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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

57.sideアヤ×ユウト 強さの方向[ツヨサトハ]

著 : 森羅

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sideアヤ 

どうしよう・・・。
どうしたらいいの・・?

走りつかれてそのままその場に倒れこむ。
草のやわらかい感覚があたしを受け止めてくれた。
きっと、ここはハクタイシティを少し出たところ。
もうすこし行けば、テンガン山が見えるところ。

足元が、崩れていく。
確かだと信じていた物が、
間違いだったから。

もう、走れない。
もう、動けない。

たすけて、誰か。

ゆるして、誰か。

ユウト・スピカ・モミさん・ハクタイの森の男の子・シリウス・・・・、
そして、一番最初は『あの人』。
・・・・あたしは、守られてばっかりだ。

強くなりたい。誰かを、自分を、守りたい。
そう願っているのに・・・。
あたしの願いはいつもから回りしてしまう。

『僕のようになりたいなんて思ってはいけないよ。
僕のようになりたいだなんて願ってはいけないよ。
お願いだから、そんな事を願わないで。・・・・お願いだから。
僕は強くなどないのだから。
僕は偽善者でしかないのだから。
だから、そんな事を願わないで欲しい』

悲しい目でそう言った貴方。
どうして、どうして。
ねぇ、どうして?

貴方は強かったじゃない。
いつもいつも優しかったじゃない。
優しくて、優しくて、強くて・・・・ッ!

だからあたしもそうなりたい。
誰かを守るための『力』が欲しい。
なのに、

どうして貴方のようになりたいと願ってはいけないの・・・?

答えてよ、ねぇ。

《アヤ・・・》
「ス・・ピカ・・?」
《ごめんなさい。しゃしゃり出てしまって》

いつの間にか追いついて来ていた三匹が目の前にいた。
違う、違うの。謝らなければならないのはあたし。
スピカが言っていた事は正しかったんだから。

《ごめんね、おねーちゃん。もっと強くなるよ。もっともっと》
「レグ、ルス・・・」

違うの、違うの。

《・・・・・済まない。
・・・・望むだけ強くなろう。もう、負けないように》
「シリウス・・」

違うのよ・・・。
みんなは強いの。

弱いのは、あたし。
その責任をみんなに押し付けて、空回りを繰り返していたのはあたし。
みんなの力を認めなかったのはあたし。
上手く使ってあげられなかったのはあたし。

全部ぜんぶあたしが悪いの。

ごめんね。ごめんね。
ゆるして、置いていかないで。

だって一人じゃ立っていられない。
だって今にも泣きそうなのよ。
『あの人』みたいに、あたしを置いていかないで。

「アヤ・・・?」

その声にあたしはビクッとした。

「ュ・・・ウト・・」

やっとの事でそれだけの言葉を搾り出す。
あたしにトドメを刺しに来たの?
あたしを嘲(あざ)笑いに来たの?

ほっといてよ。
わかってるわよ、あたしが悪いってこと。
だから、
もう何も言わないで。

「・・・・お前は何がしたいんだ?」

ひぅ、と息を飲み込む。
負けてたくない、泣きそうな顔(弱さ)なんて見せたくない。
見せるわけにはいかない。

「強くなりたいのッ!!もっともっと!!誰かを守りたいのッ!!
なによッ!あんたには関係ないでしょ!!!」

強がっている声だってことがわかる声。
でも、こうしなきゃ泣いてしまう。
泣いてしまうのは、弱さだから。
そんなのを見せたくない。

「それは、聞いた。オレが言っているのは
お前の言う強さって何だ、ってことだ」

『あたしの言う強さ』・・・?
そんなの、簡単。
あたしは、

「守るための強さが欲しいの!」
「だから、その強さって言うのは・・・お前が言うその強さって言うのは、
ギンガ団のビルに一人で突っ込んでいく事を言うのか?
それとも、ジムリーダー全員に勝って、殿堂入りしたらお前は強いのか!?」

声を荒げるユウト。
違う、そうじゃないの、そうじゃないの・・・。

「あたしは、そんなの求めてない・・・。
そんなのじゃない・・」
「じゃあ、何だって言うんだよ!?」

わからない、わからない・・・・。
あたしの求める強さって何だったの・・・?

「わからないのよ・・・。わからないの。
思うだけじゃ駄目なの?
守りたいって、誰かを守りたいって思っちゃいけないの・・?」
「そんなこと言ってねぇし、聞いてねぇ。質問しているのはこっちだ」

わからない。わからない。何もわからない。

「アヤ、お前の言っている事は間違ってなんかねぇんだよ。
間違ってねぇが」

「強さの方向を間違えるな」

ひぅ、とあたしはもう一回息を吸い込んだ。
頭上ではぁ、とため息一つ。・・・ユウトのもの。

「泣かないのが強いんじゃねぇし、
痛みを我慢するのも、真っ向勝負を好むのも強さじゃない。
むやみやたらに突っ込んでいく事も、違うだろ?
そんな強さをお前は求めているわけじゃねぇだろ?」
「・・・・・ッ」

もう、駄目。
我慢できない。

「・・・アヤ?」
「うぅ・・・」
「うぅ?」

「うわあぁぁあぁぁあぁん!」

ただひたすら泣き続けた、あたしの意識がなくなるまで。
泣くのは、久しぶりの気が、した。

sideユウト

シリウスたちで戦ったのはこいつらが十分強いと言う事を証明したかったから。
言いたいことは全て言った。
あとはアヤ次第だ。
だが、

「ぃッ!!?」

オレはついたじろいた。
これオレの責任!?

オレが泣かした!?

じとー、とした目で見てくる夜月たち。

《《《《あーあ、泣ァかせたー!》》》

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・オレが、泣きたい・・・・。

side真夜中

その日の晩。
アヤたちが眠るすぐそばで、

小さな声が闇に響いた。

「君は、本当に良かったの?
そんな選択をしてしまって。
・・・・これも僕の『罪』なんだね、背負わなければならない罪。
こんな選択をさせてしまった、その罪。
君には、・・・・、いや、言う事はないか。
全て全て、僕の責(せき)。
なら、受け止める。
強ければ、全てが守れるわけじゃないんだよ。

強くなってしまったからこそ、失(な)くしてしまったものもあるんだ・・・」

その小さな声は満天の星空の中に吸い込まれて、
聞いたものは夜の闇だけだった。




































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2009.7.5  16:09:05    公開
2009.7.5  21:17:18    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

コメントありがとうございます!!ハミングさん!!
テスト、お疲れ様です。

ハクタイシティのギンガ団、終わりましたよ!!
頑張った!よく頑張った!!と自分に言ってやりたいです。本当はこんなに長くなる予定ではなかったので・・。
やっぱり、皆様そう思うものなのですね・・。
ポケモンしか傷つかないポケモンバトル。ゲームでは普通に展開されますが、(てか、されなきゃ話が始まらないですけど)ポケモンたちは本当に戦いたいと思って戦っているのでしょうか?そう言う疑問からできた話です。ハミングさんが擬人化するのもそういうわけがあったのですね・・。ますます携帯獣遊戯が好きになりそうです♪
アヤとユウト、どちらが一概に正しいと僕にも言い切ることはできません。どちらも正しいですし、どちらも諸刃の剣であることには変わりありませんから。今回はユウトがアヤを諭す側に回りましたが、今度はどうなることやら・・(聞くな)アヤは強がりな部分がありますから、その分折れやすいんですよ。少しでも柔軟性を持てるように願っています。(なぜ他人事!?)ですが、がむしゃらに突っ込んでも自分を、スピカたちを傷つけるだけだと気づいた分、彼女はこれから成長することができると思います。
ユウトもアヤも性格がさっぱりしている分一度謝ってしまえば仲直りは楽ですね。ユウトなんかすでに忘れてんじゃないかな・・、と思えるくらいです。
あーあ、ユウト、女の子泣かせたぁ〜!!
駄目ですねぇ。そんなことでは。主人公失格ー!
そういうことに関しては彼は手付かずですね・・。
最近出番がないケイヤくんの方が女の子の扱いが上手そうです。

それでは、そろそろ失礼を。

09.7.6  01:50  -  森羅  (tokeisou)

こんばんはです、森羅様。
ギンガビルの激闘決着しましたか…成程、強さの証明の為にアヤのポケモンを使用したのですね。
前回のゆーとと森羅様の意見は共感できます。ポケモンと人間は友達とか言ってるけど、結局傷付くのはポケモンだけですもんね。私が擬人化に拘るのも、その辺の矛盾が気になるからかもしれません^ ^;
アヤの言い分も的を射ているのですが、難しい所ですねぇ。。道徳的にはアヤが正しいけど、悪に対してはゆーとの言う戦いも必要になると…うぅむ(_ _;)
あ〜あ、ゆーと泣かせた〜(うっせ
アヤは強くなりたかったんだけど、それに至る明確な方法が見付からなかったのでしょうね…ただ、がむしゃらに戦うしか無かったと。悲しい話です;;
でも、アヤもようやく素直になれたようですので安心しました!ゆーとと仲直り出来たかな?
テスト終了後に森羅様の小説を見れて満足です!次回も楽しみに待ってます!ではでは乱文失礼しましたっ!

09.7.5  23:41  -  不明(削除済)  (lvskira)

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