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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

35.sideユウト 警告[ケイコク]

著 : 森羅

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おぉ・・・・。

風が強いな。
向こうの方に風力発電の風車みたいなのが回っているのが見える。
なかなかエコロジカルな世界だ。
自然もどう考えてもこちらの世界の方が多いだろう。

「紅蓮」
《なんでありますかな?》

オレの隣でふさふさの体毛を風になびかせ目を細めているウィンディにオレはなんとなく話しかける。
こいつ本当に変わった話し方だ。
いまさらだが・・・。
まぁ、いいか。オレは他人の話し方にケチを付けるほど偉くない。

「いや・・・なんにもねぇ。
・・・・せっかくだから風力発電所とやらに行ってみるか?」

発電所とやらはかなりどうでもいいのだが、

オレは今、暇だ。

そういや、
中学の時からあんまりゆっくりした覚えはないな。
高校になってからは・・・・もっとか。

『暇だと言う事は素晴らしい』

とか思ってたんだがな。
暇すぎる、と言うのも考え物だ。

《好きにしたら良いのではありませんかな?》
「・・・んじゃ行くか」

暇人2人組みはなんとなく、と言うふざけた理由で風力発電所に向かう。
実際に働いている人にとってはかなりはた迷惑な一人と一匹だ。
・・・・・・・自分で言うなよ、と一人つっこみ。

本当に暇なんだな、オレ。



紅蓮をボールに戻し、川沿いにしばらく歩いてみるが、風車は見えるのに近づくいている気がしない。

帰ろかな・・・・。

ただ土を踏み固めただけの道を見下ろしてそう思い始めた、そのときに。

「お兄ちゃん」

小さな女の子がこちらに向かって寄ってくる。

・・・・どこから出てきた・・?

さっきまで影も形もなかったはずだ。
オレは無意識に少し後ずさる。

「お兄ちゃん、ねぇねぇ」

妙に甘ったるい声。
無邪気な笑顔が逆にオレを不安に駆り立てる。

なんだ・・・・・?

妙な違和感。
それは消えることなくふくらみ、小さな警告を発するが、
目の前のツインテールの女の子はオレに向かって言葉を続ける。

「お兄ちゃん、お父さんが帰ってこないの」
「・・お父さん・・・?」
《違いますな !!!》

オレがつい聞き返したのとボールの中の紅蓮の声がちょうど同時。
その瞬間、
女の子の笑顔の種類が変わった。

それは壮絶な笑み。
獲物を捕らえた肉食動物のそれだと言えばいいのかもしれない。
紅蓮の声が危険を告げるがオレは動くことが出来ない。

「お兄ちゃん、私の声が聞こえるのね》

マズいッ・・・・・!!

緊急事態での人間の反射神経と言うのは素晴らしい。
オレはほとんど勘だけでその場を飛びのく。
何が一体危険なのか、頭はわかっていない。
体だけの脊髄反射。
しかし、それが告げていた。

危険、を。

何かがさっきまでオレが居た所を薙(な)いで行く。

女の子の姿はもうすでにない。
代わりに、

薄い桃色の不定形の生き物がその場に居座っていた。
あきらかに人ではない、異形のモノ。

「ポケモン・・・・ッ!」
《正解だよ、お兄ちゃん。気がつかなかった?
なら私の勝ち。負けたお兄ちゃんには・・・・・罰ゲーム》

クスクスと目の前のポケモン、メタモンが笑う。
ゲームを楽しむ子供のようだ。
そして、オレははじめて気が付いた。

オレはポケモンと人間の言葉の区別がまったくつかない。

違わないのだ、どちらも。
夜月も紅蓮も話し方も声も違うし、
人間も一人ひとり違う。

オレはいままで姿かたちで見分けていたらしい。
自分の事をここまで知らなかった事に愕然(がくぜん)とする。

「紅蓮・・・・ッ!!」

応戦を、と紅蓮のボールに手を伸ばして放り投げる。

《だめだよぉ、お兄ちゃん。反則だから・・・ペナルティ》

ザッ

真後ろで風を切る音が聞こえて、
その次の瞬間には背中に激痛が走る。
そして、
振り返る間もなくさらに衝撃。

「カハッ・・・・ぐ、れ・・」

紅蓮、と言いかけて、体の力が全て抜けた。

意識が真っ黒に塗りつぶされかけて・・・・・・・・・・

【チッ・・】

紅蓮との『契約』の時に聞こえた声と、

『貴方の望み、私の願い。同じであって同じでない。
ならば・・・・・・・・・・しましょう』

どこか無機質で女性的な声を聞いた。

・・・・・この、声、ナナカマド、博士の研、究・・・所・・・・・で・・・・・・。

今度こそ本当にオレの意識は闇に沈んだ。


side???

・・・・・・・・・・・・起きる・・・・・。

『彼』、・・・・・いや違うね。

『・・・・・』だ。

教える事は簡単だけど、

君は知らなければならない。


君自身のことを。
君自身の力で。


ボクが手伝えるのは本当に最後だけ。
最後の鍵はボクが持っているから。































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2009.4.25  00:22:01    公開
2009.8.5  00:10:42    修正


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