どうも、ファイドです。今回も「新技を覚えて強化されたからフォーク論を書こうと思ったらそもそもテンプレ論すらなかった」シリーズです。
- 指定のない限りすべてのポケモンは理想個体とする
- HP、攻撃、防御、特攻、特防、素早さをそれぞれHABCDSと表記
- ポケモン名やタイプ、持ち物に一部略称を使用
- ダメ計にはトレーナー天国様のものを使用
はじめに
ダイマックスの登場により、ダブルバトルの戦術は大きく変わった。「ダイマエース+サポート」の並びで1体ずつ倒していく戦術が環境のほとんどであり、互いが誰をダイマックスさせるのかを見極めつつ臨機応変な立ち回りが要求され、バトルを難化させている。
そんな中、環境初期から不思議な立ち位置で活躍を続けているポケモンがイエッサン♀である。これまでは、このポケモンは味方を守るサポート役としての役割がほとんどであったが、教え技の追加で一気に強化された。
巷では「この指を使うニンフィア」とまで呼ばれているらしいこのポケモンについて、今回はテンプレ補完をしていく。
このポケモンの強み
ズバリイエッサン♀の強みはダブルで強力な以下の要素を全て兼ね備えていることである。なお、これら全てを持ち合わせるポケモンは他に存在しないため、差別化は不要である。
- フィールド特性
- この指とまれ要員
- 高火力範囲技
- 横の火力、耐久サポート
- 優秀なタイプと安定した耐久力
これらはなぜ強いのか
以上の要素それぞれが強力である理由を、基礎まで掘り下げて解説する。
- 特性サイコメイカー
現在環境には特性グラスメイカーを持つゴリランダーが蔓延している。純粋に草技の火力が上がるだけでなく、グラススライダーとかいうチート技をぶん回してくるため非常に厄介だ。しかし同じフィールド特性を持つイエッサン♀を繰り出して書き換えてしまえば大きくパワーを削ぐことができる。
またそもそものサイコフィールドが強力な性能であり、エスパーの火力を上げながら先制技を無効化できる。猫騙し持ちガオガエンゴリランダーやいたずら心持ちエルフーンオーロンゲなどに強く出られるようになる。
- この指とまれ
この技はこれまで、トリプルのドーブルがよく持っていたりフレンドガードピッピのメイン技だったりはしたものの、ダブルにおいて必須な要素かといわれるとそうでもなかった。その大きな理由としては、猫騙しで事足りること、高火力範囲技持ちが多かったことなどが挙げられる。
しかし今作で状況は大きく変化した。猫騙し無効かつ全技単体攻撃のダイマックスという要素が追加されたからである。本来敵味方の縛り関係を誤魔化すための技であった猫騙しだが、相手はいつでもひるみを踏み倒し、逆にこちらを縛ることができるようになった。そのため、(依然強力だが)猫騙しは相対的に弱体化し、他に味方を守る手段が必要とされるようになった。
そこで浮上したのがこの指である。現環境では、特に初手対面では「エース+サポート」もしくは「ギミック始動+サポート」という並びが一般的である。つまり殴ってくる相手は1体だけの場合が多いといえる。さらに、相手が最大限に火力を出そうとするとダイマックスする必要があり、必然的に単体攻撃になる。そのため、ほぼ確実に横のポケモンを守れる唯一の技であるといえる。
- チート範囲技ワイドフォース
鎧の孤島で追加された教え技であり、イエッサン♀の株が急上昇した要因である。まず注目すべきは追加効果とその発動条件であり、サイコフィールド下で威力が1.5倍の範囲攻撃となる(もちろんフィールド効果1.3倍も乗る)。上述の通りイエッサン♀は特性でサイコフィールドを貼ることができるため、抜群に相性がいい。火力はダブル補正込みで威力90、つまりこれまでメインウェポンであったサイコキネシスを敵2体に撃っているのと同じである。
そして何より強力なのが、この超性能技をサポート枠のポケモンが使えるということである。この指止まれで他のポケモンをサポートするだけでなく、相手視点ではイエッサン♀自身が殴ってくる択を警戒する必要性が生まれた。また場合によっては火力要員として選出することも可能になり、汎用性が格段に向上した。普通に頭おかしい。
- タイプと耐久
このポケモンは耐性は少ないが同時に弱点も少ない。特に環境に虫タイプはトンボ返りと一部の中堅くらいしか存在していないため、実質弱点が1つだけである。
そしてこれは後述の内容と大きく関わってくるが、等倍ならダイマックス技でも大抵1発は耐えられ、持ち物次第では抜群でも耐えることができる。またさすがに2耐えするほどの耐久はないため、この指要員として程よいタイミングで倒れて、後続に繋ぐことができる。
(イエッサン♀自体は火力もあるため放置されても腐りにくい)
- 各種サポート技
エスパータイプ特有の補助技の豊富さはこのポケモンも例外ではなく、火力補助の手助けや両壁など構築に合わせて広い範囲のサポートが可能である。
かなり長々と書いたが、端的に言うと1体でいろいろ出来すぎるのである。
持ち物
候補はいくつかあるが、基本的にはこのポケモンの耐久力を補助するものを持たせるべきである。ただし詳しくは後述するが、パーティによって相手の攻撃をどの程度耐えたいのかが変わってくるためよく考える必要がある。
以下オススメ度順
- サイコシード
最もオーソドックスな道具。もともと特殊耐久は高い方ではあるが、物理方面が薄いために努力値をほとんど回せない。そのため少しでも場持ちを良くするために持たせる。
単純なB特化ならB>Dだが、シードを発動させることでこれが逆転するため一応ダウンロード対策にもなる。
- 防塵ゴーグル
この指とまれの一番お手軽な対策法は眠らせることである。眠り粉持ちフシギバナが使用率10位、キノコの胞子持ちモロバレルが19位(ともに7/26現在)というクソ環境であるため、こちらも人気な持ち物。
また純粋な耐久は上がらないため、さっさと死んで欲しい展開構築では優先的に使われる。
- ナモのみ
いわゆる半減実、悪タイプを半減できる。前述のとおり実質唯一の弱点である悪タイプを無理やり受けにいくことができる。とはいったものの基本的にはバンギラスウーラオス(いちげき)ピンポイント。
- オボンのみ
主に受け出し時の負担を軽減するためのもの。この指展開のときよりも、フィールド要員やアタッカーとして後発に置いた際に生きる。
なお本来は確定2発を3発にズラす道具として知られているが、このポケモンは半減で受け出せる相手が少ない上に、高火力のダイマックス技を頻繁に受けるため場持ちはさほど良くはならない。
<補足>気合のタスキについて
HOMEによるとこのポケモンの持ち物としてサイコシード、防塵ゴーグルに次いで多いのがタスキということになっている。しかし基本的にはこのポケモンにタスキは必要ないと考える。
そもそもタスキのメリットはどんな攻撃でも1発は耐えられることであるが、このポケモンはHBに特化すれば大抵の攻撃は素で耐えられる上に、半減実を持たせればタイプ相性も誤魔化せるからである。もちろん鉢巻や眼鏡を持っていたら怪しい相手もいるが、他のポケモンの対面性能を捨ててまで、確定で集中砲火を受けるこのポケモンにタスキを持たせるのは間違いであると思う。
(CSに厚いアタッカー型とかならアリだが)
技構成
- 確定技
この指とまれ
ワイドフォース
仮想敵不特定
コンセプトより確定、外す理由がない
- 準確定技
手助け
誰でもできるっちゃできるが、持っていて損はない。
- 選択技
確定技の2つ以外は使う機会があまりないが、あったら便利な技を多数習得できるためパーティと相談。
以下優先度順
守る
この指要員として大事に扱いたい場合、またアタッカーとして相手に縛られたくない場合に使う。
リフレクター
特にこれといってすることがない時に使うと後続のサポートも可能になる。ただし物理耐久はそこまで高くないため若干張りづらい。
光の壁
同上。ただしこちらはイエッサン♀の耐久のおかげで貼りやすいものの、トゲキッスとかいう急所であらゆるバフデバフを貫通してくるバカがいるので注意。
サイドチェンジ
この指持ちなのにサイチェンなんて要るのか?と思う方もいるかもしれないが、横と相性補完が良く攻撃を分散させたいときなどに使える。
例えばローブシンイエッサン♀と並んだとき、ブシンにはエスパー技、イエッサンには悪技が飛んでくる。ここでイエッサンを失いたくない、もしくはこの指で対応できない(悪技がエスパー技より先に飛んできて、イエッサンがワンパンされてしまうためにブシンを守れない など)場合、サイチェンで入れ替わって互いに半減で受けることができる。
神秘の守り
味方全体の状態異常無効。ミストフィールドを貼れないため、やけどや眠りなどで崩されることを防ぐ。
ただしフシギバナの上から貼ることはできないため、ゴーグル+この指の方が実用的。粉技以外の催眠に対応できるのがメリット。
マジカルシャイン
仮想敵バンギラスウーラオス(いちげき)ガオガエンetc.
悪への打点。といいつつもほとんど火力はでないため、削り残しや脱出ボタントリック用に使う程度。
調整
このポケモンを使う上で最も重要なのは、どの技を耐え、どの技で倒れるかということである。普通に考えて、この指要員が場にずっと残っていた方が常に味方を保護できて強い、と思われがちだが、実は生き残ることが不利に働く場合もある。
例えばトリル展開の場合、初手にトリラー+イエッサン♀と並べ、この指をからめて確実にトリルを張る、という動きが一般的である。このときこのポケモンの役目はトリルを張れた時点で終了しており、鈍足でも高耐久でもないイエッサン♀が生き残っていてもお荷物であり、トリルターンを浪費してしまうだけである。そのため、この指でさっさと倒れて裏につなぐことが最も効率的で強力な動きといえる。
また他にも、バンギラスとの対面でこちらの裏にバンギに強いウーラオス(れんげき)がいた場合などが考えられる。HB特化のイエッサン♀は特化バンギの噛み砕くを耐えられるため、相手はダイマを切らざるを得ない。このときナモの実を持っていればダイアークも耐えられるのだが、それよりも裏のウーラオス(れんげき)を出してダイマバンギを粉砕してしまった方が勝ちに繋がりやすい。ダイマを誘いつつ一撃で倒され、即座に裏を無傷降臨させて有利盤面を作ること、つまりイエッサン♀の切り時を見極めることで、安定した勝ちを狙いにいける。
このようにパーティごとに最低限耐えたい攻撃が変わってくるため、このポケモンを採用するときには一度耐久調整を試みるのもいいかもしれない。しかしそれはあくまで"パーティ単位の調整"であり、こちらが指定するのは野暮である。そのためここには最も汎用性の高いHB型と、調整型の一例のみ記載する。
テンプレHB型
図太い
調整 H252/B252/D4
実数値 H177/A54/B128/C115/D126/S103(個体値26〜27)
H-B 特化
D 余り
S ゴリランダー抜かれ
とりあえずBが低いので特化。ドラパルトのダイドラグーンが確定耐えや特化ゴリランダーの持ち物なし叩きが超低乱数2なため、割とちょうどいい数値である。なおA個体値は0推奨。
このポケモンは先述したゴリランダー対策も兼ねているのだが、なぜかこの2体は同速である。よってこのときどちらが下を取る(=フィールドを後から張る=フィールドの取り合いで勝つ)かでS下げチキンレースが始まる。耐久に厚めのゴリラは基本的にS個体値を削っていると思った方がいい。
ではどこまで下げるのか、ということなのだが、無振りミロカロスがS実数値101である。ゴリランダーはミロカロスに対して基本的に有利を取れるものの、下手に上を取られると冷Bでやられてしまう。よってゴリラは最低でも4振りミロカロス抜きの103、もしくは12振り抜きの104までしか下げられない。よってイエッサンとしてはこれ以下に下げることで対面時確実にフィールドを取れる。
しかしイエッサン♀自身もワイドフォースによる制圧が可能であるため、Sを下げすぎると役割が狭まってしまう。よって筆者としてはS実数値103(個体値26〜27)をオススメする。
調整例、エースバーン意識
控えめ
調整 H252/B180/C76
実数値 H177/A-/B108/C137/D125/S103
B珠エースバーンの跳び膝蹴り確定耐え
C余り
エースバーンからの非ダイマ状態での最大打点である膝を耐える程度まで耐久を落とし、ワイドフォースで相手への負担をより大きくした。これによりフシギバナを上から2つ切って高乱数で落とせるようになる。
相性のいい味方、構築
ブリムオン
お馴染みイエブリ。トリル始動+エースと、この指+手助け+範囲技+フィールドという相性抜群の組み合わせ。
ウーラオス(いちげき)
攻守の相性補完に優れ、横に並べてサイチェンとこの指の択を押し付けるだけでも強い。
ポリゴン2
トリラー。フィールドで猫騙しをカットしつつ、この指で確実にトリルを発動できる。
フーディン育成論ソードシールド/1193(シングルですが一応)
最速のワイドフォース使い。低耐久をこの指で誤魔化せる。
ダイマ不要の高火力範囲技の連発により、悪タイプのいない構築を一瞬で制圧できる。
いろいろ挙げたが、基本的にはほぼ全てのダイマエース、低耐久エース、トリラーと相性が良い。
苦手な相手
バンギラスウーラオス(いちげき)(いちげき)
ワンパンされる上にこちらから打点がないためやることが限られてくる。動きがかなり制限されてしまうため、できれば出したくない。
基本的な立ち回りと注意点
- エースと並べる場合
トゲキッスブリムオンのようなダイマエースとの並びなら初手から、フーディンニンフィアのような非ダイマ範囲エースのサポートなら後発に置いてフィールドを温存するのが良い。
動きとしてはシンプルにこの指をするだけだが、相手はそれを見越して初めからイエッサンを狙い、イエッサンに通る技を撃ってくる。そのため手助けなど他の行動をとっても実質的には役割を果たせる場合が多い。
また、横のエースがミリ残ししそうでワイドフォースでトドメを刺すべき場合や、相手の交代が読める場合など脳死でこの指をうつと無駄になることもあるため、慎重に技を選択する。
- トリルなどの展開補助をする場合
基本的には初手出ししてこの指+ギミック発動。
ただし、特にトリル追い風のようにターン制限のあるギミックの場合イエッサン♀はすぐにでも倒れて裏に繋ぎたいが、初手の並びはしばしば低火力になり1ターンで倒してくれない。そのようなときは挑発に注意しながらも1ターン様子を見ることが必要である。
またエルフーンやサマヨールと並べた場合相手のガオガエンが非常に重い。ミロカロスなどを横に置き先に処理してしまうと良い。
- 範囲アタッカーとして使う場合
基本的にはニンフィアと同じような動きだが、フィールド特性を持つため後発推奨。サイクルを回しながら隙を見て攻撃し負担をかけていく。なおダイマ適性はない。
- その他
この指とまれという技は相手の攻撃を全て引き寄せるため、自演弱保や叩きパ始動の味方殴りの対策としても選出できる。具体的にはエルフーンテラキオンの袋叩き+正義の心展開、サマヨールドラパルトの影打ち+弱保展開などが挙げられる。
しかしサマヨールバンギラスの地ならしのように全体技は防ぎようがないほか、キュワワー起動の場合特性の影響で相手の技がこの指よりも優先度が高いため止められない。
また叩きパ界隈の方曰く、「この指が居ようとお構いなしに叩きを押していく方が強い」らしいので、あまり対策になっていないようだ。(初ターンの展開を阻害できるだけでこちらとしては充分なため、こちらも普通にこの指を打っていっていい)
ダメ計
それぞれダメージの目安として分かりやすいもののみを記載する。これ以外は適宜推測、計算して頂きたい。
なお計算は確定欄の調整に基づく。
性格補正込み252振りを"特化"と表記
- 与ダメ
ワイドフォース
フィールド、ダブル補正込み
(火力指数20182.5)
フシギバナ 68.4〜81.3%、確2
ドラパルト 49.7〜58.9%、超高乱2
Hぶっぱゴリランダー 40.6〜48.3%、確3
ドリュウズ 24.3〜28.6%、超高乱4
- 被ダメ
特化ゴリランダー キョダイコランダ(フィールドなし)
76.8〜91.5%、確2
同 はたき落す 42.9〜50.8%、超低乱2
珠エースバーン キョダイカキュウ 86.4〜103.4%、低乱1
特化バンギラス 噛み砕く 82.5〜98.3%、確2
トゲキッス 急所ダイジェット 85.3〜100.6%、超低乱1(急所率が50%なため実際の突破率は3%)
特化珠ジュラルドン 悪波 100.0〜119.2%、確1
特化ラプラス キョダイセンリツ 74.6〜88.1%、確2
(参考) 特化ニンフのハイボの指数 23429
あとがき
前回のバンギ論、投稿から一月近く経っていますが、閲覧数は同じ日に投稿された別の論の半分以下。やはりダブル論は需要が低いのだと痛感しました。
このサイトは初心者向けのデータベースとして位置付けられています。しかしダブルの論は数少なく、そもそもネット全体でも構築記事や動画など初心者が参考にできるもの自体が少ないのが現状です。
確かに、2vs2で戦うダブルバトルにおいて、単体を考察することよりも「並び」や「戦術」単位で学ぶことの方が優先度は高いでしょう。しかしダブルの初心者には個々のポケモンの強み、戦い方を知ることで「並び」や「戦術」の理解がより深まることを知って欲しいと思っています。
僕自身は、どう贔屓目に見てもトッププレイヤーとはいえず、せいぜい中級者止まりでしょう。そのため見る人が見れば論に甘い部分があるかもしれません。しかし、初心者の方々が僕と同じ程度のところまで駆け上がる、その足がかりにはなれると思っています。だから今後も、足りない経験と知識と頭脳とをこねくり回して、投稿を続けていきます。
不特定多数に見てもらえずとも、いつか誰かの助けになると信じて。
12/8追記、情報提供求む
数ヶ月前の論をまだ見ていただけるのはありがたい限りですが、冠環境になってから一度もこのポケモンを使っておらず、今の環境でなぜ25位というそこそこの順位に生き残れているのか分かっていません。そのうち回そうとは思いますが、使用感等があればコメントを頂けると幸いです。