生あるものの生きる世界
37.sideユウト×アヤ 花畑[トラブル]
著 : 森羅
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う・・・わぁ・・・・。
木の陰からなりゆきを見守るあたし。
夜月もむりやり縛り付けている。
「お前らなんぞにやるもんはない!帰れ!!」
「いいから寄越せばいいのです!」
ブルーグリーンの髪色が派手さを際立て(きわだて)ている、そいつら。
ギンガ団。
そして、そいつらに囲まれているおじさん一人。
ユウトの髪色もこいつらの近くなら真っ黒に見えるんじゃない?
・・・・・ってそんなこと考えている場合じゃないって。
ギンガ団団員の力はピンキリ。
強いやつは強い。弱いやつはとことん弱い。
自分達は正義を語るけど、ポケモンを殺されたひともいる。
でも、ほっとけないよね、やっぱり。
と言っても、向こうの力は未知数。
強ければ一瞬で返り討ちだし・・・・。
仕方がない、あんまり使うのは嫌なんだけど・・・。
正面が駄目なら、
「スピカ・・・お願いね」
《はーい、久しぶりねー、コレやるの!》
不意打ちしかないのよね、・・・・・・卑怯だと思うけど。
あたしの気持ちが浮かないのに対してスピカはご機嫌そのもの。
ムウマであるスピカにとって『人をおどろかせる』と言うのは本業、本職。当然と言えばそうかもしれないわね。
スピカはふわふわと浮かびながらそっとやつらに近づいていく。
誰にも気づかれないと言うのはさすがと言うっきゃない。
そして、やつらのまん前に浮かぶ。
「え?」
と言う声が聞こえてきて、スピカがにこ、と笑う。
わけのわからない団員があいまいな笑顔を見せたのが見えた。
次の瞬間。
“おどろかす”
あたしの頭に一つの技名が浮かんだ。
「ぎゃああああああぁああああぁ!!!」
ギンガ団プラス巻き込まれたおじさんが大絶叫。
おやすみなさい。
あたしは心の中でつぶやいた。
「スピカ、ご苦労様」
《いえいえ〜、楽しかった》
さてと、
「なんでこんな所にこいつらが・・・?」
《さぁね》
あたしはギンガ団だけを縄で縛りつけながら言い合う。
それをどこか引き気味で見守る夜月。
縛り終わって、適当にそこらに寝かせておく。
これでいいでしょ、多分。
「さて、これでよしっと。
まったくあの馬鹿どこに行ったのよ?」
《嫌な予感がする、だってさ》
夜月の通訳だろうけど、嫌な予感って・・・?
そういえば、あたしも嫌な感じが消えない。
こいつらのせいならもう消えているはず。
なら、別の原因がある・・・?
「きゃー!!」
あたしの思考はその悲鳴で停止した。
こ、今度は何??
町のほうから聞こえてくる悲鳴といくつかの声。
なんなのよーー!!
トラブルばっかり!
あたしたちは急いで町のほうに戻って行こうとして、
小さな機械音があたしの耳に入ってきた。
ん?
《どうしたの?》
「なんか、聞こえた気がして・・・」
音源を捜してあたしはギンガ団の荷物をあさる。
端(はた)からみたら泥棒ね、あたし・・・・。
「・・・と、あったあった」
《何があったの?》
「無線。・・・・壊れてはないみたいね」
ザーザーとノイズ音を響かせる無線をなんとなくあたしは耳に当ててみる。
『・・・・・が・・・・・てんの!?・・・・・・・返事・・いよ!!・・・・・・』
ところどころなんとなくは聞き取れるわね。
女の人の声、と思うんだけど。
えらく癇(かん)に障る声。
『・・・ふ、う・・・電所・・あ・髪の・・・・だから・・さっ・・・と帰って・・・さいよ!!』
ふう・・・電所?
・・・・・・・・・風力発電所!!
びっくりしてあたしたちは顔を見合わせた。
《ユウトくん・・・まさか、ね?》
スピカが言いたいのは最後の方の“あ・・・髪”の所だと思うけど。
あたしの頬を冷や汗が伝った。
「まさか・・・ね・・・?」
ユウトが自ら行ったとしても、なんらかの事があって巻き込まれたとしても・・・・。
「なんで、こんなややこしいことになるのよーーー!!!」
《行くぞ、だって》
夜月はとっくに走り出している。
あぁ!もう!!
あたしたち、町に戻らなきゃならないじゃない!
・・・・・なんでこんなことにぃ〜!!
少し半べそになっていたのは間違いない・・・ハズ。
ソノオタウン風力発電所方面出口付近
「なんなのよ!この人ごみ!!」
《こっちよ》
スピカが合間を縫うようにして進んでいくのにあたしは必死で付いていく。
やっと、人ごみを抜けたー!
と息をついたとたん。
ぐるるるるぅ・・・・・・。
「あんた・・・紅蓮?」
炎タイプはこの辺りには生息していない。
ましてはウィンディなんて、確実に。
ウィンディを持っているトレーナーの心当たりはたった一人。
だとしたら、やっぱり・・・紅蓮よね。
町の人たちは花を燃やさない為かな?炎タイプのウィンディを必死で食い止めている。
当のウィンディは街中に入ろうと必死の様子で暴れ狂っていて手がつけられない。
あたしたちのことも目に入っていないし。
「紅蓮!・・・聞いてよ〜!!」
必死にコンタクトを試みるけど、完全無視。
突然、マンガとかだったら怒りマークが2,3個浮かんでいる雰囲気の夜月が紅蓮に体当たり。
怖いわよ、あんた。
紅蓮は体当たりを繰り出した相手を見て、牙をむきかけて・・・落ち着いた。
少しの間、何か話し合っている二匹。
スピカが訳してくれる。
《ポケモンの声、人の声違いがわからなかったんだって》
「は?」
《女の子に化けたのが居て、紅蓮くんが出て、ユウトくんが気を失って、
人が来て、連れて行ったんだって》
「・・・・・・・」
スピカの説明が下手なのか、紅蓮の説明が下手なのか、
あたしは知る事ができない。
でも、なんとなくは理解した。
つまりは、
「行くわよ!!」
ああもう!!仕方がないけど、風力発電所に行かなきゃならない。
見殺しってのは後味悪すぎるからね!!
待ってなさいよ!!
sideユウト
・・・・・・・・・・・。
ここは?
暗い・・・いや、明るい・・・?
オレの居る所に色はない。
白も黒もない。
時間も空間も存在しない。
えぇっと・・・。
どうしたらいい?
どうすればいい?
小さな声が聞こえてきた。
オレ以外誰もいないはずなのに。
[かつて、昔に思ったものは時の流れに姿を変えた。]
[悲しみはあきらめに。]
[苦しみはむなしさに。]
[そして、恐怖は]
[そうしなければ生きれないと言う]
[言い訳に。]
どういう意味だ・・・?
聞こうとして、
言葉は吐息に変わっただけだった。
2009.4.26 00:38:11 公開
2009.4.27 21:51:48 修正
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