生あるものの生きる世界
4.side ユウト×アヤ welcome[ヨウコソ]
著 : 森羅
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・・・・・・。
・・・・・すぅ。
風が優しく頬をなでた。
町では絶対に吹かないような、木や緑や花の匂いがする風。
・・・ここは・・?
オレは目をつぶったまま思う。
オレが寝転がっているのは草の上らしい。
小さな頃に転げまわって遊んだ芝生のような少し痛くて冷たくてやわらかい感覚。
・・・・オレ、どうなったんだっけ。
ふと、思う。
えぇっと、猫で、車で、『死の世界』、『生の世界』、よくわかんねー本人曰く”管理人”・・・。
『君は死ぬはずだったんだよ』
確かにそう言われた。ならここはあいつの言う『死の世界』なのか・・?
「・・・・っと!おきなさいよ!!」
はい?
ドゴッ!!
「いってぇーーー!!」
突然に腹部を蹴られて(踏まれて)飛び起きるオレ。
「なんだ、生きてるじゃない」
ふんっ、と笑う声がした。
生きてる?
オレは声の主を探す。
蹴られた方に目をやるとそこには女の子が立っていた。
腕組をして仁王立ちしている女子。
ブルーグレーの目が印象的で、墨汁をぶちまいたような黒い髪はショートカットより少し長め。
「なによ。こんな所で寝てるのが悪いんでしょ」
じっとオレが見ていたからだろう、そいつはそう言った。
オレはそれに答えずに辺りを見回す。
ここはどこだ?
草の生い茂る湖のほとり。
その程度しかわかない。
おぉ、そういえば、答えを持っているであろうヤツがいた。なので聞く。
「ここ・・・どこだ?」
オレに聞かれて「はぁ?」と言った呆れ顔をするそいつ。
「あんた、ここがどこかも知らないで寝そべってたって言うの?」
頷くオレ。
更にあきれたような顔をしてそいつは答える。
「シンジ湖よ」
「シンジ湖?」
オウム返しに聞くオレ。
「まさか、それもわからないって言うの?あんた馬鹿?それとも記憶喪失?」
「ば、馬鹿じゃねーよ!!記憶喪失でもなんでもねぇ!!」
思わず腹が立って言い返すオレ。
しまった、と思った頃にはもう遅かった。
「なら、わかるはずでしょ!一体何あんた!人が親切に教えてあげたって言うのに!!
勝手にしなさいよ!この臙脂(えんじ)髪!!」
機関銃のごとくポンポンと次から次へと出てくる言葉にオレはたじろいた。
・・ってちょっと待てよ。なんか変な言葉が混じってなかったか。
いままでの会話・・・訂正、言い争いに。
「臙脂(えんじ)髪だって・・?
それから、オレが生きてるって・・?」
オレはそいつに聞こうとするのと自答自問との間くらいの声で言った。
その声に相手は少し変な顔をする。
「・・・・?なによ?あんた、自分の髪の色まで知らないの?湖で見てみれば?
それにあんたが生きてなかったら、あんたはなによ?
幽霊?こんな真昼間に?笑えない冗談ね」
そんな言い方しかできねぇのかよ。お前は。
そう思ったがオレは素直に湖に自分の姿を映す。
「・・・・・ッ!!」
おもわず息を呑んだ。
誰?、と言うほど違うわけではない。
オレが16年間見慣れた自分の顔である事には変わりが無いし、間違いも無い。
ただ、
髪の色が確かに臙脂(えんじ)色をしていた。
赤でも紅(あか)でもなく、さびた銅と冷めた鉄の間のようなかぎりなく黒に近い赤。
そして、おそろいの目の色。
・・・・・・・・・・オレの髪と目は日本人特有の黒だったはずなんだけどな。
この状況に頭が追いつかず、現実逃避的なことを考えるオレ。
そして、どういえばいいのかわかりにくいが
しいて言えば、『存在感が薄い』。
オレと風景とはかろうじて違うとわかる程度。
例えば、オレを入れて10人が一列に並んだとして誰がが数えるとする。
そうしたら、多分数える人はみんな言うだろう。
「1,2,3・・・9。あ、10人いたのか」って。
呆然としていたオレの背後でなにか、鳥が羽ばたくような音がした。
・・・・鳥?
「あぁ、どうだった?シリウス?・・・え?こっち?
うーんと、変なのを見つけたわ」
変なのって言うのはオレのことか。と言うより誰と話してるんだ?
文句を言おうとして振り向き、オレは再び絶句する羽目になった。
ツバメがいた。普通のツバメよりはるかに大きな人も運べそうなツバメ。
外の翼が深い紺で、中の羽は白色。自己主張の激しい尾羽は途中から赤っぽい。
胸の辺りも同じ色。
そして、もっと驚く事にオレはそのツバメを知っている。
正式名称オオスバメ。
オレがルビー版をしていた時にゲットした飛行タイプであり、
結局そのまま殿堂入りした。
すなわち、
ポケットモンスター。
オレはめまいがした。
2009.3.17 16:55:00 公開
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
12.7.14 03:05 - 森羅 (tokeisou) |
どうもー 墨汁をぶちまいたような黒い髪 という部分でおおーっと思いました 最も小説で似たような文を何回も見ましたが 黒バイクでしたっけ まぁ関係ないし 知っているかどうかわからないので置いておくとして・・・・・・ 臙脂色の説明がしっかり書かれてあって 見習おうと思いました 私の場合 色だけ書いてそれで終わりですから ちなみに色はサイトで色々調べています 12.7.13 22:04 - 不明(削除済) (wert) |
あわわわわ・・。 二度目のコメントありがとうございます!! 更新ペース速いですか?自覚がないので・・。 と言うより、書いてないと逆に不安です。(うわぁ、アブナイ人だ) 18日は自己紹介スレッドにも書き込んでいたので、本当はもっと書きたかったんです。 そして、 本当にいよいよですよ!! やっとポケモンが書けるー!!バンザーイ!!(変人?) オオスバメのシリウスは登場しました。 後はゆーとのですね。 では、いまから書きます。 おしっ!自己更新記録を更新!を目指します。 篝さんもコウ君を頑張って書いてあげてくださいm(−−)m 09.3.18 14:01 - 森羅 (tokeisou) |
こんばんは。篝です。 またこんな半端な時間に来ました; あの、前話の感想も兼ねて一言いいですか。 更新ペースが早いっ!( 何でこんな綺麗な文章なのにも拘らず一日に二話更新とか…尊敬します! そしていよいよポケモンですね。 あの黒幕(?)が何者なのかがかなり気になります^^ 今回も短文済みませんorz ではでは、次回も更新楽しみにしてますー! 09.3.17 22:50 - 不明(削除済) (Vlack) |
墨汁をぶちまけたような、の表現が面白いと思っていただければ何よりでございます。
まぁ、僕なんかが思いつく文章ですし、どこかの小説で描かれているであろうことは明白ですね。何度か見たことがあるとおっしゃられるのであれば、かなり有名な言い回しなのでしょう。
黒バイク……?は残念ながらわかりかねます。申し訳ありません。
お褒め頂きありがとうございます。
ただ、色見本を調べれば簡単にネットで手に入る時代ですからね……。臙脂色というより、実際は臙脂色っぽくはないみたいです。想像していたのと少し違ったので……。
それでは失礼を。