生あるものの生きる世界
88.sideアヤ 湿原の爆発[マキシ]
著 : 森羅
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外に出た瞬間にパニックがさらに増大しているのがわかった。
野次馬のように集まってきている人々は例を漏れずサファリパークの入り口付近に集合している。
その野次馬をかき分けかき分けやっとのことで先頭にまでたどり着くあたし。
「ぷっわ」
人ごみから解放されて一息。
一体何が起こってるのよ?
《アヤ、あれ・・・》
あたしの隣でスピカが震える声でつぶやく。
あたしはスピカの目線を追ってサファリパークの空を見上げて、
「嘘・・・・」
どす黒い煙が空の一部を覆い隠していた。
その周りには行き場をなくして飛び交うポケモンも見える。
あまりにも大きな黒煙にあたしは見ていられなくて下を向いた。
そのとき、
『ピンポンパンポーン』
不意にかかった場違いな音楽。
ざわざわという騒ぎ声が一瞬にして静まりかえって、あたしもはっとして顔を上げる。
それを見越したようなタイミングで放送は始まった。
『先程、サファリパークで意図的と見られる爆発が起こりました。
この爆発による死傷者は報告されておりません。
戸外に出ている皆様は速やかに自宅、もしくはポケモンセンターの方へとお戻りください。
只今からポケモンセンターに負傷したポケモンを運びます。ご理解ご協力宜しくお願いいたします。
繰り返します・・・・・・・』
一度目の放送で大部分の人は理解したらしくぞろぞろと帰路についていく。
あれは一体何だったのか、と言う疑問を口にしながら。
《どうするの?アヤ》
いまだに突っ立っているあたしにスピカが聞いてくる。
あたしはサファリパークの入り口に目をやりながら答えた。
「とりあえず、ちゃんとした状況説明が欲しかったんだけど・・・」
あの放送じゃ何が起こっていたのかまったくはっきりしない。
ちゃんと説明しなさいよ、と怒りたくなる。
《アヤの関わるようなことじゃないみたいよ?
誰も怪我もしてないんだし。
ギンガ団みたいなのが関わっているって言うならアヤの血は騒ぐでしょうけどね》
「でも、ポケモンは怪我してるし、そもそもあんな所で爆発を起こすなんて・・」
《警察があとはやるでしょ。気にしなくて良いわよ》
さらりと言いのけるスピカに対してあたしはまだ納得できていない。
確かにあとは警察の仕事。
あたしみたいな子供がどうこうできる話じゃない。
だけど・・・。
「ほら、嬢ちゃん。家に帰りな・・・っと、嬢ちゃん、キサラギ家の子か」
「・・・・へ?」
突然の声にあたしは数秒『嬢ちゃん』が誰を指しているのかわからなかった。
声の主はあたしの後ろに立って腕組みをしてこちらを見下ろしている。
水色と白を基調としたマスクを被った顔が目に入ってきた。
この人、知ってる。
あたしには思い浮かぶ名前があった。
だって、この人、
「ノモセのジムリーダー!」
《・・・マキシ、ね》
つい指差ししちゃったけど、向こうは気にしてないみたいに見える。
自分の町の子供をちゃんと覚えてるってちょっとすごいわね・・・。
あたしがそう思っているとマキシは胸に拳を当てて高らかに言い始めた。
「おうよっ!俺様がこの町のジムリーダー・・」
「どうなってるんですか?この爆発」
自己紹介なんか、いらない。
あたしはさらりとマキシの言葉を遮って聞いた。
ちょっと尋問口調になってるけど、気にしないっと。
「キサラギの嬢ちゃんよ・・。人の話は最後まで聞くのが筋ってもんじゃないか?」
「あたしは『キサラギの嬢ちゃん』なんて名前じゃなくて、アヤって言います。
それに、だってあたし貴方のこと知ってるから。これ何が起こったんですか?」
一応ジムリーダーだし、年上だしであたしは敬語になるけど、『キサラギの嬢ちゃん』と言われた時点でちょっと頭にきていた。
ものすごく年下に見られている気がするし、それにあたしの名前はアヤなんだから。
あたしがちょっと怒っているのに気が付いたのか困ったようにマキシは頭を掻きながら言う。
「今から俺様と何人かで見に行くんだよ。
規模は大した事なかったが、どういう理由で行われたのかも良くわからんしな。
だから、嬢ちゃんは家に帰りな」
あたしはどうにも引き下がれない。
さらに何か言おうと思って、
《アヤッ!あれ!!》
スピカの甲高い声がそれを遮った。
さっきと同じセリフだけど、もっと緊迫した雰囲気。
何?何があったの!?
辺りを見回すあたしの目に飛び込んでくるのは、
『サファリパークの入り口から出てきたギンガ団』の姿。
小脇に何か黒塗りの鞄のようなものを抱えてノモセシティの出口の方へ走り去っていく。
・・・・なんで!!?
どう考えても偶然だとは思えない。
なら?
あの爆発はギンガ団が起こしたもの・・・・?
その考えに至った時点で、同じように走り去っていくギンガ団に釘付けになっているマキシの横をすり抜け、あたしはダッシュでサファリパーク入り口を目指す。
だけど、あたしがサファリパークの入り口にたどり着くか着かないかの時、『水柱』が入り口をふさいだ。
「わっ!?」
《きゃっ!》
スピカと2人で悲鳴を上げて、何とかその場で急ブレーキ。
数秒してから水は治まり、その地面には大穴が開いている。
・・・・濡れなくてよかった・・・。
「嬢、ちゃ・・ん。立、入り禁・・・、止だ」
後ろからの声にあたしはくるりと振り返る。
息も絶え絶え、フローゼルを横に連れてマキシが走ってきた。
たるんたるんのお腹が可哀相なくらい派手に揺れる。
さっきの水芸はあのフローゼルみたいね。
あの距離から今の水柱を作ったならその実力はすごい。すごいんだろうけど、
・・・・・完全に運動不足じゃない。このジムリーダー・・・・。
あたしが顔を引きつらせて立ちすくんでいると、
やっとこさあたしの傍にたどり着いたマキシがふぅふぅと肩で息をする。
・・・・あそこからここまで150mほどなんだけど・・・・。
ちなみにあたしとスピカは息も切れてない。
「なん・・・なんだ・・?さ・・っきの・・・変な野郎は・・・?」
ギンガ団より先に・・・・なんなのよ?あんたは・・・・。
ジムリーダーやめたら?
そう言いそうになる口を抑えてあたしは質問に答える。
「ギンガ団。ポケモン使って変な事してるの。
さっきの爆弾ももしかしたらあいつの仕業かもしれない」
あたしの言葉にやっと肩で息をするのをやめたマキシが怪訝な顔をして言う。
「じゃ・・・、あいつが今出てきたって事はまだ爆弾があるかもしれないわけだな」
「もしあいつが犯人なら、ね」
あたしの言葉にマキシはそうか!と叫ぶ。
・・・・何よ・・・?
急に叫ばれてあたしの体はびくっ、とすくんだ。
それを気にせずマキシは続けて言う。
「つまり、ということは、また爆発が起こるかもしれないわけだ!
なら、ここの入り口で見張る奴がいる、ということだな、そうだよな!?
あぁ!だがさっきの奴が犯人なら捕まえなければならない!
だが、俺様はここで見張らなければならないし・・・なぁ・・・」
最後の方でチロッとあたしの方を見る。
・・・・・あたしにギンガ団を追えって言ってるの?それ。
あたしはあきれてものが言えない。
だけど、マキシの目はすでに『もう走りたくない。しんどい事はパスパス』と語っている。
・・・・こんな理不尽なジムリーダーって他いないわよ、多分・・・・。
スピカはあたしの隣で《信じられない、サイテー》とつぶやいていた。
あたしは心の中でため息一つ。
「あたしが追います。スピカ、行くわよ」
マキシの隣でフローゼルが本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
あたしはマキシの言葉も聞かずにきびすを返して走り出した。
自分で行きたくて行くのと、他人に言われて行くのって違うんだからね!!
・・・・あのジムリーダー、覚えてなさいよ!!
ギンガ団を追って海沿いの道を走るあたしとスピカ。
傾きかけた太陽が水平線の向こう側に消えかけている。
昼間より少し赤みと黄色がかった太陽の光を海の水が乱反射させているのは、
・・・きれ・・・。
ついついギンガ団を追っていることを忘れて見とれてしまう。
「スピカ、海、綺麗」
息切れしないように早口に要点だけを伝えるあたしにスピカも早口に答えてくれる。
《そうね。・・・ねぇ、ギンガ団本当にこっち来てると思う?》
「ふぇ?」
そんなの、決まってるじゃない。あたしはそう言おうとして、
ぴたっと足が止まった。
《アヤ・・?》
少しだけずれて止まったスピカが不思議そうにあたしの顔を覗いてくる。
「そうよね・・・・」
《アヤ?》
そうよ、なんであたし忘れてたんだろう。
向こうだってポケモンを持ってる。
だから、
『“そらをとぶ”や“テレポート”もできる』。
何も律儀に(靴に細かい砂入れながら)ここを通る必要なんてどこにもない。
でも、そうならあたしにあのギンガ団を追う術がない。
・・・・どうしよう・・・・。
戸惑うあたしに唐突にのんきな声がかかった。
「やぁやぁ、キミはハクタイのギンガ団のビルで会った子だね?」
振り返ってみると茶色いコートを着たおじさん。
・・・・・誰だっけ?
思い出せなくてスピカを見上げるあたしにスピカは少し考えてから答える。
《I remenber it!(思い出した!)
アヤ、ほら地図を見せてもらったんじゃなかった?
・・・・・・・アタシはそのときボールの中だったけど》
スピカ、最後の言葉は皮肉?
そう言おうとしたあたしにスピカの言葉が引っかかる。
地図?
・・・・・・あぁ!!思い出した!!
「久しぶりです。えぇっと・・ハンサム、さん・・?」
「その通り!・・・で、キミは一体何を?」
「ギンガ団を追って・・・。
ノモセの湿原で爆発を起こしたかもしれないんです」
「なんと!さっきの煙はそれか・・・。
はっ!わたしとしたことが・・・ッ!では、さっきの変なやつはギンガ団だったのか!!」
ふるふると硬く拳を握り締めてやってしまった・・・、とつぶやくハンサム。
・・・・・・気づくでしょ、普通。
でも、
ハンサムが見たって事は、ギンガ団はここを通った・・・・?
あたしは少しの期待を持ってハンサムに聞いた。
「あの!じゃあギンガ団どっちに行ったかわかりますか!?」
「ん?・・・あぁ、それならあっちだ。
大声でリッシ湖がどうの、とか言っていたから間違いないだろう」
・・・リッシ湖!
これであのギンガ団の行き先がわかった。
けど、あいつは、
一体何をするつもり・・・・?
「そうなるとノモセが気になるな・・・。よし、わたしはノモセに行こう。
爆発の規模やらを調べなくては。
キミも気をつけるんだよ」
「・・・あ!ありがとうございました。・・・シリウス、お願い!」
ハンサムの言葉に意識を取り戻したあたしは慌ててお礼を言ってシリウスを出す。
《・・・・む?》
「リッシ湖まで、お願い乗せて!」
《・・・・む》
シリウスは羽を羽ばたかせてあたしの肩を掴む。
スピカをボールに戻すのを見届けるとすぐにシリウスは飛行を開始した。
嫌な予感がする。
お願い、速く!!
・・・・・リッシ湖前・・・・。
「つ・・・ついたぞ・・・。
この湖でこの爆弾を爆発させれば・・・・ッ!」
ギンガ団がそう、つぶやくのが聞こえる。
あたしはぎりぎり間に合った。
「シリウス、降下」
シリウスはひゅん、とギンガ団の目の前にあたしを着地させてくれる。
それに驚いた声を上げるギンガ団。
「・・・・うぅわぁ!何者ですか!アナタは!」
「こっちのセリフよ!あんたがノモセで爆発を起こしたの!?」
「・・・なぜそれを!!あ!自分でしゃべっちまった!」
やっぱりこいつが爆発の犯人!!
あたしはさらに問いかける。
「あの爆発はなに?リッシ湖で何をするつもり!?」
リッシ湖は『神』の住む湖。
一体何をするつもりなの?こいつらは。
「うぅ・・・。仕方がない!勝負だ!!」
「ッシリウス!」
ギンガ団によって放り投げられたボールはカチッという開閉スイッチのボタンを響かせる。
あたしも反射的に戦闘体勢に入って、出てくるポケモンを待った。
出てきたポケモンはゴルバット。
先制はあたしがもらうからね!
「シリウス、“はがねのつばさ”!」
「ゴルバット、“つばさで・・」
「“れいとうビーム”」
ギンガ団の言葉を最後まで言わせず、優美なソプラノが命令を下す。
え?、とあたしとギンガ団の両方がつぶやいた。
あたしたちが相手の顔を確認するより速く、ゴルバットが冷気によって凍りつく。
凍りついたゴルバットは立ち上がることなく地に落ちた。
・・・・瞬殺・・・。
一体誰!?
「ギンガ団ね。・・・湖で何をするつもりか、あたしにも教えてもらえるかしら?」
声を頼りに相手を探すと、女の人が目に入った。
さらっ、と金色の長髪が風に揺れる。
その隣にはその女の人の優美さを引き立てるようにミロカロスが鎮座していて。
・・・・綺麗な人・・・。
あたしは見とれてしまう。
見とれるあたしを気にせずにその人はギンガ団に詰め寄る。
「さぁ、教えてくれるかしら?
一体、何をしようとしているのか」
「・・・・ムムムッ!」
ギンガ団は口を横一文字にして頑として話そうとしない。
「リッシ湖に何の用事?その鞄の中身は?」
「・・・・ムムッ・・」
「簡単には話してはくれないようね。
・・・・・あのゴルバットと同じようになりたいの?」
優美、の一文字で表せる笑みを口元に浮かべて、怖いことを言うわね・・・。
ギンガ団が言おうとしないのであたしが代わりに答える事にする。
「その鞄の中、多分爆弾。さっきノモセの湿原で爆発が起きたの。
だからあたしはそいつを追ってきて・・・。リッシ湖で何するかまでは知らないけど」
「そうなの?・・・・教えてくれてありがとう。
きみ、名前は?」
こちらの方を振り返ったその人はやわらかい笑顔であたしにお礼を言ってくれる。
この人、たった今あたしに気が付いたんじゃないでしょーねー?
疑問がわいたけど、とにかくあたしは名前を言おうとして、
ギンガ団がボールに触るのが見えた。
「・・・ッ後ろ!!」
「“テレポート”」
「ッミロカロス!」
ミロカロスの攻撃よりわずかに速く、“テレポート”が作動する。
ミロカロスの攻撃は一秒前までギンガ団のいた場所を凍りつかせているだけだった。
その人はあたしと目を見合わせてから肩の力をふっ、と抜く。
「・・・逃がしちゃったか・・・。逃げ足だけは速いわね。
ミロカロス、ご苦労様」
残念そうにつぶやいてその人はミロカロスをボールに戻してあたしの方に向き直ってきた。
「話の途中だったわね。きみ、名前は?
あたしの名前はシロナ。神話について調べてる人間なんだけどね」
「あたしはアヤ。シリウス、ありがと。戻って」
あたしは答えてからシリウスを戻す。
「あの、変な言い方だけど、何者なの?
神話について調べてるだけの人間にしたら、強すぎる。
さっきの“れいとうビーム”とか。
それに、なんでギンガ団を・・・・?」
あたしの疑問にシロナは少しだけ首をかしげて困ったような顔をしてから答えた。
「あたしは神話について調べている人間よ。それは本当。
他にもちょっと副業を持っていて、それで・・・ね。
ギンガ団を追っている理由は二つ。
一つはその副業に関係あるから。
もう一つは彼らの目的が神話に関係があるらしいから」
「神話・・・・?」
えぇ。とシロナは頷いて続けた。
「今度はあたしが聞いても良いかしら?きみはどうして追っていたの?」
「ノモセにあたしの家があって。ちょうど爆発が起きた時にそこに居たの。
それにあたしは何度かあいつらに出くわしてる」
「・・・・・・彼らの目的、知らない?」
探るような目をあたしに向けてくるシロナ。
心の底まで見透かされそうな目にあたしの表情は固くなる。
「・・・・知らない」
「どこで彼らと出くわしたか教えてくれるかしら?」
答えた後もシロナの目は鋭い。
でも、あたしもただで全部しゃべるわけにはいかない。
「・・・どうして?」
「言ったでしょ?あたしは彼らを追っている。
もしかしたら、彼ら大変な事をしようとしているのかもしれないの。
まだ確証はないんだけど、・・・・・あの子が言っていた事を調べている所だから」
・・・・あの子・・・?
独り言のような言葉。・・・・気にしなくていいのか、な?
あたしは少し引っかかりながらも負けずに言った。
「貴方が本当にギンガ団を追ってるのかわからないし、
なによりさっき会ったばかりの人に全部話すほうがどうかしてる。でしょ?」
その言葉にシロナは目を少しだけ丸くして、小首をかしげる。
「それも、そうね・・・。んー、じゃあ、こうしない?
あたしはきみに身分を明かす。きみはその代わりに情報をくれる、どう?」
・・・・・それなら、あたしは情報を教えてもいい。
「わかった。じゃあ先に教えて。貴方が何者か」
あたしの言葉にシロナは頷いてポンッとカードを放り投げてくる。
受け取ると、それはトレーナーカード。
うん、これならちゃんとした管理の下発行されたものだから偽証の確率は0に等しいわね。
そう思いながら書かれている内容を読んだ。
カンナギタウン出身、シロナ。
年齢、職業・・・・・・。
つらつらと書かれているシロナの履歴はさっきシロナ自身が言っていた事と一致している。
・・・・・信用していいわよ、ね?
あたしはシロナにトレーナーカードを返した。
「どう?これであたしにギンガ団のこと教えてくれる?」
優しい笑顔で言われてあたしはやっと固くなっていた表情を和らげて頷いた。
「最初に会ったのは、コトブキシティ。次がソノオタウン。
それからハクタイシティ、こうてつ島。最後にノモセ。
あと、ちょっと違うかもだけど、シンジ湖とハクタイの森でマグマ団にも会ってる。
・・・・幹部と言ってた人も3人にいた」
あたしの言葉にシロナは地図にマークをつけながら、考えるような顔をする。
「きみ、出会った回数が多いわね。これじゃ行く先々で出会ってるじゃない。
今まで無事だったってことはそうとう強いのね」
「あたしは、強くなんかない。下っ端が弱かっただけ。
それにあたし一人じゃなかったときのほうが多いし・・・」
あたしの声がどんどん小さくなっていく。
あたしは、まだまだだ。
シロナは地図とあたしを見比べながら重ねて聞いてきた。
「他に情報何かない?」
「・・・・うーんと、・・・・さっきのギンガ団、湖を爆破させるって言ってた。
他、他は・・・・それくらいよ」
そう、とシロナは短く答えてあたしにお礼を言ってくる。
「ありがとう。かなり色々教えてもらっちゃったわね。
・・・・あっ、そうだ。一つだけきみを見込んでお願いしてもいいかしら?
これ、古いおまもりなんだけどね、これをカンナギのあたしのおばあちゃんに渡して欲しいの。おばあちゃん、何か偉そうなオーラみたいなのが出てるからすぐにわかると思うんだけど。
もちろんタダじゃないわよ。これ、『秘伝の薬』って言うんだけど、きみにあげる。
よっぽどのことがない限り使わないことをお勧めするけど、効果は保証するわ」
あたしは半ば強引におまもりと薬を押し付けられる。
こうなったらあたしはもう頷くしかない。
頷くあたしを見てシロナはにっこりと笑った。
「じゃあ、ね。また会うこともあるかもしれないわね。
そのときまた色々教えてくれると嬉しいわ」
さらっ、と金色の髪をなびかせてあたしの横をすり抜けていくシロナを、
あたしは薬とおまもりを抱えて馬鹿みたいに突っ立って見送っていた。
sideシロナ
・・・・ちょっと嘘ついちゃったわね。
シロナは少しだけ罪悪感を感じていた。
さっきアヤに見せたカードを彼女は取り出し、ぺりぺりと履歴の部分に張ってあったシールをはがしていく。
隠してあった部分には、こう書かれていた。
『ポケモンリーグ・チャンピオン就任』
隠していたのはどうあってもこれだけはそう簡単に明かすわけにはいかなかったからなのだが、それでもやっぱり申し訳ない。
彼女は小さくため息をついて目の前に広がるリッシ湖を見つめる。
深いブルーのこの湖には神が住むと言う。
アグノム、と言う名の小さな神が。
いつの頃からそう言われてきたのかはいくら調べても彼女にはわからなかった。
彼女がこの湖にいる理由は2つほどある。
一つはただの偶然。
シロナはケイヤが言っていた『隕石』がどういう意味なのかを確かめるためにトバリに行き(結果的には『隕石』の意味はよくわからなかったのだが)、その帰りにギンガ団と対峙しているアヤを見つけ、そしてアヤから『湖の爆破』という情報を得る事ができたから。
『爆破』とまで言われてさすがに黙って帰るわけには行かなかった。
もう一つは、様子見。
シロナはわざわざこちらに『寄った』。
あの『湖の3匹』という言葉が引っかかって。
何も起こっていないかどうか彼女はその確認もかねていた。
「・・・・何にも起きてはいないようね。よかった・・・」
安堵と共に彼女はつぶやく。
その瞬間に、
トゥルル、トゥルル。
小さな機械音が静寂を消した。
シロナは急いで携帯電話を探し当てボタンを押す。
「はい。・・・誰・・・?」
『素敵な取引のお誘いよ』
その声は、電話の向こうでくすくすと控えめな忍び笑いをもらしながら言葉を紡ぐ。
『内緒話をはじめましょう?』
シロナはその声の主の正体に驚愕した。
2009.11.28 15:57:31 公開
2009.12.7 21:54:11 修正
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.12.15 17:21 - 森羅 (tokeisou) |
コメントありがとうございます!!45さん! 遅れてしまい申し訳ありませんm(−−)m マキシさん・・・ねぇ・・・^^; 出番少なかった上にロクなことしてねぇですよ(乾笑) どうしてこうなった!?(←誰のせいだ!) 個人的に彼が嫌いだった事も反映しているようなしていないような・・・^^; ハンサムも馬鹿やってますねぇ〜。本当に貴方の敵は誰?状態ですよ。と言うか僕の書く大人の人間でまともな人ってシロナしかいないと気が付きました・・・(汗) そしてそのシロナさん、アヤにさりげなく面倒ごとを押し付けていったシロナさんが面白いですか!ありがとうございます!! 声の主がいい味出てますか?彼女は・・・。夜光さんへのコメントにも書いていますがすでに一度登場済みですよー。お暇なら探してみてください♪ 脳ポケの方ですが、いえ。すみませんでした。 続き、楽しみにしてますね。 それでは、失礼を。 09.12.15 17:06 - 森羅 (tokeisou) |
こんばんはです、森羅様。 マキシさんジムリーダーなのに良いとこ無し; 実力の程は今後に期待するとしますbb お久し振りのハンサムさんですが特に目立った活躍は無しでしたね。彼に限ってモブ的な役とも思えませんがどうなのでしょうかね…ぬむ、次にアヤと関わるのはいつになる事やら。 銀河の目的は阻止したものの、身柄は逃してしまいましたか。あまりいい予感はしませんねぇ。ボスが少々イカれ気味ですから(酷 ここでシロナさん登場キター!素性を隠してアヤから情報供給…ヤバいテンションあがってきた(キモ シロナさんの電話の相手がめっさ気になります!敵か味方か、どっちにしても一波乱起こしてくれそうですね♪ まだまだ寒くなりますのでくれぐれも風邪には気をつけて下さいね! ではでは、乱文失礼しましたっ! 09.12.14 00:21 - 不明(削除済) (lvskira) |
こんばんわです^^ どうやら、爆発編(かってに、そう言っているだけです)に突入していますね。 なんだか、マキシさん……あの、ねぇ……。 もう少し運動しないと……でも、実力は確かですね! 其処は、さすがはジムリーダー! ……と思ったら、アヤに無言で合図を送るという……。 大丈夫です! きっと、きっと。と思っていますorz ハンサムさん……貴方の敵は一体だれなんですか? といっても、良い仕事をしているのには代わりがないような……? 今回のシロナさんは、あっさりとしていながら面白い伏線を残していきましたね^^ 今後に期待です。 ところで、声の人物……誰ですかね? その人が、良い味を出しているw 関係ないですが、脳ポケは、すみませんでした。 問題は、あの登場人物の多さによる「安物」になった事ですね。 一人一人の把握が、出来なくなってしまっているという……。 その結果、強引に人物達を離そうとしたら、ああなる訳でして。 森羅さんなら、大丈夫だと思いますが、気を付けて下さいね。『過度の登場人物=悪い例』だと受け取って置いてください。 自分は、このまま頑張りますが(−−;) では、無駄話しつれいします。 どうか、頑張ってくださいね^^ 09.12.13 23:08 - 不明(削除済) (45syost) |
コメントありがとうございます!!夜光さん!! ノモセのサファリはあまり行きませんか・・・。まぁ、僕もですよ。 だってあそこ動きにくいですもん(わがまま) 湿地ぬかるみパーク・・・いいですね、それ。我が家で使います(馬鹿) そうですね・・・さすがに底なし沼大量発生は・・・書けませんでした・・・^^; マキシさんの理不尽な性格は、この後、次に出てくる人のための伏線なんです(言い訳)・・・はい、本当は彼のゲームでの性格が書きにくかったからと言う事が一番大きいです。歌とかうろ覚えですし・・・。 そうですよね・・今思えば彼はプロレスラーだったハズなのに、どうしてこんなことになってしまったのでしょう?(聞くな) 多分プラチナやっている時にマキシのお腹が揺れたのからイメージが来てるはずなんですが・・・。 一番のはまり役はメリッサさんですか!彼女は書きやすかったですねぇ〜。だってイメージそのまm(強制終了) ちなみに僕的には一番のはまり役はナタネですよ。酒瓶が良く似合っていらっしゃる!(変人) シロナさん何歳なんでしょうかね・・・。女性の年齢は聞かないのに限ります。アヤの胸のうちに収めておいてもらいましょう^^ 湖の3匹というのはケイヤともりのようかんでシロナが見つけた言葉です。ケイヤはそれがどう関係があるのかと言う話はシロナにしていませんが、「世界の創生をするために空間と時間と湖の3匹が必要」みたいなセリフは言ってます。 シロナにかかってきた電話。その人物はすでに一度登場した人ですよ。女の人の話し方はどれも似てますが、『内緒話をはじめましょう?』と似たセリフを言っ(ネタバレ禁止!) それでは、ネタバレしかけてしまいましたし、(確信犯め) この辺りで失礼を。 09.12.8 20:54 - 森羅 (tokeisou) |
ノモセシティにある建物がサファリパークということを久しく忘れていました夜行です。 いえあの滅多にいかないから・・・カントージョウトホウエンならすぐサファリとおもうんだけどあそこは自分的に湿地ぬかるみパークなんで(言い訳 残念ながら底なし沼大量発生はかけませんでしたね。 マキシ。そんなにばてていたら戦えないぞプロレスラーでしょうに 街を守るジムリーダーだからでしょうか 名前覚えるの大変でしょうにすごいですね マキシのイメージはまだおですか かなり意外でした。個人的にメリッサさんはすごくはまり役でした。あれこそがメリッサさんといった感じです。 トレーナーカードでシロナの年齢があきらかに!シロナさんいくつなんでしょうかねぇ 女性に歳は聞けませんねそうですね。答えはアヤだけの中ですね。 様子見 シンオウの神を起こすは伝えたのでしょうか? かかってきた電話はいったい 次回楽しみにしていますね 09.12.7 22:14 - 夜光 (iteboe) |
返信送れて申し訳ありません。
マキシは・・・本当に誰やねん!って感じですね・・^^;
いいところなしでしたし、今後、登場あったかなぁ・・・(壊滅的)
運がよければもう一度登場しますが、もしかしたら登場しないかもですorzすみません。
ハンサムは本当におひさしぶりですね。お久しぶりですが大した活躍はなかったですね(汗)ゲームでもかなり脇役中の脇役でしたからこの小説でもそれくらいの扱いです(ひでぇ)
ギンガを逃がしてしまいましたね・・・。(何やってるんだ、シロナ!アヤ!)ギンガを逃がしたと言う事は鞄の中身もギンガ側に存在と言う事ですからね・・・。ボスがイカれちゃってる分危ない事この上なしです。
シロナさん来ましたよ!!お久しぶりですシロナさん!(←誰に言ってる)ケイヤと居る時よりは目立ちましたね。ケイヤと居た時にケイヤの存在が大きすぎたと言うのが一番にありますが・・(苦笑)
シロナさんの電話相手ですか・・・(怪)
敵味方・・・・。むぅ、どちらでもないような・・・?(ネタバレ!?)
トバリで登場予定です♪すでに一度登場しているので予想は立つのではないでしょうか?
はい、風邪には気をつけます!
ハミングさんもお気をつけくださいm(−−)m
それでは、失礼を。