ポケモンノベル

ポケモンノベル >> 小説を読む

dummy

ポケモン不思議のダンジョン 革命隊

第8話 ミルヒライへ

著 : ハルナツ・シュートウ

ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。

 翌日、ブラン達と反政府運動の皆はエンテイの屋敷前に集結していた。

「皆の衆、これからミルヒライに乗り込む。政府を打ち倒し、平和を取り戻そうではないか」

 エンテイの掛け声と共に、ブラン達と反政府運動の皆はミルヒライを目指し、アロスを後にした。それからブラン達は草原、荒地といった大地を歩きながら野生のポケモンと交戦を何度か繰り返し、約二十分の時が過ぎた。そして、

「む、あれか。ミルヒライは」
 
 ブラン達の視界に入り込んできたのは、大規模な城下町と大きく聳えるミルヒライ城。

「よし、目指すはミルヒライ城だ。皆の衆、行くぞッ」

 エンテイは皆に掛け声を上げ、ミルヒライの中へと入っていった。ブラン達や反政府運動の皆も後からついていく。城下町を歩いていると住民達がヒソヒソ話をしている。

「アレってユクシー伯爵様とエンテイ伯爵様よね。二匹も伯爵様がこの町にお見えなんて何かあるのかしら」

「伯爵様!?夢じゃないよな……今日は何かあったか?」

 伯爵クラスの貴族が二匹が、大勢の一般市民を連れているのは不思議な光景だ。住民達の中には何が起こるんだと不安がっている者や、浮かれている者などいろいろな住民達を見かけた。

「ブラン、ボク達すごく見られている気がする」

「平日に伯爵クラスの貴族がこの街に来るってのは珍しい事なのかもな」

 あんまりジロジロ見られているからかサブレは恥ずかしいようだ。しかしここで恥ずかしがってるわけには行かないと、サブレはグッと我慢する。そして暫く歩いているとミルヒライ城の門が見えてきた。門前の近くまで行くと、門番と思われるエルレイドがエンテイに駆け寄ってきた。

「これはこれはエンテイ伯爵殿、よくぞお見えに。失礼ですが、本日は納税日ではありませんぞ」

 貴族相手だからか、エルレイドはご丁寧に出迎えてくれた。

「構わんよ。本日は公爵のデオキシス殿に御用があるからな」

「御用? 用件があるのでしたなら私めにお知らせ下さい。後に公爵殿へとお伝えしますので」

 エルレイドは頭を下げ、エンテイ伯爵の用件をきいた。

「ミルヒライ制度の件で公爵殿と話がしたい。議会を開かせてもらうぞッ!!」

 エンテイは鋭い目でエルレイドを威圧する。

「ウッ……伯爵殿の用件なら仕方ありません。ついて来てください」

 エルレイドは一瞬怯みながらも自分の仕事を全うする為、エンテイとその御一行をミルヒライ城の中へと案内した。エンテイ御一行が案内されたのは椅子やテーブルが配置されてある広い一室。多分客間だろう。するとテーブルを前に休んでいるエンテイ達にエルレイドが駆け寄ってきた。

「これから議会の準備を始める上に侯爵達の召集を行う。故に、議会が始まるまでしばし時間を頂きたい」

「どの位かかるかね」

「約三十分かかると想定されますね」

「分かった。ありがとう」

 エルレイドはエンテイ伯爵に説明を終えるとまだ仕事があるのか、駆け足で部屋を後にした。エルレイドが部屋から出たことを確認すると、エンテイ伯爵はブラン達五匹を自分の下へと集合させた。

「議会が始まるまで時間があるそうだ。そこで君達にやってもらいたい事がある」

 エンテイ伯爵はそう言い、五匹にある事を耳打ちした。

「了解!」

「頼んだぞ。もしもの時はな」

 五匹はエンテイ伯爵に返答をすると、さっそく行動に移るため五匹で話を始めた。エンテイ伯爵は成功を祈ってその五匹をやさしく見守っている。

 それから三十分の時が過ぎ、会議室にて議会は始まった。レジスタンス側の席には、ブラン、サブレ、隊長。そしてエンテイ伯爵と反政府運動の皆が。なぜかマリルリとユクシーの姿はない。対する政府側の席には、議長のジーランスとデオキシス公爵。そして八匹の侯爵達が――と思いきや侯爵は七匹しかいない。どうやら一匹は欠席のようだ。

「それでは議会を開きましょうか。議長」

「ハイ。これよりミルヒライ貴族制度について議会を開きます」

 議会はデオキシス公爵の一言によって始まった。エンテイ側一同は思わずつばを飲んだ。

「本日お見えになられたのは伯爵殿の二匹だけではなく、ワッフルのレジスタンスの隊長さんまで足を運んでくださったのか。ご苦労」

 デオキシスはとんでもない政策で市民達を苦しめることから悪なイメージだったが、結構丁寧な口調だ。

「しかしワッフルといい、メレンゲといい困ったものですね。今の政府に不満があるのですか」

 だが幾ら丁寧口調とはいえ、中身はレジスタンスに対し敵意をむき出しにしているようだ。

「ふむ、まァいいでしょう。あなた方から意見をどうぞ」

 デオキシスは早速エンテイ側の意見を求めてきた。

「今の制度、政策を見直すべきです」

 ブランは立ち上がりデオキシスに意見を述べた。次にエンテイもブランと同様同じようなことを言い出した。

「君はレジスタンス側のポケモンだね。一つ聞きますが、なぜ見直す必要があるんだね?」

「そっそれは勿論、理不尽な高さの税金で一般市民達が苦しんでいるからです」

「ブラン君の言うとおりだ。今の政府には見直しが必要だと私は思う」

 デオキシス公爵直々に問われ、少し緊張を見せるブラン。しかしなんとか自分の意見を述べることが出来た。さらにエンテイ伯爵も後からデオキシス公爵に対し反論する。

「分からないポケモン達だ。私は公爵だ。公爵や侯爵という地位は何をやっても許されるのだよ」

 自分達の身分は絶対だと主張し一歩も譲らないデオキシス公爵。そこでエンテイ伯爵は、普通に話し合っただけでは勝てないと悟ったのか、サブレの村のポケモン殺しの件を持ち出した。

「なんのことですかな?抗議しにここまで来る一般市民はいないことはないですが、別に命を殺めるような事はしてませんよ」

 案の定、デオキシス公爵は白を切る。そこでエンテイは証人のヒノアラシを立ち上がらせ、ヒノアラシが見た事件の一部始終を証言しだした。

「ボクは見ましたよ。五年前ここミルヒライ城の庭で、政府に抗議しにきたボク達の親の遺体をここの兵士が処分している所を」

 ヒノアラシは証言を終えると、その場に静かに座る。

「さてデオキシス公爵殿。この真実は本当か、YESかNOで答えてください」

 静かにデオキシス公爵に質問するエンテイ伯爵。

「NOに決まっているだろう! そんなものでっち上げだッ!!」

 デオキシス公爵はこの質問で少しいきり立ち始めたようだ。言葉がだんだん荒れてきている。この荒れようは尋常じゃない。きっとヒノアラシの証言は真実なんだ。……しかし今は決定的な証拠が無い。すると、

「でっち上げではないわ。真実を偽るのはもう止めにしたらどう、デオキシス公爵」

 どこからともなく部屋中に響き渡る何者かの声。そして声がやんだと思いきや、会議室の扉が開きマリルリとユクシー伯爵が飛び込んできた。後ろには欠席したと思われていた侯爵のグラードンが……

「エンテイ伯爵の作戦通りにこの侯爵サマから真実を吐き出させたわよ」

「……面目ない、デオキシス公爵殿」

 エンテイ伯爵が考えた作戦とは……議会が始まる数分前に、会議室へと向かう侯爵をマリルリとユクシーが捕らえ、事件の真実を吐かせるという大胆なものだったのだ。証人であるグラードン侯爵がいる以上白を切ることは出来ない。完全に政府側は不利な状況に追い詰められた。

「貴方達のような罪なきポケモンを殺す犯罪者に大陸の統治は任せられない。議長、判決をお願いします」

 ブランは立ち上がり格好よくキメ、議長に判決を求めた。この気まずい空気の中、議長は恐る恐る判決を言い渡そうとする――ハズだった。

「余計なこと喋ってくれたものだ、グラードンよ……」

 デオキシスはグラードンに対し腕を構えた。すると、

「グハッ……デオキシス公爵殿……」

 突然、デオキシス公爵の腕から念の弾丸が放たれ、グラードンの胸を貫いたのだ。グラードンは急所に当たったのか、すぐに息を引き取ってしまった。デオキシス公爵の突然の行動に、エンテイ側の皆は動揺している。

「決定的な証拠を持った証人がいなくなった以上、罪は立証できなくなってしまったな。残念でしたねえ」

 デオキシス公爵はブラン達を見下したような目をしながらそう発した。それにしても仲間であるグラードンを殺してまで否認するなんて、『まさに外道』としか言いようが無い。するとデオキシスは、ニヤリと怪しく微笑みを見せる。

「ハーッハッハ。諸君、残念だが真実を知ってしまった以上、君達を生きて返すわけにはいかない」

 デオキシス公爵は腕を上げ高らかに指を鳴らした。すると会議室へとポリゴン軍団、そしてレジギガスが駆けつけてきたのだ。完全にブラン達を抹殺する気らしい。皆はなんとか生き延びようと、ポリゴン軍団の攻撃を掻い潜りミルヒライ城を後にした。

「くそっ予想外のアクシデントだ……」

 ネイティオ隊長は悔しそうにそう呟き、城下町をひたすら走った。

 ――生きてミルヒライから脱出するために……

⇒ 書き表示にする

2007.10.23  21:30:54    公開
2007.10.26  07:55:06    修正


■  コメント (0)

コメントは、まだありません。

コメントの投稿

コメントは投稿後もご自分での削除が可能ですが、この設定は変更になる可能性がありますので、予めご了承下さい。

※ 「プレイ!ポケモンポイント!」のユーザーは、必ずログインをしてから投稿して下さい。

名前(HN)を 半角1文字以上16文字以下 で入力して下さい。

パスワードを 半角4文字以上8文字以下の半角英数字 で入力して下さい。

メッセージを 半角1文字以上1000文字以下 で入力して下さい。

作者または管理者が、不適切と判断したコメントは、予告なしに削除されることがあります。

上記の入力に間違いがなければ、確認画面へ移動します。


<< 前へ戻るもくじに戻る 次へ進む >>