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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

44.sideアヤ 森のざわめき[ザワメキ]

著 : 森羅

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・・・・・・・・・・・・・・。

《47回目・・》

スピカのあきれたような声が回数をカウントする。
何を、か。

「・・・すみませぇん・・・、助けてください・・・」

モミという超が2、3個付きそうなくらいの天然人間がこけたり、木の幹に引っかかったり、
今回みたいに沼みたいになってる所に落ちたりした回数よ!

あたしは返事をするのもうざったくてそのまま力任せにモミさんを引っ張る。

「すみません・・・・。ありがとうございます・・」

本気で申し訳なさそうな、泣きそうな声をしないで欲しいんだけど・・。
あたしがいじめたみたいじゃない。
妙な罪悪感にさいなまれるあたし。

ふぇーん、と半べそで泥に汚れてしまった服を見下ろすモミさん。
だから、そんな情けない顔しないでって。

・・・・この人は本当にあたしより年上なの・・・?

疑いたくもなるわよ。ほんとに。
おっとりしてるにもほどがあるって!

ハクタイの森を歩く事、今日は2日目。
やっぱりと言うか、当然と言うか一日で抜けるのは出来なかった。

この真っ暗な森の中で、一晩ゴーストタイプや虫タイプのポケモンに囲まれて寝る羽目になった昨日。思い出すだけでも鳥肌が立って寒気がする。

あたしは怖いのダメなんだからねーーーーッ!!

心の中で大絶叫。
隣でくー、と寝息を立てて寝ているモミさんに本気で殺意を覚えたわよ。

「アヤさん、アヤさん」

今度は、何?
そう思いながらもあたしは答える。

「なんですか・・?」
「何か、森がざわめいていませんか?」

はじめてみるモミさんの真剣な顔にあたしは辺りを見回してみる。
木の葉の間から差し込む光がモミさんの顔に影を作っていた。

「別に、何も感じませんけど・・?」
「そうですか、じゃあ・・気のせいですね。行きましょう!!
きゃあ!」

べしゃ。

柔和な笑みを浮かべて、張り切った声を出したモミさんは、
地上に生え出た木の根にものの見事に引っかかった。

《48回目・・・》

スピカの容赦ないカウントだけが辺りに反響する。


一時間後・・・・・。


「もうすぐ出口じゃないですか?」

いたるところで転んだり、泥沼に落ちたりして、どろどろ、ぼろぼろになったモミさんがあたしにそう言った。

「・・・そう思いますか・・・?」

辺りには森が広がるだけ。
出口らしき所は何も見えない。
どこから、その考えは浮かんでくるのよ、この人は。

「はいっ!だって二日も歩きましたから!!」

・・・・・・・・・・コメントするのも疲れたわよ・・。
二日歩いたって言っても、休み休みだし、誰かさんはこけたり転んだりと忙しかったし。
道が入り組んでるから正しい道かどうかもわからず進んでるし・・・。

二日歩いたから出口、と言う考えは間違ってると思うわよ。

「それに」

それに?

「あそこに、建物が見えますから」

建物・・?
言われてみれば、確かにいかにもボロボロな家みたいなのが見える。
あんなとこに住んでる人、いるの・・?

「“もりのようかん”って言われてるらしいですよ。
誰も住んでいない洋館なんですが、そこのすぐ近くにハクタイ方面の出口があるそうです」

ふーん。
あれ、ってことは。

「出口!」
「はい」

にっこりと笑うモミさん。

やったー!出口だーー!お風呂〜。
ベット〜。まともなご飯〜。

それらがあたしの頭の中でメリーゴーランドに乗って手を振っている。

「ですが」

どーしたのよ?

「すみません。気のせいじゃないと思うのですが」

だから、何よ?

「“もりのようかん”に人影が見えます」

・・・・・・・・・・・・。

「さっき、『誰も住んでいない』って言いましたよね・・?」
「はい、中はボロボロで人の住める状態ではないはずです」

ってことは。ちょっと、待ってよ。
まさか、口にするのもおぞましいけど。

お・化・け・・・?

「・・・そこを通らないで出口に行ける道は・・・?」

震える声で尋ねるあたし。

「無いですね。すぐ傍を通らないと出口には行けないんですよ」

・・う、嘘でしょ・・・。
そんなに淡々と答えないでよ。

「えーと、人影、気のせいですよ」

と言うより、そう言って。

「気のせいですか・・?
あれも?」

モミさんの指差す方にあたしは目を向ける。

しまった、と思ったころにはもう手遅れ。

あたしはしっかり見てしまった。

近づいてきた洋館の扉が開いていたのを。
さっき見たときは閉まってたのに・・。

・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「きっ・・・きゃああああぁぁあぁぁぁぁあーーーーーー!!!」

なりふり構わずあたしは絶叫。
怖いのは大っ嫌いなんだってーーー!!!!
くるりと回れ右して森の奥へ走り出そうとして、

「待ってくださいって!」

服をモミさんに掴まれた。

「離してーーー。お化けーーーッ!!」
「わたしはお化けじゃありませんっ!」
《アヤ、アヤ》

声につい振り向くあたし。

《ばあ!》

目に映るのは面白そうに笑う『お化け』。
・・・・・・。

「ぎゃあああああぁあぁぁぁぁ!!!」
《Be quiet.(静かにしなさい)》

バシッ。

スピカに殴られあたしはばたんきゅー。
・・・なんでスピカはあたしを殴れるのよ・・・。
ゴーストタイプのくせにぃ。


やっとあたしが落ち着いたころにモミさんがあたしに言う。

「大丈夫ですか・・?」
「はい・・・・・」

うぅ〜、恥ずかしい・・・。

「あれは幽霊じゃないですよ。幽霊ならドアを開けて出ません」

そんな理屈でもあたしは少し安心する。
モミさんの無茶苦茶な理屈が頼もしい。

「あれは人間です。生きてる人ですよ」

あたしはその言葉にユウトのことを思い出す。
あいつは『生きて』はないわよね・・・。

「さっき、近くまで行ってみました。靴あとがありましたよ。
幽霊に足はありません」

・・よ、よかったぁ〜!
あたしは本気で安心する。

「なら、早く抜けちゃいません?」
「そうできたらいいのですけど」

けど、何でしょう?

「やっぱり、・・・気づかれてたみたいですぅ・・・。
すみませぇん。わたし・・・」

気づかれてた?
誰に?

「こそこそ隠れて何やってるんだ?
運の悪いトレーナーども」
《囲まれちゃってるわよ。逃げ切れないわね》

えぇ!!
だから誰に、よ!?

「悪いが、見られたからには消えてもらう。
消してやるよ。マグマ団が」

・・・・・・・・・・・。
最悪。

「探索するのって初めてなんです」

なら、しないで欲しかったわね・・・。
モミさんが付け加えた一言にあたし苦笑いするしかなかった。


















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2009.5.9  23:38:47    公開
2009.5.10  15:18:41    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

45さん!コメントありがとうございます!!

そうですね・・。私も苦手なんですよ、森の洋館。
というよりもシオンタウン(緑版)の音楽さえ怖い・・・。
あれ、『ゆうれい』も怖かったですしね・・。
洋館の幽霊が見てみたくて、何度かチャレンジしたんですけど、マジで怖かったです。(でもまだ幽霊を見てない)実際あったら絶対行きません。てか行けません。
アヤみたく、一晩森の中にゴーストたちに囲まれて寝るのも確実無理ですね。アヤの怖がりはきっと自分の性格がモロに出てます。

モミについては初めて見た時のイメージをそのまま採用してます。いまさらながら、はた迷惑な人ですねー(自分で言うな)なんでこんな人が今まで無事に旅が出来たんでしょう?(聞くな)
ついでに言えば、手持ちのラッキーが一度も登場してない・・・。(あは、あはははは・・マズ・・)

マグマ団は敵キャラで一番好きです!ルビー版だったのでよけいにかも知れませんが。
“ユウトvsアクア”だったので“アヤvsマグマ”にしようかと・・(単純思考すぎだろ!!)
アヤちゃんが捕まえたもう一匹が出てきますよ。(大分昔にコトブキシティでユウトが言っていたやつです)大分登場が遅れてしまいましたけど、頑張ってください“・・・”!!
では、今宵は失礼を。

09.5.10  22:24  -  森羅  (tokeisou)

どうも^^
モミ色々と迷惑かけすぎwwそして、一日で抜けられる事を応援していましたが、無理でしたか^^;

一晩中…ゴーストポケモンに囲まれる…ぽ、ポケモンだから…へ、へっちゃら…では?(かなり弱気)

すみません。無理です。アヤたちファイトー。

森の洋館が出てきましたね…。実は、軽く自分が行きたくない場所一位のところなんです。幽霊が怖いですよね〜…アヤの気持ちが分かるような…。

そして、ギンガ団=マグマ団の登場ですか!タイミング悪いだろ!
次回は、バトルですね^^期待してまっています!

09.5.10  16:57  -  不明(削除済)  (45syost)

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