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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

46.sideユウト×アヤ 疾走[ダッシュ]

著 : 森羅

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「よぉー」

目の前で鼻風船を作って寝ているブラッキーにオレは声を掛ける。
無駄だと言う事は百も承知。

《起きないでありますかな?》
「見ての通りってやつだな」

時刻は7時ジャスト。
二日は寝ていたらしいオレは5時に起きたが、とりあえずそんなことはどうでもいい。
記憶が途中から途切れていて、それについて紅蓮に聞いてもなんにも答えない。慌てて目を逸らすだけだ・・・・、それもとりあえずは置いておこう。
問題はコイツ(夜月)。

「さっきから突(つつ)いたりしてんだけど起きやしねぇ。
あんまり派手に殴ったりすると仕返しが怖い」

ちなみに、早起きの得意なウィンディの紅蓮は6時に起きた。

《困ったでありますな》

まったくだ。時間ももったいない。

「これ以上いるのも悪いしな・・・」
《同感でありますな》

ここはハクタイの森のすぐ目の前の民家。
アヤが連れて来てくれたらしいが、殴られた記憶以外寝ぼけていて覚えていない。
・・・・一番忘れたい事を覚えているオレって・・・。

《ボールに戻しては?》
「・・・コイツ用のボールねぇんだ。必要ねぇから」

予備のボールはいくつかあるが、本当はオレにはボールはいらない。
『契約』と言うモンで“おや”と認識されるのでいちいち捕獲する必要がない。
便利なんだか、不便なんだか。

《その予備のボールに戻しては?》
「・・・素直に入るようなやつならいいんだがな」
《・・納得でありますな》

呼吸と共に膨らんだり縮んだりを繰り返す鼻風船をオレは人差し指ではじいてみる。
パンッ、と言う音と共に風船は割れた。
それでも起きる様子はない。

・・・・タバスコでも放り込んでやろうか・・・。
いままでのうらみもこめて。

トントン。

「はい?」

慌ててオレはノックされたドアの方に目をやる。
控えめにドアが開いて、漂ってくる匂いは味噌汁らしい。

「ご飯、食べれます?」

10人居たらその10人とも“優しそう”と表現するだろう笑顔を向けて20歳くらいの女の人が両手に持ったお盆を手渡してくる。起きた時に一応、礼は言ったのだが飯の用意までしていただいたら本当に頭が上がらない。

「すみません。ありがとうございます」

いや、本当に。

「何かあったらいってくださいね」
「ありがとうございます」

出来る限り丁寧に礼を言って、その人が立ち去るのを見送る。
起きたとたんに殴りかかってきた暴力女(=アヤ)とはえらい違いだ。

《腹減ったぁ〜》
「・・・・・・・・」

多分、このみそ汁の匂いを嗅ぎつけたんだろう。
夜月が起きた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
しばしの間、オレの思考は停止する。

「・・紅蓮、夜月いらないってさ。食っていいぞ」
《いいんでありますかな?》
「いらないっていってるやつにやらなくてもいいだろ?」
《理にかなっておりますな》

オレと紅蓮、コントしてるわけじゃない。

《食う!食うって!!誰がいらないって言ったんだよ!!》

夜月の抗議は全て無視!

「いただきます」
《我も》
《俺!俺の分!!あぁあぁぁあぁぁーーー!!》

夜月の声を全て無視してオレたちは出されたみそ汁、ご飯とかっ込んでいく。
お前起こすのに1時間は無駄にしてんだ!
朝飯抜きで反省してもらおう。

《ユウトのどあほー!化け物!ケチ!どケチ!!
朝飯抜きは体に悪いんだぞーーッ!》

厚生労働省の言葉だな、最後のヤツだけは。
だが、その前のセリフは聞き捨てならない。

「誰が、化け物だっ!誰がっ!それにケチじゃねぇ!
起きなかったお前が悪い!!」
《生きてないくせに腹減んのかよー?》
「死んでねぇ!!!」

昼飯も抜きだ!!どうしてもと言うなら木の実でも食ってろ!!

《あぁぁあぁあぁぁーー!俺の飯〜〜!
“シャドーボール”ぶち込むからな!いいんだなッ!?》

最後の手段、脅しにでたか・・・。
だが、オレの勝ちだ!

カラン、と茶碗を盆に戻す。
中身は空。紅蓮のも同じく。

「もう無いが?」
《ひ、人でなしーー!!!あぁ、俺の飯がぁ〜!
あーあー、いーよ、いーよ、途中でくたばってやるッ!
そしたら、ユウト!貴様も地獄行きだからなッ!?いいんだなッ!?》

こいつがもし人間だったら、今の言葉を人差し指をオレに向けて言うんだろう。

「一食抜いただけで死ぬかっ!」
《センサイな俺は死んじまうって。
俺の死体を見て後悔すればいいんだぁぁぁーー!!》

繊細?誰がだ、誰が。
殺しても死なないようなやつのクセに。

「紅蓮、行こーぜ」
《いいんでありますかな?》
《“シャドーボール”ぶち込んでやるぅ〜》
「クロガネで、夜月のためにひとつ取っといたんだが・・・」

オレは鞄から、りんごを取り出す。
別に夜月のためのものではないがこの際まぁいいだろう。
ピタッ、と夜月がわめくのをやめる。
作りかけの黒い玉もそれ以上大きくならない。

「“シャドーボール”をオレにぶち込むらしいから、いらないってことだよな?」
《そのようでありますな》

オレと紅蓮はそう言って笑い合う。

「ってことはオレがもらってもいいわけだ」
《・・・え?ちょっと?ゆーとくーん》

猫なで声が聞こえてくる。夜月のものだ。

「なんだよ?いらないんだろ?」
《いやだなぁー、ユウト。俺が貴様に“シャドーボール”なんかぶち込むわけ無いだろ?冗談だよ、冗談。ジョークが通じないなぁ〜》
「へー、作りかけの黒い玉はなんなのか、説明してもらおうか?」

夜月の笑顔が凍った。
・・・・本気でぶち込むつもりだったのか、このアホブラッキー。

《これは、ほらっ!あの・・・そう!リアリティを出そうと思って!!
スリルが増すだろ?》
「ほお」

オレは夜月のほうを見ずに手の中にあるりんごをもてあそぶ。

「・・そういえば、オレのことを化け物扱いしてくれたよなー?」
《俺が大切なパートナーのことをそんな風に言うわけがないだろ?
空耳だよ、空耳!だから、そのりんご・・・・

寄こせぇぇぇぇぇーーーーー!》

夜月がそう言って飛び掛ってくるのはいままでの経験上とっくに予測済み。
オレは慌てることなく、身を翻(ひるがえ)す。

「寄こせ?」

空を切って今まで居たのと反対側に着地した夜月にオレは笑顔を向けてやる。

《・・・お願いだから寄こしてください》

今日はどうやら運がいいらしい。
オレの優越感はこの後のできごとでも続く。


《・・・・・・》
「どうしたんだ?」
《なにか、気に入らない事でもありますかな?》

何かを訴えるようなまなざしでオレたちをみつめる夜月。
そんな変な事言ったか?オレ。

《本気なのか・・?》
「何が?」
《走るのが》
「本気(マジ)だが」

ここは外。
目の前には壮大な森が広がるが、オレはそこを抜けるつもりはまったく無い。
民家の人に話を聞くと、どうやら森を抜ける道と、森を避ける道があるらしい。
オレが選んだのは他でもない避けれる方。
理由、めんどくさいから。

ポケモンにも襲われる、道に迷う可能性もある、そんな道を選ぶほどオレは探検好きじゃない。それに、

「たった50キロくらいだろ?」
《たった!?》

50キロほどで森を迂回できるなら間違いなくオレはそっちを選ぶ。
それに最近走ってなかったからちゃんと走っておきたい。

「別にマラソンやるわけじゃねぇし、休み休み走ったらいいだろ?」
《なんで走る必要があるんだよー?》
「野宿したくないから」

だいたいお前の黄色い所が夜になったら発光するから野宿できねぇんだろ!?
クロガネへの道のりをオレは忘れてはいない。

《202番の時はすっげー息切らしてたくせに、走れんのかよ?》
「あんな無茶苦茶な走り方したら息も切れるつーの」

当たり前だろうが。

《ちなみに1キロくらいならどれくらいで走れるのでありますかな?》

この質問は紅蓮から。こいつは走る事に文句を言わない。

「1キロだけなら、2分40秒台くらいだな」
《に、二分〜?》
「先輩の中には2分30秒台で走る人もいた」
《たいしてかわんねぇよ!!!》

夜月の言葉は聞き捨てならない。10秒もタイムを上げるんのは大変なんだぜ!?
紅蓮はと言うと、

《競争しますかな?》
「いいな」
《勝てるとでも思いますかな?》
「勝ってやるよ」

短距離なら確実に負けるが、長距離ならオレの専売特許、負けるわけにはいかない。

「んじゃ、行くかー。今日中に次の町行くぞ」
《ばかー!人殺しー!あほー!!》

今日は夜月にとって厄日らしい。
オレの完全勝利だった。

sideアヤ

ハクタイシティ。
歴史と関係の深い町だけど、最近は近代化しててあんまりその面影は無い。
いつの間にかギンガ団のビルまで立っている。
唯一その面影を残すのはポケモン像。
あたしはその前に立ってそれを見上げてる。

「あれ?」
《どうかしたの?》
「プレートが、はがされてる・・・」

スピカの声にあたしはプレートの付いていたらしい場所を指差す。
そこだけ色が違う。

《最近はがされた物ね》

そうなの・・?あたしにはよくわからない。

「・・・ま、いいっか。ジム行こ、ジム」
《はいはい、行きましょ、行きましょ》

強くなりたい、そのためには。

あたしはそう思いながらジムを目指す。


























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2009.5.24  15:47:03    公開
2009.5.24  15:57:48    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

コメントありがとうございます!45さん!!

本当に夜月をいじめすぎました・・・。
いつもいつもゆーとなので・・・、(理由になってない)
楽しかったですけどね(笑)

ゆーとは速すぎですね。
一キロのスピードは僕の知り合いがモデルなのですが。
(本当にいるんかい!という突っ込み)
せめて3分台にしとけばよかったかなぁ、といまさらながら後悔。

本当ですよね、ギンガ団堂々とし過ぎ!
そして、なにゆえやっつけないジムリーダーたちよ・・・。

とまあ、話がそれはじめましたのでこのあたりで失礼を。

09.5.28  16:21  -  森羅  (tokeisou)

どうも^^
ゆーとはかなり早いですね^^;
一キロ走るのに、自分はかける3.5倍です。そして、+45秒ほd……てしるか。

夜月は、飯のにおいで起きるのですか〜、いいですね〜(−−)
しかし、夜月はかなりおちょくられているwwファイトーww
みんな、虐めすぎですよ^^;ほら、黒い塊が目の前に飛んできちゃいますよ。

体力がヤバイですね。一人と一匹。
またしても、夜月が^^;

アヤはどんどん先を進めているようですねー。そして、プレートと関わりましたか。
ところで、何時も思うのですがギンガ団は堂々としすぎじゃないですか?

とまあ、迷惑そうな感想失礼しました^^;

次回をまってますー^^

09.5.25  17:09  -  不明(削除済)  (45syost)

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