生あるものの生きる世界
48.sideユウト×アヤ 酒池肉林[ハクタイジム]
著 : 森羅
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・・・・・・・・・、なんだこれは?
目の前の状況を四字熟語で表せと言われたらオレは間違いなくこう答えるだろう。
『酒池肉林』だ、と。
なんだなんだどうなっていやがるんだ?
オレはどこかの居酒屋と間違えたのか?
「スピカ、何だこれは・・・?」
オレは自分をここまで連れてきて、事情を全て知っていると思われるポケモンを見上げた。
町をうろつくこと約30分。
やっと出会えた“よなきポケモン”はオレを見るが否や飛びついてきた。
《大変なのよ!アヤが死んじゃう!!》
と泣きつかれ、着いていく事ハクタイジム。
・・・・・というよりも、ここは“ジム”と呼べるのか?呼んでいいのか・・?
ジムの床には芝生が敷いてあるが、その上には足の踏み場もなくなるほどに所狭しと並べられた、大瓶小瓶に大皿。オレは思わず顔をしかめて言う。
「酒臭い・・・」
《でしょ?》
匂いだけでも酒に弱かったら酔ってしまいそうだ。
空瓶も沢山転がっている所を見るとよっぽどの酒好きが居るらしい。
オレはもう一度聞く。
「どうなってんだよ?」
《順を追って説明するとね。アヤがジムに挑戦したの。
それで勝ったんだけど、ジムリーダーのナタネちゃんが泊まっていきなよー、って言ったのね。それで》
「宴会を始めてしまった、と」
《そういうこと。アヤ、お酒なんて飲んだことないから一発で酔っちゃったらしいのね。
向こうでへらへら笑ってるわよ。ほんとに人騒がせなんだから》
・・・・・なるほど。理由はよくわかった。
だが、
「オレを呼ぶ必要はあったのか?」
さっきの解説だとまったく必要ないように聞こえるが。
《言われてみたらそうね。
・・・・・実はアタシも酔ってたら》
語尾がおかしいぞ?
・・・・・まさか、晩酌の相手をさせるために呼んだんじゃねぇだろうな。
《なぁなぁ、ユウト。これ食ってもいいか?》
さっきから夜月が静かだと思ったら、大皿に乗っている食べ物に釘付けになっていたらしい。あー、どうしてオレの周りはこんなヤツばっかりなんだ?
・・・・・タタタ・・・・・。
「ん?」
《なぁなあ、ユウトってばー》
さっき変な音がしなかったか?
あ、いや、この音は・・・もしかして、だが。
オレは万が一を期してジムの脇に寄ってから、
「あぁ、いいと思うぞ。だが、その前に」
《前に?》
「客だ」
ダダダダダダダダダダ・・・・。
「夜月ーッ!」
「かっわいー!!可愛いー!このブラッキ〜!」
《あ、アヤ、たらいまぁー(ただいま)》
《ぐぇ!何だ何だ!!!》
食べ物の方ばかりに気を取られていたから聞こえなかったのだろうが、
さっきからの音は誰かが走ってくる音。そして、理性がふっとんでいる女2人に
夜月は今、現在進行形Vingで羽交い絞め(はがいじめ)にされている。
一人はアヤ。上機嫌な顔は真っ赤。
もう一人はオレは知らない。
グリーンの服に茶髪のショートカット。
こちらも顔は真っ赤。りんごもびっくりだろう。
オレは夜月に心からのいたわりの言葉を述べてやる。
「夜月。がんばれよ、下手すりゃ死ぬかもしれねぇからな」
《見てないで助けろーーーッ!!!》
無茶を言うなよ。
オレは死にたくない。
「お前の偉業は気が向いたら後世に伝えといてやるよ」
《気が向いたら、かよ!!しかも今助けろ!今!!
うわぁぁぁああぁぁ!!ぎゃあああぁぁぁ!!》
すさまじい断末魔にさすがに驚く。
アヤが嬉しそうに抱きしめている夜月が心なしかぐったりしているような・・。
「・・・無事かー?」
《無事じゃねぇ・・・・》
これ以上関わってこちらにとばっちりが来るのも怖いのでオレはさっさとジムの奥に入り込む。
《見捨てる気かーーーッ!
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえーーーッ!!!》
・・・・ネタが、古い気がするのはオレだけか?夜月。
2009.5.29 22:38:30 公開
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