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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

94.sideユウト×アヤ 恐怖[キョウフ]

著 : 森羅

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sideアヤ

な、んでこいつは、息切れてないのよ・・・・・。
1階から2階への階段。
一気に駆け上れば『普通は』息切れを起こすはずなのに・・・。

あたしは階段の最後の段で肩で息をしている・・・・当然だと思う。

「大丈夫か?」

あたしの隣でひょうひょうとして聞いてくるのはユウト。
深い息をしてるからそれなりに疲れてるとは思うんだけど、それでもあたしに比べれば、余裕の表情。

「なんで、あんた、平気なのよ、ぉ」
「決まってるだろ。・・・・・持久力の違い」

平然と答えるユウトはムカつく対象以外のなにものでもない。
いつか絶対蹴り飛ばしてやるんだから!と心で誓っているうちに息は大分整ってきて、あたしのその様子を見てか、ユウトはそっけなく聞いてくる。

「行けるか?」

あたしは頷くけど、実際はまだちょっと心臓が跳ねている。
もうちょっと女の子に気を使いなさいよ、と言いたいけど言っても無駄そうだしやめた。
というか、

あたしが頷くのを見てすぐにさっさと歩き出すって、あんた『親切心』って人間にとって大切な感情が欠けてるんじゃないの!!?

「・・・・何だよ?」
「なーんにもっ!」

ユウトがあたしが怒っているのを感じてか、もしくはあたしが動かないのを見てか、あるいはその両方か聞いてきたのには、怒りをこめて返事した。
ユウトはなんでそんな剣幕なんだ、とでも言いたげな変な顔をするけどあたしはそれを無視して、ユウトを追い抜かして歩いて行く。

後ろでユウトがため息をつくのが聞こえた。

sideユウト

訳わかんねぇ・・・・。
何でいきなりそんな剣幕で怒り出すんだよ・・・。
オレは何かアヤの逆鱗に触れるような事をしただろうか?
・・・・覚えが無いんだが。

まぁ、いいか。どうせ大した事じゃないだろうし。

オレは話を自己完結させて手元にある鍵と通り過ぎていく部屋の番号を見比べる。
鍵の番号は6。一つしか番号が振ってある鍵が無いからこれだけを頼りにしても大丈夫のはず。
通り過ぎる部屋には5と言う文字が見えた。
つまり?

「アヤ、ここだ」
「えー、もっと早く言ってよ」

行き過ぎてしまったアヤはふてくされた声で小走りに戻ってくるが、それは鍵を持っているオレよりお前が先に歩くからであってオレのせいではない。
アヤを横目に鍵穴に鍵を差し込むとガチャ、というなんの変哲も無い音と共に安っぽいスチール製の扉が開く。

「あんたね、中に人がいるととか考えなかったの?」

・・・・考えなかった。

アヤの冷たい目線を感じたが、幸いにも人はいない。

「夜月、紅蓮・・・?」
「スピカーー!シリッ」
「黙っててくれ、頼むから」

中に人がいることを考えるくらいなら、大声を出すのをやめてもらいたい。
そう思ったオレは速やかにアヤを黙らせる。
アヤは不服そうな顔をするが、とりあえずは黙った。

《ゆーとぉー?》

お?

「・・・夜月?」
《無事だったのかー?》

それはこちらが聞きたいんだが。
部屋は薄暗い上にコンテナのような大小さまざまの箱に埋め尽くされていて夜月は見えない。
アヤはすでに部屋の中に入り込んで中を物色している。
オレも中に入ってどこかにいるはずの夜月に声を掛けた。

「お前、どこにいるんだよ?」
《こっち》

・・・・大変わかりやすい説明をありがとう。
おかげでまったくわからない。

とりあえずはこちらだろうと声のするほうを探してみる。
数分後には、夜月は見つかった。

《ゆぅとぉー!》
「よぉ、夜月。無事だったな」

飛びついてくる夜月をオレは片手で押さえつけて放置する。
いちいち構っていられるか。

《なんかさー、もうちょっとさー、再会の喜びってもんはねぇーの?》

ない。

「夜月、紅蓮とトロピウスは?」
《あぁ!ひでーなー!!ちょっとは俺の心配したか?ユウト。
それとも俺よりあいつらの方が大切ってわけかー?》
「夜月」
《なんだ?》

笑顔の夜月にオレはたった一言。

「うるさい。あいつらはどこだ?」
《・・・そこだよ。・・・・ぅう〜、俺だってさ俺だってさ・・・》

いじいじといじける夜月。
・・・・どうしてオレの周りのやつらは面倒な性格の奴ばっかなんだ?
オレは今日何度目かわからないため息をつきながら例のナイフで夜月の縄を切り、紅蓮たちのボールを見つけ出した。

「紅蓮、トロピウス」
《無事だったんですな。ユウト殿》
「おかげさまでな。紅蓮は?」
《大丈夫なんですな》
《・・・俺より、紅蓮のほうが大切なんだ・・・・》

夜月の変な言葉が入ったが、気にしないでおく。
紅蓮も無事だった、なによりだ。
それで、もう一匹は?

《・・・・ぅ・・・》
「ぅ?」

オレの目線は自然にトロピウスの方に移動する。
オレの身長と同じくらいまで育ったトロピウス、まだ成長中なんだが、

・・・・まずい・・。

こいつもかなり困った性格をしている。
すなわち、

《ぅえぇえええぇーーーん!!ごめんなさぁいっっっ!
役立たずでごめんなさいっ!あっさり捕まってごめんなさいッ!!
ぅえっうえ・・・・ぐすっ・・・ぅえええぇえぇえええぅええんっっっ!!》
「・・・・・・」

こうなると手が付けられなくなる。
誰も怒っていないのにひたすら大声で謝り続けて大声で泣き続けて、挙句の果てには被害妄想を広げていく。
何がこいつをそうさせるのか、そのラインはトロピウス本人しか知りえない。
だがこのまま泣かせておいてはギンガ団側に見つかるし、なによりオレがひどく罪悪感にさいなまれる。

「・・・・・い、いや、ボールの中に居ただろ。だから仕方ねぇって」

必死で弁明してやるとトロピウスは一瞬泣き止んだ。
が、

《・・・・ぅうぇえっーーーん!!!仕方なくってごめんなさい。
ごめんなさいって言ってごめんなさいぃーー。世界中の全ての人に謝るからーーッ!
ごめんなさぁいっーーー!!》

逆効果。
どうすれば泣き止むのか、それはいまだわかってない。

「お前は悪くねぇよ。ねぇから、泣かないでくれ・・・・」
《ぐすっ、・・・泣いちゃってごめんなさぁいぃぃぃーー!!》
「・・・・入っててくれ、・・・な?」

泣き喚くトロピウスをオレはボールに入れることで泣き止ませる。
ボールの中で泣いているのかもしれないが、とりあえず今は見つかるかもしれないので時間が無い。話は後でゆっくり聞こう。

「アヤー?」
「・・・何よ、さっきの泣き声。あんたどんな育て方したわけ?」

姿は見えないが、声がナイフのようにとがっている気がする。
弁解しておくとオレがああいう性格にしたわけではなく、生まれた直後からああいう性格だった。責任はオレよりもシロナさんにあるだろう。

「・・・スピカたちは?」
「いない。・・・・あんたの鞄なら見つけたけど」

がらりと変えた話題にアヤの搾り出すような返事が返ってくる。
多分残りの鍵がスピカたちの分なのだろうが、あいにく鍵に番号も振っていないのでわかりかねる。
とりあえずわかるのはここにいても仕方が無いということだけだ。
オレたちはアヤと合流して、鞄を受け取った。

「仕方ねぇ。この鍵にあう鍵穴、当たるまで調べるか」

夜月たちが見つかっていないのか、と聞いてくるのには頷く事だけで状況を伝える。
アヤは下を向いてしまっていて、自分が悪いわけではないんだがどうにも居心地が悪い。
とりあえずオレはドアノブをまわして廊下に出・・・・

「なっ」
「ガキども、どうやって出やがったんだ?」

赤い装束、がずらり。
オレは反射的にドアを閉めるが、スチールの安っぽいドアは炎系の技によって一瞬で盾としての役割を終えて部屋の内側へと吹っ飛ばされる。
オレたちは隠れていても仕方が無いと、風通しの良くなった入り口の前に出て行った。

「見つかったわね・・・」
「・・・まぁ、見つからねぇ方がおかしいけどな」

緊張したアヤの声にどこか投げやりに答えるオレ。

《・・・グルル・・・》

・・・・紅蓮?
紅蓮のうなり声にオレは紅蓮の方を見るが、紅蓮は完全に威嚇体勢に入っている。

「紅蓮?」
《・・・・・・》
《様子がおかしいぞ》

夜月が言うのにオレは頷く。
紅蓮は多分オレたちのことが見えてないし、声も届いていない。

「紅蓮」
《がうぅぅうぅ・・・・・》
「紅蓮!」

強く呼んでもまったく聞こえていない。
明らかにおかしい。

「どうしたの・・・?」

アヤが聞いてくるが、オレに答える余裕は無かった。

「んー。・・・・あれぇ?」
《グルルル・・・・ッ!》

牙をむき出し、姿勢を低く。口から漏れるのは喉の奥から出した低い声とひとかけらの紅。
紅蓮の威嚇はマグマ団側の気の抜けたような声によって最高潮に達する。

・・・誰だ?
オレはざっと周りに目を通すが話しているよう見える人物は見当たらない。
だが、どこかにいるその声の主は紅蓮の威嚇など聞こえてもいないように次の言葉を発した。

「ねぇ、通して。・・・・邪魔なんだよねぇ」
「・・・は?・・ぅ・・うわぁああぁーー!!」

声と同時に火の粉が上がる。
それはマグマ団の一人を焼き焦がしていた。
その一人の様子を見てか、いくつもの小さな悲鳴と共に道が開かれる。
開かれた道の真ん中に立つのは、オレと同じかそれよりも少しだけ背が低いだろう男。
揃いの赤い装束のせいで表情は見えない。
そいつはオレを指差しこう聞いた。

「んー。ねぇ、君かなぁ?・・・君、そのウィンディのトレーナーァ?」
「・・・・・・・・だったら?」
「別にぃー。たださぁ」

そいつはニィと笑って、

「昔、僕が『遊んでた』のと似てるんだよねぇ」


まるで捨てた『玩具』をオレが拾ったかのように、言い放った。





































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2010.1.4  23:18:53    公開
2010.8.28  00:07:08    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

こんばんはです、ハミングさん。
コメントありがとうございます!!!
国語が大変だったようですが、テストからの無事帰還おめでとうございます!!
僕はまだ終わっていない・・勉強しないとです・・・・orz
本当にアヤ、ユウトにそんな期待寄せる事自体が時間とエネルギーの無駄だよ(主人公というより人間として問題があるような、許される範囲のような・・・^^;)
小ネタがツボにはまりましたか。それはそれは嬉しい限りです!(でも、その小ネタのせいで本筋が見えにくくなる事も・・orz)
夜月とのやり取りは・・・変わりませんね。常にこの調子でゆーとが夜月をあしらってます。ツンデレ(・・・デレかどうか微妙な所もありますが)最高!(帰れ
トロピウス、やっとの登場ですね。名前は決まってるんですが登場まだかな・・と思う日々。彼は可愛いですか?テイクアウトですか?大変ですよ?アフターケアは保証いたしません(最低)どうやったら泣き止むのか、取扱説明書は存在いたしません(問題外)
シロナもえらい大変なものを押し付けてくれたものです(おい!)
いえ、もちろん同じように愛情注いでるんですけどね^^
和やかに済むはずが・・・誰だよ、このマグマ団!?って感じです・・。紅蓮の元主人、っぽい雰囲気ですね(作者は誰だ)
次は結構side紅蓮が多くなるはずです。メインが紅蓮ですから、当然といえば当然ですが。
僕の戦闘描写能力をフルに使って書きます(もともと少ないのでたいしたものではないですが)
それでは、失礼を。



10.1.10  00:18  -  森羅  (tokeisou)

こんばんはです、森羅様。
ようやくテストから帰還しましたー。あかん、頼みの綱の国語に終了のお知らせが\(^o^)/
アヤ、ゆーとに紳士的態度なんて求めちゃダメだよ^ ^;
ちょくちょく入ってる小ネタがいちいちツボだから困ります←
夜月とのやり取りも全く変わりませんね。まあゆーとがツンデレだから仕方ない(
トロピウスの初会話…なにこれかわいい///
全力でお持ち帰りさせて頂きます(ヤメレ
新しい萌えをありがとうございました(なぁにそれぇ
そして和やかな雰囲気をぶった斬ってくれたマグマ団の方は…紅蓮の元主人!?やばいみなぎってきた(みなぎんな
これは因縁的にも死闘必至ですね。紅蓮との関連性も合わせて期待してます!
ではでは乱文失礼しましたっ!

10.1.9  21:47  -  不明(削除済)  (lvskira)

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