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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

84.sideケイヤ 屍の行方[ノコサレシモノ]

著 : 森羅

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「君ってさ、容赦ないね」

ぼくは包帯を巻かれた燐のそばに体育すわりをしながら、歩いてきた彼にぼそっと言う。
その声に彼はふん、と鼻を鳴らした。

「死んだやつが持っていても何の価値もねーだろう?」
「まぁ、そう言われるとそうなんだけどさー」

ぼくは目線を死体に向ける。
本当は見たくなんかない。

綺麗に心臓を貫かれ死骸に変わってしまった人間の数は6人。
彼らが上に羽織っていたであろう上着は全て彼の腕の中に納まっていた。
上着からはときどき思い出したようにぽたり、と血の雫が垂れている。
血の異臭は風に流されたのか、その匂いにぼくが慣れてしまったのか薄らいでいた。
地面はまだ赤いけど、これもまたすぐに雨とかに流されてしまうんだろうな・・・。
そうしたら、彼らがここで死んだと言う証は彼らの死体だけになる。
そう思うと悲しかった。
死体を見つめてそう思うぼくに彼は上から言葉を投げかけてくる。

「なんだ?お前も死にたいのか?」
「・・・・じょーだん。ぼくはまだ死にたくないよ」
「お仲間が死んでかわいそうか?
それとも、つまらない感情で仇だとか言いながら俺を殺しにくるか?」

当然のように彼は言う。
彼にとっては血の匂いも赤い大地も、死体も剣も、全てが『日常』の出来事なんじゃないかな。
誰か自分以外のモノを殺す事も、自分自身がいつか殺されるかもしれないと言う事も。
ぼくはため息をつきながら、彼に答える。

「・・・言ったよね。ぼくは君を殺しになんか来てないって。
だからこの男の人らとも面識なんか無いし、君を殺したくも無いよ」
「だったら、どうしてこの森に来た?ここは入らずの森。
永遠の時間が流れるところ。普通の人間が近寄るのは見たことがねーな」

永遠の時間・・・・?
ぼくはそのフレーズが引っかかった。
ええっと、入らずって入らないってことだよね。
入ってはいけない森って、なんで?

「普通の人間の近づかない森ってなんで?
君はここにいるじゃん。それにこの男の人らだって・・・」
「・・・・おい、俺が聞いてるんだがな。
時間の流れが他とは違うんだとよ。ここには永遠の時間が流れているんだと。
だから信心深い連中は近づかねー。俺にとっては都合がいい場所。
それから、こいつらは俺を殺しに来た連中だからさ。
俺がここにいるから、俺を追ってここまで来たんだろう。
・・・・ハッ。永遠の時間なんか流れてねーよ。ここはただの森。
だが俺が殺したから、こいつらはその永遠の時間に呑まれちまったな。
で、いい加減俺の質問に答えろ」

・・・・『永遠の時間』。
あぁ、やっと思い出した。
ここは、ハクタイの森かー。
じゃあ、ぼくはシロナといたその場所から、時間だけを越えてきたんだ。
一体どうなっていて、そしてあの声の主は一体ぼくに何をしてほしいのかな。

頭が思考するのに精一杯なぼくはすっかり彼の質問を忘れていた。
いらだったような彼の声が聞こえてくる。

「おい、俺の話を聞いてねーのか?」
「聞いてるよ。うん、ぼくは・・・・・・」

・・・・・どう言えばいいのかなぁ・・・・・。
ぼくはぽかんと口を開けたままの状態で固まるしかなかった。
仕方なく、ぼくはさっきから気になっている事で話をごまかすことにする。

「ぼくは、・・・・それよりさ、燐、大丈夫なんだよね?さっきから気絶してるんだけど。
・・・・・・何かあったらただじゃおかないから」
「さぁな。俺には関係ねーし。
あんまりあのまま放っておくと血を止めてるから死ぬな」
「じゃあ、急いでよッ!?」

ぼくはがばっ、と立ち上がる。
その瞬間、ぼくの喉元に白刃がきらめく。
ぼくはそれに驚きながらも、彼をにらみつけた。
・・・・・・・・・燐を殺したら、冗談抜きでぼくは彼を殺すかもしれない。
それでも、

「・・・・・言っておくがな、俺はお前なんか信用も何もしてねー。
俺の気まぐれでお前は生きてるんだ。
あの獣を助けたいと言って、獣を見捨てて逃げなかったから。
文句があるなら自分でしろ」
「・・・・・・・」

彼の言葉にぼくは何も言えない。
どうやっても、ぼくは燐の手当てなんかできないから。
だから、ぼくは目の前の彼に全てを任せるしかない。

彼はふんっ、とまた鼻を鳴らし、慣れた手つきで鞘に剣をしまってからぼくに戦利品である衣服類を投げてくる。
ぼくは反射的にそれを受け取って、彼を見た。
いつのまにか彼はしゃがんでいて、ぶつぶつと文句を言いながら燐を背負う。
そして、ぼくの方に振り返ってこう言った。

「付いて来いよ。付いて来てねぇなら後は知らねぇ。
森に呑まれるんだな」

・・・・怖い事言わないでよ・・。
ぼくはぶんぶんと首を上下に振って、衣服を小さくまとめる。
おぼつかない足取りでぼくが歩くのを見てから彼自身も歩き出す。

・・・・・・・・・・うーん・・・。

ぼくはあることが気になってすぐに立ち止まってしまった。
それを怪訝そうに見て足を止める彼にぼくは気になって仕方が無い事を聞く。

「あのさー・・・聞くだけ野暮な気がするんだけど・・・。
あの死体どうするの?放置?」

彼なら当然だ、と言うって予想は簡単に立つんだけどね・・・。
あのままじゃ、ね・・・・。
そう思うぼくに、彼はぼくの予想通りの答えを返してくる。

「当然。なんで俺がわざわざ俺を殺そうとしたやつを埋めてやらないといけねーんだよ」
「・・・・・やっぱり?」

ぼくはひきつった笑みを彼に向ける。
うん、ぼくは二度とこの時代、ここには来たくない。
決心したぼくに彼はあの獰猛な感じの笑みを浮かべて言い捨てる。

「心配しねーでも、すぐに消えてなくなるさ。
肉は獣が食ってくれる。骨は枯葉と雪が埋めてくれる。
問題はねーよ」

・・・・君の危ない思考回路が問題の吹き溜まりだよ・・・・。

内心そう突っ込むぼくに彼は、そんなつまらない事を聞くな、と言わんばかりにぼくを置いてさっさと先に行ってしまう。
ぼくは急いで彼を追いかけた。


・・・・・うーん、ぼく、これからどうなるのかなぁ・・・・。
不安は山積み、危険は言わずとも。

死なないようぼくは心から祈った。



























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2009.11.3  15:51:32    公開
2009.11.4  23:00:57    修正


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

コメントありがとうございます!!ハミングさん!!
すみません・・・親に見つかってしまい、返事が少し遅れました。
ご了承くださいm(−−)m

はい、久しぶりのケイヤサイドですよ!
燐ちゃんが死に掛けてます、燐のセリフがないです^^;
まぁ、彼女が死ぬ事はないと思いますが・・・。
ケイヤはかなり殺戮者と深く接触してますね。
ですが、ハミングさんのおっしゃるとおり彼は血も涙も無いただの人殺しではありません。話は通じますし、それなりの譲歩もしてくれてます。それにはそれなりの理由と言うものが存在するのですが・・・(ネタバレ禁止!)
はい、僕も間違いなく逃げますね。こんな怖い人と『お話』なんてとんでもないです。命がいくつあっても足りないですよ。
その点ケイヤは大人なんでしょうか・・・(聞くな)
ある種あっけに取られて正常な判断ができないというのもあるかもしれませんが^^;
殺戮者である彼が狙われる理由ですが・・・・少しご期待にはこたえられないかもしれません^^;いたって普通の理由です。この時代でもこの世界でも常識、として見られるようなそんな理由です。
それから、ハクタイの森、という場所にも実はあまり理由はないです。ほんのごくわずかな理由です。
期待していただいたのに誠に申し訳ありませんm(--)m
それでは、失礼を。








09.11.5  21:27  -  森羅  (tokeisou)

コメントありがとうございます!!kkさん!!

そうですね、ここは僕にとっても絶対行きたくない時代ですね。と言うより、下手すると『英雄』が居た時代よりもタチが悪い時代ですよね、これ(誰だ!こんなの書いたやつは!)
燐は、多分大丈夫だと思いますが・・・。大丈夫じゃないと、ケイヤがぶち切れますね。ケイヤは少し前回怒ってましたが、コイツが本気で怒るとこれどころじゃすまないハズです(笑)
この時代は本気でキツイですよねー。僕なら瞬殺・・(ゑ)
黒い穴が出てきたら絶対入りませんか。いたって正常な思考回路だと思いますです。つかケイヤが変人(どきっぱり)

それでは、コメントありがとうございました♪
失礼を。

09.11.5  19:59  -  森羅  (tokeisou)

こんばんはです、森羅様。
わお、ケイヤサイドにチェンジですか!いきなり燐が死にかけてしまいましたが、ギリ生きているようで安心しました><;
ケイヤと男がかなり深く接触してますね。当初は血も涙も無い殺戮者かと思ってましたが、意外と話せば分かる人なんですね。私だったら話し合う事なんか忘れて逃げt(ry
怒りに任せて我を忘れなかった点、ケイヤは偉いと思います。流石に今回は少し感情を乱されたみたいですが…それでも普通はあそこまで平常心で関われませんもん(何というチキン
男の方も正当防衛とは言え、既に殺しが日常茶飯事と化しているみたいですが、何故そこまで狙われるのでしょうか…ハクタイの森というエリアなのも気になりますが…じゃあ洋館もあるのかな?
ぬむ、こんがらがってきたので次回までには整理しておきますです;
ではでは乱文失礼しましたっ!

09.11.5  19:34  -  不明(削除済)  (lvskira)

うん、私も絶対にあの時代には行きたくないですね!
相変わらず愛読中のkkです。
それよりも、燐は大丈夫?すごく心配なんです〜。
あの時代は私には厳しすぎますし〜、とにかく無理です〜。
もし今私の目の前に黒い穴が現れたら、絶対に入りませんよ!現代のポケモンのゲームの世界なら大歓迎だけど、あの時代は嫌だ!
…………、なんかはっきり言っちゃって、すみません〜。


続き、楽しみにしています。更新頑張ってください!

09.11.5  18:52  -  不明(削除済)  (coco)

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