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某有名私立ポケモン高等学校!
ハク編 番外編二 そんなひのあるにちじょう ハクのばあい
著 : ○
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手紙は相変わらずの字で、相変わらずの文章で、相変わらずの長さだった。
この手紙を貰った後のハクはいつも複雑な顔をしている。
不機嫌そうで、でも少し嬉しそうで。
と言ってもやっぱり嬉しそう、なんていう感情はほんの少しで気づく人間なんてそう多くはいないほどなのだが。
その不機嫌オーラは周りに関係なく放出している為部屋から出て他の人間に会ったりすると大抵心配されたりする。
まぁ会うといっても言海壮の住人だけだが。
そう言ってもその心配はハクにとって無用なこと。
悪い言い方をすれば有難迷惑、とも言える。
そんなことがあるのでハクは今日の午後は自分の部屋から出ないことにした。
さて、午後は何をしようか。
ハクの家に大したものなんて何もない。
生活できればそれでいい、というなんとも殺風景な部屋である。
そういえば…
と、ハクは何かを思い出し辺りを見回す。
ふと視線を止める。
その視線の先には一つ、箱があった。
それほど大きくない箱。
大きさは、ティッシュボックスより一回りか二回りほど大きいくらいのものだ。
ハクは早速それを手に取り蓋を開けた。
中には一本の杖。
先端にハクの頭にある翼を象った物体と同じ飾りがついた杖。
柄は青色で、なんともハクにピッタリな色をしていた。
ハクは無表情ながらもどこかに感情を込めた顔をしながらそれを取り出す。
「懐かしい…」
一言、そう呟きながら。
この前ブキに言われた言葉。
『ハク、お前も戦うことができるな?』
それをふと、思い出した。
暫く戦うことを忘れていた。
暫く戦うことを控えていた。
もう、戦う必要がないから。
だが、その言葉でこの杖のことを思い出した。
『お前からはそんな匂いがする。だがそれは冷徹な匂いではない。誰かを守ろうという、柔らかく、そして温かい匂いだ』
誰かを、守る。
守る相手は。
この手紙の、主。
数年ぶりの手紙。
もう存在すら忘れかけていた。
いや、確かに忘れていたのだけど、思い出したくなかった。
あの、愚鈍な人間を。
見ているだけでストレスが溜まる、自動ストレス製造機を。
ハクはそんな事をふと、思い出した。
思い出したくはなかったのだけれど。
本当はこの杖も即廃棄したかったのだが。
この杖が悪いわけではない。
それに、あいつが珍しく高性能な品物を買ってくれたわけでもあるし。
この辺、まだ甘いと思いながら杖を黙って見つめる。
久しぶりに、手入れでもしようか。
そんな考えが、ふと過って。
箪笥からゴソゴソと布を取り出した。
少し汚れたその杖を手にとって丁寧に拭きだす。
手慣れた手つきで。素早い動きで。
感覚は鈍っていない。
この杖はまた、大事に使わせてもらうとしよう。
結構高値らしいし。
何より高性能だ。
戦う相手なんているわけないけど。
いつ何時何があるかなんてわからない。
護身用にでも使わせてもらおう。
今日はいい掘出物も見つかったし。
なかなかいい日だったかな。
さて、明日は何をしようか─────。
終
2007.7.21 09:51:02 公開
2007.8.15 12:58:20 修正
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