生あるものの生きる世界
21.sideユウト 暗闇[ヒョウタ]
著 : 森羅
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《「はぁ・・・・」》
同時に聞こえる、何度目かのため息。
夜月の放つ淡い光とところどころに設置されたランプの明かり以外辺りを照らすものは無い。
当の夜月(よづき)はオレの肩に乗っかっている。
《いやだー!帰るー!足が痛いー!》
とぎゃんぎゃん騒ぐので乗っけたのだが、
正直、重い。
「降りる気ない?」
《ない》
即答。
オレはぐうの音もでない。
この炭鉱、ポケモンの声が少ない。
人の手が入ってるからだろうか・・・・・・。
住処を追われたポケモンたちは一体どこに消えたのだろうか。
なんとも思えない感情。
【黒い・・・で・・・・・・・・・・・・・・】
「なんだっ!!」
《どうした?》
「さっき声が聞こえなかったか?」
《いいや。俺の方が耳いいぞ。何も聞こえなかった》
・・・・・・・・・・・・・。
気のせいか・・・・・・・?
なんとなく釈然(しゃくぜん)としないがとりあえず無視する。
今は『ヒョウタ』を探さねぇと。
ぅぉおおおおーーん。
「・・・・さっきのも気のせいだよな・・?」
オレの顔が引きつっているのがわかる。
《・・・残念ながら、俺にも聞こえた・・》
夜月の声も引きつっている。
・・・・・・何の声だ?遠吠えは『言葉』ではないので意味はわからない。
ひょい、と夜月が肩から飛び降りる。着地音はほとんどない。
《かまえろ。・・・・来るぞ》
夜月の声が初めて会ったと同じ色を帯びる。
ダッダッダッダ・・・・・。
「近づいてる・・?」
《あぁ。・・・ッ避けろ!》
夜月に言われるがままに炭鉱の端に避ける。
ドドドドドド・・・・。
何かがオレたちの横を通り過ぎた。
四足の大きな生き物。
炭鉱に居そうな岩タイプではないだろう。
この地方には居るのだろうか、四足(よつあし)の岩タイプが。
《逃げるぞ!でかい!》
「あ、・・あぁ!」
オレたちは走り出す。
マズッたのはオレたちが逃げた方向は炭鉱のさらに奥へ進む道だった、という事だ。
どこでUターンしてきたのか足音の主はまた近づいてくる。
「ッ!夜月!」
《仕方ない、か・・・》
夜月は炭鉱の道のど真ん中に立ちふさがる。
牙をむき、夜月が放つ光が強まったよう感じる。
オレはシンジ湖のとき以外でこの光景を見ただろうか?
どうしてこんなにも、懐かしいと感じる・・・?
「“かみつく”!」
口が勝手について出た。
いや、確かに覚えているだろうが。
《唐突に指示すんなよなッ!》
文句を言いながらもどこか嬉しそうな夜月の声。
戦闘狂とはこいつの為にあるような言葉だ。
十分に相手を引きつけてからわずかな明かりを頼りに攻撃を繰り出そうとした、が。
ゴゴゴゴゴォー!
紅蓮の炎が辺りを一瞬照らし出す。
夜月はとんぼがえりのように取って返してきた。
その炎に照らし出された『相手』。
朱色の体に黒のラインが入っていて、ところどころ白い。
ふさふさの体毛。
黒い目は炎で赤みを帯びる。
どうどうとした姿は威厳に満ちていた。
見覚えがあるぞ・・・、ちょっと待て。知ってる、知ってるんだが。
えぇっと、
「危ない!ズガイドス、“とっしん”」
ドゴッ!
朱色のポケモンの横っ腹に『何か』が攻撃を食らわす。
突然の攻撃に顔をゆがめるポケモン。
「こっち!」
誰かが服を引っ張り、そのまま走り出す。
服をつかまれているのでオレも走るしかない。
と言うより、かなり走りにくいんだが・・・・。
《おい!置いてくな!》
夜月が急いで追いかけてくる。
いや、好きで置いていってるんじゃねぇって。
色々な道を右に左にと駆け抜ける。
道を覚えるのは不可能に近い。
そして、唐突にその誰かが止まった。
「ここまで来たら大丈夫だよ。・・・ところでどうしてここに?」
パチッ、と明かりが付く。
闇に目が慣れていたのでまぶしい。
どうやら光源はオレを引っ張ってきた人物のヘルメットに付いたライトらしい。
やっと光に目がなれた所でオレは答える。
「ヒョウタって人を探しに来たんだが・・・」
照らし出された人物は少年。
オレとたいして年も変わらないだろうから口調もいつもの通りだ。
相手はニコニコ笑って言う。
「ぼくがヒョウタだよ。きみはクロガネゲートの入り口で寝てた人だよね?
なんだか、きみの顔、覚えられないや。ちょっと髪が赤いからそうだよね?」
存在感が薄いのだから顔も覚えにくいだろう。
だが、・・・・それはちょっとひどくないか?
「・・・そうですが、なにか?」
少しけんか腰になったのは勘弁していただきたい。
やっぱりね、とヒョウタはつぶやき、聞いてくる。
「で、ぼくに何の用?」
オレは無言で届け物を渡す。
「あぁ、お弁当かー!ありがとう。そうか、もうお昼なんだ・・・」
あぁ、どーせオレは昼まで寝てたよ。悪かったな。
「ところでさ。さっきのウィンディは、どこから・・・?」
一気に口調が真剣になる。
・・・そうだ、そうだ。さっきのポケモンの名前はウィンディだ。
やっと思い出した。
つか、なんでそんな強力なポケモンが出て来るんだよ?
ドスン!
何かが落ちる音、炭鉱の壁に反響して大きく響く。
唐突な音にオレたちはみんな、音のした方を見る。
オレたちが今居るところよりすこし、奥。
人がいるとしか思えない音がした。
2009.3.30 21:56:48 公開
2009.3.31 21:08:28 修正
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.4.3 21:51 - 森羅 (tokeisou) |
ここでウィンディがッ!?夜月の《おい!置いてくな!》に若干吹いてたり。 ヒョウタがこのタイミングで出てくるとは・・・読めませんでした・・・orz そしてあの「ドスン」の音の主は誰なのか!気になりますね^^ 続きもがんばってください!(^ー^)b! 09.4.2 12:51 - 不明(削除済) (0024) |
コメントありがとうございます!KaZuKiさん。 未完のまま投稿してしまった事を再度お詫びします。 ゆーとの存在ですか・・・。伏線は複数張ってありますので、最後には一つに繋がるハズですよ。 マグマ団、アクア団の残党達はギンガ団のしたっぱたちより強いという設定です。(一応、九州から北海道まで警察の目をかいくぐって来た人たちですから・・) 短いですが、失礼をさせていただきます。 09.4.1 22:55 - 森羅 (tokeisou) |
45さん、コメントありがとうございます! 未完のまま投稿をしてしまいすみませんでした。 どうしても眠かったんですよー(泣) とまぁ、言い訳はここまでにして、 vsヒョウタをするのも面白そうかなぁーと思ったんですが、 とりあえずはこうすることにしました。(どうすることに?) ゆーとがヒョウタに対して憤りを感じつつ反論できないのは、やはり、自分が『存在しない存在』ですからね・・・。 文句を言いたくても言える立場ではないんですよ。図星ですから。 ウィンディについては次にわかりますよ。 ではでは、失礼をー! 09.4.1 22:47 - 森羅 (tokeisou) |
さぁ、ヒョウタ登場ですね。 たしか、最初の説明でアクア団とマグマ団の残党一部がギンガ団に吸収合併されたのでしたね……ということはマグマ団の差し金でしょうか? それとも、ユウトの存在そのものに関わるなにかか……? 次は注目の話になりそうですね、では頑張ってください! 09.4.1 12:16 - 不明(削除済) (fantasic) |
完成したようなので、感想を^^ ゆーとVSヒョウタ…ではなく、ゆーとが少し怒ってしまいましたね…。 そして、存在感の薄さを認めてしまうって…^^; それにしても、何故、ウィンディが居たのでしょうか? それに、人が居るような声って・・・。 次回作は、忙しそうですね。期待します^^ では、失礼します。 09.3.31 21:46 - 不明(削除済) (45syost) |
ウィンディですね・・・。確かに不釣合いなポケモンです(自分で言うな!)まず第一にゲームでは出てきませんしね(汗)
夜月のあの言葉でウケましたか。
それはそれで喜ばしいです。ありがとうございます。
では短いですが失礼を。