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生あるものの生きる世界

著編者 : 森羅

131.sideケイヤ×アヤ 君のできる全て[カノウセイ]

著 : 森羅

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sideスピカ(ムウマ)

あらら・・・。
ケイヤくんとキュウコンの発言にアタシは苦笑いするしかない。
だって・・・ねぇ?

あまりにも直球、致命弾過ぎるのじゃないかしら?

シリウスのことは確かに元々アヤが悪い。
逆にユウトくんなんてお礼を言われても良いくらい。
でも、アヤの表情は凍ってしまっている。
きっ、とキュウコンと目が合った。

《どういう神経しているんです?他人のことを言う前にまず自分でしょう?》
《・・・アタシに言わないでアヤ本人に言ったらいいでしょ》

燐が言っている事は正鵠を射ているのだけれど、言い方が気に食わない。
すましているのが癇に障る・・・と言うより何も知らないくせに正しさだけを語らないで欲しい。
だからアタシもどこかけんか腰で答えた。

《それにアヤはちゃんとシリウスに謝れるわ。責任も感じているもの》
《そうですか?そうは見えませんね。他人に責任転嫁しているようにしか見えません。
まず貴方に重要な隠し事がある時点でどうかと思いますが》

さらりと返してくる燐。
アタシはムキになる。

《ちゃんと解決したからいいじゃないの!
アナタにアタシとアヤのことまでとやかく言われる覚えはないわ。
よく知りもしないくせに、頭ごなしに否定しないでくれる?》
《・・・そっ!》
「はい。そこまでだよ、燐」
《ケイっ!?》

いきなりアタシたちの会話に入ってきたケイヤくんに燐はくるりと向き直った。
にこにこと笑顔でケイヤは燐をとめ、アタシにも目をやる。

「燐の言葉しかわからないけどさ、燐は言いすぎだよ。
前にも、『彼』のときにも言ったよね?こうだと決め付けてしまうのは燐の悪い癖だ」
《・・・はい。言い過ぎました、すみません》
「ぼくじゃなくて、スピカにね」

ケイヤくんに言われて燐は気まずそうにこちらに振替って一言。

《すみません。言い過ぎました》
《・・・こちらこそ。アナタは正論よ》
「仲直り、できた?」

頷いたアタシたちにうんうんと嬉しそうに笑顔で燐を撫でるケイヤくん。
・・・ちょっとうらやましいわね・・・。
さてと、とケイヤくんはくるりと今度はアヤの方向へと目を向ける。
アヤは下を向いたまま固まって両手にこぶしを2つ作っていた。

「アヤちゃん。何がどうなってるのか細かい事情は知らないけど・・・悲しいの?」
「・・・え?」

アヤがはっと顔を上げる。
ケイヤくんはへにゃりと笑いながらもう一度繰り返した。

「だから、理由はともかくさ、シリウスってオオスバメがいなくて悲しい?寂しい?」
「寂しいし、悲しいわよ!何か悪いの!?」

いきり立つアヤにケイヤくんはぎょっと身を引いてあはは、と乾いた笑みを浮かべる。

「悪くないよ!悪くない!!そうじゃなくて、ならそう言えばいいのに」

ケイヤくんの言葉にアヤは黙った。

sideアヤ

「悪くないよ!悪くない!!そうじゃなくて、ならそう言えばいいのに」

そう言えばいい・・・って言われても・・・。
あんたに言ったところで何も変わらないじゃない。
訝(いぶか)るあたしにケイヤはとことんへにゃりとした笑顔で続けた。

「だってさ、悲しいときに悲しいって言わなきゃいつ言うの?
泣きたい時に泣かなきゃいつ泣くの?知ってる言葉は使わないと。
泣いても何も変わらないことをぼくは知ってるけど、優しい涙もあることも知ってる。
それにさ、これは教えてもらったんだけど・・・」

ちらりとケイヤの目線が燐へと動いた。

「泣いたらまた笑えるんだって」

・・・・・・・・・・・・・。
堰が切れた。

「寂しいっ!シリウスにいて欲しい!傍にいてくれなきゃ嫌ッ!
何で今いてくれないの?寂しいのに!」
《アヤ・・・》

座ったまま膝を抱えるようにくの字に体を折り曲げてあたしはうめくように小さく悲鳴を上げ続ける。よしよしと小さな手がずっとあたしの頭を撫でていた。

sideケイヤ

アヤちゃんが落ち着いてからぼくはハンカチをアヤちゃんに渡した。
ふてくされたように、でも素直に受け取ったアヤちゃんの目はちょっと充血ぎみ。
ぼくは一言笑顔で尋ねる。

「すっきりした?」
「・・・恥ずかしい」

そっかーとアヤちゃんのコメントに笑うぼく。
年頃の女の子がこんな人前で泣くのはやっぱり恥ずかしいんだ・・・うん、ごめん。

「泣きたい時に泣けることは大切だよ・・・ってぼくはあんまり実践してないんだけどね。
でも、泣く事ができるのはすごい事だよ、きっと」

英雄も、殺戮者の彼も、刀匠も、誰もが『泣けなかった』人たちだ。
涙を流す権利はない、と。
泣いても何も得られない、と。
涙の意味すらしらない、と。
それは、悲しいほどに。
もちろん、泣かない強さもあるんだろうけど。

でもそれだからこそ、ぼくは泣けることも強さだと思う。
人に弱さをぶつけられるのは、さらせるのはその人が精神的に強いからだと思う。
ぼくはそれをアヤちゃんに言った。

「弱さをさらけ出せるたり、泣けるのも強さだと思うよ。
泣きたくて、でも泣けなかった人たちをぼくは知ってるから」
「・・・・・・」

食い入るような目でぼくを見るアヤちゃん。
ぼくはそんな変な事言ってるのかな?
ハンカチをぼくに返しながらアヤちゃんはおもむろに聞いてきた。

「ねぇ」
「何?」
「・・・変な質問だけど、あんたにとって強さって何?」
「ふえ?」

うーん、とぼくは腕組みをしてちょっと考えてみる。
でも、やっぱり。

「ぼくは強くないからなんとも言えないかな?
でも自分の事に責任は取るよ、ちゃんと。堺との約束、ぼくは『苦しまなきゃ』いけない。
だから、どんな悲しい事実も逃げない。それがぼくの強さかな・・・」
「そう・・・」

強さと言うよりこれじゃ決意だ。
なんだか、言うと恥ずかしいんだけど。
と言うよりいきなり何?このアンケート。
・・何か、こだわりでもあるのかな・・・?
あ、でも。
ぼくはアヤちゃんの質問でさっきのアカギとのバトルの事を思い出した。
そういえば、アヤちゃんって・・・。

「アヤちゃん、ちょっと聞きたいんだけど」
「なによ?」
「どうしてアヤちゃんはぼくとアカギのバトル、ぎりぎりまで手を出さなかったの?」

アヤちゃんの表情がゆがむ。

「だって、手を出して欲しくないでしょ?公式ルールもそんなこと駄目だし」

手を、出して欲しくない・・・?
さっきの質問といい・・・なんとなく、アヤちゃんの性格がわかってきたかもしれない。
ぼくは答える代わりに聞く。

「アヤちゃん、ぼくは強いと思った?」
「・・・アカギとまともに戦えてたじゃない。あれは強いと言うでしょ?」

なるほどー。でも、それは違うよ。
ぼくは笑って答えた。

「違うよ。ぼくは弱い。強いのは燐だから。ね、燐?
燐とぼくを一緒にしたら駄目だよ。アヤちゃんとスピカが一緒じゃないのと同じ」
「あ・・・」

気づいた様子のアヤちゃんにぼくはへらり笑う。

「ね?ぼくらの力なんてほんのわずか。一人でなんでもできると思うのは傲慢だよ。
周りを見て。アヤちゃんに護られているだけの人なんていないんだ。
周りの力を借りる事も大切だよ。スピカも含めてね」
「・・・・・あんたって、よくそんなこと真顔でいえるわね・・・」

真っ赤な顔で照れたように言うアヤちゃんに、ぼくは笑った。

「ありがと・・・」
「どーいたしまして。シリウスにも謝るんだよ?」
「当然でしょ」

アヤちゃんの返事にうんうん、とぼくは笑って頷く。

「じゃ、そろそろ湖の作戦会議に移ろうか」



























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2010.12.13  23:25:04    公開


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

コメント有難うございます!!assさん!
お久しぶりです。そして早起きですねー!
おや、本当だ。いつの間にやら1000KB越えですねぇ・・・有難うございますm(−−)m

強さ、なんてものは抽象的で十人十色でケースバイケースにもよるものじゃないですか。たとえば『泣く』でも泣き叫んで何もしないまま嫌だ嫌だと首を振っているのを強いとは思わないでしょう?逆に無理に泣く事を抑えているのはただの強がりだと言う考え方もありますし。でもまぁ、『泣きたいときは泣かなきゃ』ですね(意味不

ケイヤは本当、なんであんなセリフがさらっとでてくるんでしょうね・・・orzパソコン画面を直視できないじゃないですか(誰のせいだ
きっと普通に突っ込みを入れられるのはゆーとくんだけ。

ありがとうございます、頑張ります。
assさんも頑張ってくださいねっ!!哀色も楽しみにしていますので!!
それでは、失礼を。



10.12.14  14:12  -  森羅  (tokeisou)

どうも、お久しぶりです。assです。
……結構前からですが、1000KB突破(?)おめでとうございます!

強さはいろいろありますね。
負けないのも強さ。
折れないのも強さ。
そして、泣くのも強さ。
泣くのを強さだと考えられるすべての人を、僕は尊敬します。(もちろん森羅さんも)

ケイヤくん、なんでしれっとあんな台詞が言えるのでしょうかね……。実際にいたら僕だって赤面しますよ。

これからも色々と大変だと思いますが、頑張ってくださいね!
話題をころころと変えてすみません。
では、失礼します。

10.12.14  04:35  -  不明(削除済)  (aasaas)

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