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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

56.sideユウト×アヤ 進むべき道[コース]

著 : 森羅

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こう言われることは予想していたんだ。
だから、黙って受け入れるさ。
非難だろうが、中傷だろうが、痛みだろうが。

だから、オレにも言わせてくれ。
どうしても、言わなければならない事がある。
聞かなければならない事がある。

本当に「コースは誤って(間違って)いないのか?」、と。

sideアヤ

「卑怯者!何よ!それで勝ったつもりなの!?
あんたはそれで平気なのね!勝って誇らしいわけね!
そんなの虚勢じゃない!!あたしは絶対にそんなの認めないッ!!!!」

黙ったままのユウト。それがあたしの怒りをさらに増させる。
こんなことするやつじゃないと思ってたのに!

「なんとか言ったらどうなのよ!!?
それとも、何にもいえないわけ?臆病者!!!」

あたしの言葉にユウトは何の反応も示さない。
自分が正しいと言うなら怒って、あたしを諭してみればいいじゃない!
自分が間違っていると言うなら、言い訳でもしてみればいいじゃない!

あたしがもう一度何かを言おうとして口を開きかけた、そのとき。

「あぁ、そうだな。卑怯だよな。否定はしねぇよ」

いつもと変わらないユウトの声。
怒ったようにまくし立てるわけでもなく、
悟らせるように落ち着いた声でもない。

ただ、いつもと同じトーン。同じ口調に同じ響き。
その声のままユウトは続ける。

「認めてくれ、なんて言ってねぇよ。
だがな、オレは出来る事をしたまでだ」

カツーン。カツーン。カツーン。

ユウトの手からあたしの目の前に落とされた3つのボール。
それが床にぶつかって小さく反響した。
一瞬ボールに目を奪われて、
あたしはもう一度ユウトをにらみつけて言う。

「その結果がコレなの!?
シリウスたちは、人殺しの道具じゃないッ!!!!」

翼をジュピターに突きつけたシリウスが頭をよぎった。
あんなことをシリウスにさせて・・・一体何がしたかったって言うのッ!?

「・・・・だったら、お前はどうなんだ?」
「何がよ!!」

一体何が言いたいのよ!「お前はどうなんだ?」って。
しばしの沈黙。
その後におもむろにユウトは言う。

「勝負において、一番危険なのは真っ向からの力と力のぶつかり合いだろ?
お前は良いよなぁ。命令するだけ、指示を出すだけ、自分自身は傷つかない。
メンツと勝ち方だけにこだわってたらいいんだから、なぁ?」

嘲(あざけ)りを含んだ声。
蔑(さげす)むような赤黒い目。

違う、あたしはそんなことにこだわってない。
ただ、強くなりたいだけ。
あの人に追いつきたいだけ。
それを願って何が悪いの・・?

「ち、違ッ・・・!」
「違わねぇんだよ」

あたしに最後まで言わせることなくユウトは続ける。

「お前、ひたすら真っ向勝負に出るタチだろ?
強いとか、弱いとかそんなことよりも、同じタチのヤツならいいが、
さっきのジュピターみたいな変則的でお前の言う卑怯な真似するやつもいる。
そしたら、確実に負けるぞ?レベルですらすでに向こうのが上っぽかったしな。
それに、ジュピターのやっていたアレ。確かにあれは作戦だろ?
ポケモンの技以外は向こうだって使ってねぇんだから。
お前が真っ向勝負にこだわろうがこだわらまいがオレにはどうでもいいが、
そのときに傷つくのはおまえじゃねぇ。ポケモン(こいつら)なんだよ。
さっきみたいなマネしろとは言わねぇが、
・・・・せっかくシリウスたち(こいつら)の言葉がわかるんだったらちゃんと聞いてやれよ。戦うのは、こいつらなんだから」

・・・ぁ・・・。
あたしは、シリウスたちの言葉を聞いていなかった・・?

『アヤ!違うのよ!』

一番最初に思い出したのはギンガ団のビルに入る前にスピカに止められた時の事。
あたしはそれを『否定された』としか受け取っていなかった。

レグルス、シリウス。
二匹に指示を出す時、あたしは二匹の声を聞いていた?
バトル中に二匹と話をした?

・・・して、ない。

あたしはただ、『指示』を『して』いただけ。
『命令』を、『下して』いただけ。

シリウスたちに状況を聞く事すらしていなかった。

頭が、真っ白になる。

あたし、『間違って』た。

どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・・・。
どうしたらいいの?

だれか、おしえて。

反射的にあたしはその場を飛び出した。
その場を逃げ出して、自己防衛を図ろうとしたということは、わかっていた。















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2009.7.1  16:51:57    公開


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

コメントありがとうございます!!KaZuKiさん!
こんにちは、お久しぶりですねー!!

そうですね。自分はゲームをしていてアヤと同じ悩みを感じたのですが、KaZuKiさんもですか。
ゲーム内のセリフに「ポケモン=友達」だって言うやつがあるじゃないですか?あれ結構痛い気がするんですよ。トレーナーとして、プレイヤーとしての「僕」は傷つくことなく、HPが0になるまでただ単にポケモンたちに戦わせ続ける。だから、そんなセリフは自己満足であり、エゴでしかない気がするんですよ。
この町でのアヤのポジションは「この世界のポケモントレーナーとしての人間」なんです。
そしてユウトには「ポケモンの代弁者」と言った所でしょうか。ユウトには僕の思いをぶつけてもらいます。
まぁ、これもまたエゴですがね・・・。

アヤは確かに『言葉』についてわかっていないかもしれませんね。言葉は虚無で実体のないものですから。
しかし、実体がないからこそ何かに対して縛りとめる鎖にも、祈りにも、武器にもなります。上手く使えなかったら相手を傷つけるだけとなり、上手く伝わったかは聞いた本人次第です。
人間だけが使える言葉。それが悲しくてこの小説のポケモンたちは『言葉』を使います。アヤたちに何かを伝えられたら良いのですが・・・。

ユウト、カッコいいですか?
・・・うーん、実はあんまりかっこいい事をさせたくないのですが・・(え?)ヒーローにしたくないんですね。勧善懲悪ってどうも好きにはなれなくて・・。
いや!それでもユウトは主人公だった!!!(いまさら何を・・)ですからそれなりにおいしい所を持っていくでしょうね・・・。その代わり同じくらい苦しんでもらうつもりです。

それでは、長々となりましたがコメント本当にありがとうございました。
それでは、失礼を。

09.7.3  16:10  -  森羅  (tokeisou)

どうも、森羅さん長らくお久しぶりです!
最近HP運営の方でやたら多忙になってしまい、ただでさえ暇がないのでこっちは放置状態でした……申し訳ない。

というわけで、サクッと全話読ませていただきました。
とりあえず長々語ると申し訳ないので今回の感想だけ。

なんというか、自分もアヤと同じ悩みを小説に抱いた事はありますね。
トレーナーは戦わないから傷つかない、痛みが伴わなければ人は理解しない……だからトレーナーはエゴイストになってしまう。
ポケモンはHPが0になると『ひんし』と表示されます。
瀕死ということはほうっておけば死んでしまうほど酷いダメージ。
まぁ実際体験しろと言う方が無理でしょうが、アヤにはこれが単なる言葉に過ぎなかったのですね。

言葉は無常であり痛みを伝えてはくれないですが、言葉無しでは人は理解できない。
アヤちゃんには『言葉』というものを理解してほしいですね。
それとユウト君はやっぱり格好良いですね。
なんかユウト君が真打登場って助太刀に来るのはすでにお約束でしょうか?

さて、やっぱり長くなりすぎてしましました。
申し訳ない……それでは、また最新話期待して待っております!

09.7.2  20:06  -  不明(削除済)  (fantasic)

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