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刃物さんと嫌いな執事さん

著編者 : 窮爽

13=幻

著 : 窮爽

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                 「あれは確かに幻だった」

「な、何だったんだ…?」

キリキザンは未だに理解できず、その場に立ち尽くしていた。
暫くして屋敷に戻ろうと歩き出す。
…何だか、この世界に来る前に森を歩いていた感じと同じ気分だな…
半ばそんな事を考えていたキリキザンだったが、次の瞬間でそれは驚きへと変化を遂げる。

クスクス…

「!?」

あの時聞いた笑い声と同じだった。キリキザンはその場から駆け出し、周りをくまなく探しまわる。
どこだ!!どこにいる!!
心の中でそう叫びながら探しまわる。すると、一瞬だったがそれは目の前に姿を現した。

「クスクス…」
「!」
「僕、瞬(またたき)っていうんだ。…ごめんね、暇でさ。ちょっと力使っちゃったんだ」

それはミュウだった。
ミュウは謝ると体から光を放った。キリキザンは始めのころと同じように目を閉じる。
光が収まり、ゆっくり目を開いた。

「……」

そこに広がっていたのはのどかな町。マンションなど立っているがそれもほとんど小さなもの。
人もそれほど多くもなく、のんびりとして足取りで歩いている。
そこは自分の知っているハクタイシティだった。
戻って来たのかとキリキザンは考えているが、突然の出来事に頭が少しばかり混乱していた。
…だが、戻ってきたのだ。

「…あいつら、俺が帰ってこなくて心配してないだろうか…」

そう心配をかけながらも先程まで居た世界に、出会った人たちに別れを告げ、歩き出した。
自分の大切な人の望みを叶えるべく、歩き出した。
自分のやろうとしている事は人殺し、つまり犯罪だが、それを行う理由は誰にも否定させない。
…今度は似た奴じゃなければいいけどな
キリキザンは微かにふっと笑った。

                     ○●○
深夜2:00

「やぁ、おかえり〜♪」
「……」
「やっぱ、別人だったんだねぇ」

屋敷のケラノの部屋で男とケラノは対話していた。
ケラノは苦笑いで、男は無表情(髪の毛で隠れていて分からないのだが)で話していた。
ケラノはベットで寝ているニャースを横目に話す。

「帰ってこないからさぁ、また一人居なくなっちゃうのかなって心配で眠れなかったんだよねぇ。ニャースはぐっすりだけど」
「……」
「キリキザンはまぁ、空間移動の可能なポケモンに出くわして戻ったと祈っとこうかなぁ」
「……」
「…一つ、聞いてもいい?」

ケラノは机に頬杖をつき、そう呟いた。
男の返答が返ってこないのにも関わらず、ケラノは質問をする。

「君の目的とか出身地とかそういうのは聞くつもりじゃないからそれだけは言っておくよ?…何で素で戻ってきたの?」
「……」
「いや、帰ってくるなって言ってる訳じゃなくて、俺は別に気にしないけど、他の堅苦しい奴だったらさ『偽物だったのか!!』って捕まえそうなものなのに。君が戻ってきた理由がちょっと分からないんだ」
「……」

ケラノの質問に男は暫く答えずに立っていた。沈黙が続き、男はようやく口を開く。

「…分からない」
「……」
「…私には心と言うモノがないから分からない」
「…………………………………プッ」

ケラノは口を手で押さえて吹き出した。
男は首を横にかしげている。ケラノは苦笑しながら言った。

「心がないだって?何を馬鹿なことを。ちゃんとあるじゃない」
「……?」
「…知ってる?心がないと、言葉を口にするのも、疑問に感じる事も、空腹も、痛みも、何もないんだよ。心がないと何もできない、完全な”無”」

男の反応も何も気にせずにケラノは人差指を立てて話を続けた。

「映画とかで『こいつには心がないのだぁ』って言ってるけど、じゃあ何でお前に従うんだよって話さ。ロボットならまだ分かるけどねぇ…」
「……」
「…それらの理論から言うとね、心がない生き物なんて居ないさ。植物だって生存意欲がある。そうでしょう?君だって、そうだ。何かを成し遂げたくて咲哉にへんして、そして何かを思ってここに戻ってきた」
「……分からない」

相変わらずの男の反応にケラノはただ静かにニコニコしていた。男は静かに語り出す。

「…私は星という主君に作り出された幻で、心なんてものはないから他の人間の体と心を真似てきて、前の召使は私が刺し殺し、借りていた。その人間は私に丁度いい心だったけれど、今回の執事は違う。重い。心が慈愛や優しさで重い。私には耐えれない。だけど、借りなくちゃいけない。主君の望みだから。主君の望みに答えなければいけないから」
「へぇ…じゃあ、君は他の人間の姿になれる力を持つ幻影と言う訳かぁ。…じゃあ、聞くけど『心がない』だなんて誰が決めたの?」
「…主君」

男の短い答えにケラノはやれやれと苦笑した。

「…その星って奴さ、馬鹿だねぇ♪」
「……?」
「君には心がありません?ハッ、分かった事言ってんじゃねーよって話だよねぇ。その主君、何?超能力者?」
「…願いを叶える事が出来る」
「へぇー…だからどうした。俺だって頑張れば願いだって叶えられる。…君はその人の事どう思ってるの?」
「……力のある人間」
「ほうほう…じゃあ、俺や咲哉は?」
「……」

男は暫く考え込み、こう答えた。

「…心の重い人間…凄い…人間」
「おぉ、何だか嬉しいなぁ。…じゃあ逆に俺が君に思ってる事言う」
「……」

ケラノは一つ息をつき、満面の笑みでこう答えた。

「心のある、優しい子♪」
「……」
「…笑った笑った♪」

ケラノはニヤニヤしながら男の顔を指差した。
男の口元が微かに笑っていた。男は言われてハッと表情を元に戻す。
ケラノは窓を開けて、夜空を眺めながら言った。

「君が幻だとしても、俺は君の事好きさ。…君は俺の事好き?星より好き?」
「………」

男は暫く黙っていた。男の脳裏には今までの記憶が巡っていた。
印象的だったのは咲哉の体を真似た時、そしてケラノや様々な人間と過ごした時間。

                 「………好き」

その時、少し強い風が吹いた。
ケラノは男の方を嬉しげな表情で振り向いた。そんなケラノの瞳に映ったのは…


               笑顔で笑う、幻だった。

                    ○●○

「…なんだよ。幻のくせに…」

ビルの屋上、男は一人、腕組みをしながら機嫌悪そうに呟いた。
広がるのは都会町。男は呟き続ける。

「…あの幻を消してやりたいけど…一度作り上げた幻を消す事は出来ない…惜しいよなぁ。…いいや、仕返しとかもいつかしてやるし」

そう言って男が後ろを振り返ったその時だった。

グサリ

そんな鈍い音とともに、腹部に激しい痛みが走った。
腹部に目を向けると、そこにはナイフが一本突き刺さっていた。
そして前方には…

「…まぼ…ろし…」
「………幻ならば、貴方に刃向かい、葬ることだってできる」
「な、何を言って、俺は不死身なんだ…」
「貴方の今の体は私を同じ、幻」
「……あ…」

男はその場に崩れ倒れた。
そして、恨めしそうな表情で幻を見てそしてむなしくも息絶えた。
男の体は灰と化し、風に吹かれて飛んでいく。
男は星。数百年、幾年も生きてきた男。それは全て悪を断つべくに自分を不死身にして男。
願いを叶えることのできる男。自分の悪に気付かぬ哀れな男。
…そして今。自分自身で作り上げた幻に幻で生きてきた自分の体を葬られた男。

「……さようなら」

ビルの屋上、幻は灰が飛ばされていった方向を見つめながら呟いた。

〜〜〜〜〜〜〜
はい、とりあえずはこれで終了です!!
キリキザン「おい待て。なんだこの訳のわからない終わりは」
訳が分からなくていいんだよ。次の章で明かすつもりだし。多分(蹴られ
謎もなんにも解けてないですが、段々分かるようにしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします!
…こんなに一つのシリーズが続いたのって久しぶりだなぁw
また、次の最終回ではプロローグという形になります。
ではでは!ノシ

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2012.4.6  13:53:28    公開


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

commanderさんへ
幻は前から『あ、このキャラ良くないか?』って具合で考えました^^
刑事さん、ちょいと許してくれねぇかい?こっちはこっちで片付けるからy(どこの野郎だ
ケラノは『根は』いい奴ですからねぇ。根は、ですよw
あの場面でいじりまくりだったらさすがの私でもキレそうだwwマサル、君はもっといじりを上達させるのだy(ry
キリキザン「あぁ。本物であってほしいな(;一_一)」
それ、なんてフラg(斬られ
謎はゆっくりですが解けます…^^
コメ&応援ありがとうございます!それでは!ノシ

12.4.6  18:30  -  窮爽  (monoraru)

マボロシさんが実はいい人だと分かりましたねー。
いつかの刑事「おいおい、君。いい人だったら。三件も殺人事件を起こさないだろう。」
刑事さん、よろしいですか?最後に葬ったのは幻です。人ではありません。あとの二件は本人も反省してますし、書類の改ざんで時効ってことになってるんですよ。(弁護士面して
それにしてもケラノ君はただいじるだけではなく、いじりの中ではげましてますね。誰かと違ってすごいです。(「呼んダ?」マサル
ではキリキザン、つぎは本物であることを祈ってるよ。
謎が解けるの楽しみです。

12.4.6  17:28  -  不明(削除済)  (gunship)

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