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燐がいたのは、『死の世界』
ぼくがいるのは『生の世界』

『世界が矛盾を生まないため』

燐の言葉が反芻（はんすう）するけど、
それなら説明のつかないところももちろんある。

なんで、燐はこちらの世界に居続ける事ができるか、ってこと。
彼女の存在は異質以外何者でもない。
凪の姿が見当たらないことも気になる。

それにもう一つ。
なんでぼくらの世界の方の時間は止まってて、
もう一つのぼくらの行った世界の方は普通に時が流れていたのか。

世界が矛盾を生まないように作用するなら、
あっちの世界も時が止まるはず。
ぼくの存在が異質なのだから。

「ああ！もう・・・全然わかんないよ〜！」

自室のイスの背もたれをぎしぎし言わせながら、ぼくは盛大にぶちまける。

「だってさ、絶対おかしいって！
燐の言う事が嘘だなんて一言も言わないけど、矛盾が出来すぎる」
《わたしに言われても・・・》
「・・・ごめん」

ほとんど八つ当たり状態になってしまっていた。

最初の仮説が違うのかもしれない・・・。
燐の話してくれた昔話、あれは実は違うのかも。

あ、でもそれならなんでパラレルワールドとこの世界が繋がる？

わからない。
それは神のみぞ知る理（ことわり）。
知れば必ず後悔する。
知らない方が幸せなのかもしれない。

わからないなら、放って置けばいい。
そのはずなんだけど、

「探さなきゃいけない気がするんだよね、なぜか」

燐と言う存在が近くに居るからかもしれない。

それとも、

自分がとっくに片足どころか、肩までどっぷり突っ込んでいた事に気づいていたからか。

ああ、そういえば。

あの湖で寒中水泳をしたときに、一瞬よぎった『約束』と言う言葉。

あれは一体何なのかな？


sideユウト

うーん、ベットって本当にありがたいもんだ。

ヒョウタの厚意で昨日もオレは炭鉱の仮眠所に泊めてもらえた。
いや、まぁ、あれだけ頑張ったんだからそれなりに『報酬』をもらっても罰は当たらないだろう。

そう言や、

「夢、か・・・？」

いや、夢なんだろうが、やけにリアルだったな。

《何がだ〜？》
「夜月！？自分で起きたのか！！
今日は雨だなこりゃ」

あぁ、もったいない。外には青空が広がっていると言うのに！

《・・・死にたいか？》
「残念だが、まだ死にたくねぇな」

つーか、オレが死んだらお前も死ぬんじゃねぇの・・？
出かかった言葉を飲み込む。

《で、どんな夢見たんだ？》
「お前に話さないといけないのか？」
《悪夢は日が昇る前に話せば本当にはならないそーだ》

へー、そんなもんか。
だが、

「悪夢じゃねーよ」

そう言って笑う。
そうさ、悪夢なんかじゃねぇ。

ただ、自分の夢を見ただけ。

病室に居る、『オレ』の夢を。