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結果、世界を救うのは恋とか愛でした。

著編者 : 絢音

シュウルちゃんの決意のお話

著 : 絢音

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テーマ1『朝からドキドキとか羨ましいわ。それに付き合い初めの頃は何気ない会話でも楽しいから恋ってスゴいわよね』
テーマ2『お披露目って♀にとっては重大なイベントよ!ここでの第一印象が特に重要ね。それから自己紹介で如何に気になる相手の興味を惹くかがポイントよ』
テーマ3『♀でも男らしいのはカッコいいわよね。颯爽と現れて連れ出してくれちゃうとかもうかっこよすぎるでしょ!』

 なんとなく夢心地なまま目が覚めた。なので僕は起き上がることはせず、再びふかふかの寝藁の中に潜った。
(なんか外、煩いな……あ、恒例の相方さんの目覚ましか……)
 朝から騒がしい相方の声がするが、未だ夢見心地な僕は起きなきゃいけないのも忘れて、目を閉じて意識を手離そうとした。
 その時バサッと大袈裟に入り口の布を捲る音と共に相方さんの元気な声が響いた。
「朝だぞー!! 」
「起っきろー!! 」
「あれ、珍しい! 」
「シュウルが起きてない! 」
「……お寝坊さんにはぁ」
「おっ仕置きだぁ〜」
 その言葉を耳にした僕は一気に現実に帰ってきた。まずい――僕は飛び起きようとしたが、
「かみなり〜」
「どーん♪」
 それよりも一歩早く二匹のかみなりが炸裂したのだった。
 僕はもはや動けなくなって、身体中の体毛からぷすぷすと焦げた煙を出すだけだったが、何を勘違いしたのか「起きないねー」「もう一発? 」とか言う恐ろしい会話が聞こえてきてもう絶体絶命だった。
 その時、再び入り口が開かれ、朝日を後光のように受けて女神の如く彼女が現れた。
「凄い爆音がしたが、どうした……って、シュウル! 」
 サクヤ――僕が昨日命名したけど実は結構気に入ってる――がひとっ飛びで僕の傍らに来て膝まづき、上半身を抱き起こしてくれる。僕はぼんやりと彼女の方に顔を向けるが、そのあまりの近さに一瞬で頭が冴えた。
「おっ、おはっ、おはようっ」
 僕は慌てて挨拶しながら、綺麗なサクヤの顔から離れようとしたが、先程の攻撃のせいか上手く体を動かせずふらりと倒れそうになる。
 それを支えようとサクヤは更に腕に力を込めて、僕を引き寄せるからもう頭が冴えすぎて何を考えればいいのか分からなくなった。
(え、これってえっと何て言うかいや、近いよ近いよ! あぁこんな綺麗な顔をこんな間近で見れちゃうなんてとか何僕は浅ましい事を、てかこれ逆じゃね普通は♂があれ、ん、なんだろ、あーーもう! )
 顔がどんどん火照るのが自分でも分かったが、サクヤはそれに気づいてるのか気づいてないのか、普通に挨拶を返してきた。
「おはよう。で、朝から一体どうしたんだ? 」
 その質問に僕は少し離れて立つ、にやけ顔の二匹を指差した。対する相方さんはニヤニヤしながら、口に手を当て聞こえるようにこそこそと喋る。
「シュウルってば赤くなってる〜」
「可愛い〜」
「か、からかわないで下さいよ……」
 僕は何とか言い返すが、今の状況は正直見られてて恥ずかしかった。女の子にお姫様みたいに抱き抱えられているのだ。平気な方がおかしい。
 サクヤはというと片膝立ちで僕を支えながら相方さんを見ている。その表情はまだ状況を理解できてなさそうだった。下から見るそんな表情も惚れ惚れするほど綺麗だった。
「でもでも、起きないシュウルが悪いんだからね! 」
「ほらほら、早くしないと朝会に遅れちゃうよ! 」
 相方さんはそう吐き捨てると颯爽と部屋を出て行ってしまった。僕はため息をついて、立ち上がろうとした。そんな僕を支えながらサクヤは、
「朝会があるのか? 」
 と尋ねてきた。僕はうん、と頷いて足を一歩踏み出したが、やはりまだダメージが残っているのかふらついてしまう。するとサクヤがさっと手を差し伸べ、また支えてもらう形になってしまった。
「ふらふらじゃないか……大丈夫か? 付き添うよ」
 心配そうに顔を覗きこむサクヤの顔を直視できないまま僕は「ありがとう」と呟いた。何と言えば良いのか、行動と言い、口調と言い、いちいちカッコよくて、少し♂として負けた気がして悲しくなった。

 サクヤに支えられて、僕たちは朝会が行われる広間へと向かう。既に他のポケモン達は広間に集まっているのだろう、廊下には僕ら以外には誰も居なさそうだった。
 僕に合わせてゆっくり歩きながら、サクヤは今朝の騒動の話を聞き目を丸くしていた。
「目覚ましがかみなりって……意外と鬼だな、あの二匹」
「鬼っていうより、子供って感じかな。ほら子供って加減を知らない所あるでしょ? 」
「あぁ、なるほど。じゃあ仕方ないな」
 僕の説明にサクヤが笑いながら納得する。それに対して僕は少し否定的に話した。
「仕方なくなんかないよ……こっちはもう死ぬかと思ったんだから。もう少し手加減してくれてもいいのに。あれで僕のお父さんと同期って言うんだからビックリだよね」
「そうなのか? 」
 僕の予想通りサクヤが驚いた声を出す。それが面白くて僕はふふっと笑って頷いた。すると、サクヤにしては間抜けな声でへー、と感心していた。
「ということは、私よりも年上って事になるのか? 」
「そうじゃないかな? だって少なくとも僕が産まれるより前からお父さんの知り合いだったみたいだし。僕も小さい頃から相方さんにはよく遊んでもらってたから頭が上がらないんだ」
「そうか……てっきり子供かと思ってた」
「まあ、あんな感じだもん、間違えても仕方ないよ」
 そこで僕らは少し声を出して笑い合う。昨日会ったばかりだが、ちょっとだけ打ち解けてきた気がして嬉しかった。
 とその時、見えてきた広間から誰かが僕らを呼ぶ怒鳴り声が聞こえてきたような気がしたので、僕らはぎょっとした顔を見合わせると、仲良く手を繋いで走り出した。
 広間にはやはり既に皆集まっていた。と言っても3チームの探険隊に親方と相方くらいでそれほど多くない。
「おう! シュウルが遅刻とは珍しいな、さてはサクヤと何かあったな? 」
 僕らが広間に着いて早々に親方がニヤニヤしながら聞いてきた。その視線の先は僕らの仲良く繋いだ手に向かっている。
 僕は急に恥ずかしくなってパッとその手を振り払ってしまった。するとサクヤが不思議そうな顔をするので、慌てて弁解する。
「も、もう大丈夫だからっ! ほら! さっき走れたし」
 そう言った通り僕の身体は確かにだいぶマシになっていた。何だかんだ手加減してくれていたのかもしれない。
 親方に促されて僕は列の一番後ろに着いた。サクヤは親方の隣に残り、ギルドの皆の注目を集めている。
 少しざわつき始めたポケモン達を二回手を叩いて親方は黙らせて話し始めた。
「静かにしろー……えー、この隣にいるキモリなんだが、昨日そこのシーサ海岸に漂着したところをシュウルに保護されて、しばらくここで暮らす事になった。皆、仲良くしてやってくれ」
 親方は簡単に説明を済ますとサクヤにも列の後ろに行くように指示する。サクヤは素直にそれに従い僕の隣に来た。
 その後はいつも通り、ちょっとした業務連絡(と言ってもいつも「特に何もねぇな」で終わる)と今日も一日頑張るよう喝を入れて朝会は終わった。
 朝会が終わって、普段なら各自の仕事場へと散り散りになるギルドのポケモン達がわっとサクヤの周りに集まった。
「君、名前は? 」
「どこから来られたの? 」
「技は何を使えるんですの? 」
「どれぐれぇごごにいるんだぁ? 」
 矢継ぎ早に質問されて、しかも記憶喪失のサクヤには答えにくい質問に、困り顔になりつつも一つ一つ丁寧に答えていく。
「私の名前はサクヤと申します。どこから来たかは……申し訳ありませんが、今は答えられません。技? 技ですか……ちょっと使った事がないので分かりませんね。とりあえず都市から派遣される使者の方がいらっしゃるまではお世話になります、よろしくお願い致します」
 そう言って胸に右手を当て、左手は腰に回し優雅にお辞儀をするサクヤに、皆一斉に口を閉ざし心を奪われたようだった。
(やっぱりサクヤの美しさは誰でも魅了しちゃうんだな)
 そう思ってその友達だということに誇らしくもあり、そんな彼女が他の奴らに取られた気がしてなんだか面白くなかった。
 ポケモンの輪の中の一匹のムチュールが惚れ惚れとした顔で口を開いた。
「あぁ……!なんて素敵な笑顔なんでしょ……サクヤ様! ワタシ、【ラブ応援隊】隊長のムチュールのエルオと申します! こんな名前ですがれっきとした♀でしてよ、以後お見知り置きを」
「あぁっ! 抜け駆けなんてズルいわ! サクヤ様、アタシは同じく【ラブ応援隊】第一隊員のゴチムのブイエよ、よろしくお願い致しますわ」
 【ラブ応援隊】の自己紹介が済むと、次は2匹の猫ポケモンがにゃ、と前肢を挙げてアピールする。サクヤがそちらに目を向けると、
「あたしたち探険隊【キャッツ】! 第一隊員のエネコのネネでっす♪」
「隊長のミミです、種族はニャルマーですわ」
 そう言ってネネはお茶目にサクヤにすりすりして親愛を示し、それをたしなめてミミがぺこりと頭を下げる。サクヤは笑ってそれに応えた。横でエルオとブイエが恐ろしい顔でぷるぷる震えているのは気のせいだろうか。
 次にとても訛ったしゃべり方の如何にも田舎っ娘のようなマスキッパが前に進み出た。僕はその姿を見て、あることを思いだし、ぎくりと体を強張らせた。なぜなら、その後ろには――
「おらはマスキッパのルイーシだぁよ。こっよりもっどド田舎から来だもんだがら何喋ってっかよぉわかんねぇごとあると思うけぇ、そんときは堪忍よぉ。
でぇ、ごっちのラッタが、おらのチーム【ヤグザンガ】のリーダーのスキッドだぁ」
「ふん、居候なんかに名乗る必要なんかねぇよ」
 ことある毎に僕に無理難題を押し付けて虐めてくるスキッドがいたからだ。昨日もあいつに『俺に認めて欲しかったら白い真珠取ってこい』と言われて海岸をさ迷っていたのだ。
 それより、とスキッドは僕を睨む。僕は更に体を硬くした。まるでアーボックに睨まれたニョロモの気分だった。
「シュウル、てめぇ、昨日何してやがった? 白い真珠取ってこいっつったよな? 」
 スキッドが噛みつく勢いで僕に迫る。僕は口ごもって、それから少しでも逃げたくて、一歩後ずさる。すると、周りの女の子達が騒ぎ始めた。
「ちょっと、スキッド! またシュウルのこと虐めてんの? いい加減にしなさいよ! 」
「いくらシュウルちゃんが可愛いからって……そんなんじゃ逆に嫌われるわよ」
「サクヤさんの前でそういう見苦しいの、止めてもらえます?」
「うるせぇ! 」
 一斉に責め立てる声を一蹴して、スキッドはわざとらしく呆れたため息をついた。
「ったく、相変わらず♀と絡んでんのな。女々しい奴だぜ。それに加えて、 親方の恩人の息子かなんだか知らねぇが、このギルドで一人タダ飯食ってるなんて恥ずかしくないのか、お前? 」
 厭らしい笑みを浮かべながらスキッドが聞いてくる。図星な僕は何も言い返せず、恥ずかしさと怒りから顔を真っ赤にして下を向くしかなかった。
「シュウルちゃんになんてこと言うの! 貴方だってルイーシに任せてばかりでろくに何もしてないくせに」
「黙れ! 俺はリーダーなんだぞ? チームまとめてんだよ、雑務なんか俺の仕事じゃねぇんだよ! それに比べてこのへなちょこは何してる?何もしてねぇじゃねぇか!金になる物の一つでも出しやがれってんだ。 だからわざわざこうして俺が仕事を作ってやってんだよ! 」
 スキッドはエルオの非難の言葉を怒鳴り付け、僕を顎で指してけなしてくる。僕の視界がぼやけてきた。
(ダメだ! ここで泣いたら負けだ)
 僕は涙が零れないようにぎゅっと目を閉じた。その顔を見られたくなくて更に顔を下に向ける。しかしそんな僕の様子に気づいたスキッドがにやけ顔で僕の顔を覗き込もうとしたその時。
 サクヤが立ちはだかるようにすっと僕の前に現れた。
「なんだ、てめぇ? 」
「しばらくこちらでお世話になることになったサクヤと申します」
「んなことは知ってんだよ、シュウル庇うような事して何のつもりか聞いてんだよ」
 邪魔をされたスキッドが今にも攻撃しそうな目でサクヤを睨む。しかしサクヤはそれに怯む様子はなく、ただ無表情でそれを見返す。
 僕はサクヤが攻撃されてしまうという恐怖にも似た不安から、思わず目の前に立つサクヤの腕を掴んだ。すると、サクヤは少しこちらに顔を向けるとこの場にはそぐわない程綺麗に微笑んだ。
 僕はその微笑みを見て、今度はまた違った意味で硬直した。その顔を見ていると恐怖とか羞恥とかそういった負の感情なんて忘れてしまえた。
 サクヤはスキッドに向き直るとおもむろに口を開いた。
「タダで食事を頂いているのが気に食わないと言うのでしたら、それは居候している私も同じです」
「だったらてめぇが代わりに取ってくるってか? 」
「いいでしょう」
 スキッドの噛みつくような物言いに一つも物怖じせず即答してみせたサクヤにスキッドは少なからず怯んだように見えた。自分のその行為が気に食わなかったのか、スキッドは一つ舌打ちをすると「今日中までだからな」と吐き捨て、その場を去った。その後ろを始終オロオロしていたルイーシが慌てて付いていく。
 サクヤがこちらを振り返り、短く息を吐いた。僕はサクヤを巻き込んでしまって申し訳なくなって、また俯いてしまう。床と自分の足しか見えないその視界の中に黄緑色の細い手が差し出された。
 それに気付いた僕は重い頭を恐る恐る上げた。そこには眩しい笑顔を湛えたサクヤがこちらに手を伸ばしていた。
「ほら、行こう? 」
 僕はその笑顔に、その声に、その言葉に、何か突き上げられるようなものを感じて、気づけばその手を取っていた。
「今日中か……どれくらい時間がかかるか分からないし、さっさと終わらそう」
 サクヤはそう言って僕の手を引いて外へと向かった。僕はただそれに付いていくだけだったが、自然と笑みが零れた。

 彼女となら――僕が長年望んでいた事ができるかもしれない。そんな気がした。だから僕は、白い真珠が見つかったら、ある事を言おうと決意した。

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2014.4.25  22:36:40    公開
2014.5.17  10:22:13    修正


■  コメント (3)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

プラマイたち、かわいいふりして意外と怖っ!!と思ってたら「意外と鬼だな、あの二匹」とサクヤが代わりに言ってくれました^ω^

サクヤモテモテですね!でもこれは男の子と思われてしまっている感じかな?
【ラブ応援隊】とは何と独特なチーム名…!(笑)

(ダメだ! ここで泣いたら負けだ)…泣くまいとこらえるシュウルくんの健気さがすごく好きです。
シュウルの親(バクフーンかな?)は、昔ピチューを助けたことがあるみたいな感じですね。

シュウルが長年望んでいた事…そしてサクヤに言おうと決意したこととは…!?

21.3.26  16:36  -  せせらぎ  (seseragi)

わああ、こちらでもお会いできるなんて…こんにちは、Lujanさん!ポケピクの方ではお世話になっております。
すてきだなんて、ありがとうございます!正直私が胸キュンしたいが為に妄想したものをそのまま小説にしているだけなので、気持ち悪い気もするんですが、可愛いと言ってもらえて安心しました。しかも上手とまで言って頂けるとは嬉しい限りです。
私がポケダンした時にパートナーになったヒノアラシ君が可愛すぎてこうなりました(笑)ついでに自分はキモリでした←
なに!Lujanさんも小説書いてるんですか!?それは早速読まねば!
というわけで、失礼します!コメントありがとうございました!これからもスローペースではありますが、頑張って参りますのでよろしくお願い致します!

14.4.29  18:37  -  絢音  (absoul)

こんにちは!ポケピクではリクエストに参加させていただいたLujanです!
きゃあああああステキ小説だああ!((
…すみません、ストーリーが可愛すぎて惚れちゃいましたw
シュウル君が…ギザカワイス…
絢音さんはストーリー書くのがとても上手いですね!私の小説と言ったら…もう…
更新頑張ってください!でわでわ!

14.4.29  12:08  -  不明(削除済)  (sono11)

 
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