生あるものの生きる世界
53.sideユウト×アヤ 艶姿[スクイノコエ]
著 : 森羅
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はぁはぁはぁはぁ・・・・・・。
五月蠅(うるさ)い。
五月蠅い。五月蠅い・・・。
何の音だ?コレは。
え?
オレの呼吸?
まさか。
《・・ウト!・・・・じょ・ぶか!?》
はぁはぁはぁはぁはぁ・・は・・っ・。
息ってどうやってするんだった?
いくら吸い込んでも肺に酸素が入らない。
全身の血が逆流する。
体の中にあるもの全てが異物であるかのように吐き気が止まらない。
『生きていない、化け物のくせに!』
・・・・・バケモノ?
オレが?
・・・・・・・・・・・・・・・・。
闇が飲み込む。全てを覆って隠してしまう。
あるのは絶望?
・・・・・・・・・・・だから、何だ・・?
頭の中でわずかに残った理性が押しつぶされていく。
引きつった顔から笑みが零(こぼ)れるのがわかる。
狂気が広がりはじめた。
・・・そうさ・・・。どうせ、オレは生きていないんだろ?
死んでもいないわけだろ?
それをバケモノと呼ばずになんと呼ぶ??
オレは、化け物だ。
《ユ、ウト・・・?》
夜月の声が遠く離れて聞こえる。
頭に在るのはただ破壊衝動とひとかけらの悲しさ。
そうさ。
全て全てぶち壊して、静かになったら・・・・。
・・・・・・・・・?
違う。違う。違う違う違う違う違っ・・・!!
・・・・何が?
もう、何もわからない。
「ゲホッ!ぐっ・・・ゴホッ・・・」
誰か、止めてくれ・・・・・・。
この、どす黒い『何か』を。
何なのかはわからない。
わからないが、放っておけば、きっとオレは。
『過(あやま)ち』を繰り返してしまう。
・・・・繰り返す?何を?
【止まれ】
誰だ?
【止まって欲しい。大丈夫だから。君は生きているから。
だから、消えてしまわないで欲しい】
・・・・・・生きている?
【わかっているだろう?そんな感情にまかせて全てを蹴散らせ、黙らせても
君は幸せになんかなれないよ。残るのはむなしさと虚無感だけだ】
【責任は取るよ・・・勿論。だから落ち着いて欲しい。
あの子が本心からそう言ったのではないと君はわかっているはずだ】
【だから、さっさと正気になりやがれ。お前に死なれちゃ面倒なんだよ。
・・・本当に不安定だな・・】
声?一体、誰の・・・?
聞き覚えは確かにある。
【あの子を、助けてあげて欲しい。・・・お願いだよ。
・・哀しいね・・・・は、・・・かったから・・】
なんだって?聞き取れない。声はどんどん遠ざかっていく。
唐突に右目に激痛が走った。
「・・っ痛・・」
夢から突然現実に引き戻されたような感覚。
肺に空気が戻ってくる。
《ユウトッ!!》
「よ、づき・・・?」
《生きてるかー?》
「・・・・勝手に殺すな」
夜月と話すのがいやに懐かしく思えて仕方がない。
オレはどうなっていたんだ・・?
「オレ、どうなってた?」
《覚えてないのか?・・・と言ってもぶっ倒れただけだぞ。
その後はずっと呼吸が荒かった。そんだけ。
・・・人通りの少ない場所でよかったな。
それでなかったら、いい恥さらしだぜ、ゆーと『くん』》
「てめ・・・」
・・・・いや、夜月をぶん殴るより先にする事がある。
放っておくとどこまでも暴走し続けてしまうだろう、
『誰かを助けたいって、守りたいって思って何が悪いのよっ!!
どうしてよ!そのためにあたしは強くなりたいのに!!』
とそう言ったアヤは。
その考えをオレは否定する事はできない。
そんなこと考えた事もないオレにとっては尊敬に値する物なのだから。
だが、
本当に方向(コース)は間違っていないのか?
何かがおかしい。アヤの言っている事は。
・・・めんどくせーが、行かなければならない。
自分の考えのみを信じきっているせいで他の言葉は耳に入っていない。
もし、自分の考えが砂上の楼閣だったら、どうするつもりなのだろう。
不安定なのはオレじゃないアヤ(あいつ)だ。
「夜月」
《どーした?》
「アヤを追っかけるぞ」
《変な水色髪の連中か?俺はいいけど。暴れられそーだしなっ》
・・・・水色じゃねぇだろ、あの色は。
いや、まぁそれよりも、
「紅蓮。お前は?いいか?行っても」
ボールの中の紅蓮にオレは聞く。
しばしの沈黙のあと、ボールから声。
《無論、と答えればよろしいですかな?》
「お前の意見を聞いてるんだ。オレに賛同しろとは言ってない」
ポケモン(こいつら)にはこいつらの意思がある。
ゲームの主人公(プレイヤー)として『プログラム』を相手にしているわけじゃない。
こいつらが戦うのが嫌だというのならオレにそれを否定する権利はどこにも無い。
《・・・いいでありますな》
「さんきゅ。悪(わり)ぃな、つき合わせて。んじゃ、
『糸の切れた凧』を探しに行くか」
風力は最大。
どこまで飛ばされた事やら。
sideアヤ
・・・・もうすぐ4階ね・・。
階段を上りながらあたしはシリウスとレグルスに声を掛ける。
「シリウス、レグルス、大丈夫?」
《・・・・・む》
《もっちろん!まだまだ行けるよー》
よかった。
ここまで来るのに結構時間を食っちゃったから心配だったんだけど。
“国際警察”と自称する人がここの地図見せてくれなかったら、したっぱ全員と戦う羽目になっていたわね・・。
さすがにそれはしんどい。
倒したしたっぱの皆様にはゆっくり眠ってもらっている。
「急ぐわよ」
そう言いつつあたしの足取りは重い。
・・・傷つけてしまった。
そんなつもりはなかったのに。
『生きていない“バケモノ”のくせに!』
言ってしまった。もう後戻りはできない。
「強く!強く、もっと強くッ!!」
呪文のようにあたしはつぶやき続ける。
虚勢だとわかりきっていたけど、
そう言い聞かせていないと倒れて、もう動けない。
そうなってしましそうで。
ねぇ、どうして。
『あの人』にあたしは“絶対”を見た。
彼は“強さ”の頂点。誰かを、守るための強さを持っていたから。
だから、あたしもそうなりたかった。
なのに、どうして?
どうして否定してしまったの?自分の強さを。優しさを。
重い足取りを無理やり動かして4階にたどり着く。
妙にキラキラしたイルミネーションで飾った壁。
・・・どういう趣向よ、これ。
やっぱりこの人たち何考えてるかわかんない。
「ふむーーー!ふむーーー!」
誰?
何かで口を覆って出したような声がする。
・・・もしかして・・・!
あたしは声の方に走り出す。
多分、声の主は。
「大丈夫ですか!?」
「ふむ?」
・・・やっぱり。
思ったとおりさっきからの「ふむ」はロープで縛られているおじさん。
話に出ていた自転車屋のおじさんがこの人だと思う。
あたしは急いで縄を解いた。
「大丈夫ですか?町に戻りますよ。
・・絶対あたしが守りますから」
最後の方の言葉を、喉の奥から搾り出す。
「い、いや!わしよりもポケモンを!!!」
・・・・ポケモン?
ポケモンを取り戻しにここに来てたの!?このおじさん!
「はーい。そこまで。
まったくこんな可愛い艶姿の女の子に負けちゃってたわけかしら?
ウチのザコたちは」
突然の女の人の声。
ビクッとしてそちらに目をやると、
にこっ、と笑いながら壁に寄りかかっているすみれ色の髪の女の人が立っていた。
あたしが身動き一つもしないうちにその人は言葉を続ける。
「うふふ・・。残念だわ。
話に聞く限り『紅(あか)』の男の子がおもしろそうだったのに。
『青』の女の子もなかなかって聞いていたけれどもね。
・・・ああ、忘れていたわ。ようこそ、ギンガ団支部のビルへ。
お出迎えが遅くなってごめんなさいね。
ワタクシはジュピター。ギンガ団の幹部の一人ですわ。
・・・・短い付き合いになると思うけれどもね」
戦慄の言葉。
負けたくない。
負けられない。
あたしには、これだけしかないのだから。
2009.6.7 21:58:50 公開
2009.6.11 23:37:07 修正
■ コメント (2)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.6.14 03:34 - 森羅 (tokeisou) |
ゆーとぉ〜(泣) かなり、ショックみたいですね。そして、葛藤がすごいですね……。そして、見事に……。 復活されましたー! カッコいい! ゆーと、カッコいいぜ! カッコいいアヤの例えに、乗り切った後のアヤを「まったく……」と言ったような、笑顔……想像してしまいました。 本当にゆーと、カッk(ry ――45を停止させます。しばらく、お待ちください――。 おっほん。いやー、ゆーとの立場がよさ過ぎて^^; 暴走していたようです。 今回も出てきましたね……一体なんの声なのでしょうかね……。 そして、結構重要な言葉の数々が……。 アヤは、次回ジュピターとのバトル勃発ですかねぇ……。て、国際警察のあのお方が居るんですか? まあ、あのお方の活躍も期待しています……。 アヤは、ギンガ団では『青の女の子』と呼ばれているんですかね…・・・? アヤ(泣)は、強さを求めて現実から逃げ始めているではないですか〜(泣) では、久しぶりの感想でしたのに、ここまで暴走すると思いませんでした^^; 失礼しますー。 09.6.13 20:13 - 不明(削除済) (45syost) |
ゆーとはすっごいショックだったんでしょうね〜。(なんで他人事!?)
復活しましたよ!よかったね、ゆーと。(棒読み)
かっこ、良かったですか?
それはそれは。なによりでございます。
アヤのたとえ、というのはもしや『凧』ですか!?
あれを理解してくださりましたか!!ありがとうございます!!
ゆーとがすっごく言い立場に居ますねぇ。
彼はマンガみたいなカッコいいセリフがこの話で一番似合わない男なので大変です。(主人公だよね?一応)彼が言える範囲でカッコいいセリフを!!と言うのは非常に難しい・・・。
声に関しては、まぁいろいろと・・・(怪)
重要な立場の上に僕がなにげなく愛を注いでいます。『声』はどれだけでもカッコいいセリフを言えるキャラなのですばらしく扱いやすい!!(なにそのショップチャンネルのキャッチフレーズみたいなの・・)
アヤの『青の女の子』っていうのはかなり適当につけました(汗)目の色での判断ですね(ネーミングセンス皆無!)ちょい現実逃避気味ですね。
逃げたら駄目って思ってはいるんでしょうが・・。
あぁ、国際警察さんはちょっとだけ活躍です。
本当にちょっとだけ。(すずめの涙くらい)
それでは、なんだか文が繋がってませんがこの辺りで失礼を。