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結果、世界を救うのは恋とか愛でした。

著編者 : 絢音

記憶喪失のキモリ様の初めてのお話

著 : 絢音

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テーマ1『見るもの全てが初めてのものだと好奇心が湧くけど不安にもなるわよね。でも初めての場所って浮き足立っちゃって、不審にもキョロキョロしちゃうものよ。そこでバッタリいい♂に……なんてね』
テーマ2『好きな子にあだ名付けられると嬉しくない? そのあだ名で呼ばれると親近感湧いちゃって、ちょっと勘違いしそうになるわよね』
テーマ3『中性的ってつまり美しいってことよ。そういった似た者同士が惹かれ合うのは何故なのかしら』


 前を黙々と歩くヒノアラシの後を遅れないように付いていく。私が目覚めた時よりだいぶ辺りは暗くなり、もう陽は見えなくなっていた。それでもまだ残り陽とでも言うのだろうか、そのお陰で周りが見えないということはなかった。
 海岸を抜け草原の踏みならされた道を行くシュウルは何やら焦っているようで、前のめりになって早歩きである。門限でもあるのだろうか。それでも度々私がちゃんと付いて来ているか後ろを振り返り確認している。
 またシュウルは振り返った。ヒノアラシの細い目と目が合ったので私は愛想笑いを返す。するとシュウルは恥じらうように困った顔をして前に向き直る。
 その行動はいじらしくて可愛らしく、まるで女の子のようだと思った。シュウルという名前から察すると男の子だと思うのだが……それに一人称は僕だったはずだ。
 しかし今時では自分の事を「僕」と呼ぶ女の子もいるので、一概に一人称が僕だからと男の子と決めつけない方がよいかもしれない。そう考えるとシュウルの性別はよく分からなかった。それくらいにシュウルの外見は愛らしかった。『可憐』という言葉がよく似合う。
 一般的なヒノアラシはこんなに可愛らしいものだったかと思い浮かべようとして、何も記憶が残っていない事を思い出した。
 常識はあると思うのだが、自分が実際に今まで経験してきたであろう事は何一つとして頭にない。ヒノアラシがどんなポケモンか等といった知識としては大抵のことは覚えているのだが、その姿を見る事や今こうして歩いている事だとか夜を迎えようとしている事さえもまるで人生で初めての事のようで変な感じだ。楽しいのか不安なのかよく分からずに、なんだかドキドキしてしまう。
 これほど考えられる知能があることから、きっと私は十数年は生きてきたであろうと想定できるので、まさか今している事が初めてなわけはないと思う。しかし、どんな考えもあくまでも想定の範囲を越える事はできなかった。

 長い一本道の突き当たりにそのギルドとやらは建っていた。平べったい円筒型の土色をした建物を囲って細長い白い木が枝を伸ばし大きな葉を目一杯広げている。どうやらそれが屋根代わりのようだ。その姿はちょっとした自然のドームである。
 シュウルが建物の数メートル手前にあるギルドの看板の前で立ち止まり、ぱっと振り返った。東の空に昇り始めた月明かりに淡く照らされた表情はどこか嬉々としている。
「着きました! ここが僕の住んでるギルドです」
 自慢気に紹介してくれたシュウルの隣に立ち、看板をちらりと見る。そこには『流星の如き仕事の速さがウリ! 親方率いるスターズギルド すぐそこ』と拙い字で書いてあった。
(見慣れない感じがするけど……一応、文字は読めるのか……じゃあ書くのも大丈夫だろうか? )
 ふとそんな心配をしてしまう。記憶がないというのは何かと不便だった。そういった事はさして問題ではないかもしれないが。でも自分の名前さえも分からないのはさすがに困る。
「何かありましたか? ……あ、これ」
 シュウルが私の視線を追って、同じく看板に目を向ける。そして苦笑いを浮かべた。
「ギルドの補佐役がそれっぽく作ったんですよ。それでなんか安っぽくなっちゃってますが、ここのギルドに所属する探険隊はどこも優秀ですよ」
 そう言ってこちらに振り返ると「では行きましょう」とギルドに向かって歩き始めたので、私もそれに続いた。
 壁に1ヵ所、四角く切り取られた穴があり、そこから暖簾のように枯れ草が垂れ下がり、穴の半分を隠していた。穴は私達の大きさなら4人は余裕で通せる程の幅で、いざ下に立ってみると上の枯れ草には跳んでもぎりぎり届きそうになかった。
 その下をくぐって中に入ると、外観からはあまり想像がつかない部屋が現れた。オレンジや黄色といった暖色で彩られた壁や床が目に飛び込む。と、それと同時に右から赤、左からは青の物体が飛び込んで来た。
「うわっ! 」
 私は突然現れた何かに驚いて思わず後ろに仰け反る。反してシュウルは私を庇うように前へ出た。
「ただいま、相方さん。お出迎えしてくれるのは有り難いけどお客さんに飛び付くのは止めよう」
「お帰り、シュウル! 」
「お帰り、シュウル! お客様? 」
「お客様? あ、後ろの」
「キモリさん? ようこそ! 」
「スターズギルドへ! 」
 テンポ良く左右から幼い声が聞こえたかと思うと、シュウルの右からはプラスル、左からはマイナンがぴょんと飛び出してきた。二匹とも人懐っこい笑顔で、私の右手をプラスル、左手をマイナンが取る。
「何かお困り? 」
「何かご依頼? 」
 キラキラとした瞳に挟まれ、私は困ってしまったがその子供の無邪気さに思わず表情が緩んでしまう。そんな私の顔を見て、何故か二匹は羨望の眼差しを向けてきた。
「お兄さん、笑顔がステキ〜」
「イケメンさんだね〜」
 ねー、と二匹はお互いに顔を見合わせる。私は面と向かって褒められ、恥ずかしくなるより動揺してしまった。
 いや、というより、お兄さん? イケメン? 私には当てはまる筈のない言葉だ。何故なら、私は女である。いくら記憶が無くても自分の体の事や性別は分かる。
 そこであることに気づき、自らの体を見た――腹は赤く、足は黄緑色の間違いようもなくキモリである。
(今更だが……私、キモリなのか。よくよく考えてみたら自分の顔も思い出せないらしい)
 その衝撃的な事実に驚きが隠せなかった。私は一体どれほど大事なものを失ったのか、ここに来て初めて恐ろしくなった。
「相方さん、キモリさん凄い驚いてるから止めてあげて。とりあえず親方に会わせたいんだけど」
 ここでシュウルが勘違いではあるが、助け船を出してくれた。それに応えるように二匹はビシッと手を挙げた。
「そうだね! 」
「じゃあ早速執務室へ」
「レッツ」
「ゴー!! 」
 息ピッタリの掛け声と共に二匹は私の手を握ったまま走り出した。私もつられて走るしかなくなり、後ろからシュウルの止める声が聞こえたが、応える事はできなかった。
 入り口の広間を抜け、真っ直ぐ伸びる廊下を走って突き当たりの部屋の前で足を止める。
「ちょ……待ってよぉ」
 シュウルが困った声をあげながら、後ろから駆け寄って来る。それもお構いなしにプラスルとマイナンは部屋の入口全てを覆い隠す布をバッと翻し、中へと突っ込んで行くので、私もそれに付いていく形で部屋に入った。
 入ってすぐにこちらに背を向けた椅子と机が現れる。しかし座っているはずの人物の姿は見えない。
「おっやかたー! 」
「お客様だよー! 」
「おっ客っ様〜♪ 」
「おっ客っ様〜♪ 」
 二匹は入るや否やそう叫ぶと、どこかにいる『親方』とやらの反応も待たずに何やら歌い始めた。
「お、親方さん、只今帰りました……急にすみません」
 後から入ってきたシュウルが両手を胸の前でもじもじと合わせて申し訳なさそうに肩を狭める。すると、私達に背を向けている椅子の向こうから、両脇にいる二匹と同じ年程の幼い声がした。
「シュウルか、お帰り。その二匹が突然来て五月蝿く騒ぐのはいつもの事だから気にするな。ところで」
 そこで一旦声が途切れる。椅子がくるりと回転し、声の主である『親方』が姿を現した。黒く縁取られた菱形の耳に全身黄色のその姿を見て私は思わず目を疑ってしまった。
「こんな時間にお客とは珍しいな、何か緊急なことか? ……どうした、客人、そんな顔して」
「それはねー、ギルドを仕切るポケモンがこんな小さいピチューでびっくりしてるんでしょー」
「違うよ、ギルドのまとめ役が可愛らしい外見して耳にピアスを三個も開けててびっくりしてるんだよー」
 親方と呼ばれたピチューの質問にプラスルとマイナンが楽しそうに答える。あながち間違っていない答えに少しドキリとしてしまった。
 ピチューは耳の端に付けた二個の銀のリングピアスと黄色に光る石のワンポイントピアスに手を当てながら、可愛らしく考え込む。
「ふむ……まあ、俺らピチューの進化は少し特殊だからな、仕方ないだろ。そういうわけで、こんな姿だが俺がこのスターズギルドのリーダーだ。皆には『親方』と呼ばれてる。では、そろそろ用件を聞こうか」
 そう言って親方は小さくて可愛らしい手を組み、私と向き合った。記憶が無いのにどう説明したものか悩んでいると、隣に並んだシュウルが口を開いた。
「僕が説明します。このキモリさんが浜辺に流れ着いたのを僕が見つけて、それから、話を聞いたんですが、記憶喪失みたいで……」
「なるほど、それで帰る場所も分からず泊まる場所もないからここに連れてきたんだな? 」
「そうです。あと、何か情報がないかな、とか思ったりしたんですが……」
「情報か……」
 親方が難しい顔をしてうーんと唸る。ここで変に口を挟むのも悪いと思い、私はとりあえず黙って事の成り行きを見守る事にした。
 親方はくるっと机に向き直ると何やらがさがさと漁り始めた。すぐにまた椅子が回転し現れた親方の手には、その体よりも少し大きい紙の束が抱えられていた。それをペラペラとめくり、内容をさらっと確認していく。
「今のところ、ここ近海でのキモリに関する遭難事故や救済依頼は来てないな」
 親方は最後のページをめくると、無造作にそれを後ろの机に投げ置く。その拍子に積み上げられた紙束が崩れ何枚か床に落ちてしまったが、親方は渋い顔をしてそれらを睨んだだけで特に片付けようとはしなかった。
 親方はこちらに顔を戻すと、また腕を組み、可愛い声で唸る。
「ふーむ……まあ、特にこれといった情報がない今はあれこれ詮索しても意味がない。それに丁度良くもうじきミレール都市のギルドから使いが来る予定だ、そいつらに聞けば何か分かるかもしれん。それまではここにいればいい。空いてる部屋を勝手に使ってくれればいいし、何かあれば遠慮なくギルドにいる奴らに言ってくれ」
 親方は早々に考えを打ち切ると、大雑把に話を進めた。それでもどこの誰かも分からない私を受け入れてくれるその懐の広さに安心し、「はい、ありがとうございます」とお礼を言った。親方はそれに頷いて応えると、シュウルに視線を移した。
「シュウル、お前が面倒見てやれ」
「は、はい、分かりました! 」
 シュウルが大役でも任されたように緊張して返事をする。そしてこちらを見たので私も見返した。するとシュウルは照れ笑いながら口を開く。
「よろしくお願いします ……えーと」
 シュウルはそこではたと口に手を当て、困った顔をした。私が首を傾げると、シュウルは言っていいものか悩んだ末、
「名前も忘れちゃったんですよね……何て呼んだらいいのかなぁと思って」
「ほう、じゃあお前が付けてやったらいいんじゃないか? 」
 親方が唐突にそう言うと、シュウルは焦って両手を凄い勢いで左右に振った。
「そ、そんな、僕がですか? 自分で付けた方がいいんじゃないでしょうか」
 そう言って恐縮した顔でちらっとこちらを見るシュウルが可愛くて、私は少し困ったような笑顔でそれに答えた。
「いえ、自分で自分の名前を付けるのは些か恥ずかしいものがありますので……できれば他の方に付けて頂きたいかと」
「だそうだぞ、シュウル、任せた」
「えぇっ、そんな、急に言われても……」
「カッコいい名前付けてあげてよ〜」
「責任重大だよ、シュウル! 頑張って! 」
 親方にプラスル、マイナンも加わって、シュウルに命名するという責任を押し付け、ニヤニヤとしている。勝ち目がないと分かったのかシュウルは黙って考え始めた。
 一分程経った頃だろうか、シュウルがパッと顔を上げてその名を口にしようとしたらしいが、皆の顔を見て恥ずかしくなったのかまたうつ向いてしまう。
「思いついたのか? 」
 親方の問いかけにシュウルは小さく頷いた。言ってみろ、と親方に促され暫し躊躇していたシュウルだったが、やっと蚊の鳴くような小さな声でその名を呼んだ。
「――サクヤ、とかどうかなとか思ったり」
「サクヤ……」
 私はその名前を復唱した。何かとてもしっくりくるものがあった。しかし何かが惜しい気がする。
「気に食わなかったらすみませんっ、すぐ新しい名前を考えます!」
 さっきとはうって変わって今度は大きな声で早口になったシュウルを宥めるように親方が口を開く。
「ほお、なかなかいい名前じゃないか。やはりシュウルに任せて正解だったな」
「さっすが、シュウル〜」
「さっすが〜じゃあこれからサクヤでよろしくだね! 」
「よろしくね、サクヤ! 僕はアイだよ! 」
「僕はカタだよ! 」
 早速呼び捨てで私の名前を呼んだプラスルが名乗ったら、それに続いてマイナンも名乗った。そして二匹はピョンとハイタッチすると得意気に声を揃えてこう言う。
「二人匹合わせて親方の『相方』だよ! 」
 その息ぴったりなよく分からない紹介に少し困惑していると、親方が捕捉してくれた。
「この二匹には俺の補佐をしてもらってんだ。で、いつも二匹一緒にいるからセットで相方って皆に呼ばれてるんだ。こいつら自身もそれ気に入ってるみたいだし、サクヤもそう呼んでやっていいぞ」
「はい、分かりました。相方さん、こちらこそよろしくお願いしますね」
「はーい! 」
「はーい、でね、『さん』はいらないよ! 相方って呼び捨てでいいよ! 」
「あと、敬語もいらないよ! 仲良くしようねっ」
「ねっ」
 新しい友達ができたような相方のはしゃぎように微笑ましく思いながら、私は分かった、と頷いた。
 私達の話が一段落したのを見計らって親方が口を開いた。
「よし、じゃあカッコいい名前も決まって、お互いの自己紹介も終わったところで、今日は疲れてるだろうからもう休め」
 そう言われてみれば、体が怠い気がする……聞いた話だが海を漂流していたのだから、当たり前と言えば当たり前だった。なので私は親方の有り難い気遣いに従う事にした。
「はい、そうさせて頂きます」
「そうか、じゃあ後はシュウル、任せたぞ」
「後はって……さっきから僕に任せきりじゃないですか」
 親方の言葉にシュウルが少し口を尖らせる。親方が豪快に笑って誤魔化すも、シュウルはさらにぶつぶつとぼやく。
「名前考えるの、凄い頭捻ったんですからね。ただでさえ女の子の名前なんか分からないのに、カッコいいのでとか注文付けてくるんだから……」
「ま、まぁ、決まったからいいじゃないか、終わりよければ……って、え? 女の子? 」
 親方がシュウルを宥めている途中で、ふと口を閉ざし、こちらを見た。 その意図を掴みかねて私は目をしばたかせる。
 親方が何か言おうとする前に相方が驚きの声を上げた。
「ふえぇっ!?」
「サクヤって女の子だったの?! 」
 当たり前過ぎる質問に私は怪訝な顔をしてしまう。それをどう受け取ったのか相方は次はシュウルに詰め寄る。
「違うみたいだよ? 」
「だって凄い怪訝な顔してるよ? 」
「え、いや、あの……一応、女だが」
 私の一言に今度は相方も親方も固まった。私が「あの……」と声をかけると、親方が椅子から飛び降り、私のすぐそばまで来て顔を覗きこむ。相方も一緒になって、三匹の可愛い顔が私の眼下に集まった。
(うわ、ちょっと可愛すぎるな……)
 私は三匹の視線にたじろいだ。しばらくして親方が気まずそうに視線を反らし、先程までの威勢は何処へやらといった口調で呟いた。
「いや……すまないな、てっきり♂かと……サクヤって♂でも♀でもべつに可笑しくない名前だしな……」
「それに、親方の何倍もカッコいいもんねー」
「ねー」
「なんだって? 相方、もっぺん言ってみろ」
 そう言って親方は頬からバチバチと電気を散らし始めた。シュウルはひきつった顔でおろおろと親方と相方を交互に見ているだけだ。
 放っておくとなんだか大変なことになりそうだったので、一悶着起きそうなところで、私は口を挟む。
「えっと……そろそろ休みたいのですが」
 その言葉を聞いた親方はとりあえず一旦、電気を収めるとシュウルを見た。その視線に気付いたシュウルはこくんと頷くと、私に向かって声をかける。
「それじゃ、部屋にご案内しますね。付いてきてください」
 失礼しました、と部屋を後にするシュウルに倣って私も部屋を出た。三方向に続く廊下を左に曲がる。その時シュウルが声をかけてきた。
「あの……名前、あれで良かったですか? 」
「はい、素敵なお名前を付けて頂き、ありがとうございます」
「そうですか、それなら良かったです」
 シュウルはほっと息をつくとそれからは黙ってしまった。そのまま道なりに右に曲がる。それから三つ目の部屋を横切る所でシュウルは止まった。
「ここが僕の部屋です。その隣が空いてるのでそこを使って下さい」
「分かりました。今日は本当にいろいろとありがとうございました」
 そう言って微笑むと、シュウルは足元に視線を落とす。ちらちらと上目遣いでこちらの顔を伺い、何か言いたそうにもじもじしている。気になったので私は声をかけてみる。
「あの、何か? 」
 すると、シュウルはビクッと体を震わせ、顔を上げた。小さく口を動かすも声にならずに聞こえない。そしてやはり下を向いてしまうのだった。
(少し雑談すれば話しやすくなるだろうか)
 焦らされると気になるもので、私はシュウルの言いたいことを言わせる為に、どうでもよい話を振った。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、私はそんなに男性的な外見をしているのでしょうか? 」
 その質問にシュウルはきょとんとした顔でこちらを見た。私はさらに話を続ける。
「いえ、先程、親方にも相方にもそう間違われたので」
「んー……たしかに、中性的な感じで、正直、♂の僕よりカッコいい雰囲気があるなぁって思います。僕と比べるのは少し的外れな気がしますが……あぁ、でもカッコいいと言うよりなんだろ、綺麗って感じ?……はっ、す、すみません、意味分かんない事言って。
 ……実は僕は、逆によく女の子に間違われるんです。だから、ちょっとはその……さ、サクヤさんの気持ち、分かる気がして」
 シュウルは自分が付けたサクヤと言う名前を少し躊躇しながら使い、肩をすくめた。
 やっぱりそうなんだ、と私は思った。私も今の話を聞くまで、やはり少し本当に男なのか疑っていたからだ。
「私達、似た者同士って事ですね」
 私の言葉にシュウルが少し驚いた顔を上げ、そしてパッと顔を輝かせた。
「そ、そうですね! ……あのっ」
 弾んだ声で返事をしたかと思うと、次は緊張した面持ちで私と地面を交互に見る。手をぐっと握り締め、シュウルは意を決してあるお願いをした。
「僕も、相方さんみたいに、敬語とか無しでもいいですか!? 」
 シュウルが真っ赤な顔でそう言うと、表情を隠すようにまた下に顔を向ける。そんな彼を見て、私は思わず笑ってしまった。
(そんなこと言うだけなのに、そんな緊張しなくても)
 シュウルは笑われたからか、泣きそうな顔になる。私は彼に手を差し出してこう言った。
「構わない、よろしく頼むよ、シュウル」
 シュウルがはっと顔を上げる。そして今度は溢れんばかりの笑顔をこちらに向けてくれた。
「う、うん! こちらこそよろしくね! サクヤ」
 そして私達は握手を交わしたのだった。

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2014.4.19  18:23:13    公開
2014.5.17  10:07:41    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

アイちゃん・カタちゃんのテンションの高さがとてもかわいいです…!!二匹まとめて妹として貰ってもいいですk(殴 (それ以前に性別が分からない

サクヤという名前を貰ったキモリは「何かとてもしっくりくるものがあった。しかし何かが惜しい気がする」と考えていましたが、「何かが惜しい」は伏線のようですね…? 人間だった頃の名前がサキだったとか(???)

(うわ、ちょっと可愛すぎるな……)とサクヤが思うシーンもキュンキュンでした///ギルドでトップ級の実力を持っていそうなピチューと相方たちがちっちゃくて可愛いポケモンたちだなんて…!!設定が胸キュン過ぎます…!!//

21.3.26  16:21  -  せせらぎ  (seseragi)

書いてくださって
ありがとうございます!!(#^^#)

17.1.15  17:22  -  aiueo san:moon  (ゲスト)

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