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ポケモン不思議のダンジョン 革命隊
第5話 貴族の使命
著 : ハルナツ・シュートウ
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予想もしなかった出来事が起こり、ブランはユクシーに静かに尋ねる
「バトル……ですか?」
「そう。でもここでは場所が悪いですね。場所をロビーにかえましょう」
ブラン達は席を立ち、場所をロビーへとかえた。そこで三匹は誰がユクシーと戦うかを話し合っている。ブランは戦闘経験が浅い……となるとサブレかマリルリのどちらかになるが。するとそこにユクシーが割って入ってきた。
「三匹でもかまわないですよ。君達全員の想いを知りたいから」
ユクシーが言い出してきたのは、自ら不利な状況を望み三対一になるという、『ハンディキャップ』だった。ユクシーには余裕が感じられる。マリルリは正直なめられていると思い込み、怒りがこみ上げてきた。手をぎゅっと握り締め、ユクシーをにらみ付けた。
「準備はいいですね? それでは、バトル始めッ」
ハッサムの声とともに、真っ先に出たのはレジスタンス側のマリルリだ。一瞬にしてユクシーの目の前へと飛び、気合パンチを打ち込んだ。しかし、ユクシーは軽々と身のこなしでマリルリの気合パンチを回避する。さらに攻撃を回避した勢いでユクシーはマリルリに手を翳し、念力を繰り出す。
「効きませんよ……」
ユクシーはそう呟き、念力でマリルリを捕まえると空中で反動をつけ、勢いよく地面へと叩き付けた。マリルリは地面にたたきつけられた衝撃で空中に跳ね上がり、もう一度身を地面にたたきつけるとその場に倒れこんだ。これにはサブレ達二匹は声が出ないほど驚いた。目の前で仲間が何も出来ずに倒されてしまったのだから。
「つ、強いじゃないか……勝てるのか?」
「勝てる気がしない。だけどボクは戦うよッ」
一瞬怯みはしたが、瞬時に体勢を立て直すサブレ。サブレは警戒して、あえてユクシーから距離をとり、遠距離から『泡』を繰り出した。しかし、この戦法はユクシーには無意味だった。念力によって全ての泡の軌道を変えられ、さらにサブレを念力で浮かせ動きを封じる。空中でもがいているサブレをマリルリ同様、地面にたたきつけKOした。
「ブラン、後は頼んだよ……」
サブレはブランに一言言い残し、ダウンしてしまった。これにより残るはブラン一匹のみ。正直ブラン自身も戦闘経験が浅い故に勝てないと思い込んでいる。だがもう残っているのが自分だけというこの現状、自分がやらなければどうにもならないッ。覚悟を決め、走りながらユクシーの下へと駆けて行くブラン。
「無駄ですよ。ハアッ!!」
近づくブランに手を翳し、念力で前の二匹同様空中へ浮かせ動きを封じさせた。もう決着がついたな。誰もがそう思い込んでいたその時、ブランは『葉っぱカッター』を繰り出したのだ。空中による動きを封じられた状態で。
そうはさせじと念力でブランを地面に叩きつけようとするユクシーだが、ブランの葉っぱカッターが一枚上手だったようだ。葉っぱはユクシーに直撃し、ダメージを受けたことで念力が解除され、ブランは空中から地面へと着地する。
体勢を立て直し一気にユクシーを追い詰めようと攻撃を仕掛けるブランだったが、ユクシーを見て思わず攻撃を止めてしまった。それを倒れながら見ていたマリルリは、なぜ攻撃を止めたのかを問いかけた。ブランは身を震わせながら返答をした。
「あ、あいつ……無傷じゃないか。どういうことだ」
ブランの返答を聞き、ユクシーへと目をやるとそこには、ピンピンしながら宙に浮いているユクシーの姿があった。確かに葉っぱカッターが直撃したハズなのにどういうことなんだ。レベルが違いすぎるって事なのか? それはブラン達にはわからない。ただ一つ分かるとすれば、今まさにユクシーはブランにトドメを刺そうとしている事だ。
「私に攻撃を当てたのは見事でした。でも、貴方達の負けです……」
ユクシーは悲しそうな表情でブランの額にゆっくりと掌を翳した。それを見てマリルリはブランに逃げるよう叫ぶが、ブランは逃げようとはしなかった。むしろ逃げられなかったのかもしれない。
ユクシーはポンっ、とブランの額に掌を乗せ、静かにトドメの攻撃を繰り出す。
「……神通力」
次の瞬間ブランはユクシーの攻撃を喰らい空中へと弾き飛ばされ、何も抵抗できずに地面へと叩きつけられた。すかさず立ち上がろうと試みるブランだが、流石にダメージを受けすぎたのか立ち上がることも出来ず、その場に倒れこんでしまった。
「勝負はつきました。申し訳ないですが協力は出来ません。お引取りください」
ユクシーは倒れている三匹に対し冷たく言い放つ。その一言でマリルリの表情は一変。ユクシーに対し反論をする。
「貴方は恐れているんじゃないの? 革命に失敗したら、街が崩壊してしまう事に」
「当たり前でしょう。君達の意見は『わざわざ自分から落とし穴に落ちろ』と言っているようなものですよ。私は危険な道を歩むつもりはありません」
ユクシー一歩も譲らず、協力する気配を全く見せない。ユクシーの頑固さにマリルリは怒りを怒りを露わにし、立ち上がる。
「政府に不満を持っているなら何で動こうとしないんだよ。ただ度胸がないだけじゃない……」
「やめろ、マリルリ。ユクシーさんにも事情があるんだ。諦めて退こう」
静かに呟くブラン。マリルリは悔しそうに舌打ちをして、ブラン達と共に屋敷を後にした。三匹が屋敷から出て行った後、ユクシーはなぜかため息をする。
「こちらの苦労も分からずとことん言ってくれましたね。私だって本当は……」
ユクシーはそう呟き部屋へと戻っていく。ハッサムは先ほどのユクシーの一言を聞いて、不思議そうな表情でユクシーを見つめた。
「ユクシー様……」
一方屋敷の外。空は既に真っ赤に染まっていた。今からワッフルへ戻っていては真っ暗になってしまう。仕方なく三匹はマドレーの宿屋に泊まることになった。宿泊部屋で横になりながら会話をするブランとマリルリ。サブレは既に眠りについていた……
「仲間になってくれると思っていたんだけど、所詮貴族ね。明日ユクシーを討伐しましょうよ。それが本来の目的なんだから」
「やめなよマリルリ。ユクシーさんにだって事情があるんだ。それにユクシーさんは悪いイメージの貴族じゃない。自分はユクシーさんの討伐はしたくない」
「……そうだね。我侭言ってゴメン」
二匹は話を終え、眠りについた。 その夜、ユクシーは頭がもやもやして眠りにつくことが出来なかった。一体このもやもや感はなんなんだろう? ユクシーは一度頭を整理して、再び眠りにつくことにした。
翌朝、ユクシーは朝食をとりながら昨日の夜の件をハッサムに話した。
「一体このもやもや感は何なんだろう? 政府に反抗せず従う。間違ってはいないはずなんですが」
「そのもやもや感、いわゆる不快感という奴ですかね? あの、こんな事いうのも何ですがユクシー様も本当はあの方達に協力して、今の政府を討伐したいと考えているのでしょう?」
「……さすがハッサム。隠し事は出来ないですね……」
ずばりユクシーの考えを言い当てるハッサム。ユクシー自身も本当はレジスタンスに協力をしたい気持ちでいっぱいだった。だが正直、ユクシーは不安なんだ。政府に反抗を見せた所為で、町の住民達を危険に晒してしまうのではないかと思うと……
「住民の声を聞くと皆、政府には不満はないといっていますが、大丈夫でしょうか」
「住民の皆様は表では、政府へ不満は見せてはいませんが、裏ではきっと不満を持っているはずです。そしてユクシー様には是非動いてもらいたいと思っているはずです」
「そうですか……だけど正直怖いです。ハッサム、私はどうすればよいでしょうか?」
ユクシーはそっとハッサムに尋ねる。
「貴方の信じた道を進むとよいでしょう」
ハッサムは優しくユクシーに返答をする。するとユクシーの中で何かが動いたのか、急いで街へと走っていった。その頃、街の宿屋の前ではブラン達三匹がワッフルへ帰る準備をしていた。
すると突然、屋敷の方向からユクシーが三匹の下へと走ってきた。
「まだこの街にいたんですね。助かりました」
「ど、どうしたんですか、ユクシーさん」
突然やってきたユクシーにブランは尋ねた。するとユクシーは切なそうな表情で話し始めた。
「いままで政府に反抗するなんて考えてもみませんでした。ですが貴方達と出会って少し私の考えが変わったようです。今の現状を変えようとしないなんて貴族の立場でありながら、情けないと思っています。今更ですが、私をレジスタンスに加えてくれないでしょうか?」
ユクシーは表情からして本気だ。そんなユクシーにブランは静かに手を差し伸べる。
「勿論。歓迎するよ」
ユクシーは「はいっ!」と笑みを見せ頷いた。ユクシーが仲間になったとなると、早速ワッフルへ帰り隊長に報告しなければならない。三匹はワッフルへ行こうと進めるが、ユクシーはそれを拒んだ。何故かと尋ねると、ユクシーはすぐにその理由を話し始めた。
「街の統治者がいきなり消えたら住民も混乱するでしょう。私は町の住民に、レジスタンスへ協力することを発表してからワッフルへ行きます」
「町の住民は理解してくれるのか?」
「いままで私を愛してくれた住民達です。きっと理解してくれます」
「そうか。ワッフルで待ってるからな」
三匹は一先ずユクシーと別れ、ワッフルへと帰っていった。ユクシー伯爵を仲間にすることに成功して三匹はとても満足そうだった……
2007.10.12 22:28:11 公開
2007.10.14 11:58:54 修正
■ コメント (1)
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07.10.13 22:32 - ハルナツ・シュートウ (9521) |
↑ジオログです。たまにこのノベルの記事を書いたりしますよ。