生あるものの生きる世界
29.sideユウト 経緯[イキサツ]
著 : 森羅
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「はぁ・・・・」
何でだよ?
何でこんな事に?
炭鉱の入り口でオレの苦悩も知らずにベルトコンベアーが動き続ける。
《何景気悪そうな顔してんだよー!シャキッとしろ!シャキッと!》
嬉しそうにオレのまわりを飛び跳ねているブラッキーにオレは殺意を覚える。
なんでオレがこんなに苦悩する羽目になっているのか、
それは数十分前にさかのぼる。
数十分前
「は?」
それがオレの率直な気持ちだった。
目の前でニコニコ笑顔を向けるヒョウタがとんでもない事を言い出したのだ。
「ぼくとバトルしない?」
もう一度同じことを繰り返すヒョウタ。
それを聞いて、オレは自分が聞き間違いをしていなかった事を確認する。
・・・・・・・・・・・・は?
・・・・・いやいや、なんで突然そんなこと言い出す?
順序ってモンがあるだろ?
順序が何かは知らねぇが・・・・。
なんで突然お前とバトルしなけりゃいけねぇんだよ?
面倒くさい。
オレはゲームの主人公じゃねーの。
つーか、アレですらジムリーダーを倒すのめんどかったし。
ほっとけよ、って感じで。
と言う事で、
「やだ」
と即答する。
「えー」と言うような顔をするヒョウタ。
プラス夜月(よづき)。
《やろーぜ、なぁなぁ〜。楽しいってー》
夜月がピョンピョン跳ね回りながら訴える。
オレは無視。そして、とどめの一言。
「めんどいから、しない」
ヒョウタと夜月の「えー」の二重奏がさらに音量を増す。
・・・うるさい。
オレは耳をふさいでそっぽを向く。
「ぼくに勝ったら賞金が出るよ」
・・・・・・・・。
オレはくるりとそちらを向きなおす。
ニコニコって感じよりニヤッといった感じで笑うヒョウタ。
「やる?」
・・・・・・・・やろかな・・・。
オレの頭の中で3500円がぐるぐると円を描いて羽が生えて飛んでいく。
無くなるのは時間の問題。
「2対2のダブルバトル。2匹とも戦闘不能になったら終了、どう?」
《やるって!やるっ!》
ヒョウタ言葉に夜月が即答。お前ってそういうやつだよな・・。
オレはため息一つ。
金が無いのは死活問題。
「・・・やるよ。それでいいんだろ?」
「やったー!!」と飛び上がる一人と一匹。
以上回想終了。
そういうわけでオレはここにいる。
ジムがあるんだからそこですりゃいいのになぜわざわざ炭鉱前で・・・。
ジムの存在意味はないかもしれない。
あー、金のためとは言え面倒くさい。
オレは透けるような青空を仰いだ。
そして、オレの面倒くさい、と言う思いとは裏腹にバトル開始の声が響く。
ヒョウタが高らかに告げる。
「さぁ、はじめよう」
2009.4.9 22:46:05 公開
2009.4.9 22:51:39 修正
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