ヤドランとはヤドラン
水エスパーというタイプ相性と高めの物理耐久が見事に噛み合い、愛らしい見た目と相まって旧作から愛用者は多い
第8世代におけるヤドランは大型アップデート「鎧の孤島」でようやく解禁された(ランクバトルでは未解禁だが)
主にタイプ相性で不利ではない物理アタッカーへの対策として採用されるが、てっぺきで詰み技を封殺、トリルで後続サポート、あくびで起点作り、など意外と多芸
本論では、第8世代における変化を中心に考察していこうと思うポケモンアイコン50個の制限に引っかかるくらいには長いので、必要に応じて読み飛ばしていただきたい
ヤドランの主な変更点
- 高火力メインウエポン、ハイドロポンプ獲得
数多くの特殊水ポケモンにとって最高火力となるハイドロポンプを初代から今まで覚えなかったが、第8世代にてとうとう技レコードで獲得した
ダメージ計算は後述するが、ねっとうやなみのりではあと一歩届かないという確定数に手が届くようになった
PPや命中が不安という無視できない欠点はあるものの、火力が大きく改善されたと言えるだろう
- 優秀なサブウエポン、ボディプレス獲得
ボディプレスとは第8世代から登場した自分の攻撃ではなく防御を参照してダメージ計算するという唯一の性能を持つ技
防御に努力値を振るほど火力が上がるため、物理受けポケモンと非常に相性がいい
アーマーガアアーマーガア、デスカーンデスカーンなどが覚えたが、ヤドランも無事習得した
今まで格闘技は命中不安なきあいだましかなかったため、悪物理アタッカー対策に大きな安定感が出た
- ダイマックスの登場
一気に火力が上がって最大三連発できるダイマックス技の登場で中途半端なサブウエポンでも突破の可能性が出てしまった
特に、(過去世代では覚えるポケモンは多かったが威力が低すぎて採用率の低かった)かみなりパンチを威力130のダイサンダーに変化させることでエレキフィールド補正までかかるようになってしまったのはかなり痛い「かみなりパンチ」で育成論を検索して41件も引っかかるあたりその採用率の高さが伺える
じゃくてんほけんを高耐久から無理矢理発動することも容易になったため、安易に弱点を突く選択ができなくなったことも逆風
とはいえその過程で「相手にダイマックスを使わせた」と考えれば、その後の展開で自分だけダイマックスを使えるのは大きなアドバンテージになるだろう
ダイマックスを使われた場合、ヤドランを崩されても後続をダイマックスさせて一気に抜くか、後述する道具を採用してそれでも崩されないようにするか、ヤドランをダイマックスさせてダイウォールでやりすごすかなどの方針は事前に決めておきたいところ
- メガシンカの消滅
第7世代ではメガヤドランメガヤドランになることで物理攻撃の確定数を大きくずらすこともできたが、その選択肢は完全に無くなった
- れいとうビームの有用性低下
氷技は水技との相性補完に優れ、ガブリアスガブリアス、グライオングライオン、ランドロスランドロス(霊獣)、ボーマンダメガボーマンダなど採用率の高い数多くの相手の4倍弱点を突くことができたため採用率は高かった
しかし第8世代では上で挙げたポケモンはいない
環境トップから姿を消したとかではなく本当にいない
現環境にも4倍弱点を突ける相手がいないこともないが、そのためだけに採用する価値があるかというとかなり微妙になってしまった
(旧世代でもそうだったが)不一致2倍弱点を突いたところで草タイプ相手に勝てるようなものでもない
- 新技クイックターンの登場
水タイプ版とんぼがえりとも言えるクイックターンが教え技として新登場した
習得ポケモンが限られているとはいえ、タイプ相性が有利な相手に有利対面を作りづらく、不利対面を作られやすくなってしまった
この点では水を完全無効にできるブルンゲルブルンゲルに軍配が上がる
技
- ハイドロポンプ
前述したとおり最高火力
- ねっとう
ハイドロポンプに威力で劣るものの、後出ししてきた相手に火傷で圧力をかけられるのは大きい
半減だと安心して後出ししてきたナットレイナットレイやギャラドスギャラドスに運が良ければ火傷を入れて火力を大きく削げることがある
PPが多く持久戦に強いこともメリット
- サイコキネシス
連撃ウーラオスウーラオス(れんげき)、ローブシンローブシン等格闘を強く意識したい場合に
- ボディプレス
前述したとおり、タイプも性能も優れるサブウエポン
- だいもんじ
ナットレイナットレイ、ハッサムハッサムなど使用率の高い相手に4倍弱点を突きやすい
ただし、ナットレイにはボディプレスという選択肢が生まれ、ハッサムはあってもやや厳しいことを考えると優先度は下がった
- れいとうビーム
水技との相性補完に優れるが上述のとおり優先度は低め
- くさむすび
水タイプに通るが威力不安定なのが大きなデメリット
6,7世代ではメガギャラドスメガギャラドスへの打点になったが、それもいなくなった
マリルリマリルリには60、ウォッシュロトムウォッシュロトムには20しか通らない
- イカサマ
相手の攻撃を参照する攻撃面に努力値を割けない受けポケモンにとって優秀な攻撃技
しかし、撃ちたい相手もそれほどいなくて、バルジーナバルジーナと違ってタイプ一致で撃てないためそれほど火力も出ない
- なまける
安定の回復技
行動回数が大きく増えるためほぼ確定
- てっぺき
積み技相手に強く、相手によっては弱点を突かれても回復が追いつくようになる
ボディプレスの火力が上がるというメリットも生まれた
特殊アタッカーを後出しされては結局交代せざるをえず、無償降臨を許してしまうことになるため、使うタイミングはよく考えるように
- トリックルーム
継続的に先手が取れるようになる優秀な素早さ操作
有利な相手にさらに強気に出られる他、後続にも効くため、相手交代で腐りにくく、読みを外した時のリスクが低い
ただし、てっぺきと違って対応できる範囲を広げられるようなものではない
後続サポートありきの性能と考えて、組みたいポケモンと併せて採用を検討したい
(トリルに依存しすぎる構築も考えものだが)
- あくび
交代してきた相手にさらに交代を強制させる
ステロでゴリゴリ削るか眠らせた相手を積みの起点にするか、どちらにせよ組ませる相手をよく考えること
- でんじは
こちらもトリックルームと同じく素早さ操作ができるサポート用
5ターン制限がないメリットはあるものの、最も呼びやすい電気タイプに効かないこと、ヤドランそのものに恩恵が薄い(ヤドランの素早さの2倍未満の素早さを持つ相手は限られるため)ことを考えると優先度は低め25%の行動不能が出まくることに期待する運ゲ上等の方はこちら
なまける+水技+変化技+攻撃技が基本
このように選択肢が豊富で、変化技と攻撃技の採用でできることは大きく変わるため、パーティとよく相談してやりたいことを絞るように
特性
- さいせいりょく
サイクル戦で強い優良特性
受けポケモンという性質上、自ずとサイクル戦になりやすいため発動機会が多く相性がいい
- どんかん
メロメロはともかくちょうはつ無効は便利
遅く補助技が充実しているヤドランは特にちょうはつを呼びやすいが、安心して回復や積みができる
- マイペース
混乱が大きく弱体化され採用率も激減したためこちらを採用するメリットもほぼ無い
今世代からいかく無効という効果も追加されたが物理技を使わないヤドランでは無意味
持ち物
- たつじんのおび
弱点を突けても確定数が・・・という痒い所に手が届く便利な逸品
- オボンのみ
分かりやすい耐久向上
確定数がずれるため、てっぺきとの相性が良い
- ナモのみ
ボディプレスで悪タイプに高火力を押し付けやすくなったため本格的に選択肢に入る
後述するソクノのみもそうだがやや汎用性に欠ける
- ソクノのみ
役割破壊のダイサンダー相手にもてっぺきが間に合うようになる
さすがに特殊アタッカーの相手は無理
- ゴツゴツメット
上の選択肢と違って明確な採用理由は見えないが優秀なダメージソース
今作で増えた連続技、トリプルアクセルやすいりゅうれんだでゴリゴリ削れるとおいしい
- たべのこし
長期戦に持ち込めばオボン以上の回復が見込める
オボンと違って即効性は薄く、確定数をずらすようなことはしづらい
能力値
ずぶといHB特化残りCが基本
トリルを採用する場合はのんきに
調整例
H244:実数値201 再生力回復量の効率が良い3n調整
C36:ハイドロポンプでドリュウズドリュウズ確定一発
意識すべき相手
- エースバーンエースバーン
採用率トップクラスの物理アタッカー
特に採用率の高いかえんボールととびひざげりを共に半減できる
とんぼループに持ち込まれたりダイアークを連発されるとツラいが対策としては十分
てっぺきやトリックルームでふいうちをスカせる点も見逃せない
珠リベロエースバーンふいうち(=とんぼがえり)→ヤドラン:50.2~59.7%
ヤドランハイドロポンプ→エースバーン(等倍):52.2~61.9%
- ドリュウズドリュウズ
高い物理耐久のおかげで後出しが安定し、水もよく通る
とはいえつるぎのまいもあるので積まれる前に対処したいところ
ヤドランハイドロポンプ→ドリュウズ:97.2~114.5%
- カバルドンカバルドン
こちらも後出しが安定し、水がよく通る
ドリュウズとの並びがよく採用される
帯ヤドランハイドロポンプ→H252カバルドン:93.9~110.6%
- カビゴンカビゴン
元より有利だったが、ボディプレスで高火力を押し付けやすくなったため、あくびループに持ち込まれづらくなった
ヤドランボディプレス→カビゴン:53.6~63.8%
なまけるの回復が追い付くため、後出ししやすく、基本的に有利
ダイマックス役割破壊サブウエポンには要注意
- バンギラスバンギラス
前作では砂嵐込の鬼のような特殊耐久のせいでやや不利だったが、ボディプレスを習得したため一気に有利になった
バンギラスかみくだく→ヤドラン:51.7~62.6%
帯ヤドランボディプレス→H252バンギラス:97.5~115.9%
- ルカリオルカリオ
一致技を両方半減できるため物理型には有利
あくのはどうを採用した特殊型もそれなりにいるためそうなると厳しい
てっていこうせんは半減でも結構痛い
ルカリオあくのはどう→ヤドラン:50.7~59.7%
帯ヤドランボディプレス→ルカリオ99.3~117.2%
- ウーラオス(連撃)ウーラオス(れんげき)
一致技をどちらも半減できるため後出しは安定するが、こちらからの火力もサイコキネシス以外不安
ビルドアップもあるためあまり悠長にはしていられない
ヤドランサイコキネシス→ウーラオス(いちげき):89.1~106.2%
- ウーラオス(一撃)ウーラオス(いちげき)
タイプ相性的に厳しい
確定急所でてっぺきも無効にされる
本来有利なはずの連撃ウーラオスと選出時点で見分けがつかないのが痛い実は微妙に違うらしいが、こうして二つ並べたところで誰も分かりやしない
- ギャラドスギャラドス
タイプ一致かみくだくが消えたと思ったら今度はなぜかパワーウィップを習得してしまった
こちらからの決定打がないためちょうはつで詰む
てっぺきを採用していなければりゅうのまい→パワーウィップで押し切られる
逆に言えばどんかんさえあればてっぺき込の泥仕合長期戦で勝機はある
ギャラドスパワーウィップ→ヤドラン:44.7~53.7%
- ナットレイナットレイ
だいもんじがあれば勝てるが無ければ厳しい
てっぺきがあるなら上を取れるのでしっかり耐えてボディプレスがキッチリ通る
数少ないトリルがデメリットになる相手なので立ち回りはよく考えたい
帯ヤドランだいもんじ→H252ナットレイ:100.5~119.3%
- ハッサムハッサム
だいもんじがあれば4倍弱点を突けるが上からとんぼがえりを打たれるとやはり厳しい
- ドラパルトドラパルト
採用率トップクラスでタイプ相性が不利
れいとうビームで弱点は突けるが不一致2倍程度ではやはり厳しい
ゴーストダイブ読みで後続を無償降臨させて逃がさずに狩れればおいしいが・・・
- ミミッキュミミッキュ
物理アタッカーだが、つるぎのまいを積まれて弱点を突かれてあっさり突破される
死に出しでてっぺきを積めればまぁなんとかといったところで、後出しは危険すぎる
対ミミッキュ物理受けはナマコブシナマコブシ、アーマーガアアーマーガアなどいくらでも適任はいるので強く意識したいなら素直にそちらを採用すべき
弱点を突かれるだけでなく、逃げたところでボルトチェンジでさらに有利対面を作られる
何かしら無効にする手段を用意しておきたいところ
- マリルリマリルリ
上を取られるわ、こちらから決定打はないわ、はらだいこの起点にされるわでまさに最悪の相手
絶対対面しないくらいの心持ちで
他ポケモンとの比較
- ドヒドイデドヒドイデ
優秀な耐久値を持ち、ヤドランとタイプ相性が似ているため、エースバーンエースバーン対策としてよく採用される
さいせいりょくも優秀
ヤドランにはふいうちととんぼがえり、ドヒドイデにはしねんのずつきが抜群で通るどっちにしてもダメじゃねぇかとか言わない そもそもあの範囲で全技タイプ一致で撃てる方がおかしいんだ
それ以外にも虫フェアリー半減、地面エスパー2倍など一長一短
技レパートリーはわずかに劣るが、草フェアリーによく通る毒がタイプ一致で撃てるのは大きい
耐久ポケモン潰しのどくどく、サイクル戦に強いどくびしも強み
- ブルンゲルブルンゲル
こちらもヤドランとタイプ相性がよく似ている
耐性は優秀なものの、数値的にはやや心許ない
例:珠ドリュウズじしん→ブルンゲル:49.7~58.9%
しかし、半減でもそれなりに痛いエラがみやとびひざげり、ループに持ち込まれるとツラいクイックターンを無効にできるのは強み
それ以外にも削りと耐久アップを同時に行えるおにび、耐久アップと回復を同時に行えるちからをすいとるなどヤドランは覚えない優秀な技を覚える
- ナマコブシナマコブシ
優秀な耐久値を持つ水タイプ
タダで積み技を封殺できるてんねんが何よりの強み
攻撃技が反射技しかないのが大きなデメリットで、ちょうはつで起点にされやすい
似通ってる点は多いが、そもそもタイプ相性が全く違うため、相手ができるポケモンも大きく異なる
現環境で物理受けポケモンを二枚仕込んでがっつり受けループという構成はやや難しいので、パーティとよく相談していずれか一体に絞るのが無難か?
相性の良い味方
- ガラガラ(アローラ)ガラガラ(アローラ)
草相手に火力が高く、ボルチェン切りもできる
トリルと相性がいい点も◎
分かりやすいウォッシュロトムウォッシュロトム、ヒートロトムヒートロトムメタ
草は一貫するので何かしら別の対策を
言わずと知れた特殊受け
物理相手にヤドランを投げて特殊相手にラッキー、ハピナスを投げる旧世代から存在する所謂受けループ戦法
わるだくみなど積み技採用率増加が逆風か
- ゴリランダーゴリランダー
ヤドランから決定打の無い水に強い
グラススライダーのおかげでトリルの有無関係なく動きやすい
- ドサイドンドサイドン
トリルと非常に相性の良いエースアタッカー
相手物理アタッカー(電気タイプに交代)→ヤドラン(トリックルーム)→相手電気(ボルトチェンジ)→ヤドラン(ドサイドンに交代)→(ボルトチェンジ無効)
という流れが理想的
ハードロック、ダイマックスのおかげでじゃくてんほけん全抜きも視野に入る
まとめ
ダイマックスという逆風はあるものの、優秀な物理受け性能は健在で、対策できる相手は多い筆者は完全に趣味で採用しているが
この論を読んで少しでもヤドランの魅力が伝われば幸いである