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ポケモン不思議のダンジョン 革命隊

第15話 新制度構築を目指して…… 前編

著 : ハルナツ・シュートウ

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「アタックフォルムだって? 一体なんなの」

「……ドーピングのようなものでしょうか。攻撃力などを上昇させる」

 ユクシーは、疑問を浮かべた表情でデオキシスに尋ねた。

「……左様。だがドーピングとは少し違う。私は自身の遺伝子を操作することにより、自身の攻撃、防御、すばやさ――それぞれに特化した形状に姿を変化させることが出来る」

 デオキシスはいい終わるなり、鞭のように鋭くなった腕を振り回し、ガブリアスへと攻撃を繰り出す。

「まずは貴様だ。アタックフォルムの威力、身を持って味わうがいいッ!!」

 鞭がガブリアスの顔面に当たる――しかし、その瞬間ガブリアスは腕をクロスし、防御の体制に出た。だが攻撃に特化したフォルムにフォルムチェンジしている所為か、デオキシスの攻撃はとても重く、ガブリアスのガードを貫きそのまま押し倒した。ガブリアスは部屋中に散乱しているシリンダーの上に押し倒され、辺りにガラス片が飛び散る。

「デオキシスの野郎、なんつー攻撃力……。それはともかく、エムリットたん大丈夫だったかい? シリンダーの破片で怪我とかしたら大変だよォ」

 ガブリアスはシリンダーから立ち上がるなり、行き成りエムリットの心配をする。そして、

「他の四匹はどうでもいい。エムリットたんが無事ならば」

 ブラン達四匹のほうを向きそう言い放つ。当然ブラン達は怒り――と思いきや、怒りに火がついたのはエムリットのほうだった

「ってこんなときに何言ってんのよ、まったくぅ!アンタなんかデオキシスの奴にボコボコにされて死んじゃえばいいのよ」

「そんなこと言って、本当は嬉しいんでしょ?」

 ガブリアスはエムリットの言葉など聞かず、自分のペースで話すばかり。ブラン達は少し呆れている様子。

「ガブリアス。茶番はその辺にして、奴への攻撃を開始するぞ」

「……え? ああ、わかった」

 ガブリアスはそう言うなり、デオキシスに向かってドラゴンダイブを繰り出す。ガブリアスは素早さが高く、デオキシスに回避の隙をまったく与えなかった。デオキシスにドラゴンダイブを諸にくらわせ、ガブリアスはニッと笑う。だが、デオキシスは微動だにしていなかった。

「……な、なんだその姿は」

 しかもよく見ると、デオキシスの姿が再び変わっていた。全体的に丸く、分厚い腕……

「その姿、もしかして防御型……ですか」

 ユクシーは、落ち着いた様子でデオキシスに問いかけた。

「その通りだ。防御に特化したディフェンスフォルム。そして――」

 デオキシスはいい終わるなり、再び自身の形状を変化させていく。体の各部分がアタックフォルムのように鋭くなっていくが、鋭利さはアタックフォルム以上だ。

「……そしてこれが早さに特化したスピードフォルムだ――」

 デオキシスは体の形状変化が完了すると、早速スピードフォルムの実力を見せ付けるかのようにブラン達の辺りを凄まじい速度で走り回る。

「くゥ、目で追いつける速度じゃないわね……この勝負勝てるよね?」

「勝てるにきまってるだろう。諦めるなマリルリ」

 ブランは戦意を失いそうになるマリルリに一喝。デオキシスはその隙を突き、ブラン達にシャドーボールを繰り出す。六匹全員はシャドーボールの餌食に……エスパータイプのユクシー伯爵とエムリット伯爵は余りダメージを受けなかったものの、残りの四匹は結構ダメージを受けてしまったようだ。

「な、なんて重い攻げ――」
「まだ攻撃は終わらんぞ。死ぬまでいたぶってくれるッ」

 デオキシスはブランの言葉を遮り、シャドーボールで猛襲した。

「また来るッ! とりあえず伏せるぜ」

 皆は、ガブリアスの言葉を聞き地に伏せる。結果、シャドーボールはブラン達の上空を通過していく。デオキシスはシャドーボールが外され舌打ちをした。

「……ガブリアス。ちょっと話があるんですが」

「んんー、何だァ?」

 ユクシーは伏せながらガブリアスにある事を耳打ちした。

「……何だと!? お前はオレにそんな危険な真似させる気か!!」

「デオキシスの隙を突くにはこれしかありません。頼みます」

 ある事をガブリアスに頼むユクシー。しかし、

「駄目だ、駄目だ。オレが危険にさらされるし、第一失敗したらどうする」

 ガブリアスは聞く耳を持たなかった……。

「悪いがその作――」
「一体どんな作戦だったか知らないけど、やってくれない? アタシからの頼みよ」

 その時、エムリットがガブリアスの言葉を遮り、頼み事。

「……わかったぜェ。エムリットたんの頼みなら断るわけにはいかねェからな。やってやるよユクシー」

 案の定ガブリアスはエムリットの言葉を聞いて協力を示す。ガブリアスの了承を得たユクシーは、早速ガブリアスを除くブラン達にも作戦を話し始める。その不審な行動に、デオキシスは疑問を持ち始めた。

「お前達、さっきから何を話している? 殺されるとわかって、死ぬ前の賑やかな雑談か? おめでたい奴らだな、フハハハ」

 宙に浮いているデオキシスは、ブラン達に抵抗する術がないと思い、その場で嘲笑った。

「……フン、おめでたいのはどちらかな?」

 そんな時ガブリアスは立ち上がり反論。ブラン達の前に出てデオキシスを指差した。

「デオキシスさんよ、貴様のスピードは称賛してやる。俺達の足では追いつくことは敵わん。だから、その素早さを生かして俺を殺してみろ」

 デオキシスは言い終わるなり、その場に座り込む。全く抵抗する気は見られない。

「……血迷ったか? 自ら死を選ぶとはな」

「フン、オレはこいつらの中で一番強ェんだぜ。だったら、オレを先に殺しておくのが得策ってモンだろう?」

 ガブリアスは何故かデオキシスにアドバイスをする。それを聞いたデオキシスは、フンと鼻で笑い少しガブリアスに接近。ガブリアスとの間合いを詰めたデオキシスは、その場でシャドーボールを連射。次々とガブリアスにシャドーボールが着弾していく。すると……

「い……今だッユクシー!!」

「分かりましたッ! 皆さん、行きますよ」

 ガブリアスの返事を受けたブラン達五匹は、一斉にデオキシスに接近し、遠距離攻撃を繰り出す。デオキシスはガブリアスへの攻撃の最中故に隙だらけ。五匹の攻撃を回避することは出来なかった。

「ギィィィッ、この……この私がァァ!!」

 五匹の集中攻撃を受けたデオキシスは、浮力を失い地上に落ちた。

「……思ったとおりです。デオキシスさん」

「グゥ……なんの事だ?」

 ユクシーは自信に満ちた表情で問いかけた。

「あなたのフォルムチェンジは確かに凄いですが、各フォルムにはメリットがあるように、デメリットもあったんですよ。スピードフォルムは素早さが高い代わりに攻撃、防御が低いといった具合にね」

「……何が言いたい、ユクシー君」

「つまりですね、アタックフォルムかスピードフォルムにフォルムチェンジをしている時に攻撃を仕掛ければ、効率よくあなたにダメージを与えられるということですよ」

 ユクシーはこんな短時間でフォルムチェンジの欠点を見抜いていたようだ。デオキシスも少し動揺を見せ始めている。

「見てください。デオキシスの体は既にボロボロ。これはスピードフォルムが防御に特化していない証拠ですよ」

 ボロボロのデオキシスの体を見てガブリアスは納得。

「た、確かに。だったら防御形態にチェンジされるまえにぶっつぶさねェとやばくねェか?」

「いえ、ディフェンスフォルムにチェンジされても焦ることはないでしょう。何故ならディフェンスフォルムは攻撃型ではないのですから。デオキシスは攻撃する際に、アタックフォルムかスピードフォルムにチェンジするでしょうから、その隙に攻撃を仕掛ければいいでしょうね」

 ユクシーの言葉がデオキシスに深く突き刺さる。

「まさか私のフォルムチェンジを容易に攻略されてしまうとはな……」

 デオキシスはそう言いながら、部屋の中央の巨大な赤いシリンダーに寄りかかった。

「殺すならさっさと殺せ。私の気が変わらない内にな……」

 デオキシスは、力のない声で意味深なことを呟き、ブラン達に殺せと言い放った。

「……断るよ」
「何だとッ!?」

 ブランの意外な返事に、デオキシスは驚く。

「あなたが考えを変えれば良いだけじゃないか。死ぬ必要なんて無い……」

 ブランは落ち着いた様子で言った。

「何を言っているブラン。こいつは死んで罪を償うべきだ!! なぜこんな奴を生かそうとする?」
「デオキシスは道を踏み外してしまったんだよ。だからデオキシスには更生してもらいたいんだ」

 ブランはそう言い、デオキシスを見つめる。

「……フフッフハハハッ甘いなお前達。私の気が変わる前に殺しておけばよかったものを……」

 デオキシスは頭に手をかけながらブラン達を嘲笑う。そして宙に浮くと、後ろの巨大なシリンダーの中に身を投げた。

「フォルムチェンジに欠点がある? ならば遺伝子を書き換えて、完璧なフォルムを作り出すまでだ。三つのフォルムを融合してな」

 デオキシスがそう言うと、突然巨大なシリンダーの台座が起動し始める。するとシリンダーの中に水蒸気が発生し、曇って中が見えなくなった。ブラン達に緊張の汗が流れる……。

 機械が起動して数秒、物凄い速さでシリンダーに亀裂が走っていく。そして、遂に耐えられなくなったシリンダーは部屋を揺るがすほどの爆音と共に煙とガラス片を撒き散らせながら崩壊した。

「皆大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ。それよりアイツは?」

 皆は煙が立ち昇る壊れたシリンダーに目を向けた。煙の中には一つの影が見える……暫く見ていると、煙がだんだん晴れていった。

「グッこれは!!」
「キャア、なにこれ?」

 煙の中から現れたのは三つのフォルムを取り込んだデオキシスの姿だった。しかし無理に取り込んだせいか、もはやデオキシスの原形はなくなっている。

「グァッグァッグァ……ブァーグェグトボルグバ(ハッハッハ……パーフェクトフォルムだ)」

 しかも無理な変形をした為かまともに喋れないようだ。口調がとんでもない事になっている。

「やるぞブラン。こうなってしまった以上、俺達が生きて帰るには奴を倒す以外方法はなかろうて」

 デオキシスの姿を見て覚悟を決めたガブリアスは、そっとブランの肩に手をかける。

「……そのようだな」

ブランは少し間をおいて、そう呟いた。

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2008.2.4  16:56:53    公開
2008.2.23  18:44:37    修正


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