生あるものの生きる世界
16.side ユウト コトブキシティ[ヘンジン]
著 : 森羅
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アヤが立ち去るのをぼーっと見送ってからオレは立ち上がって服についたほこりを払う。
そーいや、この服はどこから出てきたんだか・・・。
長ズボンのジーパンにスニーカー、そして
寒い地域だと言うのになぜか上は七分までしかないパーカー。
さすがに寒そうだから、と博士に上着をもらえたことは心から感謝しよう。
まったくわけのわからないことばかりだ。
《ユウト!早くしろ!!いつまでそこにいるつもりだ?》
「夜月(よづき)・・・・」
少し回復したとはいえどもまだへとへとのオレになんてことを言いやがる?
逆に元気一杯を絵に描いたようなブラッキーはオレの周りをぴょんぴょん跳ね回っている。
・・・・あぁ、頼むからもう少し休憩させてくれ・・・・。
オレの悲痛な願いが音を立てて崩れ落ちていくのがわかる。
「わかったよ・・・。わあったから、落ち着け」
オレはそうとだけ言って歩き出す。
夜月も跳ね回るのをやめてオレの傍を歩きだした。
町に入って少し歩いた所でオレはふとこう言った。
「へぇ、本当に町なんだな・・・・」
それは率直な感想だった。
人の往来、店、家、無駄に大きなテレビを設置した建物・・・・・。
オレにとって『生きている人』のいる場所となんら変わりが無い。
どちらも『生の世界』だと言ったあの“管理人”の言葉が妙にリアリティを持って襲ってくる。
《当然だろう?》
「ほっとけ」
小馬鹿にしたような夜月の言葉にオレは言い返す。
《・・・・ユウト》
「うん?」
《アレは何だ?》
「・・・どれだよ?・・・・・は?」
夜月が言った言葉の意味がわかった。
どう見ても他とは違うどこかそわそわとした様子の男が立っていた。
しかも、昔の刑事ドラマでやっていそうな電柱の影に隠れる、と言う事をやっているらしい。
バレバレなんだが、本人はいたって真剣のようだ。
《何をしているのか気にならんか?》
夜月の一言でこいつの性格がわかった。
興味のわいた事には必ず頭をつっこむ。しかも、オレを巻き込むつもりだ、絶対。
なので、巻き込まれないうちにこう答える。
「まったく気にならない」
《俺が気になるんだ》
「知らねぇよ、そんなこと」
《そんなこと言うなよ、パートナーだろ?
・・・昨日の朝のことチャラにしてやるからさぁ》
「お前に蹴られたことも忘れてないぞ」
《あれはせーとー防衛だっ!》
「あ、・・おい!待てっ!!」
夜月はすさまじいスピードで男の元に走り出す。
オレは捕まえようとしたが、残念ながらオレは短距離走者(スプリンクラー)じゃない。
と言う事で、夜月に追いついた時には男は目の前。
オレは急ブレーキを掛けたが間に合わなかった。
ボンッ!
「「わあぁ!!」」
二つの「わあぁ」の声。
オレは見事にその男に突っ込んでいた。
地面にぶつかる、と思ったところで誰かに受け止められる。
「大丈夫か?」
オレは受け止めてくれた人を見上げる。
逆光で見にくいが、オレが立ち上がるとちゃんと顔が見えた。
青年、と言っていいのだろうか?
確か青年って言うのは35歳くらいまではいけたハズだ。
なら青年でいけるだろう。
「す、すみません!」
反射的にオレは謝る。
どんな理由であれオレが突っ込んだ事にはかわりはない。
「いや、かまわない。・・・・大丈夫か?」
「はい、すみませんでした」
・・・夜月の視線が痛い。
《猫かぶり》とつぶやく声が聞こえてきた。
なのでオレは目を男の方に向けたまま勘で夜月の足を踏む。
《・・・・・ッ!!!》
悲鳴にならない悲鳴。
オレの足はちゃんと夜月の足を捉えていたようだ。
「どうかしたのか?キミのブラッキー?」
「いーえ、なんにもないですよ。
・・・・ところで、何をしているんですか?」
オレは本題に入る。
夜月の目が好奇の色を持っていることに気づいているのはオレだけだろうか?
「わたしは国際警察!コードネームは『ハンサム』!!
いやね、マグマ団、アクア団を追ってきたら、ここについたんだよ。
キミは何か怪しい人を見かけなかったかい?」
・・・・・・・・・・。
国際警察、ねぇ・・・。
そんなに自分の仕事についてべらべら話してしまっていいのだろうか・・・?
そして、言ってやるべきだろうか?
一番怪しいのは自称『ハンサム』(お前)だ、って。
「・・・見かけませんが」
作り笑いにしては上出来だったと思う。
「そうか!ありがとう!そして、わたしを見ても話しかけないでくれ!
すまないね。色々忙しい事の方が多いから」
そういって立ち去っていく『ハンサム』
人を呆然と見送ったのはこれで二人目だった。
2009.3.26 00:09:44 公開
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
12.7.15 03:01 - 森羅 (tokeisou) |
コトブキシティと 変人を結びつけると ハンサムだろ ということで予想していましたが 予想的中 ハンサム登場しましたね プラチナで初登場でしたが ゲームではいてもいなくてもよかったような・・・ という扱いですよね キャラなど好きなのですが 私はダイパとプラチナをやったことがあるので 会話などをよく覚えていますよ わざと質問にいいえと答えたり・・・・・・ 12.7.13 23:01 - 不明(削除済) (wert) |
わざわざ教えてくださりありがとうございます!! 短いですが、とりあえずは失礼を。 09.3.27 11:10 - 森羅 (tokeisou) |
失礼、ちょっと間違えです。 27歳はハンサムではなくてギンガ団ボスアカギですね。 ハンサムは年齢不詳……のはずです。 間違えごめんなさい。 09.3.27 10:47 - 不明(削除済) (fantasic) |
KaZuKiさん、コメントまことにありがとうございます!! そうですね・・、 DSもちゃっかりしているケイヤとは違ってゆーとの方はゲームと自分が今いる世界の相違点に気づいていないですから。 あまり違和感はないかもしれません。 逆に『現実世界』とケイヤが思っている世界にゲームの生き物が出てきた方が違和感バリバリでしょうね・・・。 順応してくれたケイヤに感謝! ハンサムは27歳だったんですか・・・。知りませんでした(汗) 30歳くらいじゃないかなーとかなり失礼な事を思ってました・・。 ではでは、コメントありがとうございましたー! 09.3.26 22:49 - 森羅 (tokeisou) |
どうも、またコメントさせていただきます。 今度はハンサム登場ですね、確かハンサムは27歳だったような気が……もう青年ともおにいさんとも呼べないような……。 saidケイヤは一話ですぐさまsaidユウトに戻ってきましたね。 微妙に何かがすれ違った世界、これはケイヤ君から見ればきっと違和感も感じそうですね。 ゲームでもなく、アニメでもない特殊な状況はまさに特殊、といってもDS世代のポケモンをプレイしていないユウト君には違和感はさほどではないでしょうが。 さて、次回は何をするのでしょうか? それではまた次の話も期待して待っております♪ 09.3.26 19:09 - 不明(削除済) (fantasic) |
まぁ、コトブキシティの変人と言えば彼になるでしょうね。
ハンサムさんです。確かにいてもいなくても良いのかもしれませんが、ハンサムのキャラは面白いので結構僕は好みですよ。
それでは失礼を。