生あるものの生きる世界
77.sideアヤ 過去の情景[カコ]
著 : 森羅
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「58回目、わたしの勝ち♪」
弾むような声でそう言ったゲンにあたしは唇をかみ締めて言う。
「もう一度、バトルして」
「もちろん。だけど休憩を入れてからにしようか。
あまり煮詰めるのも良くないからね」
ゲンはあくまで嬉しそうな口調を変えない。
そして、スキップのような足取りで火をたいてお湯を沸かし始める。
「1時間30分か・・結構伸びたね、時間」
《ふむ、まずまずじゃの》
時計のストップウォッチ機能を止めて時間を見ながらゲンがつぶやくのがあたしに聞こえてきた。
ルカリオ一匹に三匹ががりでも1時間30分ほどしか持たない。
今日で3日目。
ひたすらルカリオと戦って、負ける。それの繰り返し。
だけど、
『負ける』ということには慣れてきた。
「はい。どうぞ、お嬢さん」
「うるさいわよ。・・ありがと」
ふんわりと白い湯気の立つコップを差し出されてあたしはそれを受け取る。
そろそろ暖かくなってくる時期だけど洞窟の中はそれなりに冷えるから暖かいものはやっぱり嬉しい。
「負けるってことに抵抗は無くなった?」
あたしの隣に座りながらそう聞いてくるゲン。
あたしはさっ、と少し隣に移動してゲンを避けた。
ゲンはそれを見て「残念」と言わんばかりにうなだれるけどあたしは無視して質問に答える。
「無くなったわよ。負けるのは怖くなくなったわよ」
「誰のおかげ?」
「ルカリオのおかげっ!」
きっぱりと言い捨てるあたしにゲンはさらにいじけてみせる。
「わたしだってさ、きみに付き合ってるのにな。
お茶淹れてあげたのにな。ルカリオに指示出してるんだけどな・・。
女の子我慢してるのにな・・・」
「うるさいわよ」
《主、これ以上何か言うようなら吹っ飛ばすからの》
それを聞いてゲンは話題をガラリと変えてくる。
「負けるまでの時間、結構延びたよ。
きみたちも強くなってるって事・・レベルはね。
ところでさ、きみがそこまで『守るための強さ』に固執する理由は何なんだい?」
ぴくっ、とあたしは自分が停止するのを感じた。
それから、少し考えて搾り出すようにして答える。
「ある人に守ってもらったから」
「ある人?」
繰り返すゲンにあたしは頷いて続ける。
「そうよ。優しくて強かった。みんな守ってくれていた。
その人をあたしは探しているの。そして、その人があたしの目標」
「男の人?・・・好きなのかい?」
あんたはそういうことにしか興味が無いの?
そう思ったけど、聞かれたのでとりあえず答えることにする。
「男の人よ。好きなんじゃなくて目標・・憧れに近い、と思う」
「憧れ、ね。どんな人?わたしよりカッコいいかい?」
・・・・・・・・・だんだん答えるのが面倒になってきたわね・・・。
なので簡潔に答える。
「覚えてない」
「え?・・・覚えてないって」
《顔も覚えてない方を探しておられる、ということかの?》
《そーなのッ!アヤって本当に馬鹿よねぇ〜》
「スピカっ!放っておいてよ」
驚いたようなルカリオとゲン。
あたしはそれを肯定するためにもう一度言った。
「覚えてないのっ!それで満足?」
「本当に覚えてないのかい?それでどうやって探すんだい?」
びっくりした様子で聞いてくるゲンにあたしは口を閉ざす。
「名前も、知らないんだろう?その様子じゃ」
さらに追い討ちをかけてくるゲン。それにあたしは反抗する。
「絶対見つけるし!あたしがここに居るってことがあの人が世界のどこかに存在してるってことなの!だから、あたしのことを忘れてるけど、覚えてなんかいないけど、絶対見つけるんだから!!」
肩で息をしながら言い切ったあたし。
その勢いに驚いたのか少し引き気味のゲンとルカリオ。
スピカはいつものことよね、とでも言うように平然としている。
「わ、わかったよわかったよ。それじゃ今の年齢とかは?」
「知らないっ!」
声の音量が無尽蔵に上がっていく。
ここまで来るとなかなか元には戻らないのよね。
「想定範囲で良いから、さ」
「知らない知らない知らなーいッ!!」
エコーがかかって盛大に洞窟内に響き渡るあたしの声。
ゲンはあたしをなだめようとするかのように口早に言葉を繋げる。
「わかった、わかったからさ。落ち着いてよ・・・・。
とんだびっくり箱だね、きみは。
それで、さっき気になったんだけどさ、
どうしてきみはその人がきみのことを覚えていないと断言できるんだい?」
「それはっ・・・・!」
あたしはやっと落ち着く・・・ううん、口をつぐむ。
それは、
あの人があたしを覚えていないとわかるのは、
あたしはかすれた声でつぶやいた。
「だって、もう。
『死んじゃった』人だから」
「・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・」
ゲンの小さな呟きは明らかに驚きを表している。
それは、とゲンは続けかけて、
ドドーーーンッ!!!!!
明らかに人為的な音にあたしたちはバッ、と音のした方に目をやった。
side???
過去を望んだ女の子。
彼女は今を犠牲にした。
今を代償に、当てもない不安定な道を歩く事を条件に、
彼女は『今』という選択を自ら選んだ。
2009.9.22 12:27:19 公開
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.9.24 21:16 - 森羅 (tokeisou) |
こんにちは、お邪魔します常磐です。 げ、げげげゲンさんだとぉ!!!常磐の大好きな美形じゃないかっ! しかも森羅さんの書くゲンさんはヘタレっぽいっ、どうしようヘタレ大好物です鼻血でそう。(変態! アヤとゲンさんの修行、これで一応ゲンさんはアヤの師匠ということになるのでしょうか?だといいな! というか「あの人」死んでしまってるって、ええぇえ?! まさかの展開ですね!死んだ人を探し続けるアヤには何か理由が?ケイヤの事も気になる、ケイヤも死んじまったのか?!いや、燐が瀬戸際で庇うというのm(黙ろうか) 次は、あれですか?Gさん達ですか?MさんとAさんはお呼びじゃないです。Gさんがいいです。(我がまま) それでは!失礼しました。 09.9.23 14:18 - 不明(削除済) (tokiwa) |
うおお!目の前でコメントが増えたのはじめてみましたよ!! コメントありがとうございます!!ハミングさん!! 修行の方は順調みたいですね〜。 ゲンとアヤの仲は進展が無いみたいですが(笑) 58回ってかなりの数ですよね・・(どっからでてきたんだこの数字は)アヤはよく頑張ってると思います。自分なら絶対無r(強制終了) アヤは典型的なツンデレですが、ゲンに対しては・・性格的な面では本気で嫌ってますね^^;バトルとかそういう面では自分より強いと思ってるんでしょうが・・。 アヤがゲンにデレる日は・・太陽が西から昇っても無理なんじゃないでしょうか^^; アヤの言っている「あの人」(名前付けろよ)は死んでます。死人ですよ、どうやって探すんだ!アヤ!(聞くな) アヤと何があったかは、アヤの回想シーンや夢なんかで予想してくださいっ>< それぞれ、かなり核心まで迫ってきてますよー、アヤもケイヤも。(ゆーとは?) 最後の爆音は・・・まぁ、はい。ヤツらです。 やっとまともに戦闘シーン書くことになると思います。 それでは、失礼しますっ! 09.9.23 13:00 - 森羅 (tokeisou) |
こんにちはです、森羅様。 修行の方は順調のようですね〜。58回も負けてよく続けてられると思います^ ^; 信念を曲げる気など毛頭無いのでしょうね…やはり凄いです。 そしてここでもアヤのツンd(ry)が発揮されましたか(還レ アヤがゲンさんにデレる日は来るのだろうか…無理かな← 「あの人」はもう死んでしまっているんですか!?アヤと何があったのか、どうして死んだのか、何故アヤは探し続けているのか…ぬむ、気になる事がまた増えてしまいました>< 意外にも一筋縄ではいかない事情のようですが、かなり核心部分まで迫って来たと見ても良いのでしょうかね? 最後にまた波乱の予兆が…これはwktkせざるを得ないです( ではでは、乱文失礼しましたっ! 09.9.23 12:40 - 不明(削除済) (lvskira) |
コメントありがとうございます!常磐さん!!
ゲンですよー。ゲン。常磐さん好きなんですか^^
僕もけっこう好きなキャラなんですよ。
かなりキャラを変えたので(女好きに)不安だったのですが、鼻血は大丈夫ですか・・・?
へタレ好きでしたか!よかったぜっ!!次ちょっと格好いいシーンあるので、気に入っていただければいいなぁ、と思います。
ゲンがアヤの師匠・・・うぉ!想像がつきません^^;
どちらかと言うとギブ&テイクの関係ですね(意味不)
『あの人』は死んでます。
ご本人は間違いなくお亡くなりになってます。
理由はもちろんありますよ。ご心配なく〜(本当に大丈夫か)
ケイヤくんの方はちょっと待ってくださいーーーっ!!
死んでは居ないはず、です(作者誰?!!)
Gさんがいいですか?Gさんも出ますよ。でも僕がAさんとMさんが好きなのでそっちも出ますよ。ご了承ください><
それでは失礼を!