生あるものの生きる世界
45.sideアヤ 防戦[ボウセン]
著 : 森羅
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「見られたからには仕方が無い。悪いが消えてもらう」
じりじりと小さくなっていく円の中心にあたし達がいる。
敵の数は10人はいるわね・・・。
「えぇ、あの・・・」
あたふたと半泣きの顔をこちらに向けるのはモミさん。
あたしは出来る限り相手をにらみつけて、聞く。
「なんで、あんたたちがここにいるのよ?」
相手は知る必要が無いとでも言いたげに沈黙を守っている。
フードに顔が隠れて表情はうかがえない。
でも答えてくれる事なんて期待はしてない。
あたしがしたいのは時間稼ぎ。
その間にあたしは考える。
モミさんは戦力外と考えていいし、スピカだけじゃこの数は倒せない。
あたしの主力のシリウスはこんな森の中じゃ戦えない。
木の枝が邪魔になるし、高く飛べないから。
つまり、
スピカともう一匹。・・・この子しかいないか。
問題は、あたしの指示が追いつくかって事。
向こうはもうボールを構えている。
迷ってる時間は、ないわね。
「スピカ、それから・・・レグルス!」
《は〜い》
ふわふわ浮いていたスピカがあたしの前に出てきて戦闘態勢を整えて、
あたしはもう一個赤と白のボールを放り投げる。
《久しぶりー、だってさ、ぜーんぜんぼくのこと呼んでくれなかったでしょー?》
ひどいよねー、とつぶやきながら出てきたのは中型、四足のポケモン。
紺色の鬣(たてがみ)にシアンよりも少し濃い青色で、
前足の2本のラインと尾の最後それから目が黄色い。
ルクシオ、それがあたしの三匹目のポケモンの名前。
もともと202番道路で捕まえた時はコリンクだったんだけど、最近進化して今はこの姿。コリンクのときはよかったんだけど、今じゃ、しゃべり方と姿のギャップが結構ある。
《遊ぶのー?わぁーい!》
・・・全然違うんだけど、この子にはそういうことにしといた方が説明しなくていいから楽なのよね。
「逃げるのよ!倒さなくてもいいから、戦えなくして!」
《アヤ、それは矛盾してるんじゃないの?》
「・・・・・しびれさせるとか、麻痺させるとかあるでしょ!」
《おんなじ意味だよー、それ》
スピカに一発、レグルスに追い討ちをそれぞれ受けるあたし。
・・・・・あ、あたしが悪かったわよっ!
「ガキが俺たちにかなうとでも?」
ボンッ、と言ういくつものボールの開く音。
ざっと見た感じ炎タイプが圧倒的に多い。
あとは、悪タイプ。
厄介なのは地面技。
苦手なタイプのクセに使えるんだから嫌なのよ。
ドンメルとかは地面タイプも入ってるから本当はレグルス出したくなかったし。
「あ、あの!わたしも」
「黙ってて!」
モミさんが出たら余計に厄介な事になりそうだから、あたしは最後まで言わせない。
あたしはマグマ団の方を見てるからモミさんの方を見てないけど、傷つけたかも・・。
あたしはそこまで考えた所で首を振る。
・・・今はとりあえず集中しないと!
「レグルス、“でんじは”。スピカ、“あやしいひかり”!」
「そんな攻撃が効くか!!“かえんほうしゃ”!“つばさでうつ”」
「“あなをほる”」「“オーバーヒート”」「“かみくだく”」
聞こえてくるのはいくつもの命令の声。
色とりどりのポケモンが襲い掛かってくる。
「“ま、もる”ッ!」
絞り出した声に反応してスピカとレグルスが自分を守る。
だけど、“まもる”は周りの木や草、あたしたちは守ってくれない。
水分を含んでるから森が燃えるってことは無いと思うけど、熱い。
数でも力量(レベル)でもあたしたちに勝算は無いと考えていい。
シリウスが戦える場所なら違うかもしれないけど・・。
だから、あたしができるのは防御。
でも、いつまでも持たない。早めに活路を見つけないと!
わかってるけど、これだけ数が多いと隙が無い。
10分、持たないかな・・。
「“たまごうみ”ですっ!」
「ッモミさん!?」
「はい。回復は任せてくださいね」
にっこりと笑うモミさんの足元にはピンク色のポケモン、ラッキー。
・・・・なんであたしはこんなに弱いのよッ!
いつもいつも・・・、守ってもらうばっかりじゃないっ!!
強くなりたいって思うのに、どうして誰も守れないの・・?
どうして強くなれないの・・?
ねぇ、どうして?
どうして、貴方はあの時あたしに教えてくれなかったの?
『守るための術(すべ)』を。
ねぇ、どうしてよ・・・。
「ちっ!“えんまく”」
マグマ団の声にあたしは現実に引き戻された。
え、ってえぇー、“えんまく”!?
一匹のコータスが背中の甲羅から噴煙を撒き散らし、
辺りの視界が一気に悪くなる。
向こうは暗視スコープとか持ってるんだろうけど、
それってズルいわよ!!!
「スピカ、レグルス戻ってきて!」
こんな視界の悪い所でスピカたちを指示するのは無理。
ボロボロで戻ってきた二匹にラッキーが“たまごうみ”をしてくれる。
「アヤさん・・・。状況最悪じゃないですか?」
「最悪よ・・・」
相手はこっちが見えないのに相手はあたしたちが見える。
これ以上なく最悪な状況。
「“かえんほうしゃ”で終わりだぁ」
赤い炎がこちらに向かって走ってくる。
意思を持った生き物みたいに。
あたしはその赤にあの時のユウトの眼を思い出す。
反射的に目を閉じた。
恐怖からの回避。けど、その行動は状況を回避はしてくれない。
「“かえんほうしゃ”!」
真っ暗になった視界でもう一つ声が聞こえた。
マグマ団のものとは思えない、もっと若い男の子の声。
その声にあたしは目を開ける。
目の前には炎。
ただし、二種類の。
一つの炎はあたしたちを焼き殺そうとした炎。
もうひとつは、
その炎から守るように横から入ってきた炎。
二つの炎が目の前で相殺される。
・・・ユウト・・?
頭のどこかがそう告げて、どこかが違うと否定した。
声が、もっと高い。
でも、炎タイプなんてシンオウ地方はほとんど居ない。
「やっぱり、炎タイプの技じゃ効かないかぁ〜」
「誰だ!?グラエナ、“かぎわける”“こわいかお”!」
「できないよ。“ほえる”しちゃったから」
誰かとマグマ団の一人がそれぞれ独り言のように言う。
その独り言が妙にかみ合っていて聞こえる。
「アヤさん、今のうちに・・」
《アヤ、逃げるわよ》
スピカとモミさんの声にあたしはうなずく。
視界は悪いけど、時間も経ってきたしなんとか見える。
モミさんがラッキーを戻したのを確認してから、
「モミさん、手」
「えっ!あ、はい」
差し出された手の手首を掴んであたしはレグルスをボールに戻す。
モミさんにこけられちゃたまらない。
「スピカ、行くわよ!」
「あっ!逃がすか!」
「もうちょっと遊んでもらうよ!“あやしいひかり”“おにび”!」
男の子の声に“おにび”が放たれる。
その火が道を照らしてくれた。
息もするのも忘れて走って走って、煙の晴れた所までたどり着く。
光が目を指した。
「ふりかえちゃいけませんっ!早く逃げましょう!」
ふと振り返りかけると今度はモミさんに引っ張られて森の出口まで。
はぁはぁと息を整えて、あたしは言う。
「さっきの、誰・・・?」
「さ、・・さぁ?」
この様子からしてモミさんの知り合いじゃない。
「アヤさん・・・、出口ですね。
えぇと、ありがとうございましたっ!」
・・・・だから、言うタイミングが違うでしょ・・・。
あたしの力が一気に抜ける。
「このまままっすぐ行けばハクタイです。
では、わたしはここで。
本当にありがとうございました」
・・・だから、タイミングが違うって・・・・。
あたしの心のツッコミが聞こえているようすはまったくない。
そのままはじめと同じ丁寧なお辞儀をして立ち去っていった。
・・だから、お辞儀の場所が・・・。
sideマグマ団
「誰だっ!!」
森に反響するのは怒ったような声。
「もう、いいかな?逃げるよ!」
「逃がすかっ!」
徐々に晴れていく煙にまぎれるようにアヤたちの逃げる手助けをした人物は立ち去った。
そのあと、煙が晴れたころにそこにいたのは、
『やけど』や、『こんらん』などで壊滅状態にされたマグマ団だった。
2009.5.21 14:34:39 公開
2009.9.22 10:51:17 修正
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.5.24 13:35 - 森羅 (tokeisou) |
ガクガク……助太刀した人はもしかして……いや、まさかですかね^^; 鬼火…怪しい光…火炎放射……もしやぁあ!(いや、やっぱり落ち着きましょうか。) 一瞬、助太刀した人はゆーとかと思いましたが、違うようですね。 アヤはこれからどんどんと、成長して行き、強くなっていくでしょうね。 ――て!モミさん、タイミングが違うっwwそして、行動が早しww 助太刀した人強い!マグマ団が全滅しておるw 新キャラの『クルシオ』のキャラがいいですね。ぼくっ子のようですね^^ 純粋に強くなっていきそうですね。いや〜今後がワクワクしますね。 今後の展開は期待しています!気になり過ぎて、うずうずします^^ では、これで。 09.5.23 19:37 - 不明(削除済) (45syost) |
こんにちは、コメントありがとうございます!!ハミングさん! いや、毎回読んでくださっているだけで感涙の極みですよ!本当に。 僕のモミさんのイメージはマジでこれです。 蝶を追いかけてそのまま迷子になる子供みたいな・・・(苦笑) いままでよく無事に旅ができたものですね(お前が言うな) レグルスについては自分のお気に入りのポケモンなので採用しました。ですが、アヤが言っていたようにコリンクの時とクルシオ、レントラーになった時とで話し方のイメージが違うのでギャップが・・・・(汗)ですが、可愛いと言っていただけてなによりです! アヤちゃんはこの小説で今のところ一番人間らしい人間ですね。(今のところ一番人間っぽくないのがゆーと(笑)) このアヤの"強さ”への執着はアヤの過去がいろいろと・・(強制終了)ハクタイシティはもっぱらアヤ主役です。もってけ泥棒ーー!ゆーとは脇役おめでとう!(黙れ) ・・・・とまぁそれは言いすぎですけど。(ゑ) マグマ団一味の壊滅させたのは・・・・、(強制終了&強制連行) そ、そのうちわかると思いますよ^^; 黒ゆーとについては・・・いろいろ伏線を張ってます♪ 今からはもっと増えるかもしれませんね伏線・・・(すべて回収できるか!?森羅!!?) 文章がむちゃくちゃになってきているのでこのあたりで・・・。 それでは、失礼を。 09.5.23 13:52 - 森羅 (tokeisou) |
こんばんはです、森羅様。 毎回拝読させて頂いておきながら、長らくコメント出来ず申し訳ありませんorz 嗚呼ドジっ娘モミさん可愛え(変態警報 新キャラのレグルスもかなり可愛いです♪この脱力感たまりません(帰れ 加勢に入ったのは…どなたでしょうか?一人でマグマ団の一味を壊滅状態に追いやるからには、相当の実力者でしょうが… ゆーとではないらしいので、伏線回収期待して待ってますbb アヤの強くなりたいという葛藤が人間らしくて親近感湧きました。アヤはこれからどう変わっていくのでしょうか… そして、黒ゆーとの存在もまだ謎に包まれたままですね。彼が味方となるか敵となるか、この先の展開を楽しみにしたいと思います♪ ではでは、これからも更新を心待ちにしてますです!乱文失礼しましたっ>< 09.5.22 20:51 - 不明(削除済) (lvskira) |
助太刀したのは・・、45さんの想像通りかもしれませんし違うかもしれないですね。結構強いのは確かですよ。
ちなみにアヤも言っていたようにゆーとではないです。
アヤは強くなるでしょうね、これから。
ですが、彼女はわかってないんですよ。いろんな意味で。(何がだ)
ハクタイシティで少しわかるといいんですけどねぇ。(だから、なにをだ)
それでは、失礼を。