生あるものの生きる世界
32.sideユウト×アヤ 喧嘩上等[イキトウゴウ]
著 : 森羅
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「おー、速いな、やっぱり」
周りの景色がめまぐるしく変わっていく。
オレたちが1日かかってたどり着いたクロガネシティがもう見えない。
クロガネゲートも当の昔に駆け抜けた。
理由は簡単。
紅蓮(ウィンディ)が居るからだ。
さすがは“でんせつポケモン”と言った所か。
速いのなんのって、オレたちが歩いて(走って)来たのが馬鹿らしくなるくらいだ。
そういや、紅蓮との契約のときに聞こえた声は、なんだったんだろうな。
紅蓮じゃなかったらしーし。
炭鉱に入ったときにも聞こえたんだよな、確か。
・・・・・・・うーん・・・・。
わかんねーなぁ。
《着いたのでありますな》
そうこう考えている間にあっという間にコトブキシティ到着。
・・・・・・おい、まだ10時ごろだぞ、多分。
クロガネシティを出たのが9時過ぎ。
・・・・・・・・・・ほんとにクロガネに行く時の苦労は一体なんだったんだ・・・?
泣きたくなるな、本気で。
「さんきゅ、悪かったな」
そう言って紅蓮をボールに入れる。
おぉ!そう言や初めてだぞ、ボールに入れるのって。
本当に入るもんなんだな。
つーか、『死の世界』と『生の世界』の科学力は違うのか?
よっぽど『死の世界(こっち)』の方が科学水準が高い気がするんだが・・・・・・。
《おら、さっさと行こーぜ。この町来た事あるじゃんかー》
「わぁーたよ。行きゃーいいんだろ。・・・・ま、まだ明るいしな・・・」
夜月の催促にオレはアヤがあの時歩いていった方に歩き出す。
そして、
ソノオ方向の町の出口付近に来た時、見覚えのある声が耳に届いてきた。
「なんなのよー!どきなさいよ、じゃまっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この声は・・・。
「・・・・夜月、やっぱり帰らねぇ?」
《えー!面白そうだろー》
・・・・・さっきの声は予想外。
夜月の返答は夜月(こいつ)の性格を考えれば予想内。
嬉しそうに走り出す夜月を止めれるヤツはいない。
=(イコール)オレは巻き込まれる羽目になるということ。
見上げた青空が歪(ゆが)むのは、気のせいだろうか?
sideアヤ
「どきなさいよ、じゃまっ!」
あたしの前に立ちふさがる『変なやつら』にあたしは思いっきり怒鳴りつける。
見た目あたしより余裕で年上だろうけど、あたしは尊敬に値する人しか敬語を使う気は無いわね。
これはあたしが今さっき決めたルール。
「久しぶりだな・・・、そちらはどうだ?」
「あれー!博士!・・・・何してるんですか?」
ナナカマド博士はあたしのルールに適応している。
というより、なんでこんなとこに博士が?
「うむ・・・。少し用があってな」
いつも持ち歩いているトランクにも似た鞄が今日はやけに重たそう。
「そうしたら、少しこいつらが寄ってきたのだ」
うっとおしそうに “こいつら”・・・つまりはギンガ団に目をやる博士。
確かにうっとおしい。
なら、やることは一つよねー。
あたしはそれを口にする。
「片しましょうか?」
「助かる」
短い会話。
でもこれでスピカたちが存分に暴れても許可つきだから気兼ねが要らない。
さー、ちゃっちゃと終わらせるわよ!
「スピカ」
《ぅふふ・・楽しそうね》
あたしたちの声は心なしか弾んでいる。
言葉の後ろ後ろに「♪」マークでもついてそう。
さあやるわよー!
そう張り切った瞬間にあたしのテンションをがた落ちさせる声が聞こえてきた。
「げっ・・・・やっぱりアヤかよ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あたしは声のした方向、ナナカマド博士の後ろ、コトブキシティの街中に目をやる。
やっぱり、というか、想像通りの人物が嫌そうな顔をしてこちらに向かってきた。
ジーンズにパーカー、パーカーの上には黒っぽい紺色のコート。
コートだけがえらく古いけどそれは博士のお下がりだから。
なんでこんなとこで会わなきゃなんないのよー!
その嫌悪感を伝えるべくあたしもとびっきり嫌そうな顔、
・・・というより本当に嫌な顔をしてやる。
「なんであんたがここにいるのよっ!」
「お前こそ、なんでここにいるんだよ?ソノオとやらに行くんじゃなかったのか?」
「行ってきたわよっ!それが何っ!?」
「別に。オレにはどうでもいいし。夜月が勝手に飛び出したんだよ」
あたしは怒りのボルテージがあがってどんどん口早になっていく。
対するユウトは本当にどうでもいいと言わんばかりに自らのペースを崩すことなく答える。
あたしにはその(あたしに比べたら)ゆっくりのしゃべり方がどうにも癪(しゃく)に障る。
ああもうっ!イライラするーーー!!!
「じゃあ、せっかくだからこいつら倒してよ。
たまには男らしいところ見せたらどうなの?」
「面倒くさい・・・」
ブラッキーの夜月がなにやら馬鹿(ユウト)の周りをピョンピョン跳ね回って訴えているけど、あたしに夜月の言葉はわからないのよねー。
それにしても「面倒くさい」って何よ!答えになってないし!
「あんたはかよわい女の子を守る事もできないの?」
「その“かよわい女の子”がどこにいるんだよ?」
・・・・あったま来た!ここにいるじゃないのっ!ここにっ!!
「・・・・・お前、さっき自分の事とかって思った?」
まさかな、でも言いたげな顔をするユウト。
な、なによぉー!
「・・・・・・お前は絶対“かよわく”ねぇよ。保障してやる。
つーか、その“かよわい”女の子は普通、そんな風に嬉しそうに戦闘態勢を取ったりしねぇ・・・」
あたしはふと自分の姿を見下ろしてみる。
足は肩幅程度に開いてスピカはとおの昔に戦闘態勢。
ちなみに手は握りこぶしを作っていた。
かまえは完全にポケモンバトル一秒前。
・・・・・・・・。
無駄とわかりつつも腕を下ろしてパタパタとチュニックのほこりを払ってみる。
恥ずかしさで顔が真っ赤になってると思う。多分だけど。
「「ワレワレを無視するな!」」
「誰?お前ら」
今気づいたようにギンガ団に目をやるユウト。
「変な格好・・・」と顔に書いているのがよくわかる。
そういえば、あたしたちはギンガ団を挟んで会話して(怒鳴りあって)いたんだっけ。
「天下のギンガ団だ!」
「あっそ・・・どうでもいいけどな」
団員の一人がご丁寧に教えてくれるのをユウトは鮮やかに切り捨てる。
本当にどうでもいいみたい。
・・・・あたしにとっても確かにどうでもいいけどね。
「お前がやるんだろ?どーぞ」
ひらひらとあたしに向かって手を振るユウト。
冗談じゃないわよ。
「あんたがやればいいじゃない!」
「お前が喧嘩売ったんだろ?ならお前がやればいいじゃねぇか」
「あんた、あたしと博士に恩があるでしょ!シンジ湖でのこと、忘れてないわよね?」
《ちなみに運んだのはアタシの“サイコキネシス”だからね、ユウトくん》
「お前、ムウマの・・スピカだったか?・・・へぇ、ありがとな」
《いえいえー、どういたしましてっ!》
「スピカ!いきなり会話に入ってこないでよっ!!!と言うよりさっさとやりなさいよ!」
「なんでお前に命令されなきゃなんねーんだよ!?」
「「無視するなッ!!!」」
「「うるさいっ!!!
うるせぇっ!!!」」
痺れを切らしたらしいギンガ団がダブルで言ってきたのにあたしたちは怒鳴りつけて黙らせる。
後(のち)のスピカいわく、
《2人ともすっごい剣幕だったわよ。ギンガ団の連中たじろいでたもの》とのこと。
「だいたい、あんたにソノオに来んなって言ったはずでしょ!なんで来てんのよ!!」
「クロガネには行ったんだよ!クロガネは行き止まり、コトブキの西は川じゃねーか!」
またもギンガ団を完全無視で討論を再開する。
ぎゃんぎゃん、ぎゃんぎゃん騒ぐ中で無視されたギンガ団の一人がぼそり、と相方に言う。
「おい、兄弟。おれたちの目的はナナカマド博士の資料、さっさといただかねぇか?」
「そうだな、ブラザー」
はんっ、しっかり聞こえてるわよ、ギンガ団!
だけどけっこうあっさりと鞄を奪われる博士。
もうッ!たまに出歩くとこうなんだからっ!!!
ちゃんと運動した方がいいわよ、博士。
ギンガ団が走り去ろうとしたのはユウト側、つまりコトブキシティ側。
ユウト本人はひょうひょうとした様子で立っている。
逃がしたら承知しないわよっ!!
べシャ!
ゴツン!
一瞬の内にギンガ団が視界から消えて代わりにいい音が町に響く。
ユウトの足がわずかに動いていて、ギンガ団の足を引っ掛けた事は一目瞭然。
団員の一人が持っていた鞄は綺麗な放射線を描いて空を飛び、
待機していた夜月がダイレクト・キャッチ。
取っ手の所をくわえて意気揚々とユウトに向かって歩き出す。
「さんきゅ、夜月」
夜月から鞄を受け取るユウト。
「足引っ掛けただけで見事にこけるって・・・。
馬鹿正直だな。小学生でも最近は引っ掛からねぇぜ?」
・・・・しょうがくせい・・・?
何それ?
知りたいけどあいつに聞くのは癪に障るので却下。
「うむむむむ!!仕方がない・・・。行け!ゴルバット!!」
「ドクケイル!」
ガバッ、と起き上がってボールを投げてくるギンガ団。
おでこのところが擦り切れて血がにじんでるわよ?
いったそー!!
コトブキシティは石畳(いしだたみ)になってるから、
こけたらそれなりに痛いわよね、絶対。
「さっさとしろよ?オレは手をださねぇから」
なぁんで、あんたに命令されなきゃなんないのよ!!
「それ、あんたに言われることじゃないし!」
「それならお前もオレに『やれ』って言えねぇな」
あたしの言葉にすぐさま答えるユウト。
・・・・・・ぅう・・・・。
その言葉は確かに正しいから、あたしに反論の余地はない。
「ほら、来たぞ」
「ッ知ってるわよ!!」
ギンガ団の出した二匹はあたし側とユウト側に分かれて攻撃を繰り出す。
ゴルバットはあたし側、ドクケイルはあいつ側に。
「お、オレの方にも来んのかよ?」
ざまあみろとあたしは笑ったわね。
「スピカ」
「はぁ・・・紅蓮」
声はほぼ同時。
「“サイコキネシス”!」
「“ほのおのキバ”」
「「なんだ、弱いじゃない
なんだ、弱いじゃねーか」」
後(のち)のスピカいわく
《息ぴったりじゃないの?アヤたち・・・》とのこと。
「どうするの?あんたたち。まだ戦う?」
「出来たら帰ってくれねぇか?
お前らが自分で向かってくるならかまわねぇけど、ポケモンは、悪くねぇのに怪我さすのってなんかやだし」
「「それとも」」
後のスピカいわく、
《アヤたちのほうが悪者みたいな凶悪顔だったわよ》とのこと。
「「ここであたしに喧嘩売る?
ここでオレと喧嘩するか?」」
「「上等じゃない
上等じゃねーか」」
あたしの顔に凶悪な感じの笑みが浮かぶのがわかった。
後のスピカいわく、
《完全に弱い者いじめになってたわね》とのこと。
ものすごい勢いで首を左右に振るギンガ団。
ブルンブルンと音が本当に聞こえてきそうね。
「「じゃあ、さっさと」」
「「どっか行け」」
今度はガクガクと縦に首を振るギンガ団。
そしてすぐにソノオ方面に向かって走り去った。
後のスピカいわく、
《アヤとユウトくんって本当はすごくタイプ似てるんじゃないの・・・?》とのこと。
「まったく、逃げ足だけは速いわね・・・」
あたしがそう言ってソノオタウンの方向に目をやっている間に、
「大丈夫ですか?あ、これ鞄です」
あの猫かぶり(ユウト)は博士に鞄を渡していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば。
あたしはソノオタウンで感じたやな感じを思い出す。
博士は多分当てにならない。
どこかにツテがあるわけでもない。
人を選んでる時間もない。
「・・・・あんた、ソノオに行くわよね?」
「・・・・・・え?・・・あぁ、他に行きようがねぇし」
あたしは内心でうなずく。
こいつを連れて行こう。
こいつ本人はともかく、ブラッキーはシンジ湖で実際結構強かったし、
さっき出したウィンディ(なんで持ってるかはこの際どうでもいい)も多分かなりいいポケモン。
こいつ本人もまあ、もしもの時は盾にでもなるでしょ。
うん!決定!
「あんた、あたしと一緒に行ってよ。ソノオタウン、嫌な感じがするのよ」
しばしの沈黙。
「・・・え・・・・・、なんか、いやだ」
「なんでよーーーー!!」
「なんか、盾にでもされそうだから」
なんで変なとこでいらん勘が働くのよ!
あたしは勤めて明るく、優しく、笑顔で言う。
「そんなわけないじゃないの〜」
「・・・・・やっぱ、そう言う事を考えてたか・・・」
あたしの笑顔が凍りつく。
しかたがないわね・・・。
こうなれば、最後の手段!
「良いから行くのよ!じゃあ、博士また!!」
「え!?・・・あっ!オイ!!ちょ、ちょっと待てッーーーー!!」
あたしの全腕力をこめてユウトの腕を握り無理やり引っ張る。
「いーやーだー!!」
と言う絶叫を後ろに聞きながらあたしはさらに手に力をこめてソノオ方面に走ることに集中した。
sideアクア団
「あら、久しぶりの外ね。よかったわ」
明るい光が目を焼く。
彼女達は各々(おのおの)の水ポケモンにつかまり海の上から顔を出し、空気を肺に取り込む。
炭鉱の一番奥に居たのが幸いした、と彼女は一人思った。
海の下まで掘り進んだクロガネ炭鉱。
少し薄い所をつつけば、栓を抜かれた水のように海水が炭鉱内に入り込んでくる。
炭鉱から逃げ出すために彼女達は炭鉱に穴を開けた。
炭鉱の入り口まで戻ると言う方法ももちろんあったが、あれだけ派手に動けば待ち伏せがあることは確実。一応ながらジムリーダーもいる。
そして、なにより『水』は彼女達にとってホームグラウンドだったのだ。
もしも、あのジムリーダーが追ってきてもこちらにとっては有利な戦場。
炭鉱はいまごろ水でひどいことになっているかもしれないが、
そんなことは彼女達にとってはどうでもいい事でしかない。
「さってっと、電話電話」
弾むような声で防水加工をしてあるポケギアを取り出す。
ジョウト地方の独占的な商品だが、ホウエンから逃げ出す際に彼女達はジョウト地方も通っている。
その際に手に入れた代物だった。
コールは二回。
すぐに電話の相手は出たらしく彼女はさらに声を弾ませる。
「もしもし・・・・えぇ・・・・・。
炭鉱は水浸しになってしまったんですけれども、・・・・・はい。
・・・・・とても面白いものを見つけたんですよ、きっとポケモンよりも・・・・」
短い会話を終えると『切』のボタンを押す。
『紅蓮!』
そう叫んだ赤髪の少年が彼女の脳内に浮かび上がっていた。
「まだこれからよ。全てはね。・・・・・・第二ラウンドをはじめましょう」
彼女はそう言って小さく微笑みを浮かべた。
2009.4.14 21:08:58 公開
2009.4.19 23:25:17 修正
■ コメント (2)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.4.19 23:38 - 森羅 (tokeisou) |
どうもです^^久しぶりの感想ですね。 いや〜、ゆーととアヤのコンビネーション&息は、ばっちりですね(笑 そして、ギンガ団を放置&いじめは、最高でした〜(何で? しかも、ほぼ秒殺と言う^^; 元アクア団何やっているんですか……炭鉱に水を流し込むって……。 それと、アクア団の目的は何だったのでしょうかね?そして、ゆーとが狙われて(?)しまいましたね…。 と、ここら辺で失礼します。(他の感想ができなくすみませんorz 09.4.19 19:45 - 不明(削除済) (45syost) |
未完のままで長らく放置してしまい申し訳ありませんでしたm(−−)m
なにはともあれ、
やっぱり暴走しましたねゆーと&アヤのコンビは。
こいつらがダブルバトルしたらすごい事すごい事・・・・・。
手をつけられないですよ、まったく。(誰のせいやねん)
これでコンビネーション覚えたらすさまじいですね(寒気)
本当はギンガ団員って結構強いんじゃないかなー(実際、大人な分、ポケモン歴が長いはずだから)なんて思いながら書いたはずなのになぜか、瞬殺・・・・(汗)
おっかしいなぁ〜(誰のせいだ、誰の・・・)
あぁあぁぁああぁぁ!!!!!
スミマセン!!本当にスミマセン!!
気がつかなかった・・・・。
書こうと思ってアクア団がなんで炭鉱に穴あけたのか書いてない!!!(不味いじゃん)
すみません!本当にすみませんっ!!!!
編集しなおしましたので読んでくださいm(−−)m
ではでは、失礼を!!