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EPISODE OF MEW

著編者 : 結月

EPISODE 1  序章

著 : 結月

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人間って、なんて愚かな生き物なんだろう

権力も力もないくせに、それでも常に何かを欲したがる


人間って、なんて馬鹿な生き物なんだろう

勝目がないってわかってるくせに、それでもまだ立ち上がる


人間って、なんて浅はかな生き物なんだろう

間違いを犯して後悔するくせに、それでもまた過ちを繰り返す。


人間って、なんて都合のいい生き物なんだろう

僕らを捕まえて戦わせるくせに、違う生き物同士の友情をやけに信じたがる。


そんな、愚かで馬鹿で浅はかで都合のいい生き物だけど、でも僕はそんなに嫌いじゃなかったんだ。

きっと僕の同類たちも同じだったさ。





…少し、前まではね。




エピソード オブ ミュウ
~これはミュウの大暴走のお話~




Episode1


ピコン-ピコン-


天高く建ったビルの間を、右に曲がり左に曲がり、急降下したかと思えば天を駆けるように上へと昇っていく。
神速の世界でそんな芸当ができる奴を、僕は自分以外には知らなかった。
でも新種であろう、その無機質の物体は、僕がいくら撒いたって付いてきて、律儀にもピコンピコンと、持ち主に信号を送っているようなのだ。


『あぁもうっ!』


ワザを使っている暇は無い。
僕はそれを長くしなる尾で地面へと叩き落とした。

ピシッ--
ドォォォォォン--

地面に激突したそれは、破壊音をたてて呆気なく真っ二つに割れる。
しかし、なんと2つになったそれは、それでも僕を挟み込むように浮上してきたではないか。


『なっ』


思わず驚きの声が漏れる。
これだから人間の成長には頭が下がるんだ。
僕がそんなに必要なのか、こいつらは。
これじゃあいくらやっても切りがないので、僕は冷凍ビームを打つ準備をする。


すると


《スフィアh-03。コアチェンジ『サーナイト』》


不意に無機質の物体から人間の声がして、途端にそのコアは紫色のオーラを纏った。
そして僕のビームをミラーコートでいとも簡単に跳ね返してしまう。


『っ…』


僕はそれを苦い思いで見た。
全てのポケモンの原点的な存在である自分の技を、たった1匹のサーナイトが跳ね返せる筈がない。
よって、さっきのミラーコートには、きっと数匹分のサーナイトのエネルギーが使わ れているのだろう。
一体何匹が犠牲になったんだろうか…
考えただけでも気が狂いそうだ。


ーー人間は変わってしまった。
僕らと共に生きるのを止めて、ポケモンをエネルギーとして動く機械『スフィア』を近くに置くようになったんだ。
時代は移り行くもの。
仕方ないことだと、始めは思っていたんだ。


数百年前、それはとてもとても楽しい時代だった。
ポケモンマスターを目指す少年少女と、ポケモンとが心を通わせ、共に学び鍛え勝利を目指す。
その興に混じって、僕だって気に入ったトレーナーにくっついて、楽しい時間を過ごしたりしたさ。
今でも鮮明に覚えてる、大切な大切な思い出たち。


でも時代は移り行くものなんだね。
500年も経てば、僕の愛した人は死んでいったけど、ポケモンと人間の人口は数倍にまで膨れ上がった。
そうすると、何が起こるか分かるかい?

…生存競争だよ。


既に考え得る限り、全ての資源を使いきってしまっていた人間は…いきなり掌を返したんだ。
彼らは、僕らから友という概念を一切捨て去ってみて考えた。
するとどうだろう、彼らは僕らポケモンの内に秘められている膨大なエネルギーの存在に、瞬時に気付いてしまったんだ。
なんて利口なんだろうね。
そんな利口な彼らはきっと、世の中に溢れる、何も知らない僕らを見て、にんまりとほくそ笑んだだろうさ。


見てごらん。
この世にはまだまだ、使えるエネルギーがこんなにもあるではないか!


…ってね。




尚も続く双方からの攻撃をすり抜け、僕はある一点を目指して飛行していた。
ここから少し離れた森の奥、人目のつかないところにひっそりと暮らしている、パルキアの所だ。
僕はもう、彼の卓越した空間能力を借りなければ、あの物体から逃げられなくなってしまっていた。
…なんか情けなく聞こえるかもしれないけど、前は普通のテレポートでも簡単に逃げられてたんだよ!
でも少し前…丁度、『スフィア』が“g”になったくらいからかな…その球体は僕のテレポートにも付いてくるようになったんだ。
その時はすごーく驚いたさ!
なんでかって言うと、それは別にその物体がテレポートしてきたことに驚いたんじゃなくて、その浮遊物から、とてもとても懐かしい気配…ミュウツーの気配がしたからさ。


彼はつい最近、やっと信頼できるパートナーを見つけて、幸せになり始めていた。
“ツー”は今までに辛い思いを何度もしてきたから、もう幸せになっても罰なんて当たらないはずでしょ?
そんな彼をまた人間の玩具にするなんて…君は許せるかい?


少なくとも、僕は許せなかった。
その時は、全身の細胞が煮えたぎるくらい怒り、恨み、人間を殺したくなるくらい憎んださ。
でも、手を出すことは一切しなかったよ。
だってそうとすると、人間好きな僕の子孫達が止めてって懇願するから、そんな人間達のことをまだ好きだって言うから、やるにやれなかったんだ。
でもそんな彼らも、今や人間の生活を快適にするためだけのエネルギー源として使われてるんだから、憐れな話だよね…
野生として生きているポケモンは、今ではもう、僕だけになってしまったみたいだ。


そろそろパルキアの所に着きそう。
ここからでも、一段と輝く彼のオーラを感じることが出来る。



『パルキア!』


僕はそう声を掛け、彼…否、人間の女のもとへと急降下した。


「あら、また来られたのですか?」


そう愚痴りながらも、笑顔で僕を迎えてくれる、この巫女服に身を包んだ女の子は、率直に言えば、代々パルキアに仕えていた一族の末裔の子だ。
只今、人間の目を欺くためにパルキアを体内に隠しているため、パルキアの力が使えるそうだ。
詳しいことは正直分からないけれど、なんて勇気のいる行為だろうって、彼女を見る度にいつも思うよ。
自分の中に神に等しい力を取り込むんだ、当然怖いだろうし、苦痛だって伴うだろうさ。
それでも、彼女のお陰で今、 世界の空間の平穏は保たれている。
時間も狂ってないってことは、ディアルガも同じ様にして匿われているのかもしれないね。
僕は、そういう愛すべき人間がいる限り、人間を滅ぼしちゃいけないって、こっそり決めているんだ。
だから彼女を見ると、すごく安心する。だって…


「ミュウさん?」


と、話を戻さなくちゃね。


『えっと、なんだい?』
「しっかりしてください。追われているのでしょう?次はどこに飛びましょうか?」
『そうだね…』


パルキアは静かで隠れられそうな好きな場所まで飛ばしてくれるんだ。
この前は深い深い谷底に飛んだ。
でも結局、街まで誘導されてしまったからそれは失敗、ボツ。
山も同じく駄目だった。
人口が一番多い街に人に化けて行った時なんか、もう最悪だったね。何人の犠牲者が出たんだろう。
どれも悪くない作戦だと思ったんだけどな…


そんなお手上げな僕を見て、パルキアはクスリと笑った。


「当てがないのなら、お薦めの場所がありますが如何です?」


おお!空間の神のお薦め場所かぁ!


『いいね、時間もないし、そこにしてみるよ』
「分かりました。さぁ早くお入り下さい。敵が来ます」


そう言うと彼女は、持っている短剣でズバンと空を斬った。
すると…そこには、ぽっかり浮かぶ空中通路が出来るんだ!
パルキアの“亜空切断”、いや、何度見ても痺れるよね。


パルキア、次いで僕がそこに入ると、彼女はすぐに入り口を閉めた。
こうすると、もう敵には察知されないんだ。
これって、ある意味凄い隠れ家なんじゃないかって思うかもし れないけど、僕はずっとここにいるわけにはいかない。
なんてったって、彼女と世界にもの凄い負担をかけちゃうからね。


「さぁ行きましょう」


二人で駄弁りながら並んで進むこと数分、僕たちはある小さな出口の前に着いていた。


「ここは、さっきの大都会とは間逆の田舎地域です。恐らくこの村の住人は…ポケモンの存在自体を知らないでしょう」


パルキアは僕から目を反らし、気まずそうに顔を歪ませる。
そっか…遂に僕らの存在自体をも知らない人間が出てきちゃったか…
僕も少し憂鬱になるが、でも確かに、そこは隠れるには絶好の場所かもしれない。


『ありがとうパルキア。ここに行ってみるよ!』
「分かりました。…ミュウさん、どうかお気を付けて」

そう言うと彼女は、静かに僕をその穴へ押し出してくれた。
まるで掃除機で吸い込まれているかのような圧迫感に、堪らず僕が目を閉じようとした、そのとき


「絶対に人間に捕まってはいけませんよ。私の中のパルキアも、きっとそう望んでいますから」


霞む視界の中でパルキアがそう、希望を称えた目で言った。

そうだ、全てのポケモンはきっと、僕に期待している。

僕は空間の波に揉まれながら、目を瞑った。
彼らポケモンたちは、人間にエネルギーをとられてしまった子達のことを嘆きつつも、僕に“どうにかして、もとの楽しい世界に戻してよ”と、そう言っている。

僕は耳を塞いだ。

さて、僕は誰に期待しようか。

僕だけ誰にも期待しちゃいけないなんてそんな無慈悲なこと、誰も言わないよね…?


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2015.7.22  13:13:31    公開
2019.7.10  03:21:09    修正


■  コメント (1)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

結月さん、初めまして。泡雪という者です><*
なかなかコメントができませんでしたが、今コメントさせていただきます。

まず、あらすじで興味を持ち、そのまま引きずられるような気持ちで読み始めたのですが、とても良いテーマにますます興味心は積るばかりですっ…><*
今回出てきた少女は、パルキアの力を持っているけど、パルキアでは無い。だけど、体内にパルキアが寄生(ちょっと違う気がしますが)しているのですから、パルキアなのでしょうか。
あと、「神に等しい」が「髪に等しい」になっていましたよ。
それと、表紙絵とか募集していたりしますか?よければ描かせてもらえないかな…とか思っていたりしまして。
それでは〜><*

15.8.2  13:34  -  不明(削除済)  (yukine)

 

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