ポケモンノベル ＞＞ 小説を読む

ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。

　少々ながら寒さを身に覚える亜寒帯の場所に、5つの気候帯を司る、ライボルト、エレキブル、デンチュラ、ランターン、そして【くに】の長・シビルドンが集った。しかし、凍てついた視線をお互いに掛け合うのみ。誰一人と口を開こうとはしなかった。そんな状況を打破すべく、シビルドンが声を掛けた。
「これより緊急会談を開始致す。議題は【どうすればグレイシアとルギアを倒せるか】である。皆の意見を聞かせておくれ。」
　しかしまぁ彼らの性格からしてだ。誰一人何かを言う事は無く。無言が暫く続いた。凍てつく視線をお互いに掛け合うだけの時間が流れていくだけ、否、止まっているのではないか、と。
「敗北、絶対、消滅。」
　最初に言葉を発したのは、喋る時に必ず動詞がごっそり抜けることで有名な寒帯の主・ランターン。しかし「敗北」「絶対」「消滅」を解釈すれば言いたいことは何かしら伝わってくる。
「ランターン、要するに君が言いたいのは『勝ち目無し、そのままジオグラ原は消滅。絶対に。』という事か。しかしそんなことは無い。勝ち筋は残っt
「勝つ訳ないよ…ﾌﾞﾙﾌﾞﾙあー寒っ…」
　エレキブルまで勝ち筋無しと発言か。完全に協調性が消えているのが分かり易い位だ。
「いや…【かえんほうしゃ】があればグレイシアはほぼ制圧可能ですよ。あとルギアは飛行タイプもありますから、電気で抜群を取れますよ。すみませんが、負けたという事実がどこにも無いのに勝てない勝てない勝てない勝てない言わないで頂けます？」
　勝てると必死に説得するシビルドン。勝てないと断言して戦意喪失の気候帯統治者たち。そんな膠着状態を打破したのは＿＿

「ヴィィィィィイイイルルルァァァアアアアア！！！」

　ランターンの【れいとうビーム】だった。
　強力な技を真正面に受けたシビルドンだった。凍傷もあった位強い一撃だったが、何故か反撃の素振りは見せようとしない。普通なら、ここで戦いに転じる筈…なのに。シビルドンは何を考えているのだろうか。
「勝ちたく…ないんですか…？…」
　凍傷でまともに口が動かないシビルドンが涙目で彼らに訴える。本当に勝ちたいのだ、と。
「僕がいなくなったら…ジオグラ原をどうするというんですか……？今の君達…じゃ…気候帯を統べる者に相応しく……ない…！」
「消すんだよー！シビルドンには分からないー？」
　悪意が混じった軽快な声がシビルドンのメンタルを潰すと同時に、ライボルトの【かえんほうしゃ】が容赦なく突き刺さる。今度は大火傷がシビルドンを襲う。シビルドンの訴えなど、心に刺さる筈が無い。気候帯の統治者には温厚なシビルドンだから、何も反撃しない。できない。彼らの凍てついた視線に圧倒される。シビルドンは、こいつらはもうどうしようもないのだと悟った上で＿＿。

ー決めた。もう僕一人で戦う。ー

　気候帯を統べる主達は大いに喜んだ。喜びのあまり、笑いまくった。シビルドンが傷付く姿がもっともっと見れるんだ！、と。嬉しい。嬉し過ぎて堪らない。こんなに生きてて最高の瞬間ってあるだろうか。今日から僕がジオグラ原を統治できるのだ！と期待が胸に収まり切らない。シビルドンの涙に同情する統治者はいなかった。笑いまくる統治者しかいなかった。




　　ただ一人、温帯の主を除いては＿＿＿＿