生あるものの生きる世界
50.side不明 真夜中[ミツダン]
著 : 森羅
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月の光が雲でかげる。
世界の全てが眠りに着いたそんな夜に、
何かが目を覚ました。
ハクタイシティ、ポケモン像前。
祭りの準備か、ポケモン像には囲むように縄が張ってある。
その前にたたずむのは一人の人間。
姿は夜の闇に溶け込みはっきりとはしない。
その人間が立っているのをしめすのはわずかな動きとさらに深くなった闇だけ。
その人間はプレートの張ってあった所を指でなぞる。
「ふん、はがされたか・・・。
まぁいいさ。どうせ、読んだからと言ってなにか変わるわけでもないしな」
聞こえてくる声は少年のような声。
彼はそう言ってから巨大な像を見上げ、続けて言った。
「お前は、何かを語るのか?
神は何も語らない。行く末も未来も、過去も現在(いま)も・・・・。
ヒトはどうして崇(あが)めるのだろうな。
存在すら知らないくせに」
突然にゆらり、と少年の物でも、自然の物でもない不自然な揺らぎが生じた。
「・・・来たか・・・」
少年の口の中でつぶやいた声を聞いた者は誰も居ない。
「・・・誰だ・・?」
もう一つ声が響く。
声変わりは当の昔に終わったであろう男の声。
闇の中で少年は笑った。
竜を見つけた虎のように。
「久しぶりだな・・・」
「誰だ?」
男の声は当惑の色を見せる。
「誰でもないさ」
「誰でもない・・?」
繰り返す男の声をよそに少年は再び笑った。
男の不思議そうな声が面白くて仕方がないとでも言いたげに。
「こんなところに何をしにきた?」
「答える必要はない・・・。キミこそなぜだ?」
男の声が落ち着きを取り戻していく。
相手が年端も行かない少年だと気がついたらしい。
少年は隠すそぶりも見せずに即答する。
「人を待っていた」
「人、だと?こんな夜更けにか?」
くっく、という喉の奥から搾り出したような笑い声が少年から漏れた。
男は顔をしかめてたずねる。
「何が可笑(おか)しい?」
「貴方を待っていたんですよ」
少年の口調が変わった。
それは別人のように。
「私を、だと・・・?」
「あぁ。・・・不思議か?」
さっきの一言はなんだったのか口調はすぐにもとに戻ったが、そんなことには気にも留めずに男は詰問する。
「なぜ、私を待っていた!?
いや、それよりどうしてここに来ると・・・・!?」
「俺に答える必要はない」
「どういうことだ!!!?」
男は腰のモンスターボールに手を掛ける。
少年の方は身動き一つせずに闇の中にたたずんでいた。
「ポケモンを出すな。俺はただ、『挨拶』に来ただけだ」
「・・・挨拶だと・・?」
男はボールから手を離して少年が立っているであろう方向をにらみつけた。
少年は視線を感じてはいたが気にも留めず言葉を紡ぐ。
「祭りが始まる」
「・・・祭り?それがどうした?」
「『俺達』が始めた祭りだ」
「ハクタイの祭りの事ではないな。・・・私は祭りなどするつもりはない」
ほぉ、と少年がつぶやくのを聞いた男は自分の気迫に圧倒されない少年に苛立ちを覚えた。
「悪いが、一番最初に種をまいたのはお前だ。
舞台はとっくに整っている」
男は何も答えない。
少年はそのことを気にも留めずに続けて言った。
「さぁ、戯(ざ)れ遊びを始めようぜ。
この世界を賭けて」
高らかに少年が告げ、その声とは反対に男は冷静に尋ねる。
「キミは誰だ・・・?」
「俺達?俺達はな、
・・・・ずっと昔のお前によって生み出されたモノさ」
月を覆っていた雲がその一瞬だけ月を離れた。
男が見たのは深紅の瞳。
少年が見たのは鮮やかな青い髪。
「お前の望みはぶち壊してやるよ。
お前はいつも悲しみを生むばかりだ。
せっかく何かを生み出せる力があるなら、人を幸せにするものでも作ればいいものを。
じゃあな、『・・・・』」
少年の最後のつぶやきは闇に呑まれて聞いたものは誰も居なかった。
残された男もすぐにその場を立ち去った。
side???
・・・・・・。
ボクは最初、全てが始まったのはあの子が“旅する”って決めた時だと思った。
けど、
違ったね。
大間違いだよ。本当に。
全てが始まったのはあの時。
記憶のかなたに埋もれてしまいそうな、けれども忘れてはいけないあの時から。
・・・・・・。
いや、それも違うのかな?
どうなんだろう?
どれも違うのかもしれないね。
それとも、
全てが正解かな?
まぁ、いいや。
どれでも結局は同じ事だから。
ボクが言えるのはただひとつ。
この世界は二重螺旋。
交わり離れ永久(とわ)に続く。
それは、
生あるものの運命(さだめ)のように・・・・。
2009.5.30 17:57:14 公開
2011.1.7 00:46:44 修正
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.6.3 23:19 - 森羅 (tokeisou) |
前回のコメントからどれくらい空いてしまったんだろう…。 お久しぶりです、森羅様。 今まで溜めてた分も一気に読破致しました。読み易くて清々しくなる文章に森羅様の才能が発揮されている…! 気になったのは今回もそうですが、前話の登場人物の心情がとても惹き込まれました^^ なんでしょうね…今後にきっと繋がってくるんでしょうね。 酔ったアヤには盛大に和んでしまった…!(ぁ いやあ、未成年なのに誘われてしまったのが運のツキ…。でも脳内で想像出来てしまった自分は一体何なんだ(変態 さて、大事な部分が抜けてしまうところでした; 少年と男の知的な会話で自分が一瞬追いつけなかった(( 少年の正体はきっと…。 っとと、唸りが絶えませんー。アヤにもまだ色々とあるようですし。 まだ謎がたくさんあり過ぎて、最早次話を見るしかありませんねっ! ではでは、更新期待して待ってます! 09.6.1 22:49 - 不明(削除済) (Vlack) |
後になってしまい申し訳ないですが、 コメントありがとうございます!!!ハミングさん!! 酔いどれナタネ&アヤ、気に入っていただけましたか? それは何よりです!!ありがとうございます!! ナタネちゃんに酒瓶持たせると、それがまたかなりぴったり来たんですよ!!(どういう神経している、森羅) 多分、トウガンさんが一番違和感なく受け入れていただけると思いますが・・・。 夜月についてはいつもゆーとなので少し、いじめて見ようかと・・・。勝ち誇ったゆーとを書くのも楽しいです(自己満足)吹き出していただけたなら嬉しい限りです!! ストーリーはかなり動き出してますね。 章分けをするなら、第三章、と言った所でしょうか?(どこで分けてだ、どこで) アヤについても???が言っていたように大切な主賓ですからね・・。“男の人”ももちろん関係者でございます。ハクタイシティは自分的にはかなり好きな町なんです。イベントが多いですよねー!祭でさらに盛り上がっていただきましょう。あからさまに何かが始まるかもしれませんし、祭の盛り上がりに隠れるように何かが動くだけかもしれません。 突然にシリアスになってしまってスミマセン、本当にすみませんです、はい。期待にこたえられるように頑張ります。ありがとうございます! それでは、失礼を。 09.5.30 23:54 - 森羅 (tokeisou) |
時間順となりますが、 コメントありがとうございます!!!45さん!! 付いていけないですか!?スミマセン!! ノリに乗って次から次へと勢いで書いた面があるので・・・すみませんm(−−)m はい、動き出しましたよ。これが書きたくって仕方がなかったんです(テスト期間だったくせに・・) 彼らは・・、青い髪の方はあの方ですよ!! あの方!!(誰だよ) 少年の方は・・・ご想像にお任せします♪ 夜月、お疲れ様。 一体どれだけもみくちゃにされたのか・・・(恐ろしい) アヤの言っている人はですね・・・、アヤが「強くなりたい!」って言っている理由にもなります。今後、関わってきますよ(笑顔) そして、酔っ払いすぎですね。 どんだけ呑んだんだこいつら・・・。 45さんも気をつけてくださいね、ウーロン茶。 とりあえず明日はえらい事になってますね。 ゆーとに頑張っていただきましょう!(笑) 次回はご想像通り祭り編です。 では、失礼を。 09.5.30 23:30 - 森羅 (tokeisou) |
こんばんはです、森羅様。 とりあえず前回のアヤとナタネさんに萌えた私は一度死んできまs(ちょ ゆーと&紅蓮と夜月の漫才に不覚にも吹きました^ ^; ホントに森羅様のギャグシーンには2828されっぱなしで(きめぇ ぬむ、大分ストーリーが動きつつありますが…酔ったアヤの言っていた「男の人」が何とも気に掛かります。ゆーととの関連性は一体…? ハクタイで祭りが開かれるそうですが、何やら怪しげな動きがありますね…シンオウ神話の発祥であるハクタイシティから何か始まるのかな? 何というか、シリアスへの急激な場面転換にドキドキしてしまいました。アヤの寝言(?)辺りから何か変だな?と思わせられて… うは、これは期待せざるを得ませんですvvv ではでは、次回も更新をジリジリと待ち続けますです♪乱文失礼しましたっ! 09.5.30 22:48 - 不明(削除済) (lvskira) |
?????????????????(??) いろいろ進みすぎてついて行けない^^; ただ、直感で分かりますね。『何が動き出した。』 ドキドキが上がって行きます!! ああ、はやく次回が気になる…。 今回の物語で出てきた人たちは一体……? 呼んだ感じトレーナーですね。(新しい声を想像したorz) すこし戻りますが、夜月お疲れ様でしたm(_ _)m お付き合いご苦労様です。 それにしても、アヤの言っていた事が気になりますね〜。憧れ?の人物とは誰なんでしょうか? 今後は深く絡み合って行きますね……たぶん。 てか、酔っ払い過ぎですよ〜二日酔いになりますよ〜ウーロン茶なら生らないですよ〜(それは、お前だけ) 次回は、【祭り編】というのでしょうか? そんな気がします! では、遅れながら感想を失礼します^^; それにしても、すばらしい更新スピードで。自分も、頑張りますね。 ちなみに、ウーロン茶を飲むとテンションマックスです。そう言う体質のようです……^^; 09.5.30 20:41 - 不明(削除済) (45syost) |
お久しぶりです!コメントへの返事が遅れてしまい申し訳ありませんm(−−)m
読みやすかったですか?それはそれは・・なによりでございます!!ありがとうございます!
酒・・・どこから出てきたんでしょうね?そのネタは(聞くな)今思っても不思議です(自分の事だろ!自分の!)・・・誰だ!こんな事考えたヤツ!!アヤに謝れ!!(だから、自分だろ!?)
と、まぁ馬鹿なやりとりは置いておいて・・。
男と少年。ご想像はつくのではないでしょうか?
会話は・・・意味はわかりにくいと思います・・。どうしても入れたかった話だったのですが、後にネタを取っておきたかったものでかなり無理やり感が・・・(汗)
アヤに関してもですね・・。もっと上手く書ければ良いのですが・・^^;
うっ!これ以上はネタバレしてしまいそうになるので、半ば強制的ですが、失礼を!