生あるものの生きる世界
22.sideユウト 厄介事[テツダイ]
著 : 森羅
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何かが落ちたような音の後、ヒソヒソと話し声も聞こえてくる。
《人の足音だ。・・・5,6人と言った所》
「炭鉱で働いている人か・・・?」
「いいや」
夜月が正確な人数を教えてくれる。
オレの呟きにはヒョウタの即答。
・・・なんで、そんなに断言できる?
「ぼくがここに来た目的がさっきの音らしいからね・・・」
目的?
「今日はこんな奥の方の炭鉱には誰もいないはずだよ・・・ぼくが入らないように言ったから」
「なんでだよ?」
「最近、妙に事故が多かったんだ。しかも事故の現場は決まってこの辺りにのみ。
何もないと思わない方がおかしいよ」
なるほどな。
「誰かがかかわっている、と?」
「そう言うこと!それを調べる、もしくは追い出すのが今回のぼくの目的」
あぁ、そうか。じゃあ勝手に頑張ってくれ。
オレの目的は果たしたし、そろそろモグラの生態研究にも飽きた頃だ。
オレは回れ右をしてヒョウタに背を向ける。
ぐっ。
「グェ」
服の襟を掴まれてオレは喉を絞められる。
犯人はヒョウタだ。
「どこ行くの?」
「どこって・・帰んだよっ!」
そんなに変な答えだったか?
ヒョウタはかなり不思議そうにこちらを見つめる。
「どうやって帰るのさ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「道を覚えてるの?言っとくけど、あちらこちらに横道、行き止まりと盛りだくさんだよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「迷っても知らないからね。ぼくは、道を知ってるけど」
「ぼくは」の「は」に特に力を入れてヒョウタは言う。
つまりは、何か。
オレに手伝え、とそういうわけか。
「道がわからないなら手伝ってよ」
・・・・く、くそぉ・・・・。
オレは『確実だが、めんどくさい付録のついた道』と
『確実に迷う、とわかっているおまけの無い道』をてんびんにかける。
『確実に帰れる道』にてんびんは大きく傾く。
がっくりと肩を落としながらオレは半ばヤケになって答えた。
「手伝えばいいんだろ、手伝えば!」
「ご協力感謝!」
《ユウトッ!!》
嬉しそうに笑うヒョウタ。
その声とほぼ同時に響く夜月の声。
そして、
「あら、せっかく誰もいなくなったと思ったのに・・・迷子かしらね?」
バッ、と声の方向に体ごと向ける。
水色のバンダナを頭に巻いた女性。
マグマ団じゃない、こいつは・・・
「ア、アクア団・・・・」
かろうじて覚えていた名前をつぶやく。
炭鉱内に反響して小さいはずの声は大きく響く。
「あら、知っているの?懐かしい名前だわ」
『マグマ団とアクア団は今はギンガ団の一部になっている』
ナナカマド博士の言葉がよみがえる。
いつの間にやら辺りを囲まれていた。
夜月の言葉通り総勢6人、しかもしっかり戦闘準備をしている。
「マズいんじゃねぇの・・・?これは」
「うん。芳しく(かんばしく)ないね・・」
冷や汗が頬を伝う。
夜月はとっくに戦闘態勢に入っている。
「夜月・・・・」
《あぁ》
「仕方が無いね・・・。ゴローン!」
ヒョウタは先程とは違う一匹。
「逆らうの?馬鹿な子たち・・・マリルリ!」
相手の女性からは水色のウサギのようなポケモンが出てくる。
周りの人たちもそれぞれポケモンを取り出す。
ざっと見たところ水タイプが圧倒的に多い。
ところどころに尻尾がくるくるに巻かれている猫のようなポケモンと
ズバット、その進化系ゴルバット・・だったか?が見られる。
緊張がその場を硬直させた、そのときに。
うおおおおおおーん!
唐突にさっきのウィンディの声。
マリルリのトレーナーが「チッ!」と小さく舌打ちをする声が聞こえた。
オレはその舌打ちを不思議に思う。
「あのウィンディは貴方達のですか?」
ヒョウタが気を抜かずに尋ねる。
それはオレも気になる所だ。
「私達があんな炎タイプ使うわけが無いでしょう?
あれは私達よりさきに来ていたマグマ団のやつらのポケモンだったのよ。
何かのはずみで進化しちゃったらしくてね・・・・。
それで手がつけられなくなって逃げ出してきたってわけ。情けない話よね・・。
だいたいマグマのやつらが岩タイプだらけのこんな所に来ても役立たずなのよ」
ため息と共に答える女性。
その答えは余裕からか、親切心からか。
《ユウト・・・。もうすぐ来るぞ》
夜月の声にばれないように頷く。
さっきから音はどんどん近づいてきている。
夜月の耳の良さははさっきの人数のときに証明済みだ。
《3・・・・2・・1・・避けろッ!》
夜月のカウントダウンにヒョウタに突っ込むようにしてヒョウタごとを端による。
一緒にアクア団のヤツを巻き込んでしまったが、バチは当たらないだろう。
グルルルルル・・・。
牙をむき出しているウィンディ。
どうどうとした様子はさっきと変わることなかったが、
殺気は先程よりかなり上がっているようだった。
やっぱり、自力で道を探したらよかった・・・・。
『後悔先たたず』
一つのことわざが頭に浮かんでは消えていった。
2009.4.2 00:14:10 公開
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.4.4 01:46 - 森羅 (tokeisou) |
おお!アクア団、マグマ団でしたか! そしてウィンディに勝手に進化・・・まぁ炎の石でもふんづけたのでしょうか?それは・・・運がいいというか悪いというか・・・。 そのウィンディの持ち主は・・・特しましたね! さて、ユウト君の決断は正しかったのか!? 頑張ってくださいね^^ 09.4.3 22:34 - 不明(削除済) (0024) |
45さん、コメントありがとうございます!! 返事が遅くなってしまい申し訳ありません。 アクア・マグマ・ギンガの三つ巴は書いていて楽しいです。 赤と青と黄の色の三原色は「黒」を、 逆に光の三原色は「白」をそれぞれ生み出します。 かれらの三色は混ざり合うのか、拒絶しあうのか。 お楽しみですね。 夜月vsウィンディになるのですか?(いやいや、聞くなよ) それは読んでのお楽しみですね。 期待に添えなかったらすみませんm(−−)m 09.4.3 22:05 - 森羅 (tokeisou) |
KaZuKiさん、コメントありがとうございます! 返事が遅くなって真にすみません。 ハイ、アクア・マグマ関係です。 ぶちゃけた話ギンガ団より好きだったり(笑) 扱えなかったから捨てた、というより手のつけようがなくなった、といいますか、これがほんとの『焼け石に水』ですねぇ。(意味不明) というよりKaZuKiさんたとえが面白いですねー!! チーターにシベリアトラですか・・・。 (その動物は一体どこから出てきたんですか・・・?) さてはて、3つも打開策が浮かんだのでしたら、そのうち一つが大当たりですよ、確実に。 ゆーとには頑張っていただきましょう(他人事) では失礼を。 09.4.3 21:59 - 森羅 (tokeisou) |
どうもです^^ アクア団と、マグマ団が登場しましたね。聞いた感じだと、ギンガ団の中で、派閥みたいなのが存在しているみたいですね。 下手したら、もともとのギンガ団VSアクア団VSマグマ団的なことに…? ガーディ→ウィンディになったと言う事は、何かを彫っている最中に、炎の石が落ちていて…進化!て事で、手が付けられなくなり、捨てたのかな…? 進化したら、暴れられたと言う事は、マグマ団もう少し腕を^^; 次回は、夜月VSウィンディでしょうか? スリルなバトルが展開される!?期待しています^^ では。 09.4.2 17:31 - 不明(削除済) (45syost) |
やはり、アクマグ関係でしたか。 ウインディはガーディに『ほのおのいし』を使えば、簡単に進化しますから石さえあれば簡単に進化できますからねぇ。 しかつ扱えなくなったから捨てたとはなんという情けなさ。 ある意味現代のペット問題と共通の問題性を感じますね。 ウインディを手放すなどチーターより速く、シベリアトラより巨大な大型肉食獣を手放すような物でしょうに……。 とりあえずこの状況を打破するなら3つ考えられますね。 ユウト君……というよりあの場がどう動くか次第でしょうが……。 では、次回も期待させていただきます♪ 09.4.2 16:33 - 不明(削除済) (fantasic) |
そうですね、
元おやのマグマ団は損をしたような、得をしたような・・・・。
まぁ、それは本人のみぞ知る、見たいな感じで(笑)
ゆーとの判断は大概は後悔します。
そんなもんです。
人間、そんなもんですから。(何その諦め目線)
二者択一といっても選ばなかった方の道がよかったとは限りません。もっと悪かったかもしれませんしね。
そういうわけで、(どういうわけで?)ユウトには頑張っていただきましょう!ではしつれいを。