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生あるものの生きる世界
148.sideケイヤ 駆引き[タクティクス]
著 : 森羅
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214番道路。
「まさかシロナに会えるなんてねー。ハクタイぶりじゃん」
「本当に久しぶりね。元気にして・・・聞くだけ野暮のようね」
まね、とぼくはシロナに笑顔で頷き隣を歩く燐の頭をふわふわと撫でる。風が吹いてクサや木の葉を揺らした。うーん、気持ちいいなぁ。
凪に頼んでとりあえずゆーととアヤちゃんから離れようと空を飛ぶこと数時間。ちゃんともこもこになるくらい厚着してきたんだけど、それでもやっぱりとんでもなく寒かった。
シロナと再会したのはついさっき。空を飛んでいたら後姿を発見、そして合流にいたる。
最初、ぼくはトバリに行こうと思ってたんけどそれじゃゆーとたちと鉢合わせしてしまう確率が高くなってしまう。さぁ、どうしようかと困っていたら214番道路でシロナを見つけたってわけ。行く当てがないぼくはシロナと並んで歩きながら尋ねた。
「シロナ、どこ行くの?」
「え?うーんと、・・・ナギサよ。今停電起こってるでしょ。それでデンジ・・・知ってる?ナギサのジムリーダーなのだけれど」
話を切ってぼくの方に目をやるシロナにぼくはこっくりと頷いた。そう、とシロナは安心したように軽く頷いて言葉を続ける。
「そのデンジが停電の修理してるんだけど、上手くいかないらしくて。折角だから様子を見に行こうと思ったのよ」
「ふーん。チャンピオンって大変なんだね、シロナ」
何気ないぼくの一言に一瞬シロナはぎょっとなるけどすぐに元に戻った。うん。だってぼくはシロナのこと知ってるよ、って言ったことあるしね。
「・・・そうだったわね、きみにはバレちゃってるんだっけ。別にチャンピオンだからというわけじゃないわ。友人に会いに行くだけよ」
にっこりと笑うシロナにぼくも笑い返した。そして言う。
「・・・シロナ。ぼくも一緒に行っていい?行くとこなくてさ。
ナギサには行った事ないし、ゆーととアヤちゃんからは逃げたいし」
えぇ。いいけど、と言いかけたシロナが奇妙な顔をした。
「ユウトくんとアヤちゃん・・・?」
あれ?この反応はゆーとたちを知ってる?そう言えばシロナ、ギンガ団についても調べてたんだっけ。ならもしかしたら接触があったのかもしれない。少しだけ頭を回転させてぼくは変化球的に聞いた。
「シロナ。3つの湖がギンガ団に襲撃されたのは知ってる?・・・と言うよりそれに関してリーグ側はどういう対応なのかすぱっと知りたいな」
「ギンガ団の襲撃は知ってるわ。・・・そう聞いてくるって事はあたしの思ってるユウトくんとアヤちゃんで合ってるってことね。それから、残念だけどただの一般トレーナーにリーグ側の対応についての情報を流すわけには行かないわ」
シロナ、一本とった!
ぼくは『リーグ側が何らかの対応をとる』という前提の話を知らないよ?
ぼくはシロナに向かってにっこりと笑う。
「へぇ・・・。じゃあ、やっぱりリーグ側は対応を考えたんだ」
「・・・!」
シロナの顔が驚愕に変わった。その様子にぼくはにししっと笑ったまま。
「ぼくが知ってるのはシロナはリーグ側からの要請でギンガ団について調べるために『もりのようかん』を調べるって話までだよ?まぁ、予想は立てられたけどね。
シロナがギンガ団を調べていたのはリーグ側からの要請。ならそれについて調べたシロナはその報告をリーグ側に上げるに決まっている。・・・じゃあ、どうしてリーグ側はギンガ団について調べさせたか。それは不穏な動きのあるギンガ団に対する対策を決めるため、以外にぼくは思いつかない。じゃあもう対策案は出てるはず・・・どうかな?こんな推測で」
頭の後ろで手を組んだぼくの悪戯っぽい笑顔に対してシロナは苦い顔をする。
風にそよいでいた燐がこちらをあきれたような目で見てぼそりと呟いた。
《彼女は少し前の経験を生かすべきですね。ケイに言葉で勝とうとするのは無謀だ、と》
それが聞こえたぼくは苦笑するしかない。
ひどいなぁ。知りたいと思うのは当然じゃん。
もちろんそれ相応の報酬はシロナに支払うつもりだよ・・・っとと。そういえば。
ぼくは答えかねるシロナにさらにもう一押し。
「シロナ。情報交換といこうよ。どっちみちシロナのことは探すつもりだったんだ。
ぼくが頼んだ事、調べてくれた?」
そうそう。ぼくはギラティナ・・・と言うよりも2つの生の世界の神話についてシロナに調べるよう頼んだんだった。ぐぐっと沈黙してしまうシロナにぼくは目線をシロナから離して周りを見る。潮の匂いがすると思ったらいつの間にか道の片側が海になっていた。つまり222番道路。海に感動したぼくは手を頭の後ろから離して声を上げる。
「うわぁ!ねぇ、ねぇ、燐!海だよ!!」
《・・・水は嫌いだと言ったでしょう・・・》
雨しか聞いてないよ、燐。まぁ炎タイプだからそうなんだろうけど。
ぼくはこの感動を共に分かち合って欲しくて凪と透(ゆき)をボールから出した。
シロナと歩いていた高台の砂浜じゃない所、そのぎりぎりまで海側に近寄ってほらっ、と言わんばかりに凪と透に海を見せる。シロナは立ち止まってまだ考え込んでいるようだった。
「凪ー、透ー。ほら、海だよ!海!!」
《海がどうかなさいましたか?》
・・・凪・・・。
いや、確かに海がどうしたって聞かれると困るけどさ・・・。
《ケイヤちゃん。この時期に海はちょっとまずいんちゃう?》
・・・透・・・。
うん、別に泳ぐつもりはないけどさ・・・。
沈黙するぼくに燐が後ろで勝ち誇ったように笑っていた。
うー・・・。ちょっとくらい感動してくれたってさ、いいんじゃないの?
「ケイヤくん・・・」
「えっ!何?シロナ」
ぼくは完全に放置していたシロナに突然声を掛けられて急いで振り向く。
シロナは何かすごい衝撃を受けたような顔をしていた。・・・どうしたんだろ。
「きみって・・・」
「うん」
「・・・よくわからないわね、本当に」
「へ!?」
シロナの言葉の意味が分からずに周りをきょろきょろさせるぼくに燐も凪も透もうんうんと頷きながら笑っている。え?え?な、何?
シロナはふっ、と力を抜いて微笑んだ。
「いいわ。情報交換しましょう。ただし悪用も流出もなしよ?
・・・口約束だけど本気だから」
ぼくはへにゃんと笑って頷いた。
「大丈夫。それはないよ。だってエイチ湖に行ったのはぼくだもん」
え?と驚いた顔をするのはシロナ。
たっ、とシロナの数歩分前の地点にぼくは進む。
透が面白がって一緒に走って付いてきていた。
「予想、立たなかった?だってゆーととアヤちゃんと知り合いって言ったじゃん。
その他にも色々情報持ってるよ。どう使うかはシロナ次第っ!
じゃ、交渉成立ということで・・・」
そしてくるりと通せんぼをするようにシロナの方に向き直る。
透も同じようにぼくの足元で方向転換をした。
ぼくの目に映るのはシロナと燐と凪とシンオウの景色。
「どの話からはじめようか」
笑うぼくの髪を風が撫でていった。
2011.2.11 22:03:30 公開
2011.2.20 22:17:37 修正
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
11.2.19 21:54 - 森羅 (tokeisou) |
こんにちはそよかぜです! ケイヤさんのキャラとても好きですなんか和むんですよね。 そして頭がよく回るというか・・・。 これからも頑張ってください!!! 11.2.18 16:52 - 不明(削除済) (34sykm) |
コメント有難うございます、ジェットドットさん。 ケイヤは相変わらずですよ。 ですが。申し訳ありませんが、本編の内容と直接関係の無いコメントは今後削除させていただきます。小説の感想をいただけるとありがたいです。 それでは、失礼を。 11.2.15 00:42 - 森羅 (tokeisou) |
ケイヤはあいかわらずですね〜(笑) そして……燐と凪と透……ケイヤのファーストキスをうばうのは3匹のうちだれか!?………そういえば凪はまだケイヤにだきつかれてないような……ま、3匹とも先にうばわれないようキスガンバレ(笑) ビンとろ「お前もからかうの好きだね〜。」 まぁね〜〜♪ 11.2.12 10:35 - ジェットドット (ゲスト) |
こちらでは初めまして、森羅です。
ケイヤがお好きですか!本当に彼は人気ですねぇ・・・。和んでいただければ何よりです><
ケイヤは頭の回転が速いんですよ。
有難うございます、これからも頑張りますm(−−)m
それでは、失礼を。