生あるものの生きる世界
12.side ユウト×アヤ 命の契約[メイヤク]
著 : 森羅
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「一回しか言わないわよ。一回で理解してよね」
ピョン、と机から飛び降りてアヤはナナカマド博士から本を受け取って開く。
「『昔むかし、ポケモンとヒトは同じ物でした。
ヒトとポケモンは言葉を通じ合い、一緒になるもの達もありました。
けれど、徐々にヒトはポケモンの言葉がわからなくなってきました。
それがなぜかはわかりません。けれどもとうとうヒトはポケモンの言葉がわからなくなりました』」
「・・・・そんで?」
オレは聞く。
今の話がどう関係あるんだよ?
「急かさないでよ。まだ終わってないんから。えぇっと、『けれども、
まだ、ポケモンの言葉がわかる者達もおりました。彼らはポケモンとヒトの橋渡しをする存在でした。
彼らはポケモンの言葉を理解し、ポケモンたちと契約を結ぶ事の出来る存在でした』」
契約・・・。
一体それは何だ?
オレは続きを待った。
けどアヤは何も言わない。
痺れを切らしたオレは言う。
「・・・それだけ・・?」
「これだけよ」
さいですか。
散々期待させやがって・・・。
「昔話は、ね。本番はここからよ」
ニッ、と人を見下したように笑うアヤ。正直、たちが悪い。
「契約ってのは昔話にもあったようにポケモンと人が結ぶモノよ。ポケモンの言葉を理解できる人が、ポケモンに『名』をつけて契約を交わす。『契約者』って言うのはその契約が出来る人のこと。・・・・ただし、もう『契約者』なんて昔話にしか存在しないものよ」
「その契約ってのはなんなんだ?」
オレは聞く。
もう二つほど気になることもあったのだが。
「うーん、一番簡単に言えばポケモンをボールに入れたのとおんなじよ。『名』をつけられたポケモンは魂を握られたも同然だから。それを道具(ボール)なしで出来て、ついでにポケモンと話せる人間ってとこ」
「アヤは違うのか・・・・?」
オレは疑問をそのまま口にする。
いままでのアヤの話の内容だとアヤも思いっきり適用範囲のハズだが。
オレの問いにアヤは目を大きく開いて驚きを表す。
「・・・あたしは違うわよ。確かにスピカとシリウスとは契約したけど、『契約者』って言うのとはちょっと違うわね」
「どう違うんだ?」
「あたしが言葉がわかるのはスピカとシリウスだけなの!中途半端なのよ。契約は出来る。契約したポケモンの言葉はわかる。けど、全部じゃないの。完全な契約じゃないの。ボールに入れないと“おや”と認識されないの。『契約者』ってのは全てのポケモンの言葉がわかるのよ。それこそ、契約していようが、していまいが、ね。ボールに入れなくても“おや”と認識されるのよ」
・・・なるほど。
確かにアヤは夜月(よづき)の言葉がわかってなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
じゃあ、さ。ちょっと待て。
『オレ』はなんなんだ?
今まで出会ったポケモンの言葉は全て聞こえた。
間違いなく。
『オレ』と言う存在がこれほど異物に感じたのは生まれてこの方初めてだった。
「『契約者』はもういないってさっき言ったよな?じゃあ・・・・」
オレは何なんだ、と。
オレは一体どうなったんだ、と。
なんでポケモンの言葉がわかるんだ、と。
聞きたいのに言葉にならない。
知りたいのに口から漏れたのは吐息だけだった。
《貴様は『契約者』だ。間違いなく》
「よ、夜月・・・」
《事実、俺はここにいるだろうが》
『お前は夜月。オレの名前はユウトだ』
自分がシンジ湖で叫んだ言葉が思い出される。
あれのせいで夜月(よづき)はここにいるのか・・?
《俺と貴様は契約した。俺が一番良くわかる》
そんなこと言われてオレはどうしたらいい?
「・・・ついでに教えとくわ。あんた、契約するときに自分の名前も言ったでしょ。それはね、一番強い契約方法なの。自分の『名前』を契約するポケモンに渡した事になるから。『名前』の交換をしたってことは『命』をつないだって事よ」
・・・・・・・・・は?なんだそれは。
嫌な予想が頭をよぎる。
「一番リスクが高いのよ。そのかわり契約の力も半端無いけどね。つまりあんたと、そのブラッキー・・夜月の命は二人で一つってとこ」
「・・・つまり、夜月が死んだら・・・」
「あんたも死ぬわよ」
容赦の無いお言葉。
ありがたくて涙が出る。誰か、冗談だと言ってくれ。
それでなくてもオレが怪我とかすれば、オレの『本体』が危ない。
《そう言うわけだ。よろしくな片割れ》
何にも知らねぇアホブラッキーが悪魔の笑みで言ってくる。
勘弁してくれ・・・。
オレは『お先真っ暗』の本当の意味がはじめてわかった気がした。
2009.3.22 21:40:25 公開
2011.10.27 00:07:32 修正
■ コメント (6)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
12.7.15 02:09 - 森羅 (tokeisou) |
今頃思ったのですが ブラッキーと黒猫は 似たようなものを感じますね 黒い体に 月が似合う そして夜・・・・・・と うーん 契約ですかー・・・・・・ モンスターボールなしで いうことを聞いたりするんでしょうかね まぁ 最悪な契約だということで 契約しても損があると思いますけど 12.7.13 22:42 - 不明(削除済) (wert) |
はじめまして、コメントありがとうございます!!夜光さん! 吃驚しました・・・(いろんな意味で) “契約”は完全に僕のオリジナルですが、特に種類があるわけではありません。 恩恵という恩恵は見た目あんまりないです。いまだに本文にはまだ出ていませんが・・・、 一番のネックはやはり『ボールがいらない』と、『捕獲できなくても強制的に言う事を聞かすことができる』ということでしょうか。 ユウトの適応力はそこそこだと思います。もっと適応力の高いキャラがこの小説には存在してますので。 そうですね、あまり詳しい説明は入れませんでしたがゲームで存在した、という話を彼はしていません。 ですが異世界(裏の世界)から来た、という話はちゃんとしてますよ。 それでは、コメント誠にありがとうございましたっ! また、暇なときにでもくださると嬉しいです!! それでは失礼いたします。 09.10.27 23:57 - 森羅 (tokeisou) |
初めまして いまさらながら読み始めたばかりなのでコメント中途半端なところに残していきます。 契約は他にも種類があるのでしょうか?(続きはよ見ろ) 一番強力というからにはそれなりの恩恵もらえるはずですよね ユウトがポケモン世界にはいっていくところが印象的でした。ユウトくんは適応力高いのですかね? 異世界から来ましたなどの説明部分が省略されていますがこっちではポケモンはゲームでしたなんていえませんよね。 少なからず持っているポケモンの知識をどうしてもっているかうまく説明できるといいですね 09.10.27 15:35 - 夜光 (iteboe) |
こんばんは。返信が送れたことをお詫びいたします。 45さんへのコメントの返事も読ませていただきました。 同一人物の森羅ですので、そう言う方向でよろしくお願いします。 こちらの方へのコメントの方が早かったので、コメントを見てかなり驚きました!ありがとうございます!!! とにもかくにも・・・。 ゆーとに対して敬意を払ってくださりありがとうございます。 ゆーと、と呼び捨てでいいですよ。(ユウトでも裕斗でも) だって僕自身45さんに言われるまでゆーとの姓を忘れかけ・・(以下略) ・・・・・失礼しました。 『強制連行』の所を面白いと思っていただけましたなら幸いです。 感情を完璧に切り捨てたダークな物語も、誰も傷つかない優しい物語も大好きな僕ですが、この物語はその中間的な要素を持っています。まぁ、それが書くのに当たって一番好きだからなのですが。 ・・・・ちょっと語ってしまいました。失礼しました。 それでは、45さん本当にコメントありがとうございました。 また、そちらの方も見させていただきますのでその際は。 また、なにかあればコメントをいただけると嬉しいです。 では、今宵は失礼を。 09.3.23 21:04 - 森羅 (tokeisou) |
どうも。初めまして^^ 読みはじめましたら、パソコンを占領して一揆に読みきってしまいました。 まとめて、感想するので長いかもしれませんが、はじめの『強制連行』の所では、おもわず笑ってしまいました。 そして、寿くん(・・・付けでよろしいでしょうか?敬意を込めて。)が、非日常に吸い込まれるように、入り込んでいく瞬間が、とても、印象深いです。これからどうなっていくのだろうと、思いました。 そして、謎の人物と出会って、すこし詳しいこと聞いて、また、混乱したまま放り出されて、また混乱・・・。そして、戦い。 ここら辺で、一揆に見入ってしまって、お気に入りに入れてしまいました(笑) そして、ここまで読んできた訳なのですが・・・寿くんのツッコミが面白いですね。 カッコいい小説の一部に、面白さがあるので、なんだか魅力を感じます! もう、しつこいと思いますので、ここら辺で退室いたします。(何故敬語? 次回作を期待して、まっています^^!! では。 09.3.23 00:22 - 不明(削除済) (45syost) |
ブラッキーと黒猫に似たものを感じますか?さて、どうでしょうか。彼が疫病神だという意味では確かにそうかもしれませんね。
そうですね、契約に関してはわかりづらければ補足説明の部分を見て頂ければと思います。モンスターボール不要の、ボールで捕まえた感じ、でしょうか。
そうですね、一番最悪な部分はこの話の最後にでてきた「片方が死ねば片方も死ぬ」でしょうか。
それでは失礼を。