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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

幕間 遠い昔に見た夢は

著 : 森羅

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とおいとおい昔。それは記憶の彼方で霞みそうなくらい。

たった一度だけ、たった一度だけで良いから、と。

『誰か』がそう、叫んだんだろう。



sideパルキア

たった一度だけ我儘を通させて欲しい、とそう思った。
たった・・・・・・たった一度で良いからと。

おれたちはずっと誰かの救いを求める声にただ耳を塞いで来たのだから。
届くはずのその手を握り締めて、零れていくものを掬おうとしなかったのだから。
握り締めた手では何も掴めやしないというのに。

感情がなければそう思わなかったとそう言うのであれば、除去してくれれば良い。
そうしてくれていればおれは機械のように空間を構築するだけのパーツであれたろう。
哀しみなど、知らずに済んだのだ。
そうだ。

我儘など言おうと思わなかったろうに。
おれは、『神』になれたろうに。

でも、それでもだ。
おれは願う。

ただ、何もできないというのは悔しすぎるから。
だから、おれは言ったのだ。あの人間に。

《おれの望み、・・・お前の願いを叶えてやろう》

それは一種の叫び。

たった一度だけ、それは遠い昔に見たはずの夢。

sideディアルガ

時間は泡沫(うたかた)の飛沫、寄せては返る波。
過ぎ去ったものは返っては来ず、返ってきてもそれは同様のそれではない。

時間の流れが大海であるなら、吾(あ)は風であり波。
船ではなく、その船をただ運ぶもの。

風にも波にも感情は不要であり、ただただ義務のように働けば良い。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
それなら、なぜ。

なぜ吾は思う?
吾は太陽ではなく、月であれば良いのに。
太陽の光を受けずには輝けぬ月であれば。

零れ落ちる雫を受ける葉はない。
死に行く命に手を伸ばし掬い取る事などできぬ。
海の魚が空を泳げぬように。
救いたいと願っても、魚は天空にまで手が届かぬのだ。

それでも、船を動かす風と波は一つの舟に行方を聞いた。
天空へまで手は届かぬから。
時の流れの大海で、その舟は迷子のように空の星導を探すから。
星導の代わりに風と波はその舟に問いかけたのだ。

《吾は波、吾は風。吾は其(そ)の行方を今問おう・・・其の行方に風と波は力を貸そう》

風も波も、それこそが望みだったから。

其れはまどろみの中、遠い昔に見た泡沫(うたかた)の夢だった。

sideギラティナ

黒い黒い世界で。

何もできぬ。
誰が我に枷をはめた?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
枷をはめたのは我自身。わかっている。

あまりにも強大な力であったから。
だから手を伸ばさぬようにしていたのだ。
救えるであろう命に見てみぬ振りをして、救わなかったのだ。
逆に壊してしまうだけだからと、言い訳がましく。

そうか、これが『神』か。
なんて下らないものなのだ。
何も救えず神か。たった一人さえ?

たった、たった一人でさえ?

泣いているような笑っているような顔で。
静かな悲鳴を上げながら。
心の中でだけ血反吐が出るほどに泣き叫びながら。
叫ぶように人間は言ったのだ。

たった一度で良いからと。
たった一度で十分だからと。

我だって同じことを願ったのだ。

たった一度で満足するからと。
たった一度で良いからと。

言い訳のように、愚痴のように、免罪符のように、
その言葉を振りかざしたのだ。
振りかざす相手も言い訳をする相手もいないというのに。
いいよ、とさえ言ってくれる相手もいないというのに。

叶えてやる!
この身に代えても叶えてやるから、もう泣かないでくれ!

悲しみがあまりにも増えすぎて悲しみを悲しみだとすら分からなくなってきていたから。
だから、悲しみを悲しみだとを気づかせてくれた礼に。
いや、

我自身がそう望んだのだ。

ただ、叶えてやりたいと。

《我の願いを叶えてくれるなら・・・汝の望み叶えてやろう》

そのささやかな未来への願いを。

遠い昔に、無邪気にそう夢見たのだから。




































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2010.12.17  00:52:24    公開


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