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刃物さんと嫌いな執事さん

著編者 : 窮爽

11=理解

著 : 窮爽

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               「あれは確かに理解だった」

「…どういう事だ」

沈黙を破ったのはキリキザンだった。
ニャースは窓から降りて、扉へと歩きながら言う。

「それはケラノ本人に聞かないと…ね」

そう言い残してニャースは部屋を出て行った。
部屋に残されたキリキザンはその場に立ち尽くし、そして…  

                   ○●○

「あぁ…ニャース。またこんな夜中に散歩に行ってたの?」
「まー…」

ケラノは部屋に戻って来たニャースを静かに撫でた。
先程、ニャースが出かける音で起きた様子でまだ眠い様子。その時だった。

「ニャースは俺の部屋に来た」

と、キリキザンがそう言いながら部屋の扉をノックなしにあけた。
ケラノはニャースに視線を移し、またキリキザンに視線を戻すと苦笑いでため息をついた。

「へぇ…」
「…昔、この屋敷に複数、強盗が入ったそうだな」
「…ニャースから聞いたかー…」

頭を掻きながらニャースを見た。ニャースは何もなかったかのような様子で欠伸をしている。
キリキザンは淡々と言葉を並べた。

「…で、お前のペンダントが盗まれ、相川がそれを奪い返しに相棒のポケモンと出て行った…とまぁ、そんな事があったらしいな」
「まぁ……そうだねぇ…」

参ったとでもいうかのようにケラノは額に手を当てて首を横に振った。
キリキザンは暫く黙りこみ、そして口を開く。

「お前、昼に俺が知ってどうするかって聞いたな。単純な話、アイツと俺はどこか似ているような気がしてな。本能的に知りたかっただけさ」
「…どういうところが?無愛想なところとか、ツンデ―」
「俺は大切な奴の願いを叶える為に今生きている。アイツは俺と同様で何かを成し遂げようとしているんじゃないか?」

キリキザンは語り終わったと一つ息をついた。すると、甲高い笑い声が部屋に響き渡った。

「ハハハッ!!」
「…何がおかしい」

ギロリと半ば引いたような目でキリキザンはケラノを見た。ケラノは笑いを押さえて涙目で答える。

「いやいや…馬鹿にしてるんじゃなくてさ…キミがそんな事言うとは思ってなくてさ…」
「…ギャップか、ギャップ」
「そうそう、それ…」

ようやく落ち着いたとケラノは表情をまた元に戻して口を開いた。

「ま、仕方がないねぇ。とーくーべーつーに話してあげるからさ♪」
「鬱陶しいな」

少しいらだつ感情を抑えつつ、キリキザンはケラノの話に耳を傾けることにした。
ケラノは椅子に腰かけ、机に頬杖をつき、そこに座れと言わんばかりに人差指で目の前に椅子を指した。
キリキザンは静かに椅子に腰かけ、ケラノと机を挿んで向き合った。キリキザンが座ったのを確認するとケラノは静かに淡々と語り始まる。

「まぁ…まずは相川が執事になった経緯を話そうか。彼はね元々貧しい家の一人息子らしくてね、家族とそれぞれ個々に家もなく、色んな町を歩き回っていたらしい。俺の父親はハクタイシティでベンチに悲しげに相川が相棒のポッポと座りこんでいるのを目にしてさー…なんか、『捨て犬ですっ!拾ってくださいっ!』的な雰囲気漂わせててさー…」
「…で、勧誘したという訳か」
「あ、俺の例えには突っ込まないんだね、了解。ま、執事になれば毎日食事やら何やらできるし。…彼は了承したよ。俺はその時七歳で母親は病死、父親は仕事でほぼ相手にしてくれない状態でニャースしか相手してくれなくてつまらなくてね。父親は相川を俺専属の執事にしたんだ」
「…可哀想に」

話が一区切り終わったところでキリキザンは遠い目で呟いた。
ケラノは『俺そんな酷い人間じゃないからね』と注意し、話を続けた。

「で、相川と過ごすんだけど、俺は人をからかうのが楽しくってさぁ…相川を相手に悪戯したんだけど、どれも不発で返ってくるのは冷徹な言葉と凶器ばかり。ま、俺は十分楽しかったけど」
「…だから嫌われるんだろう」
「…でね、まぁ何だかんだ言っても執事だからまともに話しする事も出来るようになって来たころね、俺は母親の形見であるペンダントを見せて話し始めた」
「…形見にしては高級だな」

キリキザンが呟くと、ケラノはクスクスと笑いながらペンダントをポケットから取り出して言った。

「いやぁ、実はね本物の宝石じゃなくて普通のガラスなんだよ。宝石って勘違いする人多いけど。…でね、相川は一言『大事にしなければなりませんね』って言ったんだ。俺はそれに同意してさ。…珍しく家族関係の話になると話が弾む弾む♪それからは相川とも楽しく過ごせるようになったんだけどね」
「…楽しくなぁ…」

目を細めて疑うような目でキリキザンはケラノを見た。ケラノは息を一つつき、また話し始めた。

「…で、半年前。父親が海外に出張し、俺がこの屋敷をまとめていた時にキミが話に聞いた事件が起こった。俺はその時、仕事で居なかったんだけど帰ってきてから話を聞いて驚いたさ。で、ペンダントを保管してた引き出しを見れば蛻の殻。…それで、相川がポッポと出て行ったと聞いて意外だったなぁ…無愛想な彼がまさかそこまでしてくれるとは思ってなかったから」
「…そこからどうなったんだ」

キリキザンが低いトーンで尋ねるとケラノは目を細めて打つ向き気味でこう言った。

「その後は知らないけど、半年ぐらい相川とポッポは帰ってこなかった。警察も強盗犯は何人かは捕まえたけど、まだ残党は残ってた。…その問題の半年後、彼は何食わぬ顔で返ってきた。皆は帰って来た事に大喜び。ポッポはどうしたって皆が聞くと『自然に逃がした』と相川は答えてた」
「…お前はアイツは相川じゃないと言っていたそうだが」
「…うん」

ケラノは少し苦笑して答えた。

「いやぁ、なんか俺にはどこか違ってるように見えてさ…俺ね、実は“相川”って呼ばないで、”咲哉”って呼んでたんだよね。試しに“相川”って読んでみれば、『如何されましたでしょうか』って普通に答えたから…本来なら『如何されましたか、気持ちが悪い』って返してくるのにさ」
「…酷い言われようだな」
「酷いよねぇ?…で、『あ、違うな』って思ってね。…だけど、何だか彼が抱えてるような感じがしたから今まで普通に過ごしてたんだけど。ま、相川がそっくりさんなのか変装しているのか。何で咲哉のふりをしたのかは知らないけど。呼び変えた瞬間に皆気にしてたみたいだけど、それもすぐ『気分転換か』で終わったよ」
「……と言う事は…」

『そう』とケラノは立ち上がり、窓から夜空を眺めながら言った。

「…屋敷でペンダント見つけた時はハッとしたよ。『やっぱり彼は違う』だって、咲哉なら見つけるまで探してると思うし。…で、キミが見かけた男と相川のやり取り。それを聞いた時は確信に変わった。…今その気持ちを口にするとねー…」

そしてケラノは小さく掠れそうな声で呟いた。

     「…咲哉はポッポと一緒に居なくなってしまったんだなぁ…」

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2012.4.5  10:47:41    公開
2012.4.5  10:51:22    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

commanderさんへ
まさかの事実です^^;
もう嫌なフラグがビンビン大きくたっちょります(汗
ケラノ「えぇー…あー……テヘp『ここで『テヘペロッ☆』って言わせねぇよ、逃がさねぇよ』窮爽
ケラノの例えが酷い件について^q^
ケラノはプラス思考なんですよねw私は絶対怯えながら毎日過ごす羽目になりそうです(;一_一)
ケラノ「楽しいよ?ww」
咲哉「こちらは非常に不快なのですが(フォーク構え」
ケラノ「おぉ、危ないww」
え、おま、フォークがこっちに来t(グサリ
コメ&応援ありがとうございます!それでは!ノシ

12.4.5  17:41  -  窮爽  (monoraru)

相川さん衝撃の事実発覚!!
いなくなってしまった?なんか悲しい予感が・・・
ランガル「まあよいではないか。いまは『代わりの相川』がいるんだろう?いいじゃないか。」司令、ひとつ予言してやろう。きさまはいつか警察にひどい目に遭わされるだろう。
『捨て犬ですっ!拾ってくださいっ!』ってケラノ君・・・
それはそれとして悪戯に対する反応としての凶器を楽しめるとは肝っ玉すごすぎる。自分でも楽しいと思いますがね。400度くらい
リンダ「一回振り切って楽しんでるのは40度分だけね。あとの320度は恐怖じゃないの。」やかましい。
では、次も期待してますね。

12.4.5  17:14  -  不明(削除済)  (gunship)

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