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ポケモン不思議のダンジョン 革命隊

第12話 放射能とブランの記憶

著 : ハルナツ・シュートウ

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 メレンゲのレジスタンスメンバーは、全員ワッフルへと旅立つために街の入り口へと集結。ブラン達もいつでも出発できる用意が出来ていた。エムリットが準備を終えると、メンバー全員に出発すように掛け声を上げた。と、その時メンバーの中からフーディンが飛び出し、エムリットの下へと駆け寄った。

「エムリット様、放射能の件ですが……」

 突然現われたフーディンはエムリットとなにやら怪しい会話を交わしている。

「話の途中で悪いんだけど、放射能って一体何のこと?」

 疑問に思ったサブレはエムリットに近づき問いかけた。

「政府が私達を、自分達に都合よく動かせるために、洗脳効果を持った放射能を放ったのよ。まあ、結果は失敗に終わったようだけどね」

 サブレはエムリットの話を聞いて驚いた。まさか政府が自分達を洗脳するために放射能を放っていたなんて思っても見なかったから。さらにサブレは放射能のことを詳しくエムリットから教えてもらった。そしてある事が分かった……放射能が放たれたのは、サブレがブランと出会う前日だったのだ。放射能を放った翌日に、ブランが現われた。何か関係があるのだろうか? とりあえずサブレはエムリットに、ブランの事を報告した。

「人間がポケモンに……その放射能、私達ポケモンには影響は無かったけど、人間には悪影響を及ぼしたのかもしれないわね」

 それを聞いたエムリットは、口に手を当てながらそう呟いた。しかしサブレには少し難しかったらしく『よくわからない』と困った顔で催促する。

「要するにぃ、その放射能を受けたキッカケでブランって人間がポケモンになったんじゃないかって言ってるのよ」

 するとエムリットは、ツンツンした表情でサブレに迫りながら分かりやすく説明してあげた。サブレは思わずドキッとしてしまった。エムリットはサブレより年下のはずなのに、妙に威圧感を感じる……

「ってことはブランはその放射能を浴びて、ポケモンになっちゃったって事?」

「恐らくな。だが、戻れないというわけではない」

 フーディンはサブレの意見に返答すると、意味深なことを呟いた。戻れないわけではない、という事はブランは人間に戻るすべがあるのだろうか? そう思っているとフーディンはさらにサブレに話しかけた。

「放射能の逆の作用を起こせば、あるいは……」

「そうすれば、ブランは元に戻れるんだね!」

 フーディンの話を聞いてブランを人間に戻す方法があると分かったサブレは大喜び。サブレは早速ワッフルへ帰ってブランに報告しようと皆を急かしながら、メレンゲを後にした。

 メレンゲから旅立ったサブレ達は、既に十分ほど歩いていた。そんな時、道端の草陰が静かに揺れる。ユクシーは気になって、その草陰をじっと見つめた。すると突然草陰から巨大なポケモンが飛び出しユクシーに殴りかかった。しかし間一髪のところでユクシーは攻撃をかわし、少し後退した。そしてサブレ達はそのポケモンの正体を突き止めるべく、そのポケモンの方を向いた。

「あ、お前は……」

「……クックック、久しぶりだな。お前達」

 サブレ達の目の前に現われた巨大なポケモンの正体は、なんとカシュー峠でユクシーを襲撃したガブリアスだった。ガブリアスは草陰から出ると、サブレ達の行く手を阻むようにサブレ達の前で仁王立ちした。

「あの時のガブリアスか。今更何の用だ!!」

 サブレはガブリアスに向かって叫んだ。

「簡単なことよ! そこにいる前回殺し損ねたユクシーを殺しに来たんだよォ!!」

 ガブリアスはユクシーの方を向き、憎しみのこもった声で叫んだ。殺気に満ちたガブリアスの目は、今にもユクシーを殺したいという様子である。そんな時ユクシーは、恐怖を省みずガブリアスへと近寄り話しかけた。

「今は貴方と遊んでいる場合ではないのです。私たちは急いでいるのです。ですからそこから退いて……」

「急いでいるだァ? お前ら貴族が税金を無駄に多く取り立てなければ、俺の故郷は落ちぶれたりはしなかったというのに!!」

 ユクシーが話している途中にもかかわらず、ガブリアスは突然ユクシーに殴りかかる体制に出た。それを見かねたフーディンは群集の中から飛び出し、掌に『気合い球』を造るとガブリアス目掛け投げ飛ばした。勢いをつけた気合い球は徐々にガブリアスへと近づいていく。

「グ、不意打ちか……」

 気付いた頃には気合い球はガブリアスの顎にヒットし、そのまま後ろへと投げ飛ばされていた。倒されたガブリアスは起き上がろうとせず空を眺めている。

「ラフティ……俺一匹が頑張ったところでどうにもならねェか……」

 するとガブリアスは自分の無力さを嘆きそう呟いた。ラフティ――その名を聞いて何かに気がついたのか。ユクシーは急いでガブリアスに駆け寄り事情を聞き出そうとするが、ガブリアスは口を開かない。そんな時エムリットがガブリアスに近寄って話しかけた。

「ユクシーがあなたのことを知りたがっているらしいのよ。アタシからもお願いするわ。だから話してくれない?」

 ガブリアスに対し優しく接するエムリット。するとガブリアスは起き上がり、目の色を変えてエムリットに興味を持ったような目をして話しかけてきた。

「ハイ、俺ガブリアスです。知りたいことがありましたらなんでも話しますよー」

 ユクシーの時とはまるで態度が違う。エムリットは呆れたような表情でユクシーが知りたがっている疑問をガブリアスに話した。

「貴方はラフティの住民なの?」

「ああ、そうだよ。俺の故郷『ラフティ』は税金を払えなくなり破綻してしまったんだ」

 ガブリアスは自分の故郷が破綻してしまったことを皆に告げた。それを聞いたメレンゲのレジスタンスが少しざわめく。そんな中、ガブリアスは話を続けた。

「それからというもの、俺は税金で楽な生活をしている貴族達を見ると虫唾が走るようになった。高額な税金を請求する今の政府が憎い! 早く潰れてしまえと何度も思ったさ」

 そう言うとガブリアスは悲しげな表情になり、再び空を見つめた。すると、

「貴方の気持ちは分かったわ。アタシ達は政府と闘っている身なの。そんなに政府に敵意を燃やしているならアタシ達と手を組まない」

 エムリットはニコっと笑い、ガブリアスに誘いの手をさし伸ばした。ガブリアスはエムリットの突然の勧誘に少し戸惑った。少し頬を赤らめて考え事を始める。数秒後、考えが纏まったガブリアスは自分の旨を伝えるためにエムリットと向き合った。

「お、俺なんかが役に立つかどうか分からねェけど……協力させてくれないか」

 ガブリアスはエムリットをチラ見しながらそう言った。エムリットは頷くと、ガブリアスと握手を交わす。するとガブリアスはエムリットに手を握られ顔が真っ赤になった。

「あれガブリアス、何赤くなってんの?」

サブレは赤くなったガブリアスを見て煽った。

「う、うるせェ! お前らワッフルへ帰る途中だったんだろ? 早く帰ろうぜ」

 すると立場が悪くなったガブリアスは、自分から先へ進もうと申し出るようになった。エムリットを見て興奮した自分を皆に見られたくなかったのだろう。それからサブレ達団体は暫くの間ワッフルを目指し、夕日をバックに道を歩いた。クルミの森が見えてくると、皆はこの森を経由して隠しアジトのある砂浜へと向かった。ここまで歩いてきたんだ、もう皆の体力は余り残っていない。皆は走って隠しアジトへと入っていく。

「た、ただいまぁ……隊長」

 そう言ってサブレとエムリットは隊長のいる会議室へ入った。

「ほう、エムリットも一緒……という事は作戦は成功か」

 隊長はそう言うと、さりげなくガッツポーズをした。そんな時サブレは部屋にブランがいる事に気がついた。もう起きて大丈夫なんだろうか? サブレは心配してブランに駆け寄った。

「ブラン、もう起きてて大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。それと……いいにくい話だが、自分の記憶が戻ったんだ」

 サブレはつい驚いて飛び上がってしまった。そんなサブレを見て隊長はブランのほうを向く。

「ブランの記憶の話か……私達アジトにいたポケモン全員は聞いたが、サブレ達にはまだ話してなかったな。ブラン、教えてあげるといい」

 ブランは静かに頷き、サブレのほうを向いた。ブランはどんな人間だったんだろう? サブレは思わずつばを飲んだ。何故か後ろでエムリットも、話を聞くのに真剣な表情をしている。

「自分はグラッセ大陸移住計画チームの一人で、ここグラッセ大陸を調査するためにやってきたんだ。ちなみに自分達人間の間では、『クーヘン』のことを『グラッセ大陸』って呼んでいるんだ」

 サブレは自分たちの住んでいる大陸が、人間たちの間では違う呼び名で呼ばれていることに少し驚く様子を見せる。するとブランは、悲しげな表情になり再び話し始めた。

「だが運悪く大陸に着いた途端雨が降ってきて、近くの森で雨宿りをしていたら突然気を失った。そして目が覚めるとポケモンになっていたんだ」

(そうか、だからブランはクルミの森で倒れていたのか)

 サブレは頭の中でそう考えていた。するとサブレは移住計画の話を思い出し、ブランにしがみつき話しかけた。

「移住計画って言ってたけど、計画が成功したら、この大陸はいずれ人間たちの居住地になっちゃうって事?」

 悲しそうな表情でサブレはブランにしがみつきながらそう発した。

「ああ。だが、サブレ達の事を考えるとこんな計画は止めたほうがいいだろうな。自分が人間に戻ることが出来れば急いで帰って計画を止めされるんだが……」

 人間に戻れれば――そうブランが呟いた途端、サブレは放射能のことを思い出した。するとサブレはブランから離れ、放射能の逆の作用を起こせば戻れるんじゃないかというフーディンの話を伝えた。勿論ブランは戻れる方法が分かってお喜び。だがサブレは浮かれない表情をしている。

「やっぱり今すぐ人間に戻って帰りたい?」

 まだ分かれたくないのか? サブレはブランにそう言った。

「何言ってんだサブレ! デオキシスをまだ倒してないじゃないか! 此処まで来たんだ。デオキシスを倒すまで付き合ってあげるよ」

 悲しげな表情をしているサブレに対し、ブランは元気よくそう宣言した。とりあえず戦いが終わるまでブランと一緒にいられると分かったサブレは、安心して一息ついた。するとそこにエンテイ伯爵が、扉を開けて入ってきた。エンテイはエムリットを見て作戦成功を確認すると、会議室にいるブラン達全員に対し叫んだ

「エムリット革命隊の協力得たか。そうと分かれば明日ミルヒライ城に再び攻め込むぞ。皆の衆、決戦に備えて早めに体を休めるように! 以上」

 エンテイはそう言うと、会議室から就寝部屋へと歩いていった。自分達も早く寝ようとブラン達も急いで就寝部屋へと向かう。就寝部屋は一部屋に二匹づつ入れるようになっている。皆は開いている部屋を探し、速やかに就寝した。その夜は決戦前夜だからか、眠れないものも多数いたんだろう。各部屋から喋り声が聞こえてくる。

エンテイ伯爵&ブースター部屋――
「エンテイ伯爵、明日は絶対に勝ちましょう……」

「ウム、絶対にな」

「もし政府を討伐したら、大陸を統治する新たな統治者は誰になるんだろう。私はエンテイ伯爵がいいなあ……エンテイ伯爵ならきっと……」

「よしてくれ。私だってまだまだ未熟な面もある……まぁ万が一私が統治者となった場合は頑張らせてもらうが」

エンテイ伯爵&ブースターの部屋からは、後の大陸の統治者が誰になるかを話し合っていた。やはりブースターはエンテイの執事をしているだけあって、エンテイを大陸統治者に推薦らしい……

 エムリット&ガブリアスの部屋――ここからも話し声が聞こえてくる……

「あー、もぅ! なんで貴方がアタシと一緒の部屋なのよ」

「いいじゃないか別に」

 そう言ってガブリアスは戸惑うエムリットの頬を静かになでた。

「い、良い訳ないでしょ! サーナイトさーん、アタシと一緒に……」

 エムリットはガブリアスに危険を感じ、執事のサーナイトを呼んだ。しかし、

「エムリット様、夜中に呼び出さないでください。安眠妨害ですよ。……私はユクシー伯爵と一緒の部屋ですから、トイレに行きたくなったら呼んでください」

 サーナイトは眠そうに目をこすりながら、そう言って部屋を後にした。

「トイレくらい一人で行けるわよ! って、そんな事で呼んだんじゃないのにぃ! サーナイトさーん」

 その夜、エムリットはガブリアスに「寝ている間にアタシに手を出したらただじゃ措かないからね」と脅し文句をいい寝付いたという。そしてブランとサブレの部屋では……案の定二匹とも眠れずにいた。

「サブレ、眠れないのかい」

「ハハッ……明日が決戦だと思うと緊張しちゃってね」

 サブレはすこし笑いながらブランのほうを向き喋った。

「明日が最後の戦いだな……」

「うん。今苦しんでいる大陸中のポケモンたちのために、僕達は絶対に勝つ。いや、勝たなければならないんだ」

 二匹はそう会話しながら、窓から見える夜空を眺めている。星空がとてもきれいで、自分たちの勝利を願っているようだ。

「星空が綺麗だな……ここは空気も澄んでいるし……」

「ブランがいた世界では、星空は見られなかったの?」

 ここの星空を絶賛するブランに対しサブレは尋ねた。

「まあね。こっちの世界じゃ『大気の汚れ』や『光害』とかいろいろ問題があるから」

 ブランは少し困ったような表情でそう言った。ブランのいた世界もいろいろ大変なんだなあ……密かにサブレはそう感じていた

「っと、そろそろ寝ないと明日が大変だぞ。戦闘中に支障が出たらまずいからな」

「そうだね……そろそろボクも眠くなったよ。ブラン、お休み」

 二匹は、互いに『お休み』と言うと静かに眠りに着いた……

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2007.11.6  22:28:52    公開
2008.2.26  18:08:51    修正


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