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ポケモン不思議のダンジョン 革命隊

第最終話 Good dye Good bay さようなら

著 : ハルナツ・シュートウ

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 ブランはフーディンの言葉を聞くと静かに頷いた。

 時はパーティが始まる前まで遡る――

*

 ミルヒライ城……パーティの会場に向かっていたブラン。そのブランにフーディンが話しかけてきた。

「ブラン君。悪いが時間をくれないか?」

 フーディンは改まったような表情でブランに問い掛ける。ブランは頷きフーディンの話を聞いた。

「地下の研究ラボで放射能を発生させたと思われる機材を見つけたのだ。これでお前さんも人間に戻ることが出来るぞ」

 フーディンはブランの頭を撫でながらそう言った。だがその途端ブランの顔に悲しみの表情が浮かんだ。

「……分かっておる。サブレ達と別れるのが辛いんだろう?」

 フーディンはブランの心境を察しそう言う。ブランはそれに応えるように無言で頷いた。

「……人間に戻るも戻らないもお前さん次第だ。もし人間に戻る覚悟が出来たら、研究ラボのC-4フロアまで来なさい」

 フーディンは言い終えると、地下の研究ラボへと歩いていった。

*

 フーディンはブランの反応を見ると、近くの機材を起動させた。

「所でサブレ達には別れは言ったのか? 人間に戻ると決めたからにはこの大陸から出て行くつもりなのだろう?」

 フーディンはせっせと機材を操作しながらブランにそう問い掛けた。

「……イヤ、言ってない」

 ブランは無表情でフーディンの問い掛けに答えた。

「ッ! 何でですかブランさん。何も言わずに別れたらサブレさん達が悲しみますよ」

 ブランが返事をした途端、フーディンの横でサポートをしているユクシーがブランの返事を聞いて反論した。

「確かに俺はこの大陸を離れるけども、それは一時的な事だ。コトが片付いたらまたこの大陸に戻ってくるつもりだよ」

 ブランは笑顔を浮かべると、ユクシーを見ながらそう言った。

 一方パーティ会場――

「サブレ! ブラン何処行ったか知らない? なんかいつの間にか消えてて……もぐもぐ」
「ブランなら少し席を外すって行って何処かに行ったよ」

 ブランの行方を聞いてきたマリルリにサブレはそう答えた。

「……それにしても遅いなぁブラン。ちょっと見てこようかな」

 サブレは帰りが遅いブランを心配してパーティ会場を後にした。

「ブラン! 一体何処にいるのーッ」

 サブレは城の廊下を走りながらそう呟く。すると目の前にエンテイ伯爵とブースターが現れた。

「ハーハー……エンテイ伯爵。ブランを知りませんか」

 ブランは足を止め、息を切らしながらエンテイ伯爵にそう尋ねた。

「……ブラン君なら政府直下生物研究ラボに向かっているのを見かけたが、どうかしたのか」

 エンテイは見たことを思い出しながらブランにそう言う。ブランの行き先が分かったサブレはエンテイに深く礼をして、研究ラボへと走っていった。
 地下への階段を降りラボに辿り着いたサブレは、ブランを探し回る。ブランの探しながらラボの中を彷徨っていると、とある部屋から気配を感じた。

「そこにいるの ブラン!!」

 サブレが思い切りその部屋の扉を開け、部屋に転がり入った。

「誰だ?」

 フーディンは開いた扉の方向を向きそう叫んだ。

「……サブレ」

 部屋の中にいたブランは入ってきたサブレに気がつきそう呟いた。

「どういう事ブラン。ここで何をするつもりだったの……」

 入ってきたサブレはフーディンのいじっている機材を見ながら不安そうにそう言った。ブランはサブレに駆け寄ると正面切ってサブレの顔をじっと見る。

「……バレたからには言うしかないな。だがこれだけは約束してくれサブレ。今から俺が言うことに一切反論するな」

 ブランはサブレの肩を叩くと厳しい表情をしてそう言った。サブレは同意するように頷く。

「……俺は人間に戻るよ。そしてこの大陸から出て行く」

 ブランの口から出た言葉はサブレにとって衝撃的なものだった。

「どうして! それならなんで別れ……」

 サブレは思わずそう口にしたが、ブランの『反論するな』という言葉を思い出し直ぐに口を閉じた。

「……だがもう戻ってこないわけじゃない。ユクシー伯爵やフーディンにも言ったが、コトが片付いたらまたこの大陸に戻ってくる」

 ブランはそう言うと、フーディンが操作している機材の台座に座った。

「ブラン……人間に戻ったらボクの言葉も通じなくなっちゃうんだよね。もう話し合えなくなるんだよね」

 サブレは膝をつき悲しそうな表情でそうブランに問い掛けた。

「確かにそうかもしれない。だが、俺達は信頼している仲だ。たとえ言葉が通じなくても心で通じ合うだろう」

 ブランは自信の含んだ声でサブレにそう言うと、フーディンに機械を起動するように声をかけた。

「……わかった。やるぞ」

 フーディンがそう言うと、ユクシーと一緒に機材の操作を始めた。するとフシギダネが座っている機材の辺りが眩い光で包まれていく……

「さようなら……フシギダネのブラン……!!」

 ブランが光に包まれていく中、サブレは最後にそう一言呟いた――

*

 クーヘンという大陸から一つのモーターボートが出発した。そのボートには一人の男が――

 そんな出来事から五年の月日が流れた――

「ちょっと何やってんのよぉ」

 メレンゲという町の統治者の屋敷から女性の声が上がった。

「すまない! 直ぐに片付けるぜエムたん」

 そう言ってエムリットの部屋に散らかったゴミを片付けるガブリアス。

「まったく。本当はイヤだったんだけど、アンタがよく働くっていうからアタシの召使にしてあげたのよ。感謝しなさいよねっ」

 エムリットはツンツンした表情でガブリアスにそう叱りつけた。

「そう言って。本当は嬉しいんでしょう」
「ひゃあ、サーナイトさん!」

 エムリットが振り向くとサーナイトがお菓子を持って立っていた。

「あれ、それって……」

 エムリットはサーナイトが持っているお菓子を指差してそう言った。

「ああ、これですか。エムリット様が好きなハニークッキーですよ。エムリット様はいくつになっても甘いものがお好きなんですね」

 サーナイトは笑みを浮かべながらそう言うと、クッキーをテーブルに置き部屋を後にする。エムリットはそれを詰まらなそうに口に運んだ。

「もぐもぐ。ハァー そういえばサーナイトさん。五年前から余りアタシを苛めなくなったわねぇ。それはそれでよかったけど、なんか寂しいなぁ」

 エムリットはそう呟き、窓の外の景色を眺めながらクッキーを食べた。

*

 アロス エンテイ邸――

「それにしてもおめでとう御座います。五年たった今でもエンテイ公爵殿が公爵に当選した時の事を思い出すと、嬉しくて涙が出ますよ」

 エンテイ伯爵改め、エンテイ公爵の執事のブースターは涙目になりながらそう言った。

「有難う。だがそうウカウカしてられんな。デオキシスのような過ちを犯さぬように正しき政策をしなければならん」

 エンテイはそう言うと真面目な表情になった。

「……私が公爵になれたのも元はといえばブラン君達のおかげだ。最後に彼にお礼を言っておきたかったよ」

 エンテイ公爵はそう呟くとため息をついた。

*

 ガブリアスの故郷 ラフティ――

「やあ諸君。元気かい」
「長い時間が経っちゃったけど、新しい統治者を連れてきたわよ」

 今もなお復興作業中のラフティ。そこに隊長とマリルリは新しい統治者を連れてきた。マリルリの後ろから小さなポケモンが姿を現す。

「やぁやぁボクが今日からここの統治者ダヨー」

 そこに現れたのはアグノムという幼いポケモンだった。

「……こんなちっこいのに任せても大丈夫なのかね。隊長さん?」

 ラフティの住民の一匹が、アグノムを指差しながらそう言った。

「ちっこいのとは何ダー!! ボクに任せて大丈夫ダヨー!!」

 アグノムは小さいと馬鹿にされ激昂して叫んだ。

*

 マドレー ユクシー邸前――

 ユクシー伯爵と執事のハッサムは静かに町を眺めていた。

「住民達が楽しそうに笑っている。やはり平和というものはいいものですね、ハッサム」

 ユクシーは平和と呼ぶに相応しい町並みを見ながらハッサムに問い掛けた。

「左様で御座いますね」

 ハッサムはユクシーを見ながらそう答えた。

「……もう五年ですか。ブランさんが旅立ってから」

 ユクシーはブランの事を思いながら青空を見上げた。

「時間の経過とは早いモノですね…………。 それはそうと私ももう17…… そろそろ公爵に当選したときの事を考えないといけませんね」

 ユクシーは青空を見上げながらそう呟く。そして深く深呼吸をした後、大きく背伸びをした。

「ユクシー様。私はいつまでも貴方の執事ですからね……」

 太陽の下大きく背伸びをするユクシーをハッサムは優しく見守りながら、静かにそう呟いた。

*

 ミルヒライ城跡 牢獄――

 ここの牢獄には七匹の侯爵、そしてレジロック等三匹とレジギガスが収容されている。ここに丁度サブレの幼馴染のヒノアラシが尋ねていた。

「……おいおいヒノアラシ君。今度はさーまともに統治者として全うするから、ここから出してくれよ」

 嘗てサブレやヒノアラシの統治者だったレジアイスは、鉄格子越しに哀れみの目でヒノアラスにそう問い掛けた。といってもレジアイスに目はないんですけども。

「ダメだァ! 大人しくここで反省してろってぇの!!」

 だがヒノアラシはそんなレジアイスの言葉を聞き入れず怒鳴った。そして一通り見て回ったヒノアラシは牢獄を後にした。

「……せっかく久しぶりにメレンゲからミルヒライ城に帰れると思ったのに、まさかまた牢獄行きになるとは」

 牢獄の中で一匹の侯爵ルギアは窓の外の景色を眺めながらそう呟く。

*

 そしてワッフル――

 村から一匹のポケモンが何処かへと出かけていく。そのポケモンはサブレ。彼は木の実を拾うためにクルミの森へと出かけていった。

「さァて、今日も一杯リンゴとオレンの実を収集するぞォー!!」

 サブレはそう気合を入れると辺りをくまなく探し始めた。すると草の陰に一つのオレンの実を発見ん。

「やった! まずは一個ゲェッ――」

 そう言った瞬間、サブレは手に持っていたオレンの実を地面に落とした。

「……きみは」

 気がつくとサブレの目の前に一人の人間の男が立っていた。するとサブレは泣き出しそうな顔でそう呟いた。人間の男はしゃがみ込むとサブレの頭を優しく撫でた。

「やっぱりそこの砂浜に漂着してよかった。そこからならワッフルに近いからな……」

 涙が頬を伝う。そしてサブレは名前を呼ぼうと口を開いた。

「……ブラン?」

 サブレがそう言うと、人間の男はサブレに顔を近づけた。

「ただいま サブレ」

 人間の男はそう言うと、もう一度サブレの頭を撫でた。

「……おかえり ブラン」

 サブレは瞳に涙を溜めながら人間の男にそう答え、微笑む。すると人間の男はポケモンの話した言葉を理解したのか、同じように微笑んだ。

 ―― END ――

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2008.3.16  22:53:47    公開


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