。3割麻痺。
- ねっぷう (特殊 属性:炎 威力:95 DM威力:130 命中:90 PP:10)
主要被採用理由上【対面構築駒として】ザシアン(王)対面で「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりダイマックスできずとも突破できうる技として原則採用。
5-4:選択技
主要被採用理由以外の採用理由がある場合、その採用理由を満たす技を採用すること。
- こらえる (変化技 属性:無 威力:− 命中:− PP:10)
主要被採用理由に挙げた対ザシアン(王)において想定している運用の延長線上で最も有用となる技。他の候補技に採用価値を見出せない構築であればこの技で良い。
【クッションとして】はザシアン(王)のつるぎのまいに対する回答となり、後出し時につるぎのまいをされても麻痺率51%を維持する。また、それ以外の技を後出し時に被弾した際はこらえる成功により+1回攻撃を耐え、特性せいでんきによる麻痺率を65.7%に引き上げられるどころか、「ゴツメ+ゴツメ+麻痺+ねっぷう+ゴツメ」によりザシアン(王)に後出しから相討ちまで見込める。2連続こらえるも加味すると麻痺率69.13%となる。習得可能技のはねやすめとボルトチェンジの存在によりザシアン(王)に居座り攻撃を強いるが、ザシアン(王)引きも大いにあり得る点に留意。
【対面構築駒として】もザシアン(王)に特性せいでんきとゴツゴツメットの試行回数を稼げ、非ダイマックスでの対面勝率をより高めることが可能。ゴツゴツメットの試行回数増加により特殊耐久力を高めたザシアン(王)も対面処理できうる。また、ねっぷう→こらえるの順に行動選択することで、ザシアン(王)のでんこうせっかをケアして相打ちを狙うことも可能。
ザシアン(王)に限らず接触攻撃技を主体とする相手には同様のことが言え、残りHP僅かの状況からでも素早さ関係を確率で逆転でき、続けて攻撃を放てる芽がある。C187と特攻を高めているためHBベースより1発攻撃できる価値が高い。
ダイマックス枯らしが自然と可能という点も優秀だが、非接触攻撃技主体の相手には旨味がなく、ダイアイス・ダイロックを受けやすい点は噛み合わない。
- かみなり (特殊 属性:電 威力:110 DM威力:140 命中:70 PP:10)
命中率加味麻痺率21%。カイオーガ入り構築またはザシアン(王)カイオーガ環境において優先度が上がる技。
主要被採用理由の「ほうでん+ゴツメ+麻痺+ねっぷう」による対面ザシアン(王)撃破が雨下では満たせない (雨ねっぷうは与ダメージ半減) ところを、雨下必中の「かみなり+ゴツメ+麻痺+かみなり」で代わりに満たせるようになる。採用はほうでんとの差し替え・ほうでんとの両立のどちらも検討しうる。
H195D136ザシアン(王) かみなり 43.6~52.3%
H175D160カイオーガ かみなり 83.4~99.4%
- ウェザーボール (特殊 属性:無 威力:50 DM威力:130 命中:100 PP:10)
天候限定ながら範囲拡大となり対面性能が上がることから【対面構築駒として】検討しうる。特に霰下か雨下に地面への有効打となる。ディアルガ入りなど味方がダイアイスかダイストリームを扱え地面を誘う構築において優先度が上がる。 (雨はねっぷうの威力を下げ、霰は耐久調整を崩す点に留意)。
H196D101ランドロス(霊獣) 142.9~169.4% (霰天候) / 107.1~126.5% (雨天候)
- はねやすめ (変化技 属性:飛 威力:− 命中:− PP:10)
【対面構築駒として】麻痺×再生回復×ゴツゴツメットのシナジーが対面突破の観点で優秀。また、このサンダーに変身したメタモンとの対面に強くなる。構築がメタモンに弱い場合優先度が少し上がる。
- みがわり (変化技 属性:無 威力:− 命中:− PP:10)
状態異常対策と相手交代際の使用を基本としアドバンテージを握る。構築が嵌め手に弱い場合に優先度が少し上がる。
- ボルトチェンジ (特殊 属性:電 威力:70 DM威力:120 命中:100 PP:20)
後述の論文「クッションの理論化と定義」のとおりクッションと好相性の対面操作技。だが本育成論の前提がサイクルを回さない対面構築であり、【クッションとして】は後出しから2発攻撃を受け瀕死になる想定につき、本育成論のサンダーでは原則候補外となる。対面構築をベースとしつつも少しサイクルを回す想定の構築においてとんぼがえりと選択で採用が検討される。また、命中安定の特殊電気技を兼ねる扱いとしかみなりとの両立は検討しうる。特性せいでんきが後手ボルトチェンジと相性が悪い点には留意。
- 10まんボルト (特殊 属性:電 威力:80 命中:100 PP:15)
1割麻痺。威力・命中重視。主要被採用理由以外の採用理由より別の仮想敵への打点を考慮した場合に検討しうる技。ザシアン(王)対面での勝率(麻痺率)は少し下がる。
- げんしのちから (特殊 属性:岩 威力:60 DM威力:110 命中:100 PP:5)
主に対ヒートロトム。ザシアン(王)と同時採用時に優先度が少し上がる。
H157D127ヒートロトム げんしのちから 43.3~51.0% / ダイロック 79.0~93.0%
- でんじは (変化技 属性:電 威力:− 命中:90 PP:20)
能動的な素早さ操作技。だが、【クッションとして】はザシアン(王)後出しからこの技をザシアン(王)に当てる猶予はない。【対面構築駒】としてサンダーがダイジェットする機会が多い構築における後続サポートの意味合いが強く、相手を麻痺さえさせれば勝ち確となる展開で有益。
5-5:持ち物
- ゴツゴツメット
主要被採用理由上【対面構築駒として】ザシアン(王)対面で「ほうでん+ゴツゴツメット+麻痺+ねっぷう」によりダイマックスできずとも突破できうるアイテムとして原則採用。対物理における火力補助にもなる。
【クッションとして】も、後述の論文「クッションの理論化と定義」に記したクッション三大要素の[HP削り]に該当し[味方AT]と[仮想敵](本育成論ではザシアン(王))次第では必要。
別のアイテムの採用は構築次第の応用につきこれ以上の言及は避ける。
5-6:素早さ調整
HP・防御・特攻に必要な努力値を割いた余りの8による、素早さ実数値120と121の調整が検討しうる。
- 実数値121にする理由
無振りサンダーに先手となり、味方が削ったサンダーにはねやすめされる前にとどめを刺せる確率を上げる。一方で先手後手の確定により相手サンダーに安定した後手はねやすめを許す。
また、麻痺状態の最速スカーフヒヒダルマ(ガラル)など95族に先手を取れる。
- 実数値120にする理由
無振りサンダーと同速となり、はねやすめで粘る相手サンダーにターンを挟んでの2連続攻撃を叩き込め突破できる芽がある。
この詳細は筆者執筆のヤドラン(ガラル)育成論ソードシールド/2147参照。「後手×クイックドロウ」による行動順の不規則化を疑似的同速状況と捉え解説している。
なお、麻痺状態の最速スカーフヒヒダルマ(ガラル)など95族に後手となる。
6:構築組み・選出・運用
- 構築系統は対面構築とする。
- 対面性能が高い禁伝と一般ポケモンを揃え、ザシアン(王)に対面不利を取る味方がいればサンダー採用を検討。
- サンダーは対特殊クッションにはなり得ないため、味方は対特殊で引かないことを意識、または対特殊クッションを別途用意。
- 選出時は先発を原則避ける。
- 先発不利対面で物理相手であればクッションとしての役割を与える。【クッションとして】後出しから2回の攻撃を受けて捨て、HP削りと確率発動の素早さ操作で味方の有利対面を創出する (可能な限りこの運用をしなくて済むように選出に最善を尽くす)。こらえる採用時は3回の攻撃を受けて捨てる。
- 先発有利対面時は【対面構築駒として】死に出しから相手1匹を倒す。状況に応じサンダーダイマックスもあり。
- ザシアン(王)と対面した際はほうでん(→こらえる)→ねっぷうと行動選択。またはダイマックスを切る。
- H195D136ザシアン(王)に対し、ねっぷう+ゴツメ×3で相討ち、ダイバーン+ゴツメ×2で相討ち、晴れダイバーンで確定1発も頭に入れ行動選択。
- 再生受けに捕まった際はほうでん麻痺+ぼうふう混乱により相手の再生回復を阻害し強引な突破を検討。
7-1:与ダメージ (通常時)
育成論内で言及したポケモンと執筆時点の採用率トップ20。
- C187ほうでん
H175D81 ウーラオス(れんげき) 120.0~141.7% (連撃の型)
H201D118イベルタル 71.6~84.6%
H177D151カプ・レヒレ 64.4~75.7%
H175D160カイオーガ 61.7~73.1%
H155D96 エースバーン 56.8~67.7% (等倍)
H181D174ホウオウ 54.1~64.1%
H131D125ミミッキュ 51.1~61.8%
H155D111メタモン 49.0~58.7% (サンダーに変身したメタモン)
H175D120バドレックス(こくば) 40.0~48.0%
H197D111サンダー 38.6~46.2%
H195D136ザシアン(王) 32.3~38.5%
H175D120バンギラス 27.4~32.6% (砂嵐)
H191D115ポリゴン2 26.7~31.4% (しんかのきせき)
- C187ぼうふう
H175D81 ウーラオス(いちげき) 164.6~193.1%
H207D91 ゴリランダー 122.7~145.9%
H155D96 エースバーン 78.1~92.9% (等倍ダメージ)
H131D125ミミッキュ 71.0~84.7%
H202D86 ヌオー 66.8~79.2%
H196D101ランドロス(霊獣) 58.7~69.4%
H175D120バドレックス(こくば) 55.4~65.7%
H218D103トリトドン 51.4~61.0%
H215D116ムゲンダイナ 47.4~55.8%
H191D115ポリゴン2 35.1~42.4% (しんかのきせき)
- C187ねっぷう
H181D137ナットレイ 110.5~130.4%
H181D75 ヒヒダルマ(ガラル) 99.4~117.1%
H155D71 レジエレキ 61.3~72.3%
H195D136ザシアン(王) 51.3~60.5%
H204D129ネクロズマ(日食) 38.2~45.6% (プリズムアーマー)
H175D120ディアルガ 32.0~38.3%
7-2:与ダメージ (ダイマックス)
- C187ダイサンダー (威力:130)
H201D118イベルタル 116.4~137.3%
H177D151カプ・レヒレ 102.8~122.0%
H175D160カイオーガ 97.1~116.6%
H155D96 エースバーン 92.9~109.0% (等倍)
H181D174ホウオウ 87.3~103.9%
H131D125ミミッキュ 83.2~99.2%
H155D111メタモン 80.0~94.8% (サンダーに変身したメタモン)
H175D120バドレックス(こくば) 65.7~77.7%
H197D111サンダー 62.9~74.6%
H195D136ザシアン(王) 52.3~61.5%
H175D120バンギラス 43.4~52.0% (砂嵐)
H191D115ポリゴン2 42.4~50.3% (しんかのきせき)
- C187ダイジェット (威力:140)
H175D81 ウーラオス(いちげき) 209.1~246.9%
H207D91 ゴリランダー 156.5~185.5%
H181D75 ヒヒダルマ(ガラル) 108.3~128.2%
H155D96 エースバーン 98.7~116.8% (等倍ダメージ)
H131D125ミミッキュ 90.1~107.6%
H202D86 ヌオー 84.7~100.0%
H196D101ランドロス(霊獣) 75.0~88.8%
H175D120バドレックス(こくば) 70.3~82.9%
H218D103トリトドン 66.1~77.5%
H215D116ムゲンダイナ 59.1~70.2%
H191D115ポリゴン2 44.5~53.4% (しんかのきせき)
- C187ダイバーン (威力:130)
H181D137ナットレイ 150.3~176.8%
H181D75 ヒヒダルマ(ガラル) 134.8~159.1%
H155D71 レジエレキ 83.2~98.1%
H195D136ザシアン(王) 69.7~82.1%
H204D129ネクロズマ(日食) 52.0~61.8% (プリズムアーマー)
H175D120ディアルガ 44.0~52.0%
7-3:被ダメージ
- 物理被ダメージ (H197-B112)
A192ヒヒダルマ(ガラル) つららおとし 125.9~149.2% (威力65・ごりむちゅう)
A204バンギラス ストーンエッジ 104.6~124.9%
A244ザシアン(王) じゃれつく 84.3~99.5% (攻撃ランク+1)
A165ランドロス(霊獣) がんせきふうじ 44.7~52.8%
A184エースバーン かえんボール 56.3~67.0%
A182ウーラオス(いちげき) あんこくきょうだ 56.3~67.0% (急所)
A200ホウオウ せいなるほのお 51.8~60.9%
A142ミミッキュ じゃれつく 43.7~51.3% (珠)
A160ナットレイ ジャイロボール 42.6~50.3% (威力138・鉢巻)
A177ネクロズマ(日食) サイコファング 38.6~46.2%
A194ゴリランダー はたきおとす 21.8~25.9%
- 特殊被ダメージ (H197-D111)
C197ムゲンダイナ メテオビーム 121.8~144.2% (特攻ランク+1)
C202カイオーガ しおふき 117.8~139.1% (威力150・雨)
C222ディアルガ ときのほうこう 85.8~102.0%
C217バドレックス(こくば) アストラルビット 67.5~79.7%
C172ヒートロトム オーバーヒート 57.9~68.5%
C177サンダー 10まんボルト 54.3~64.0% (珠)
C152レジエレキ 10まんボルト 53.3~62.9% (トランジスタ)
C165ムゲンダイナ ダイマックスほう 42.6~50.8%
C187メタモン ほうでん 38.6~46.2% (サンダーに変身したメタモン)
C125ポリゴン2 れいとうビーム 39.6~46.7%
C183イベルタル あくのはどう 50.2~59.3% (ダークオーラ)
C145サンダー 10まんボルト 34.0~40.1%
C115カプ・レヒレ ムーンフォース 28.9~34.0%
C112トリトドン ねっとう 23.4~27.9%
C85 ヌオー ねっとう 17.3~21.3%
ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ
★クッションの理論化と定義
クッションとはに代わる項目として、クッションそのものに関する独立した論文を寄稿します。
この論文は定義がないクッションの要素を網羅的・論理的に紐解き、クッションの役割を可視化し、その定義化を試みた意欲作です。
クッションの定義化自体は第六世代時代に寄稿したヌメルゴン育成論ORAS・XY/1734内で既に試みており、示した定義が特に第七世代において多数の育成論に引用・コメント欄でご紹介いただいていました。しかしあくまで育成論の一項目に過ぎなかったため理論を少し欠いた内容でした。
クッションを網羅的に理論化した文献が他に無いこと、第四世代まで遡ってクッションの定義を導ける方が相当限られることを踏まえ、今回後世のための文献として理論を補い、クッションのすべてを以下に示します。
1:用語「クッション」の起源
明確な原典がない用語「クッション」の起こりは一般表現の「ワンクッション置く」が転じたものと考えられる。
「クッション役」という言葉が出てくる前、2010〜2011年頃の対戦オフ勢の構築記事に「ワンクッション置く」という表現が多用されだし、次第に略され「クッションとして」「クッションする」などと名詞的にも動詞的にもクッションという言葉が使用され始める。そしてその表現が用いられる対象が主にハッサムウォッシュロトムであったことから、ハッサムの後出しから後手とんぼがえりをする動き、及びそれに類するものがクッションという表現と結び付き曖昧に広まった。特にハッサムを愛用され、その強さを可視化されたユウキ氏の影響が大きい。
2:クッション普及の背景
第六世代環境の火力インフレ、直接的背景としては203ガルーラがvan氏により考案され、当時の物理受け筆頭のクレセリアがメガガルーラを受けられない構図が成立したことが、クッションの大規模普及の背景となる。
クレセリアでHPを削り別のポケモンで縛る形でのメガガルーラの処理が常習化するようになると、構築組みの時点からメガガルーラの処理に2匹を用いる構想にシフトする。
ここで物理受けとしての役割を果たせないクレセリアに代わり採用されたのがクッションであり、流行したのが対面構築である。
203ガルーラの登場以降ゴツゴツメット持ちの主流がクレセリアからスイクンにシフトしたことがその裏付け。受けを捨て対面性能を取ったことによる。
3:クッションの特異性
戦闘中にクッションとしての役割が与えられたポケモンの運用の初動は必ず後出しであり、前述普及の背景で触れたメガガルーラのような特定の相手に対し原則不利対面を作った味方の引き先として場に出す。
(※以降、特定の相手を「[仮想敵]」と記す)
クッションの役割対象はこの[仮想敵]であり、役割遂行はこの[仮想敵]の処理の完了を以てであることに変わりない。しかし、クッションに代わり味方(主にアタッカー)が[仮想敵]の処理を完了させても良しとし、クッション自ら[仮想敵]の処理を完遂せずとも構わないという特異性を持つ。
(※以降、味方(主にアタッカー)を「[味方AT]」と記す)
もちろん[仮想敵]のHPが残り僅かな状況など、クッション自ら[仮想敵]の処理を完遂することもあるが、原則的には前述起源のハッサムの後手とんぼがえり然り、前述歴史のメガガルーラの処理に2匹を用いる構築構想然り、クッションは[味方AT]有りきで成り立つ。
4:クッションの本来の存在意義
対戦の最終目標は勝利であり、勝利を目指す上で必要なポケモンが構築組みにおいて採用される。では何故わざわざ[味方AT]有りきで成り立つクッションを理由の1つとして採用する構築が存在するのか。
引き先をクッションの存在意義とするのは的を得ない。引き先であれば単体で成り立つ「受け」を採用すれば良く、第六世代はともかく第四・第五世代において「受け」を差し置いてはねやすめを切ったハッサム・ウォッシュロトムが採用された理由を説明できない。
また、前述普及の背景で触れたメガガルーラ受け不能・火力インフレを存在意義とするのも的を得ていない。これは環境因子であり、環境次第で存在意義の一つになり得ても本来の存在意義とはいえない。同様に構築への採用数に制約があるメガガルーラや禁伝などとの1対1交換によるリターンを存在意義とするのも対戦ルール因子である以上本来の存在意義とはいえない。
よって、クッションの特異な[味方AT]有りきで成り立つという点に本来の存在意義がある。
第四世代のハッサムを見る。ハッサムと共に採用された[味方AT]の筆頭はラティオスであり、その基本行動はりゅうせいぐん、使用後特攻が2段階下がるデメリットを伴う技である。ハッサムはラティオスの引き先となり後手とんぼがえりで再びラティオスを場に無傷で繰り出す立ち回りをする。ハッサムはラティオスの特攻ランク±0りゅうせいぐんの攻撃試行回数増加の観点で「受け」より優位性を持っている。
次に第五世代のウォッシュロトムを見る。ウォッシュロトムと共に採用された[味方AT]の筆頭はバシャーモであり、特性かそくを活かした全抜きを目指すバシャーモにとって最大の障壁が高耐久水、筆頭はスイクンである。ウォッシュロトムはスイクンと対峙したバシャーモの引き先となり、後手ボルトチェンジで[仮想敵]のスイクンに交代か被弾を強いつつ再びバシャーモを場に無傷で繰り出す立ち回りをする。バシャーモにスイクンを後出しされればスイクンにダメージ蓄積が入ることになり、ウォッシュロトムは繰り出し性能が低いバシャーモの繰り出しと、バシャーモの障壁たるスイクンの突破を経た全抜きを助けている。
両事例より「クッションは[味方AT]のため・[味方AT]の攻撃を通すために存在する」と言える。
特にウォッシュロトムは分かりやすい好例である。スイクンの処理はもちろんバシャーモによる全抜きも見込していることが勝利という目標に向けて理に叶っており、[味方AT]有りきという点を差し引いても採用意義があろう。
[味方AT]の攻撃スタイル (撃ち逃げや積みなど) とクッションの後出し後の行動には大きな振れ幅があるが、クッションが[味方AT]に尽くし、最終的に[味方AT]の攻撃を通す中で[仮想敵]の処理と勝利を見据えていることは共通である。
5:クッションの役割
前述どおりクッションは後出しに加え、[味方AT]の攻撃を通すために存在する以上、[仮想敵]に対しても[味方AT]の攻撃を通せる対面有利状況を創出することがクッションには求められる。
よって、クッションの役割は「[仮想敵]への後出し+[味方AT]による[仮想敵]の処理サポート」である。
6:クッションの役割遂行手段
対面有利状況を紐解くと、最もシンプルな状況は[味方AT]が[仮想敵]を先制かつ一撃で倒せる状況である。よって、[味方AT]が[仮想敵]を(主に一撃で)撃破できないならHP削りが、[味方AT]が[仮想敵]に先制できないなら素早さ操作が対面有利状況の創出手段の筆頭となる。
(※以降、HP削りを「[HP削り]」と記す)
(※以降、素早さ操作を「[素早操作]」と記す)
また、[味方AT]が無傷ないし低負荷で場に出て[仮想敵]と対面する[味方AT]の繰り出しのサポートも対面有利状況の創出手段となる。
(※以降、[味方AT]の繰り出しのサポートを「[無償降臨]」と記す)
[無償降臨]の手段については、後手とんぼがえりはもちろん、いやしのねがいやだいばくはつなどの退場技、だっしゅつボタンや特性ききかいひなどの交代手段、読みに依存する対面操作技のあくびも含まれ、クッションの瀕死に伴う死に出しも含まれる。
戦闘において[味方AT]が[仮想敵]に先制かつ一撃で倒せる状況に持ち込めば、すべてのポケモンがクッションの役割を持てることになる。後出しから捨てるだけの即席のクッションであれ、[味方AT]を[無償降臨]した先に[仮想敵]の処理と勝利を見据えている点は共通である。
その他、[仮想敵]の火力低下・[味方AT]の被ダメージ低減なども対面有利状況の創出手段に該当し、その網羅は困難。第九世代以降も新技・新特性により幅が広がろう。
原則対面不利状況から対面有利状況を創出する以上の過程は、総じて切り返しと形容できよう。
7:クッションの定義
「特定の相手を処理するべく後出しから切り返し、味方の対面有利状況を創出する行為及びポケモン」
以上の要素を包含した上記をクッションの定義とする。
8:クッション三大要素
「HP削り」・「素早さ操作」・「味方の無償降臨のサポート」
クッションとしての適正が高いポケモンの指標として、前述した上記3点をクッションに求められる三大要素と独自に位置付ける。
構築組みの段階でクッションを理由の1つに採用されるポケモンは、この三要素のうち、いずれか一つ以上の要素で秀でていることが多い。
もちろん、[HP削り]と[素早操作]の必要性は[味方AT]次第、[無償降臨]は瀕死による死に出しでも良いため、クッションがこれらすべての要素を満たす必要性はない。後述「クッションの主な例」も参照。
9:クッションの主な例
すべて前述の定義で包含できている。
- ハッサムハッサム [HP削り][無償降臨]
後出し後、後手とんぼがえりにより[仮想敵]の[HP削り]をしつつ[味方AT]を[無償降臨]する。第四世代の[味方AT]筆頭はラティオス、[仮想敵]筆頭はメタグロスバンギラスユキノオー。
育成論DS/6312
- ウォッシュロトムウォッシュロトム [HP削り][無償降臨]
後出し後、後手ボルトチェンジにより[仮想敵]の[HP削り]をしつつ[味方AT]を[無償降臨]する。でんじはを採用すれば[素早操作]が可能となる。第五世代の[味方AT]筆頭はバシャーモ、[仮想敵]筆頭はスイクンギャラドス。
ウォッシュロトム157-x-140-125-161-106 ハイドロポンプ/ボルトチェンジ/でんじは/ねむる@カゴのみ
- スイクンスイクン [HP削り] (要:ゴツゴツメット)
第六世代において物理受けに代わり普及した対面構築におけるクッション。第六世代の[仮想敵]筆頭はメガガルーラ。対面性能の高さに舵切っており、クッションとしてはどのポケモンにも可能なゴツゴツメットによる[HP削り]と死に出しによる[無償降臨]しかできない。先発不利対面時のみクッションとして、先発有利対面時は対面構築駒として戦う。
スイクン207-x-148-139-135-98 なみのり/れいとうビーム/ぜったいれいど/ミラーコート@ゴツゴツメット(第六世代時・配布限定個体・性格のんき固定)
- ニョロトノニョロトノ [素早操作][無償降臨] (要:だっしゅつボタン)
いわゆる脱出トノ。後出し時、特性あめふらしで雨を降らせつつだっしゅつボタンで退場し、特性すいすいの[味方AT]を[無償降臨]する。特性すいすいの発動が[素早操作]となり、[仮想敵]は[味方AT]が雨無しで対面不利を取るポケモンすべてという解釈で定義と合致。第五世代の[味方AT]筆頭はキングドラ。
当時の対戦オフ界でニョロトノキングドラ使いとして著名なコバルト氏が2011年5月には使用されており、コバルト氏は特に自身の構築記事でクッションというワードを含む様々な表現を当時多用された。ハッサムとはやや動きが異なるニョロトノがクッションとして認識されているのはコバルト氏の影響が少なからずあろう。
育成論BW/1874
- ボルトロス(化身)化身ボルトロス [HP削り][素早操作][無償降臨]
いわゆるHBオボンボルト。203ガルーラと同時期にvan氏が考案したボルトランドコントロールが起源。特性いたずらごころ×でんじはによる[素早操作]と、後手ボルトチェンジ・とんぼがえりが可能。でんじは後に後手ボルトチェンジはできないが、[味方AT]と[仮想敵]及び状況に合わせて柔軟に採用技・行動を選択できることは個性。第六世代の[仮想敵]の筆頭はメガバシャーモメガボーマンダ。
ボルトロス(化身)184-108-132-145-105-131 10まんボルト/とんぼがえり/でんじは/ちょうはつ@オボンのみ
- クレセリアクレセリア [素早操作][無償降臨]
後出し後、トリックルームにより[素早操作]をし、みかづきのまいにより[味方AT]を[無償降臨]する。[味方AT]のHP全回復を伴うクッション。
育成論ORAS・XY/393
- ガオガエンガオガエン [HP削り][無償降臨]
後出し後、ねこだまし・後手とんぼがえり・後手すてゼリフにより[仮想敵]の[HP削り]をしつつ[味方AT]を[無償降臨]する。ダブルバトルにおけるトップメタ。敵味方2匹ずつという要素を除外して見ればその動きはクッションである。縛り解除との親和性が高い。
育成論ソードシールド/2566・育成論サンムーン/1674
- カビゴンカビゴン [無償降臨]
第六世代時点にはいなかった新参のクッション。[無償降臨]手段が対面操作技のあくびであり確実性が無い上、[HP削り]・[素早操作]要素もないが、特に第八世代においてはダイジェットにより[味方AT]自ら素早さを上げることで[仮想敵]との対面優劣を逆転できる点から、[味方AT]の起点・有利対面を作りダイジェットを経て[仮想敵]を処理する動きを取る。積み技持ちの[味方AT]と相性が良い。
育成論サンムーン/1054
- ヌメルゴンヌメルゴン [素早操作]
接触攻撃に後出しし、特性ぬめぬめで即時[素早操作]しつつ瀕死となり、素早さランクを下げた[仮想敵]の前に[味方AT]を[無償降臨]する。第八世代のダイジェットと相性が良い。
育成論ソードシールド/1789
- 後出しで捨てる行動 [無償降臨]
[味方AT]が[仮想敵]に先制かつ一撃で撃破できる状況にまで持ち込めば、すべてのポケモンが後出しから[味方AT]を[無償降臨]できうる。
10:他の被採用理由とクッション
味方が有利対面を作り続ければクッション自体が不要である以上、クッションの役割は味方不利対面発生時という戦闘中にのみ生じ柔軟に付与するものである。よって、構築組みにおいてクッションのみを理由にポケモンが採用されることは選出機会が生じない以上無く、クッション以外の被採用理由が伴ってはじめて採用される。
そしてその別の被採用理由とクッションは何らかの要素で親和性が高いことが多い。
例を挙げると、
- 「受け+クッション」: 後出し
- 「起点作り+クッション」: あくび等・[味方AT]有りき
- 「相性補完サイクル+クッション」: 後出し・後手とんぼかえり・[味方AT]有りき
などである。別の被採用理由との親和性もクッションとしての適正の高さの指標となろう。
本理論では他の被採用理由により生じうる役割・行動を分離・除外した上で論理的に考察し、クッションの役割の可視化・定義化を前述どおり試みた。しかし現実のクッションは他の被採用理由に準じた行動に付随しがちである。故に後出し行為が共通する「受け」と混同されがちであったことは言うまでもない。本理論の読解・クッションの理解には、他の被採用理由に準じた行動と分けて考えることが不可欠である。
なお、前述のスイクン及び本育成論のサンダーのような「対面構築駒+クッション」は、各被採用理由に準じた運用場面が完全に分離されており、双方の被採用理由に親和性がない例となる。後出し時は純粋なクッションとしての運用を行うため、本育成論のサンダーの理解によりクッションの理解も速まろう。
クッションの理論化と定義:おわりに
各日本語の意味が時代と共に変化するように、ポケモン用語も時代と共に変化するものです。特に「受け」はその典型ですね。この定義も今は的を得ていても、世代が変わると的を得なくなるかもしれません。特に新技・新特性によって。後世に本理論をご参照の方は以上の点にご留意の上お役立てください。
ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ ヌメラ
おまけ:禁伝環境クッションヌメルゴン
ヌメルゴン育成論ORAS・XY/1734を寄稿した身として触れないわけにはいかないでしょう。ヌメルゴンは現環境においてザシアン(王)軸構築におけるメタモン対策を理由の1つに採用機会を持つ希少なポケモンとなっています。
- 特に有用な展開 (ザシアン(王)素早さ奇数調整必須)
相手メタモン:メタモンを死に出し 特性かわりものが発動しザシアン(王)に変身
相手メタモン:特性ふとうのけんが発動し攻撃ランクアップ
自分ザシアン(王):交代しヌメルゴン登場
相手メタモン:きょじゅうざん!
相手メタモン:ヌメルゴンの持ち物ゴツゴツメットが発動し残HP130
相手メタモン:ヌメルゴンの特性ぬめぬめが発動し素早さランクダウン
自分ヌメルゴン:ダウン! ザシアン(王)死に出し
自分ザシアン(王):きょじゅうざん! メタモンダウン!
自分Win!
こだわりスカーフ持ちメタモンがザシアン(王)ヌメルゴンのどちらに変身しようが、ラスト1匹のメタモン相手に勝ち確となります。ゴツゴツメットかジャポのみの所持でメタモンのきあいのタスキも潰せます。
- 素早さ奇数調整
この展開を実現するにはザシアン(王)の素早さ奇数調整が必須です。ザシアン(王)が素早さ奇数の201の場合、メタモンはこだわりスカーフと素早さランク-1の補正で素早さ200となり、ザシアン(王)がメタモンに先手を取れるという素早さ補正の端数切捨てのカラクリを突くためとなります。
ヒスイヌメルゴンが特性ぬめぬめだと流行るなあと思います。